
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
特別区(東京23区)のⅠ類採用試験【早期SPI枠】は、第1次試験がSPIのみという手軽さで注目されていますが、本当の勝負は第2次試験です。2次試験は「プレゼンテーションシート作成」と「口述試験(プレゼン+個別面接)」の2日構成で、ここでの評価が最終合格と合格順位を大きく左右します。
実際、令和7年度の実施状況を見ると、第1次試験の合格者979名に対して最終合格者は309名。SPIを通過した受験者の3分の1以下しか最終合格に残っていません。SPIはあくまで入場券であり、2次試験こそが本丸だと編集部は考えています。
この記事では、特別区SPI(早期SPI枠)の2次試験について、試験内容・日程・評価の仕組みから具体的な対策方法まで、特別区人事委員会の受験案内をもとに徹底解説します。
・早期SPI枠の2次試験の全体像(プレゼンシート作成+口述試験)
・プレゼンテーションシート作成の形式と評価の仕組み
・口述試験(プレゼン+個別面接)で問われること
・2次試験の通過率と、SPI受検後すぐ始めるべき対策
・特別区の早期SPI枠に申し込んだ、または申込を検討している人
・SPIの後に何が待っているのか全体像を知りたい人
・プレゼンテーションシートという聞き慣れない試験に不安がある人
目次[目次を全て表示する]
特別区SPI(早期SPI枠)の選考フロー全体像
まず、2次試験が選考全体のどこに位置するのかを確認しましょう。早期SPI枠の選考は、第1次試験(SPI)→第2次試験→最終合格→提示・区面接という流れで進みます。編集部が2026年度(令和8年度)の実施内容をもとに、フロー全体を整理しました。
選考ステップと2次試験の位置づけ
2026年度の早期SPI枠の選考フローは以下のとおりです。
| ステップ | 内容 | 2026年度の時期 |
|---|---|---|
| 第1次試験 | SPI3-U(性格検査+基礎能力検査) | 3月4日〜17日 |
| 1次合格発表 | メール・ホームページで通知 | 3月27日 |
| 2次試験(前半) | プレゼンテーションシート作成(90分) | 4月19日 |
| 2次試験(後半) | 口述試験(プレゼン+個別面接) | 5月12日〜15日の指定日 |
| 最終合格発表 | 1次・2次の結果を総合判定 | 5月29日 |
2次試験が2つのパートに分かれ、しかも実施日が約1か月離れているのが特徴的です。
この約1か月の空白期間は、裏を返せば「シート作成の手応えを踏まえて口述試験の準備を練り直せる期間」でもあります。2次試験を1日で終える多くの公務員試験と違い、前半戦の内容を後半戦に活かせる構造だと捉えると、期間の使い方が変わってきます。
具体的には、シート作成直後の1週間で「当日どう答えれば良かったか」を振り返り、残りの3週間を面接カードの深掘り対策と発声練習に充てるといった配分が考えられます。空白期間を漫然と過ごすか計画的に使うかで、口述試験の完成度は大きく変わります。
1次と2次の結果は「総合判定」される
受験案内には、最終合格者は第1次試験と第2次試験の結果を総合的に判定して決定すると明記されています。つまりSPIの得点も最後まで生きるということです。
配点は非公表のため2次試験の比重は断定できませんが、SPI通過者のうち最終合格するのは3分の1以下という数字を見る限り、2次試験での逆転も失速も十分に起こり得ると考えるべきです。
実際、1次試験の順位が低くても2次試験の出来次第で最終合格順位が大きく入れ替わる公務員試験は珍しくありません。SPIの手応えが今ひとつだった受験者ほど、2次試験にかける熱量を上げる必要があります。
民間選考との違い:面接は「一発勝負」に近い
民間企業の選考が一次面接・二次面接・最終面接と複数回の面接を重ねるのに対し、早期SPI枠の人事委員会面接は口述試験の1日だけです。複数回の面接で挽回するチャンスがある民間と違い、当日のパフォーマンスがそのまま結果に直結します。
この「一発勝負」性こそ、民間就活に慣れた学生が最も認識をあらためるべきポイントだと編集部は考えます。
2次試験の前半戦:プレゼンテーションシート作成とは
2次試験の最初の関門が、プレゼンテーションシート作成です。公務員試験の論文とも民間のグループワークとも異なる独特の形式のため、初見では戸惑う受験者が少なくありません。受験案内の記載をもとに、形式とルールを正確に押さえましょう。
資料を読み解いてA4版1枚にまとめる課題式
プレゼンテーションシート作成は、試験会場で90分間かけて行われます。提示された統計や記事などの複数の資料をもとに、設問に基づいて行政課題に関するプレゼンテーションシートをA4版1枚(形式自由)で作成する課題式の試験です。
