
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
東京消防庁の消防官Ⅰ類には、SPI3-Uで受験できる「適性検査方式」と従来型の「教養試験方式」があります。受験を検討する人がまず気になるのが、それぞれの倍率でしょう。
編集部が公表されている試験結果を分析すると、令和7年度のⅠ類1回目では、適性検査方式の1次倍率は約2.1倍、教養試験方式は約2.4倍でした。全体の最終倍率も近年は低下傾向にあるとされ、「消防官=超高倍率」というイメージは、データで見ると更新が必要です。
ただし倍率は年度・区分・回次で大きく変わり、数字の読み方を誤ると戦略も誤ります。1次倍率と最終倍率の違い、辞退者の存在、採用予定数の増減など、倍率を読むための前提知識が欠かせません。
この記事では、東京消防庁SPI方式の倍率の実態を公表データから整理し、教養方式との比較、倍率変動の背景、そして倍率に振り回されない対策戦略までを編集部が分析します。
・東京消防庁Ⅰ類(適性検査方式)の直近倍率と受験者数
・教養試験方式との倍率比較
・倍率が低下傾向にある背景
・倍率データを対策戦略に落とし込む考え方
・東京消防庁の受かりやすさをデータで把握したい人
・適性検査方式と教養方式のどちらで受けるか迷っている人
・倍率を見て受験をためらっている民間併願層
目次[目次を全て表示する]
結論:適性検査方式の1次倍率は2倍前後の水準
まず、直近の公表データから結論を示します。東京消防庁は試験ごとの受験者数・合格者数を公表しており、そこから倍率を計算できます。編集部が確認した令和7年度Ⅰ類1回目の実績をもとに、SPI方式(適性検査方式)の現在地を押さえましょう。
令和7年度実績:受験597人・1次合格284人
公表された結果によると、令和7年度Ⅰ類1回目の適性検査方式は、受験者597人に対して1次合格者284人でした。1次倍率は約2.1倍、受験者のほぼ2人に1人が1次を通過した計算です。
同じ回の教養試験方式は受験者2,309人・1次合格978人で約2.4倍。受験者数の規模は教養方式が約4倍大きいものの、1次通過率の面では両方式に大差がありませんでした。
なお、これは1次試験の倍率です。最終合格までは2次試験があるため、トータルの倍率はもう一段高くなります。
Ⅰ類全体の最終倍率は4倍前後まで低下したとされる
Ⅰ類1回目全体(両方式合計)で見ると、令和7年度は1次受験者2,906人に対し最終合格者716人で、受験者ベースの最終倍率は約4.1倍でした。前年の約5.2倍から1ポイント以上下がったとされます。
背景には、受験者数がほぼ横ばいの中で最終合格者数が大幅に増えた(前年比147人増とされる)ことがあります。
4倍前後という水準は、難関と言われる公務員試験の中では挑戦しやすい部類です。ただしこの数字は年度でぶれるため、絶対視は禁物です。
数字の出典と確認方法
この記事で扱う受験者数・合格者数は、東京消防庁の公表資料や受験情報サイトの集計をもとにした数値です。年度・回次によって定義(申込者ベースか受験者ベースか)が異なる場合があり、細部の数値には幅があり得ます。
正確な実施状況は、東京消防庁の公式サイトで公開される採用選考・試験結果のページで確認できます。
受験判断に関わる数字は、必ず一次情報(公式の実施結果)に当たる癖をつけておきましょう。就活・公務員試験全般に通用する情報リテラシーです。
年度推移で見る倍率の動き
単年の倍率だけでは、上がり基調か下がり基調かが読めません。編集部が公表情報・受験情報サイトの集計から整理した近年の傾向を、推移として確認します。数値は概数であり、正確な値は公式発表を参照してください。
受験者数は横ばい、合格者数は増加基調
近年のⅠ類1回目は、受験者数が3,000人弱の規模で比較的安定する一方、最終合格者数が増加する傾向が見られます。令和6年度から令和7年度にかけては、受験者が微減する中で最終合格者が569人前後から716人へ大きく増えたとされます。
合格者の増加は採用予定者数の拡大を反映していると考えられ、結果として倍率は低下方向に動きました。
受験者側から見れば、近年は相対的に「入りやすい局面」にあったと言えます。
参考推移表:Ⅰ類1回目の実績イメージ
編集部が公表情報をもとに整理した、Ⅰ類1回目の近年の実績イメージは以下のとおりです。概数を含むため、傾向をつかむ用途で見てください。
| 年度 | 1次受験者数 | 最終合格者数 | 受験者ベース倍率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 約2,970人 | 約570人 | 約5.2倍 |
