はじめに
近年就活において理系学生の需要は増加しています。
採用市場において人気の理系学生ですが、誰もが就活に成功できるわけではありません。
学業や研究で多忙な中、しっかり就活準備をして自分をアピールできた人が希望する企業へ内定をもらえるのです。
では理系学生の就活はどのように行うのでしょうか。
本記事では理系就活の実情や理系就活の流れ、企業選びのポイント、主な就職先を詳しく紹介します。
理系就活の全体像を知りたい方はぜひ参考にしてください。
【理系の就職】理系就活の実情
理系学生はどのような就活を行っているのでしょうか。
一般的に就職活動では大学3年の夏頃から就活準備期間に入り、大学3年3月頃から会社説明会がスタート、大学4年の6月頃から選考開始、順次内々定が出て、大学4年の9月頃に内定が出るという流れとなります。
理系学生では多くの場合3年生後半から研究室に所属することになります。
そのため、勉強や研究と並行して就活を行わなければなりません。
理系就活の実情について、文系と比べるとどんな違いがあるのか解説します。
文系と比べて多忙
文系学生の場合、3年生後期~4年生にかけて授業数が減る人が多く、時間に余裕が生まれます。
そのため就活準備に十分な時間を充てることができ、余裕を持って就職活動に挑むことができるのです。
逆に理系学生の場合は大学3年生後期から研究室に所属するため、非常に忙しくなります。
そのため文系学生と比較すると、理系学生は就活を開始する時期が遅くなる傾向があります。
研究や学業が多忙すぎてインターシップや就活イベントなどに参加する人数も文系学生より少なく、説明会に参加できない、面接の予定が組めないなど、就活との両立が難しいのが理系学生の特徴です。
そのため、志望する企業を早い段階で絞っておくことが大切です。
時間がある1、2年生のうちにインターシップに参加したり業界や企業の研究をしたりして、本命を絞っておくと良いでしょう。
大手に惹かれがち
株式会社リブセンスの「就活会議」とHR総研が共同で実施した2021年卒学生を対象とする「就職活動とインターンシップ」に関する意識調査の結果によると、文系学生に比べて理系学生は大手志向の人が多いということがわかりました。
「就職先として希望する企業規模」についての質問で、文系学生の大手志向の割合は63%だったのに対し、理系学生の大手志向の割合は79%。
文系学生に比べて16%も高い割合となりました。
前年度調査と比較すると理系学生の大手志向の割合は8ポイント増えていることから、増加傾向にあるようです。
理系の方が高い理由としては、「学校推薦で大手に行きやすい」「自分の選考している分野がどう活きるか想像しやすい」などがあるようです。
大学院への進学率が高い
理系学生は文系学生と比べて、大学院への進学率が高いです。
「進学か就職か」の選択は、多くの理系学生にとって悩ましい問題でしょう。
文部科学省が行っている令和2年度の「学校基本調査」によると、理系学生の大学院進学率は40%前後だそうです。
文系学生の大学院進学率が5%前後なので、理系と文系の大学院進学率には大きな差があることがわかります。
理系学生が大学院へ進学する人が多い理由としては、高い専門性を身につけるうえで学部卒では不十分である点が挙げられます。
学部4年間では研究に費やす時間としては足りず、より専門性の高い実践的な研究を行うには大学院に通う必要があるのです。
学部の中には、学部での4年間と修士課程の2年間を合わせた6年間で研究に取り組むことが前提になっている場合もあるようです。
また、研究職のような専門性の高さを活かせる仕事を希望している場合は、就活をより有利な条件で進められる可能性もあります。
【理系の就職】理系就活の全体像
理系学生は多忙のため、就活においてもスケジュール管理は何よりも大切です。
勉強そっちのけで就活だけすればいいものではありませんし、学業に専念しすぎて就活を疎かにすれば本末転倒です。
そのため就活の全体スケジュールをしっかり把握してから、実行するべき具体的な計画を立てる必要があります。
就活を大きく分けると、就活準備・インターンシップ・本選考・内定があります。
理系就活について、詳しく見ていきましょう。
就活準備
まず就活において必要なのは自己分析です。
就活とは、企業と学生の「求めているもの」と「提供できるもの」をマッチングさせる作業です。
そのため、自分が何を持っていて何を提供できるのか、何を求めているのか理解しておく必要があります。
専門に研究している分野についても説明できる準備もしておきましょう。