単なる作文ではなく、資料からデータを読み取り、課題を特定し、施策を1枚に構成する力が問われます。レイアウトが自由な分、情報整理のセンスも表現に表れます。
これは実際の行政職員の仕事とよく似た作業です。統計や住民の声といった複数の情報源から課題を抽出し、上司や議会に説明できる1枚資料に落とし込む。試験形式そのものが「職務の予行演習」になっていると考えると、この試験で何が評価されるのかが見えてきます。
評価者である現職の職員は、日々こうした1枚資料の作成・説明を業務として行っています。受験者が書いたシートを見れば、実務で通用する整理力があるかどうかは一目で伝わるものです。「学生らしい発想の面白さ」よりも「実務でそのまま使える構成力」を意識して書くと、評価者の視点に近づけます。
欠席・無解答は2次試験の辞退扱いになる
受験案内では、プレゼンテーションシート作成を欠席した場合、または無解答の場合は第2次試験を辞退したものとみなすと明記されています。この場合、口述試験の受験票自体が送信されません。
つまりプレゼンシート作成日は、口述試験に進むための必須要件です。民間の面接が重なりそうな場合でも、この日だけは最優先で確保してください。
試験問題は後日公表される
プレゼンテーションシート作成の試験問題は、試験終了後にホームページ等で公表されます。過年度の問題を確認すれば、資料の分量や設問の傾向をつかむことができます。
受験を決めたら、まず前年度の公表問題を入手して「90分でA4版1枚」を実際に書いてみるのが、最も効率的なスタートです。
2次試験の後半戦:口述試験(プレゼン+個別面接)とは
プレゼンテーションシート作成の約1か月後に行われるのが口述試験です。ここでは自作のシートを使ったプレゼンテーションと、人物についての個別面接が一体で実施されます。試験の構造を理解しておくことが、そのまま対策の設計図になります。
冒頭は自作シートに基づくプレゼンテーション
口述試験は、面接の冒頭で自分が作成したプレゼンテーションシートに基づくプレゼンテーションを行うところから始まります。作成したシートの写しは試験当日に渡され、事前には受け取れません。
約1か月前に自分が書いた内容を、当日渡された写しを見ながら口頭で再構成することになります。作成直後に「何をどう書いたか」をメモに残しておくことが、シンプルですが最も効く準備です。
メモに残すべきは、設問への回答内容だけでなく、なぜその施策を選んだのか、他にどんな選択肢を検討して外したのかという思考の過程です。1か月後の口述試験では、シートに書ききれなかった検討過程を口頭で補足できるかどうかが評価の分かれ目になります。
面接カードに基づく個別面接が続く
プレゼンの後は、申込時に入力した面接カードとプレゼンテーションシートに基づく個別面接です。面接カードは申込時(2月)に提出済みのため、面接本番との間に約3か月のタイムラグがあります。
自分が何を書いたかを忘れた状態で臨むのは論外です。提出した面接カードの控えをもとに、記載内容の深掘り質問への回答を準備しておきましょう。
面接カードの提出時点ではエントリーシートほど推敲時間をかけられないという受験者もいますが、内容が粗いまま3か月後の面接に臨むと、自分の言葉に説得力を持たせられません。申込直後の記憶が新しいうちに、記載した各エピソードについて「なぜ」「具体的には」を自問自答し、深掘りメモを別途作成しておくことをおすすめします。
面接カードは申込フォーム上で入力する方式のため、送信前に必ず全文をコピーして手元に保存してください。申込完了後の修正はできず、入力内容の問い合わせにも応じてもらえない運用です。「何を書いたか思い出せない」は、この試験で最も避けたい自滅パターンです。
シートと面接は「一体的に採点」される
受験案内には、プレゼンテーションシートは口述試験と一体的に採点されると記載されています。シート単体の出来ではなく、「書いた内容を口頭で説明し、質問に答えられるか」までを含めた評価だということです。
裏を返せば、シートの完成度が多少低くても、口述でのリカバリーの余地があるとも読めます。作成日の手応えが悪くても、諦めずに口述対策を続ける価値があります。
2次試験の日程・受験票・会場のルール
2次試験は手続き面のルールも独特です。受験票の交付日や日程変更の可否を知らないと、実力以前のところでつまずきかねません。2026年度の受験案内から、日程管理に関わる要点を編集部が抽出しました。
受験票は2回に分けてメールで届く
2次試験の受験票は、プレゼンテーションシート作成用と口述試験用の2回に分けて交付されます。2026年度の場合、前者は3月27日以降、後者は4月24日以降にメールで送信されました。
