
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
東京都庁のⅠ類B採用試験には、第1次試験がSPI3(テストセンター方式)だけで受けられる「新方式」があります。筆記負担の軽さから人気が高まっていますが、受験を決める前に確認しておきたいのが倍率、つまり競争の実態です。
編集部が東京都の公表データを確認したところ、令和8年度(2026年度)のⅠ類B新方式の倍率は5.4倍、うち行政区分は6.1倍でした。前年度はそれぞれ4.2倍・4.5倍だったので、わずか1年で競争は明確に激化しています。
一方、従来型の筆記試験で受ける一般方式の倍率は2.1倍。「SPIで手軽に受けられるルートのほうが倍率が高い」という逆転現象が起きているのが、都庁受験の現在地です。
この記事では、公表されている実施結果をもとに、新方式の倍率の推移、上昇の背景、一般方式との比較、そして倍率6倍時代を突破するための戦略までを編集部が分析します。
・都庁Ⅰ類B新方式の最新倍率(令和8年度実施結果)
・前年度からの倍率推移と受験者数の変化
・一般方式との倍率差が生まれる構造的な理由
・倍率データを対策にどう落とし込むか
・都庁SPI方式(新方式)の受験を検討していて難易度を知りたい人
・一般方式と新方式のどちらで受けるか倍率で比較したい人
・民間就活と併願する価値があるかデータで判断したい人
目次[目次を全て表示する]
最新データ:令和8年度の新方式は倍率5.4倍・行政6.1倍
まず最新の数字から確認します。東京都が公表した令和8年度Ⅰ類B採用試験の実施状況によると、SPIで受ける新方式の倍率は全体5.4倍、最大区分である行政は6.1倍でした。数字の中身をこのセクションで分解します。
申込者・受験者・倍率の実数
令和8年度のⅠ類B新方式は、申込者2,319人、第1次試験受験者1,958人で、最終倍率は5.4倍でした。倍率5.4倍ということは、最終合格者はおおむね360人規模(1,958÷5.4)と逆算できます。
採用予定は行政190人をはじめICT・土木・建築・機械・電気の6区分で、2,000人近い受験者が360人前後の枠を争った計算になります。
この約360人という規模は編集部の逆算による概算ですが、公表された倍率と受験者数から導かれる数字であり、競争の全体像をつかむには十分です。区分ごとの正確な合格者数は東京都の実施結果の公表で確認できます。
行政区分は6.1倍と頭一つ抜けて高い
区分別に見ると、事務系にあたる行政(新方式)の倍率は6.1倍で、全体平均の5.4倍を上回ります。文系学生の受け皿となる区分に志望者が集中する構図は、民間就活の人気企業と同じです。
一方、技術系区分は相対的に倍率が落ち着く傾向がある一方で採用枠自体が小さく、単純に「狙い目」と言い切れない面もあります。区分ごとの実施結果は東京都の発表資料で確認できます。
行政区分は採用予定190人と枠自体は大きいものの、それを上回る勢いで受験者が集中しています。事務系で受けるなら「最も人が集まる区分で戦う」自覚を持って準備しましょう。
数字を読むときの注意点
ここでの倍率は「第1次試験受験者数÷最終合格者数」ベースの競争率です。申込者ベースで計算すればさらに高く見えますし、辞退者を考慮すれば実質は多少緩みます。
大事なのは絶対値そのものより推移と構造です。次のセクションで、前年度からの変化を見ていきます。
また、倍率は「試験の難しさ」そのものではなく「競争相手の数」を示す指標です。SPIの問題自体が難化するわけではないので、恐れるべきは問題ではなく、同じ問題を解く他の受験者の仕上がりだと整理しておきましょう。
倍率の推移:1年で何が変わったか
単年の数字だけでは競争環境は判断できません。ここでは令和7年度と令和8年度の実施状況を並べ、新方式と一般方式の変化を比較します。編集部が公表データを表に整理しました。この推移こそが、都庁SPI方式の現在を最もよく表しています。
令和7年度→令和8年度の比較表
公表されている実施状況をまとめると以下のとおりです。
| 区分 | 令和7年度 | 令和8年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 新方式:申込者数 | 2,296人 | 2,319人 | ほぼ横ばい |