ポイントは、志望企業に理解してもらうことを目的とした説明をすること。
研究の途中段階で発表段階に至っていなくても問題ありません。
何を目指して進めているのか、どんな取り組みをしているのかを知ってもらうことが大切です。
自己分析ができたら、ESに取り掛かります。
まずは結論から書くようにし、文字数制限を守りましょう。
自分の要求ばかりではなく、企業が自分を採用した際に得るメリットを企業視点で書くと良いでしょう。
インターン
インターンシップに参加するメリットは、自己分析の結果を企業や仕事と照らし合わせられるということ。
志望業界への理解を深め、仕事だけでなく会社風土や社員についても肌で感じることができます。
せっかく志望企業に入社しても、思っていたのと違った…と早期退職してしまう人も多いのが現状です。
インターンシップの仕事体験は、自分はどんな仕事や会社に適性があるのかを知る良い機会となります。
また、インターンシップへ参加することによってその後の採用選考の情報を得やすくなったり、本選考でのプラス評価につながったりする場合もあります。
会社によってはインターンシップへの参加が採用選考への参加条件の場合も。
多忙な理系学生ではありますが、できるだけインターンシップに参加したほうが良いでしょう。
本選考
本選考がスタートすると、企業へのエントリー、履歴書作成、面接というプロセスを経ることとなります。
理系は文系に比べるとエントリー数が少ないと言われています。
専門分野の知識や経験を活かすために、それに関連した業界の企業に絞る人が多いからです。
ただし絞って受けた結果、どこからも内定がもらえなかったというリスクもあるため、負担のない範囲でエントリー数は増やしておいたほうが良いでしょう。
履歴書は、選考を受けていくうえで必ず必要になる書類です。
伝えたいことを全部伝えようとすると、かえって読み手側に伝わりにくくなります。
伝えたいことを明確にし、結論先行型で読みやすい文章になるよう心がけましょう。
面接では頻出質問について知っておくことが大切です。
理系だと自己紹介や志望動機に加え、研究内容に関する質問も多いです。
あらかじめ話すべき内容を決め、しっかり練習しておきましょう。
内定
無事内定を取得できれば、就活も一段落です。
とはいえ、内定取得は就活のゴールではありません。
卒業研究と並行して、入社に向けての準備をするようにしましょう。
基本的な内定から入社までの流れは、内定→入社承諾→内定式→事前研修→入社式となります。
内定が決まった時点で雇用条件を再確認しましょう。
雇用形態や福利厚生など、認識のズレがないか改めて細かいところまでしっかり読んでおくことが大切です。
疑問や不安があれば、担当者に質問をするようにしましょう。
雇用条件の確認が済み、入社の意思があるならば内定承諾書を提出します。
複数社の内定を取得していても、内定承諾書の提出先は原則として一社です。
内定式は一般的に10月1日行う企業が多いですが、近年では行わない企業も増えてきています。
【理系の就職】企業選びのポイント
理系学生ならではの企業選びのポイントについて紹介します。
理系学生は、自身の研究テーマによって選ぶ企業も異なるでしょう。
理系学生の強みを活かし、文系就活生との差別化を図るようにしてください。
自分なりの選択基準を持ち、それに合った企業選びをすると良いでしょう。
理系学生の強みを活かせる企業を選ぶ
学生の間に研究を重ねて培った高度な専門知識は、理系学生にとって大きな強みとなるでしょう。
理系に特化した企業や職種・部門で活躍する学生は半数以上を占めます。
理系学生の強みを活かし、自分の研究内容に合った企業を選ぶと良いでしょう。
理系学生の強みを活かせる企業に就職するには、自己PRやエントリーシートでの伝え方が大切です。
面接官に専門知識があるとは限りません。
知らない相手にどれだけわかりやすく研究を伝えられるか、アピールできるかがカギとなります。
研究内容を具体的に説明することも大切ですが、そこにいきつくまでにはどのような過程があったのかということもわかりやすく伝えられると良いでしょう。
過去の経験が活かせる企業を選ぶ
過去の経験が活かせる企業を選ぶのも良いでしょう。
ガクチカとは、「学生時代に頑張ったこと、学生時代に力を入れたこと」の略称。
ガクチカは、ESや面接でも頻出の質問です。
ガクチカというとサークル活動や留学経験、ボランティア活動などを思い浮かべる人も多いと思います。
研究中心で学生生活を送る理系学生は、ガクチカになることがないと悩む人もいるでしょう。
