はじめに
就活に欠かせない「自己PR」と「ガクチカ」。
どちらも同じ意味で使われているのでは、と思う人も多いのではないでしょうか。
自己PRもガクチカも、企業の採用担当者や面接官に、自分の人となりを伝える手段ですが、厳密に言うと両者の質問意図は異なります。
また、自己PRやガクチカなどを書く際に一貫性を重要視する企業も増えてきていますが、実際のところはどうなのでしょうか?
ここでは、自己PRとガクチカに一貫性は必要なのか、そもそも自己PRとガクチカの違いは何なのかについて説明するとともに、評価されやすい自己PRとガクチカの共通点や書き方も、あわせてご紹介します。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】ガクチカと自己PRに一貫性は必要なのか
そもそも、ガクチカと自己PRに一貫性は必要なのでしょうか?
就活では、限られた選考フローの中で自分の強みやスキル、採用するメリットなどを最大限アピールすることが最も重要であると言われているため、自分が持ちうるアピールポイントをできるだけ多くアピールしようと思ってる学生も多いのではないでしょうか?
しかし、ただ闇雲にアピールポイントだけを主張しても、そこに根拠がなければ面接官の心を動かすことはできません。
一貫性は必須ではない
結論からいうと、一貫性は必須ではありません。
一貫性を意識しすぎることによって、内容が重複しやすくなり、学生のあらゆる側面を見たいと思っている採用側からすると同じような主張の繰り返しに感じてしまい、あまり魅力を感じないでしょう。
しかし、自分がアピールしたいと思っている強みや経験は、ある程度の類似性を持つという意味では一貫性はとても重要です。
一貫性があると説得力が増す
主張内容に一貫性を持たせることによって、発言に説得力が生まれます。
面接官は、最終的にあなたの発言が線で繋ぐことができるかどうかを見ています。
どんなにすごい実績や過去経験を話しても、その内容があなたの他のアピールポイントと逸脱していると、「エピソードを盛っているのではないか」と面接官は感じ始め、そこをさらに深掘りしてくるでしょう。
逆に、発言に一貫性があると、「この学生の発言には信憑性がある」と感じてくれるので、面接官は好印象を抱くはずです。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】自己PRとガクチカは違う!?
自己PRとガクチカは、厳密に言うと異なります。
どちらも就活ではよく耳にする言葉ですが、項目が分かれていることからもわかるように、まったく同じというわけではありません。
企業の採用担当者や面接官に、良い印象を与えるためには、自己PRとガクチカの違いについて理解することから始めましょう。
違いを理解することで、それぞれの役割を知り、適切に表現できるようになります。
違いを理解するには、企業がなぜ自己PRとガクチカの項目を設定するのかに、焦点を当ててみることがポイントです。
自己PRとは?
自己PRとは、自分の強みや長所を企業にアピールすることです。
企業は書類選考や面接を通して、将来企業の発展に貢献してくれる人材を見つけたいと考えています。
そして、「市場開拓を積極的に展開に貢献する、好奇心と冒険心の高い人材」という風に、理想の人物像を基準にして採否を判断する傾向があるのです。
そのため、自己PRの目的は、志願者が理想の人物像であるかどうかを伝えることとなり、志願者は自分の強みや長所など、人となりを自己PRとして書きます。
企業に自分が適材であることを売り込むために、自分の人柄や能力、価値観などを自己PRに盛り込むようにすることが、ポイントです。
ガクチカとは?