プレゼンシート作成の受験票は印刷して持参する必要があります。メールが届かない場合は当日午後からホームページでダウンロードできる運用のため、通知が来ない場合も慌てず公式サイトを確認しましょう。
口述試験の日時は変更できない
口述試験は指定された期間のうち人事委員会が指定する1日に行われ、指定された日時の変更はできません。民間企業の面接と重なった場合、調整するのは民間側になります。
併願者は5月中旬の予定をあらかじめ空けておき、民間企業には「公務員試験の日程が入る可能性がある」ことを見越して面接候補日を広めに確保しておくのが現実的な対処です。
会場は原則都内・変更不可
プレゼンテーションシート作成も口述試験も、会場は原則として都内です。SPIは全国で受検できますが、2次試験は上京が必要になるため、地方在住の受験者は交通・宿泊の手配を早めに済ませておきましょう。
指定された試験会場の変更はできない点にも注意が必要です。
プレゼンテーションシート対策のポイント
ここからは対策編です。まずはプレゼンテーションシート作成について、編集部が考える準備の優先順位を解説します。形式自由・90分・A4版1枚という条件は、事前に型を用意しているかどうかで結果が大きく変わる試験です。
「型」を先に決めておく
本番で形式をゼロから考えるのは時間の浪費です。「課題の整理→原因分析→施策提案→期待効果」といった構成の型と、紙面のレイアウト(見出しの配置、図表を入れる位置)を事前に決めておきましょう。
90分の配分も設計しておくべきです。資料読み取りに25分、構成メモに15分、清書に45分、見直しに5分といった時間割を決めて練習すると、本番での破綻を防げます。
特に清書の時間は想像以上にかかります。手書きでA4版1枚を、読み手に伝わる字と図で埋めるには40分以上を見ておくべきです。「構想は良かったのに書き切れなかった」という失敗を避けるため、練習は必ず本番と同じ手書き・時間計測で行ってください。
時間配分の練習は、最低でも本番までに3回は通しで行うことをおすすめします。1回目は時間内に終わらないのが普通ですが、回を重ねるごとに資料を読むスピードと構成を決めるスピードが上がり、清書に回せる時間が増えていきます。
行政課題の引き出しを増やす
題材は行政課題です。少子高齢化、防災、DX、多文化共生など、東京23区が直面する定番テーマについて、現状データと代表的な施策例を仕入れておくと、資料の読み取りが速くなります。
特別区の各区が公表している基本計画や広報紙は、ネタの宝庫です。志望区の重点施策を2〜3個知っておくだけでも、施策提案の具体性が変わります。
日々のニュースで行政関連の話題に触れたら、「自分が区の担当者ならどう動くか」を1分考える習慣も効果的です。この思考の蓄積が、初見の資料を前にしたときの発想の速さに直結します。
書いた内容を口頭で説明する練習までセットで行う
前述のとおり、シートは口述試験で自らプレゼンする素材になります。練習の段階から「書いて終わり」ではなく、書いたシートを2〜3分で口頭説明するところまでをワンセットにしましょう。
この練習は、資料の要点を短時間で構造化して話す訓練にもなり、民間の面接やグループディスカッションにもそのまま効きます。
口述試験(面接)対策のポイント
次に口述試験の対策です。人事委員会の個別面接は、民間の面接と重なる部分も多い一方、公務員ならではの評価観点があります。民間就活の経験をどう活かし、何を上乗せすべきかという観点で編集部が整理します。
面接カードの深掘りに備える
個別面接の軸は面接カードです。志望動機・自己PR・学生時代の経験といった記載項目それぞれについて、「なぜ」「具体的には」「その結果どうなった」の3段階の深掘りに答えられるよう準備しましょう。
特に「なぜ都庁や市役所ではなく特別区か」「なぜ民間ではなく公務員か」は、併願者ほど問われやすい論点です。併願自体を隠す必要はありませんが、特別区第一志望の理由は明確に語れる状態にしておくべきです。
特別区ならではの回答材料としては、住民に最も近い基礎自治体であること、23区それぞれに個性ある行政課題があること、区をまたいだキャリアではなく1つの区に腰を据えてまちづくりに関われることなどが挙げられます。志望区の具体的な施策名を1つ添えるだけで、回答の解像度は大きく上がります。
併願先ごとに志望理由を使い分ける必要はありませんが、特別区固有の魅力(基礎自治体としての距離の近さ、区ごとの個性)を核に据え、そこに自分の経験や価値観を接続させる構成にすると、どの角度から聞かれても一貫した回答になります。
民間面接との共通点と相違点を意識する