| 令和7年度 | 約2,910人(教養2,309・適性597) | 約720人 | 約4.1倍 |
| 令和8年度 | 教養方式は約2,380人・1次通過934人(速報値とされる) | 公式発表を確認 | — |
令和8年度は試験日程の前倒しなど制度変更があった年で、最終結果は公式発表で確認してください。表の数字は受験判断の参考値であり、正式値は必ず公式の実施結果で確認を。
回次・区分による倍率の違いにも注意
東京消防庁の試験は、Ⅰ類1回目のほかにⅠ類2回目(教養試験方式)、Ⅲ類(高卒程度)などの回次・区分があり、それぞれ倍率水準が異なるとされます。一般に、募集規模の小さい回や区分は倍率が高く出やすい傾向があります。
適性検査方式は令和8年度時点でⅠ類の1回目に設定されており、SPIで受けたい人はこの回が主戦場になります。
併願や再挑戦を考える際は、「同じ東京消防庁でも回次によって競争環境が違う」ことを前提に計画を立てましょう。
教養方式と適性検査方式、どちらが通りやすいか
受験者が最も知りたいのは「結局どちらの方式が有利か」でしょう。編集部の答えは「倍率差はわずかで、決め手は自分の得意分野」です。ここでは両方式の倍率と受験者層の違いを比較し、方式選びの判断軸を示します。
倍率の差は小さく、決定打にはならない
令和7年度実績では、1次倍率は適性検査方式約2.1倍・教養方式約2.4倍と、差は0.3ポイント程度でした。この程度の差は年度変動で簡単に逆転し得るため、「倍率が低い方式を選ぶ」という戦略はほぼ機能しません。
むしろ重要なのは、どちらの筆記なら自分が受験者の上位に入れるかです。倍率2倍の試験とは、平均より上にいればおおむね通過できる試験ということです。
方式選びは倍率比較ではなく、自分の学習資産(SPI対策か教養対策か)との相性で決めましょう。
受験者層の違い:SPI方式は民間併願層が中心
適性検査方式の受験者は、制度の性質上、民間就活と併願する層や教養試験対策をしていない層が中心と考えられます。一方、教養方式には公務員専願で対策を積んだ層が集まりやすいとされます。
つまり適性検査方式では、SPIという民間就活の土俵で消防官の座を争うことになります。民間選考でテストセンター経験を積んでいる人には、場慣れの面で追い風です。
逆に言えば、SPI対策を何もせずに「教養より楽そうだから」と選ぶと、準備してきた併願層に順位で負けます。方式を問わず、対策した者が勝つ構図は同じです。
迷ったら「初見正答率」で数値比較する
どちらの方式にするか迷う場合、編集部推奨の決め方は模擬的な数値比較です。SPIの模擬問題と教養試験の過去問型問題集をそれぞれ時間を計って解き、初見の正答率を比べます。
正答率に明確な差があれば、高いほうの方式が現時点での適性です。差がなければ、今後の学習時間を確保しやすいほう(民間併願ならSPI)を選びます。
感覚ではなく数字で決めることで、「選ばなかった方式への未練」を断ち切り、対策に集中できます。
倍率を読み解く際の3つの注意点
倍率は便利な指標ですが、定義を理解せずに使うと判断を誤ります。編集部が受験相談でよく見かける誤読パターンを踏まえ、倍率データを扱ううえでの注意点を3つに整理しました。
「申込倍率」と「受験倍率」は別物
倍率には、申込者数を分子にした申込倍率と、実際の受験者数を分子にした受験倍率があります。公務員試験は申込後に受験しない人が一定数いるため、申込倍率は受験倍率より高く出ます。
ネット上の「倍率〇倍」という情報は、どちらのベースか確認しないと比較になりません。この記事では原則、受験者ベースで整理しています。
実際の競争相手は「会場に来て受験した人」だけです。申込倍率の高さに必要以上に怯む必要はありません。
1次倍率と最終倍率を混同しない
1次試験の倍率(約2.1倍)と、最終合格までの倍率(4倍前後)は別の指標です。1次を通っても、2次の身体・体力検査と面接で絞り込みがあります。
SPI対策だけで語れるのは1次倍率までです。最終合格を見据えるなら、2次の通過力(体力・面接)まで含めた準備が必要になります。
「SPIの倍率は2倍だから楽勝」と「最終4倍だから難関」は、同じデータの切り取り方の違いにすぎません。両方を正しく持っておきましょう。
合格者数=採用者数ではない
最終合格者が全員採用されるとは限らず、辞退者を見込んで合格者数が設定されるのが一般的とされます。東京消防庁のような人気併願先では、他の自治体や民間企業へ流れる辞退者が一定数想定されます。