ガクチカとは、「学生時代に頑張ったこと・努力したこと」の略です。
自分が学生時代に力を入れたことについて、エピソードをメインに語りますが、エピソードを通して伝えるのは、人柄や強みではありません。
企業の採用担当者や面接官が、ガクチカを通して知りたいのは、頑張ったことに対して「どのように取り組み、何を学んだか」ということです。
もう少し具体的に言うと、「問題を解決するために、どのように行動したか」「その結果何を学んだか」ということになります。
学生時代に取り組んだことは、そのまま仕事の取り組み方につながります。
仕事をしていると、さまざまな問題が発生しますが、そのときに、課題とどのように向き合って行動するかを知ることは、企業とって重要なポイントです。
エピソードをメインに語るガクチカは、つい結果にウエイトを置いてしまいがちですが、そうすると自己PRのように、自分を売り込んでしまうことになります。
企業の採用担当者は結果ではなく、そこに至るまでの過程を重視していますので、ガクチカを作成する際は、この点を忘れないようにしましょう。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】ガクチカと自己PRでは質問の意図が違う
自己PRについての質問とガクチカについての質問の意図は異なりますので、注意が必要です。
自己PRとガクチカはそれぞれ目的があり、それを考慮しながら答えることがポイントになります。
企業が質問する意図をよく理解して、自己PRとガクチカにそれぞれ反映させていきましょう。
伝え方のコツとしては、自己PRは自分の「強み」をベースにして「強みは何か」を強調するようにします。
ガクチカの場合は、「壁を乗り越えた経験」です。
作成する際のポイントについて、それぞれ説明します。
「強み」と「経験」
自己PRは「強み」をアピールすることが鉄則です。
自己PRで利用するエピソードは、「強み」を持っているという主張に、根拠を与えるものでなければなりません。
的外れなエピソードを入れてしまうと、説得力にかけて、アピール力が弱まってしまいます。
一方ガクチカは「経験」を語り、企業の採用担当者に対して、問題に取り組む姿勢を伝えます。
ガクチカで利用するエピソードは、問題に取り組み、解決したということがわかるものになるのです。
必ずしも結果を出したものでなければならない、というわけではありません。
失敗しても、そこから学んだことや将来に活かせる要素があれば、ガクチカとして活用しましょう。
「強み」の具体例
強みとは自分の長所になりますので、「積極性がある」「好奇心旺盛だ」「忍耐強い」といった性格が挙げられます。
たとえば「前向きさ」を強みとする場合は、「私の強みは、どんなことに対しても、前向きに取り組むことです」とアピールできます。
その次に、主張を裏付ける根拠を示しますが、この場合はエピソードである場合がほとんどです。
例:「学生の頃、周囲が無理だと言っていた大学にどうしても入学したくて、あきらめずに3年間猛勉強しました」
最後は強みをどのように仕事に反映させていくか、将来のビジョンを語ります。
長所が思い浮かばないという場合は、「心配性の裏返しは、物事に慎重な性格」という風に、短所を長所に変えるということも考えてみましょう。
「経験」の具体例
ガクチカで利用する経験は、部活動やサークル活動、受験勉強、ボランティア、家族の介護、アルバイト、インターンシップなど、多岐にわたります。
旅行や将棋など、夢中になった趣味も経験の具体例と言えるでしょう。
過去に夢中になったことや努力した経験を振り返り、さらにその中で問題解決に真剣に取り組んだ経験があれば、それをガクチカとして利用します。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】一貫性のあるガクチカ・自己PRを書くための準備
ガクチカや自己PRなど、同じ企業に提出するESには一貫性を持たせることが重要です。
そこで、一貫性のある文章を作成するための準備についても確認していきましょう。
自己分析を行い、論理を整える
まずは就活において非常に重要な自己分析をしっかりと行い、論理が整っているかについてしっかりと確認していきましょう。
一貫性において最も重要なことは「論理が破綻していないか」ということです。
一貫性とは「繋がり」のことであり、ガクチカと自己PRに繋がりがないということは、どこかで論理が破綻してしまっているということです。
そこで自分を再度しっかりと分析し、過去を振り返りながら論理的に自分のことを把握できるようにするのも非常に重要なポイントです。
求める人材を把握
企業が求める人材に無理やり寄せる必要こそありませんが、ある程度、企業が求める人物については把握しておくことが重要です。
一貫性のあるガクチカや自己PRを書いていたとしても、全く求めている人材から離れているような特徴やスキルをアピールしていては評価されることがありません。
よって、求める人材について、公式サイトだけではなく、OB訪問やIRの情報などから読み取ることができれば良いでしょう。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】ガクチカと自己PRのエピソードが被っても大丈夫?