結論から話す、具体例で裏づける、といった基本は民間面接と共通です。一方で、公務員面接では奇抜さよりも、住民対応や関係部署との調整を安心して任せられる誠実さ・安定感が重視される傾向があります。
民間向けに磨いた「強みの押し出し」をそのまま使うのではなく、協調性や公共への関心という文脈に載せ替えて話す意識を持つと、評価軸とのズレを防げます。
模擬面接とプレゼン練習は別物として行う
口述試験はプレゼンパートと質疑応答パートで求められるスキルが異なります。プレゼンは「一定時間、一人で構造的に話し切る」力、質疑は「問いに端的に答える」力です。
大学のキャリアセンターや友人との練習でも、この2つを分けてフィードバックをもらうと改善が速くなります。
プレゼン練習では「1分で要旨だけ」「3分でフル」の2パターンを用意しておくと、当日の指示時間がどちらに振れても対応できます。質疑練習では、想定質問への回答を丸暗記するのではなく、結論→理由→具体例の順で組み立てる型を体に入れることを優先してください。暗記した回答は、少し角度を変えた質問が来た瞬間に崩れます。
1次合格発表を待ってから2次対策を始めると、プレゼンシート作成日まで3週間程度しかありません。SPIの手応えにかかわらず、受検を終えたその週から前年度の公表問題でシート作成練習を始めるのが、編集部の推奨スケジュールです。
2次試験の通過率と最終合格後の流れ
最後に、2次試験がどのくらい厳しいのかを数字で確認し、合格後に何が待っているかを押さえておきます。2次試験のゴールは最終合格ですが、特別区の場合はその先に区面接というもう1つのステップがあることも知っておくべきです。
令和7年度実績:1次合格979名→最終合格309名
令和7年度の早期SPI枠(事務)の実施状況によると、申込者1,876名、1次受験者1,716名、1次合格者979名に対し、最終合格者は309名でした。全体の倍率は5.6倍です。
プレゼンテーションシート作成の受験者は729名、口述試験の受験者は646名と、1次合格者の中にも途中辞退が相当数いることが読み取れます。それでも口述試験受験者646名から309名への絞り込みですから、2次試験は約2人に1人しか通らない計算です。
辞退者の多さは、民間や他の公務員試験との併願者が多いこの試験の性格を物語っています。逆に言えば、辞退せずに2次試験まで本気で準備して臨むだけで、実質的な競争相手はかなり絞られるということです。途中離脱の多い試験ほど、完走者が有利になります。
この傾向は年度によって変動するため、最新の実施結果は特別区人事委員会が公表する「実施状況」のページで必ず確認してください。倍率の数字だけを見て一喜一憂するのではなく、辞退者を除いた実質倍率の推移を追う視点が重要です。
最終合格しても「採用内定」ではない
最終合格者は採用候補者名簿に高点順に登載され、希望区を考慮のうえ成績上位者から各区へ提示されます。提示を受けた区が改めて面接を行い、そこで初めて採用内定が出る仕組みです。
つまり人事委員会の口述試験を突破しても、区面接というもう1つの面接が残っています。2次試験で練り上げた自己分析や特別区研究は、そのまま区面接への備えとして活き続けます。
順位は2次試験の出来で動く
名簿への登載も提示も成績順で運用されるため、2次試験の出来は「受かるかどうか」だけでなく「どの順番で提示されるか」にも影響すると考えられます。ボーダーぎりぎりの合格と上位合格では、その後の展開が変わり得るということです。
2次試験は最後まで得点を積みに行く姿勢で臨みましょう。
なお最終合格者には、希望すれば第1次試験と第2次試験の総合得点および順位が通知されます(希望の有無は申込時に選択)。自分の順位を知っておけば、提示を待つ間の見通しが立てやすくなるため、成績通知は必ず希望しておくことをおすすめします。
まとめ
この記事では、特別区SPI(早期SPI枠)の2次試験について、内容と対策を編集部が解説しました。
2次試験は、90分でA4版1枚を作成するプレゼンテーションシート作成と、そのシートと面接カードに基づく口述試験(プレゼン+個別面接)の2日構成です。シート作成を欠席すると口述試験に進めず、口述試験の日時は変更できません。
令和7年度は1次合格979名に対し最終合格309名と、SPI通過後も厳しい絞り込みがあります。1次・2次の総合判定である以上、SPIで稼ぎ、2次で守り切るのが合格の王道です。
対策の要点は、プレゼンシートの「型」と時間配分を事前に固めること、面接カードの深掘りに備えること、そしてSPI受検直後から2次対策に着手することの3つです。試験の形式や日程は年度により変更される可能性があるため、必ず受験年度の受験案内を特別区人事委員会ホームページで確認してください。