受験者にとっての実質的な意味は、「合格者数は採用予定数より多めに出ることがあり、見かけの倍率が下がる場合がある」ということです。
採用予定者数(令和8年度の適性検査方式は100名と公表)と最終合格者数の両方を見る癖をつけると、数字の解像度が上がります。
倍率が低下傾向にある背景
近年の倍率低下は偶然ではなく、構造的な背景があると編集部は見ています。背景を理解しておくと、今後の倍率がどちらに動きそうか、自分はいつ受けるべきかの判断材料になります。主な要因を3つ挙げます。
採用予定数の拡大
最大の直接要因は、合格者数・採用予定数の拡大です。令和7年度は受験者数がほぼ横ばいのまま最終合格者が大幅に増え、倍率を押し下げました。
大量退職期の補充や体制強化など、消防組織側の人員需要が背景にあると考えられます。
採用拡大局面は受験者にとっての好機ですが、いつまで続くかは公表されていません。「受けようと思った年が最も条件の良い年とは限らない」前提で、早めの挑戦を編集部はすすめます。
公務員試験全体の受験者減少トレンド
公務員試験は全国的に受験者数の減少傾向が指摘されており、民間の採用好調時には特にその傾向が強まるとされます。東京消防庁の受験者数が横ばい圏で推移していること自体、全国的な減少局面では健闘している部類です。
受験者の奪い合いになる中で、各自治体は試験の受けやすさ改革を進めています。SPI方式の導入はまさにその一環です。
受験者側から見れば、競争相手の総量が構造的に増えにくい環境が続いていると言えます。
受験しやすさ改革による母集団の変化
適性検査方式の導入、日程の前倒し、合格発表の早期化といった改革は、これまで消防官試験を受けなかった層を呼び込む施策です。令和8年度も日程約1か月前倒しなどの変更が行われました。
この改革は中期的には受験者数を増やし、倍率を押し上げる方向に働く可能性があります。特にSPI方式は民間併願層が気軽に出願できるため、認知が広がるほど適性検査方式の倍率は上がりやすいと編集部は見ています。
「SPIで受けられるうちに、競争が緩いうちに受ける」。これが倍率分析から導かれる実践的な示唆です。
倍率に振り回されない対策戦略
ここまでの分析を、実際の受験戦略に落とし込みます。倍率は環境要因であり、自分でコントロールできるのは準備の質だけです。編集部が推奨する、倍率データの正しい使い方を3つ示します。
倍率2倍=「平均より上」を明確な目標にする
1次倍率2倍前後という数字は、「受験者の上位半分に入れば通過圏」という具体的な目標に翻訳できます。SPIの一般的な目安と重ねると、正答率7割を安定して出せれば上位半分は現実的なラインです。
漠然と「高倍率だから猛勉強」ではなく、模擬演習の正答率が7割を超えているかという測定可能な指標で進捗を管理しましょう。
目標が数値化されると、対策の終わりが見え、他の科目(論文・体力)への配分も計画できます。
2次試験の準備で「最終倍率」を攻略する
1次と最終の倍率差は、2次試験(身体・体力検査、個人面接)での絞り込みを意味します。ここで差がつく体力と面接は、短期間で仕上がらない一方、準備した分だけ確実に差をつけられる領域です。
SPI対策と同時に週2〜3回の運動習慣を始め、面接で語る志望動機の言語化を進めておく。この並走が、最終倍率ベースでの合格確率を最も効率よく引き上げます。
1次対策100%で2次ノープランの受験者は毎年一定数おり、そこが逆転の余地になります。
複数の受験機会を設計する
倍率変動のリスクヘッジとして、受験機会の複線化も有効です。東京消防庁内ではⅠ類2回目(教養方式)やⅢ類など別回次があり、庁外にはSPI方式を導入する他の消防本部・自治体、そして民間企業があります。
SPI対策は使い回しの効く投資なので、SPI方式の併願先を増やすほど1回あたりの負担は下がります。
「東京消防庁一本、一発勝負」よりも、複数機会の中の本命と位置づけるほうが、心理的にも実力を発揮しやすくなります。
倍率データの役割は、必要な準備水準を見積もることにあります。4倍と聞いて怯む必要も、2倍と聞いて油断する必要もありません。「上位何%に入るか→そのための正答率は→今の自分は何%か」という測定のサイクルに落とし込めば、倍率はただの設計材料になります。
東京消防庁の倍率に関するよくある質問
最後に、倍率について編集部へ寄せられることの多い質問をまとめます。データの解釈に関わる疑問を中心に、簡潔に回答します。
女性の倍率は別に出ていますか?