結論として、ガクチカと自己PRのエピソードの内容はかぶってしまっても問題ありません。
しかし、伝え方は必ず変えるようにしましょう。
ガクチカではこれまでどのようなことに取り組んできたのか、どのような対策などを行ってきたのかを事実ベースに語る必要があります。
一方で、自己PRでは価値観をベースとして、エピソードに対してどのような気持ちで取り組んできたのか、そして自分のスキルは何なのかについて詳しく書けると良いでしょう。
ガクチカにおいて重要なのは、「あなたが何に取り組んできたのか」で、自己PRに必要なのはあなたは何が得意で、何ができるのかという部分です。
【ガクチカと自己PRにおける一貫性】いいガクチカと自己PRの共通点
ガクチカと自己PRは、それぞれ異なる項目ですが、良いガクチカ・自己PRには、共通点があります。
どちらも採用を勝ち取るために必要なもので、企業はガクチカと自己PRから得られた情報をもとに、志願者が、将来企業のために活躍してくれるかどうかを判断するのです。
そのため、入社後再現性のある資質やスキルを備えていることを伝えるのが、いいガクチカと自己PRの共通点になります。
良いものを作成するには、「エピソードに具体性がある」「終始理屈がしっかりしている」という2つのポイントを押さえましょう。
エピソードに具体性がある
エピソードに具体性があればあるほど、企業の採用担当者や面接官は、志願者が伝えようとしているメッセージを理解しやすくなるだけでなく、入社後志願者がどのように活躍する姿を想像しやすくなります。
将来のイメージが鮮明になればなるほど、企業が求める人材にマッチするかどうかが明確になりますので、採否の判断がしやすくなるというメリットがあります。
エピソードに具体性を持たせるには、曖昧な表現は避けて、具体的に伝えるようにしましょう。
具体的に伝えるには、できるだけ数字で表現する、行動などをハッキリとした言葉で表現することがポイントになります。
たとえば「たくさん」と表現する代わりに、「3個」など、具体的な個数にします。
終始理屈がしっかりしている
終始理屈がしっかりしているというのは、メッセージに一貫性があるということです。
たとえば「前向きに取り組むことが強みです」というメッセージを伝えるなら、はじめから終わりまで「前向きに取り組むことが強み」というメッセージを伝え続けることが、一貫性を持たせることにつながります。
前向きが強みである理由や前向きであることを補足する根拠など、盛り込む要素は、メッセージに関連したもののみにすることがポイントです。
【スポーツ経験でガクチカ・自己PRは書ける?】ガクチカの構成
ここからはガクチカの構成について詳しく紹介していきます。
下記の構成はどのような経験をアピールする際でも活用できるガクチカの基本的な構成なので、企業によって他の経験をアピールすることがあったとしても、このフォーマットを活用して問題ありません。
結論
まずは結論から述べていくことが非常に重要です。
「私が学生時代に力を入れたことは〇〇です。」と結論から述べていきましょう。
ここでのポイントは、わかりやすく説明することです。
例えば野球に取り組んできた場合「野球の部活動で〇〇を目指して取り組んだことです。」説明しましょう。
結論を具体化することで、採用担当者は文章をイメージしやすくなります。
特に人気の企業の場合、全てのガクチカを隅から隅まで読めるほど人事に余裕はありません。
よって最初に結論を述べることで今後の文章の展開を想像してもらい、内容をより深く理解してもらえることでしょう。
背景
続いて、ガクチカの背景について詳しく紹介していきます。
この部分は結論に対する補足をする部分です。
個人や部活動の現状や取り組みについてイメージしてもらいやすい、内容を盛り込むことを大切にしていきましょう。
優先度が低い箇所のため、文字数の指定が少ない場合は必ずしも盛り込む必要はありませんが、余裕がある場合は入れておきたいポイントの一つです。
目標・課題
続いて目標や課題について述べていきます。
ただ、目標や課題を述べるのではなく、目標の場合は達成するためにはどのようなことが必要であったのか、課題の場合はどうして課題となっているのか、課題に関わる要素などについて詳しく一緒に説明すると非常に良いでしょう。
結果までの過程が重視されるため、この部分の分析はかなり綿密に行っていく必要があります。