| 新方式:1次受験者数 | 1,847人 | 1,958人 | 111人増 |
| 新方式:倍率(全体) | 4.2倍 | 5.4倍 | +1.2ポイント |
| 新方式:倍率(行政) | 4.5倍 | 6.1倍 | +1.6ポイント |
| 一般方式:倍率 | 2.0倍 | 2.1倍 | +0.1ポイント |
新方式だけが大きく倍率を上げ、一般方式はほぼ横ばい。この非対称な動きがポイントです。
2年分の実績を並べるだけでも、「新方式に人が流れ込み、一般方式は安定している」という構図がはっきり読み取れます。この構図を前提に、自分がどちらの流れの中で戦うのかを考えることが受験戦略の出発点です。
受験者増と倍率上昇はセットで起きている
新方式の1次受験者は1年で111人増えました。申込者に対する受験率(実際に受けに来る割合)も高く、「とりあえず申し込む」層ではなく本気の受験者が増えていることがうかがえます。
倍率上昇の一部は採用枠と合格者数の変動にもよるため、単純に「人気が2割増した」とは言えませんが、競争が厳しくなった方向性は明確です。
また申込者数がほぼ横ばいの中で受験者数が増えたことは、申込から受検までの歩留まりが上がったことを意味します。「記念受験」的な層が減り、実際に会場へ足を運ぶ本気層の割合が高まっていると読めます。
来年度以降の見通し
SPIで受けられる手軽さと民間就活との親和性を踏まえると、新方式の人気が急にしぼむ材料は見当たらない、というのが編集部の見立てです。倍率は高止まりまたは上昇を前提に準備するのが安全でしょう。
なお採用予定者数や実施区分は年度ごとに変わります。最新の試験案内と実施状況は必ず東京都職員採用の公式サイトで確認してください。
なぜ新方式の倍率は上がっているのか:編集部の3つの分析
倍率上昇の背景には、都庁固有の事情と就活市場全体のトレンドが重なっています。編集部は主な要因を3つに整理しました。背景を理解しておくと、競争相手がどんな層なのかが見え、対策の焦点も定まります。
要因1:筆記のハードルが劇的に下がった
新方式は教養試験・専門試験・論文が免除され、筆記はSPIのみです。従来なら「公務員試験の勉強をしていないから都庁は無理」と諦めていた層が、そのまま出願できるようになりました。
出願の心理的・時間的コストが下がれば受験者は増える。倍率上昇は制度設計の狙いどおりに母集団が広がった結果ともいえます。
受験者側から見れば、この参入しやすさは今後も変わりません。「様子見してから来年受ける」という判断は、より厳しい競争に自ら飛び込む選択になり得ることを覚えておきましょう。
要因2:民間併願層の流入
SPIは民間就活の標準テストです。民間対策がそのまま流用できるため、「本命は民間だが都庁も受けておく」という併願組が参入しやすくなりました。テストセンター方式で全国から受検日を選べる利便性も、併願のハードルを下げています。
つまり競争相手には、就活慣れしてSPI対策も仕上がった民間併願層が相当数含まれます。母集団のレベルは決して低くないと想定すべきです。
テストセンター方式で全国から受検できることも、地方在住の学生や既卒層の参入を後押ししています。競争相手は首都圏の学生だけではない、という前提で目標水準を設定してください。
要因3:早く結果が出るスケジュール
令和8年度の新方式は3月にSPI受検、5月29日に最終合格発表というスピード感でした。一般方式の最終発表(7月10日)より1カ月以上早く、民間の選考スケジュールとも重ねやすい日程です。
「早く進路を確定させたい」という近年の学生の志向と噛み合っていることも、新方式に人が集まる一因だと編集部は分析しています。
民間の内定出しの早期化と歩調が合っているため、「民間の結果を見てから公務員」ではなく「両方を同時に走らせる」設計が可能になった点は、併願層にとって大きな環境変化といえます。
一般方式2.1倍との差をどう読むか
新方式5.4倍に対して一般方式は2.1倍。数字だけ見れば一般方式のほうが圧倒的に受かりやすく見えます。しかしこの比較には落とし穴があります。倍率の「質」の違いを理解して、方式選択を間違えないようにしましょう。