試験結果の公表形式は年度により異なり、性別ごとの詳細な内訳が常に公開されているとは限りません。東京消防庁は女性消防吏員の採用に力を入れているとされ、採用サイトでも女性向けの情報発信が行われています。
正確な実施状況は公式の試験結果ページで、最新の公表区分を確認してください。
倍率が低い年を狙って受験時期を調整すべきですか?
翌年度の倍率は事前にわかりません。編集部としては、倍率の当て推量で受験を先送りするより、受験資格があるうちに準備を整えて早く受けることをすすめます。
採用拡大局面がいつまで続くかは不明であり、先送りは「今の好条件を捨てるリスク」と裏表です。
適性検査方式の受験者は今後増えますか?
断定はできませんが、SPI方式の認知拡大と民間併願の一般化を考えると、編集部は増加方向を予想しています。受験者が増えれば倍率は上がり、必要な正答率の水準も上がります。
制度が新しく競争がまだ落ち着いている時期は、準備した受験者にとって有利な窓と言えます。
民間就活の倍率と比べると高いですか?
民間人気企業の選考倍率は数十倍〜百倍超と言われることもあり、それと比べれば最終4倍前後という水準はむしろ挑戦しやすい部類です。ただし民間はエントリー母数が膨らみやすい構造のため、単純比較には意味が薄いのも事実です。
実務的には「上位半分で1次通過、そこから2次で半分」という段階ごとの通過イメージで捉えるほうが、対策計画に直結します。
倍率が低い=簡単、と考えていいですか?
いけません。倍率は競争の量を示す指標で、競争の質(受験者の準備度)を反映しません。適性検査方式は民間併願でSPI対策を積んだ層が集まりやすく、倍率2倍でも「対策済みの集団の上位半分」に入る必要があります。
倍率は目標順位の設定に使い、難易度の判断は模擬演習での自分の正答率で行う。この使い分けが数字に振り回されないコツです。
Ⅲ類や2回目の倍率で受け直すのはアリですか?
Ⅰ類1回目で届かなかった場合、教養試験方式の2回目やⅢ類(高卒程度・年齢等の要件あり)など、年度内の別機会が選択肢になり得ます。ただし回次・区分ごとに募集規模と受験者層が異なり、倍率水準も変わるとされます。
受験資格・試験内容・日程を受験案内で確認したうえで、SPI対策の資産が活きる併願先(SPI方式の他自治体など)とあわせて比較検討してください。
まとめ
この記事では、東京消防庁SPI方式の倍率について、公表データをもとに編集部が分析しました。
令和7年度実績では、適性検査方式の1次倍率は約2.1倍、教養方式は約2.4倍と方式間の差は小さく、Ⅰ類全体の最終倍率は4倍前後まで低下したとされます。背景には採用予定数の拡大と受験しやすさ改革があり、近年は挑戦しやすい局面が続いてきました。
ただし倍率は年度で変動し、数字の定義(申込か受験か、1次か最終か)によっても見え方が変わります。正式な数値は必ず東京消防庁の公式発表で確認してください。
倍率2倍は「上位半分に入る」という明確な目標に翻訳できます。SPI正答率7割の安定、2次に向けた体力・面接準備、受験機会の複線化。この3点を実行すれば、倍率はもう怖れる数字ではありません。
データを味方に付けた受験者から順に、合格に近づきます。まずは公式の実施結果を自分の目で確認するところから、データドリブンな試験対策を始めてみてください。