また、目標や課題の部分はどうしても自分の知識を前提に話してしまいがちなので、難しい用語などが入っていないかなどについても再度確認しておきましょう。
取り組み
目標や課題について述べることができたら、続いては取り込みについて詳しく説明していく必要があります。
目標や課題の部分で、取り組みについて詳しく説明していくのです。
ここが論理的に甘いと突っ込まれる可能性が非常に高いので、論理が破綻していないか、ツッコミどころがないかなどについて確認しておくようにしましょう。
例えば、取り組みが複数ある場合は「〇〇のために2つの施策を講じました。一つ目は〇〇、二つ目は〇〇」のように書くと良いでしょう。
三つだと多すぎるため、強調したい取り組みに優先度をつけておくと良いでしょう。
文字数の指定がかなり多い場合三つ以上でも良い場合はありますが、どれだけ多くても基本的には二つまでにしておきましょう。
成果
続いて、取り組みに対してどのような成果が得られたのかについて詳しく説明していきましょう。
ガクチカは必ずしも結果が必要ではなく、どのようなことに取り組んで何を得たか、どのような経験やスキルを身につけたのかが重要なので、例えば部活動であっても優勝していなければならないわけではありません。
ただし、どのような結果が得られたのか、説明が全くないと「後ろめたいことがあるのか?」と思われてしまうので、必ず説明する必要があるのです。
取り組みを正当化させるために、取り組みの前後でどのように変わったのかについても詳しく書いていくと良いでしょう。
学んだこと
最後にどのようなことを学んだのかについて詳しく説明していきましょう。
学んだことや取り組みを軸に考えると良いでしょう。
取り組みと学んだことがズレていると、最後に違和感を与えてしまうため注意が必要です。
また、ここで文字数が余っている場合は、学んだことを通じて企業にどのように貢献しているのかについても詳しく説明することができれば、より魅力的な文章を作成できるでしょう。
【スポーツ経験でガクチカ・自己PRは書ける?】自己PRの構成
続いて自己PRの構成についても把握しておきましょう。
もちろんスポーツ経験について書く場面以外でもこの構成は活用できるので、ぜひ参考にしてみてください
自分の強み(結論)
まずは自分の強みについて一言で述べることができれば良いでしょう。
ここでのポイントは、強みをオリジナリティのある言葉に言い換えることです。
例えば、「傾聴力が強みである」と言っても、就活生の多くが使用するために、埋もれてしまいます。
そこで一言、「相手のニーズを引き出す傾聴力」などと言い換えて印象を残すことができれば良いでしょう。
差別化を図ろうと無理なことを書く必要はありませんが、ただ一言で述べるのではなく、自分の強みがどのようなものであるのか、相手がイメージしやすいキャッチコピーのようなものを添えることができれば、より分かりやすい文章になることでしょう。
発揮したエピソード
自分の強みを発揮したエピソード、または身につけたエピソードについて語ることができれば良いでしょう。
どのようなエピソードでも良いですが、強みを発揮して課題を解決したエピソードが書きやすいため、おすすめです。
また、エピソードは一つに絞ることがポイントです。
いくつも述べてしまうと、文章が長くなってしまい、結局何の話かわからなくなってしまいます。
また、必ずしも解決の要素は必要ありません。
「目標を達成するために、強みである〇〇を活かして」という流れでも十分でしょう。
仕事での活かし方
最後に、企業でそのスキルをどのように活かせるのかについて述べることができれば、よりあなたの文章が分かりやすく伝わることでしょう。
志望する職種の業務内容に合わせた文章を作成できれば、より良い印象を与えられるでしょう。
実際にあなたが活躍してるイメージもしやすいですし、何よりあなたが企業についてしっかり分析しているということが伝わるからです。
しっかり分析しているということは、入社への意欲も高いということであり、採用したいと思ってもらえることでしょう。
まとめ
自己PRとガクチカの書き方について説明しました。
良いものを作成するには、両者の違いを把握して、目的に沿ったものに仕上げることがポイントです。
自己PRとガクチカにはそれぞれ書き方がありますので、パターンを覚えて、採用担当者に好印象を与えるものを作りましょう。