一般方式の低倍率は「参入障壁の高さ」の裏返し
一般方式は教養・論文・専門記述という重い筆記を課すため、そもそも長期間の受験勉強を積んだ人しか出願しません。母集団が少数精鋭に絞られた結果としての2.1倍です。
つまり「倍率が低い=簡単」ではなく「戦える人しか土俵に上がっていない」ということです。準備なしで飛び込めば、2.1倍でも歯が立ちません。
実際、一般方式の申込者は2,376人から2,381人とほぼ横ばいで推移しており、筆記対策を積んだ固定的な受験層で構成されていることがうかがえます。
新方式の高倍率は「入口の広さ」の結果
逆に新方式の5.4倍は、入口が広いぶん準備度に幅のある受験者が混ざった数字です。SPIを本気で仕上げ、2次対策まで設計してきた受験者にとって、実質的な競争相手は数字より少ないと見ることもできます。
倍率の絶対値に怯むより、「母集団の中で上位に入る準備をしたか」が本質です。
方式選択は倍率でなく「自分の強み」で決める
編集部の推奨は、倍率比較ではなく自分の状況で方式を選ぶことです。専門科目を仕上げる時間と意欲があるなら一般方式、民間就活で培ったSPI力と対人スキルで勝負するなら新方式が合理的です。
なお同一年度のⅠ類Bでは一般方式と新方式のどちらか一方しか申し込めないとされています。この意味でも、倍率の数字だけでなく自分の勝ち筋から逆算した選択が重要です。
倍率は毎年動きますが、自分の強みは急には変わりません。変動する数字ではなく、変わらない自分の武器を基準に方式を選ぶほうが、結果的に後悔の少ない選択になります。
倍率6倍の中身:選考段階ごとに分解する
倍率6.1倍と聞くと「6人に1人しか受からない狭き門」と身構えますが、選考は段階ごとに行われます。1次のSPIと2次の人物評価に分解して考えると、どこで何倍分の競争が起きるのかが見え、対策の力点が定まります。
1次(SPI)でどれだけ絞られるか
各段階の合格者数の内訳は年度の実施結果で公表されますが、構造として1次のSPIは「2次に進む人数まで絞り込む」役割を担います。仮に最終合格の2〜3倍程度まで1次で絞るとすれば、1次通過は受験者の上位3〜5割前後というイメージになります(編集部の概算です)。
SPIの評価は受検者全体の中の相対的な位置づけで決まる仕組みとされるため、受験者のレベルが上がれば同じ実力でも通過は難しくなります。一般的な目安の6〜7割ではなく、7割以上の正答率を安定して出せる水準を目標にしましょう。
2次(プレゼン・面接・グループワーク)が最終倍率を決める
1次を通過した後は、プレゼンテーション・個別面接・グループワークによる2次試験です。ここでの評価が最終合格を決めるため、実質的な勝負どころは2次にあります。
2次はプレゼンテーションシートの事前準備から始まっているとされます。1次の合格発表(令和8年度は4月14日)から2次試験(5月8日〜)までの期間は限られるため、発表を待たずに準備を進めるのが賢明です。
1次通過者は全員SPIをクリアした集団なので、2次ではSPIの貯金は関係ありません。都政への関心の深さと伝える力で、もう一段の競争を勝ち抜く必要があります。
倍率から導く時間配分
この構造を踏まえると、対策時間の配分は「SPI:2次=短期集中:継続投資」が正解です。SPIは1〜1.5カ月で仕上げ、都政研究とプレゼン・面接準備は日常的に積み上げる。倍率6倍を「1次で負けない+2次で選ばれる」の2段階に分解して攻略しましょう。
ネット上には数年前の倍率情報が更新されないまま残っており、「都庁新方式は3倍程度」といった古い相場観で語られていることがあります。この記事で示したとおり、倍率は1年で1ポイント以上動きます。受験判断に使う数字は、必ず東京都が公表する最新の実施状況で確認してください。
秋の第2回と他ルートの倍率感
都庁のSPI方式には春の試験だけでなく、秋に実施される「新方式・第2回」が設けられた年度があります。また民間併願層にとっては、民間人気企業との比較も判断材料になります。倍率を立体的に捉えるための補助線をここで引いておきます。
新方式・第2回という追加チャンス
令和7年度の実績では、秋の第2回は8月申込・9月SPI受検・11月末最終合格という日程で、行政・土木・建築・機械・電気の5区分で実施されました。春より受験可能年齢が1歳下からに設定され、大学3年生の年齢でも挑戦できる設計です。