しかし、ガクチカは研究中のエピソードや研究室の出来事でも構いません。
研究をテーマとしたガクチカは、志望職種の業務と関連づけやすい、目的と結果が明確、長期間目標に取り組んだ姿勢を伝えやすいなどのメリットがあります。
学生時代の経験を企業にどう活かせるかアピールしましょう。
将来実現したいことを成し遂げることのできる企業を選ぶ
将来実現したいことがある場合、それを成し遂げることのできる企業を選ぶと良いでしょう。
やりたいことが具体的に決まっていれば企業に対して求めることも明確になるため、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
成し遂げたいことを志望動機と連動させて企業にアピールしましょう。
成し遂げたい内容ときっかけとなった経験、ほかの企業ではなぜダメなのか、具体的に取り組みたい仕事、業界の中でもなぜこの会社なのかを明確にしたうえでわかりやすくまとめると、説得力のある志望動機を語ることができます。
企業側にとっても自社への志望度や入社後のモチベーションを知ることができるため、記憶に残りやすいでしょう。
【理系の就職】理系就活生の主な就職先
理系就活生の主な就職先について解説します。
理系就活性は、自身の理系専門分野の企業に就職する人が一番多いです。
そのほかの就職先としては、理系ではあっても専門外の分野の企業に就職するパターン、理系職種ではなく文系の職種に就職するパターンがあります。
それぞれ詳しく紹介していきます。
人によって目指すものはさまざま。
自分に一番合う就職先を選ぶようにしましょう。
理系専門分野に就職
理系学生に一番多いのが、理系専門分野に就職するケースです。
約6割の人が専門分野に就職しているそうです。
理系の就活において、専門分野の学習や研究の内容と直結していて卒業生が多く在籍しているような企業だと、採用でも有利な場合があります。
ただし採用を保証するわけではなく、あくまで個人の資質と適性が大切です。
たとえ過去の採用実績があったとしても油断することなく、しっかり志望動機や自己PRを準備して臨みましょう。
また専門分野の企業に就職したとしても、実際の仕事において専門知識が活かせる業務に就けるとは限りません。
ビジネスの環境は常に変化しています。
まったく畑違いの業務に配属される可能性があることは理解しおきましょう。
理系専門外に就職
ディスコの「キャリタス就活2021 学生モニター調査」によると、2021年卒の理系学生のうち専門分野とは関係ない理系就職を選択した人は27.6%という結果となりました。
約3割の人が理系専門外に就職しているようです。
企業にとって専門分野外の研究をしてきた学生の採用には、他分野の視点を取り入れられるというメリットがあります。
専門ではないからこその着眼点によって、新しい技術が開発される可能性があるのです。
たとえば応用物理学は物理学の専門分野に進まない限り活用できない分野のように思われますが、化粧品の新商品開発に広く活用されています。
物理学の基礎的な力を活用すれば、化粧品メーカーでの商品開発という進路選択もあるのです。
文系職種に就職
理系学生の強みは専門知識だけではありません。
論理的思考力や数理能力、データ分析力など実践的な基礎的学力も強みとなります。
強みを別の形で活用することで、職種の幅が広がるケースもあります。
理系ならではの強みは、文系職種においても大いなる強みとなるでしょう。
論理的思考力や分析力を活かし、金融業界やコンサルティング業界、マーケティング業界に就職する人もいます。
また新聞社や出版社などのマスコミ業界では、科学・工学・医薬系などの高度な専門知識を持っていれば、専門記者として活躍することができます。
ただし、どんな仕事であってもコミュニケーション能力が必要です。
仕事は一人ではできません。
コミュニケーションに苦手意識がある人は改善する努力をしておきましょう。
まとめ
多忙な理系学生の就活は、スケジュール管理が大切です。
自己分析をしっかり行い、企業が求める人材と自分がマッチングしているか把握しましょう。
自分なりの選択基準を持ち、それに合った企業を選ぶと失敗しません。
また自分の研究分野をまとめ、わかりやすく説明することも大切です。
就職先は理系専門分野に就職する人が一番多いですが、理系専門外や文系職種に就職する人も4割近くいます。
理系学生は、論理的思考力や数理能力、データ分析力などさまざまな能力があります。
企業をよく知り、自分にマッチしている就職先を選ぶようにしましょう。