第2回の倍率は実施年度の結果公表で確認が必要ですが、春に加えて年2回のチャンスがあり得ること自体が、受験計画上の大きな価値です。実施の有無は例年夏頃の発表で確認してください。
令和7年度の第2回では行政の採用予定が111人と、春に匹敵する規模で募集されました。秋実施が「おまけ」ではなく本格的な採用ルートである点も、計画に組み込む価値を高めています。
民間人気企業と比べるとどうか
民間就活では、人気企業の倍率が数十倍〜100倍超に達することも珍しくありません。それと比べれば、都庁新方式の5.4倍は「準備が正当に報われる範囲の競争」だと編集部は評価します。
民間の高倍率企業は書類選考の通過だけでも運の要素が絡みますが、都庁新方式はSPIと人物評価という明確な評価軸で競争が進みます。対策の再現性が高い試験だからこそ、準備量の差が素直に結果へ反映されます。
しかもSPI対策は民間と完全に共通投資です。併願ポートフォリオの中に都庁新方式を組み込むコストは小さく、リターンの期待値は高いといえます。
他の公務員試験との併願も視野に
公務員側の併願先としては、特別区や国家一般職、SPI方式を導入する他の自治体などがあります。試験日程や科目が異なるため、併願の組み合わせ次第でチャンスの総量を増やせます。
それぞれの倍率・日程は毎年変動するため、併願計画を立てる際は各実施機関の最新発表をあわせて確認しましょう。
倍率6倍時代を突破する対策戦略
最後に、ここまでの倍率分析を「では何をするか」に落とし込みます。競争が激化しているからこそ、やるべきことをシンプルに絞るのが効果的です。編集部が推奨する3つの戦略を紹介します。
戦略1:SPIは「平均より上」でなく「上位」を狙う
倍率4倍台の時代なら平均より少し上で通った可能性がある1次も、6倍時代には上位での通過を狙うべきです。対策本1冊の3周を軸に、模擬形式の演習で正答率7割以上を安定させましょう。
民間のインターン選考などでテストセンターを経験しておくと、本番の緊張への耐性という見えない得点も積めます。
仕上がりの判定は感覚ではなく数値で行いましょう。模擬形式の通し演習で正答率と時間内到達率を記録し、2回連続で目標を超えたら仕上がりと判断する、といった基準を決めておくと迷いません。
戦略2:2次対策を「1次合格後」に始めない
1次合格発表から2次試験までの期間は限られます。合格発表を見てからプレゼン準備を始めるのでは、都政研究の深さで差がつきません。
出願を決めた時点で都の政策資料に触れ始めるのが、倍率6倍の2次を勝ち抜く受験者の共通行動だと編集部は見ています。
具体的には、興味のある政策分野を2〜3個決めて、関連する都の発表や計画を継続的に追いかけましょう。「なぜ都庁で、何をやりたいか」を自分の言葉で語れる状態が2次のスタートラインです。
戦略3:年2回のチャンスを設計に組み込む
春の試験と秋の第2回(実施される場合)を両にらみにすれば、1回の結果に賭ける必要がなくなります。大学3年で秋に腕試しし、4年の春に本命受験という2段構えも可能です。
複数回のチャンスを前提にすると、1回ごとの心理的プレッシャーも下がり、実力を出しやすくなります。募集の発表時期を逃さないよう、公式サイトの定期チェックを習慣にしてください。
まとめ
この記事では、東京都庁のSPI方式(Ⅰ類B新方式)の倍率を、公表データに基づいて編集部が分析しました。
要点を振り返ります。令和8年度の新方式の倍率は全体5.4倍・行政6.1倍で、前年度(4.2倍・4.5倍)から大きく上昇しました。筆記がSPIだけという入口の広さが受験者を集め、競争は年々厳しくなっています。一方、一般方式は2.1倍ですが、これは重い筆記を仕上げた少数精鋭の中での数字であり、単純比較で「簡単」とはいえません。
倍率6倍の中身は「SPIでの絞り込み」と「2次の人物評価」の2段階です。SPIを短期集中で上位水準に仕上げ、都政研究と2次対策を早くから積み上げる。この2段構えが、高倍率時代の都庁攻略の王道です。
倍率や採用予定者数は毎年変動します。受験判断の際は、必ず東京都職員採用の公式サイトで最新の試験案内と実施状況を確認してください。