
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
「都庁はSPIだけで受けられるらしい」。就活生の間でそんな情報が広がっています。専門科目や論文が必要な従来の公務員試験のイメージからすると、にわかには信じがたい話かもしれません。
編集部が令和8年度(2026年度)の試験制度を確認した結論から言うと、この情報は半分正解です。東京都庁のⅠ類B採用試験「新方式」は、第1次試験(筆記)がSPI3(テストセンター方式)による基礎能力検査のみで、教養試験・専門試験・論文は課されません。
ただし「SPIだけで合格できる」わけではありません。2次試験にはプレゼンテーション・個別面接・グループワークが待っており、むしろ合否の中心はそちらにあります。
この記事では、「SPIだけ」という言葉の正確な中身、対象となる方式・区分、見落としがちな注意点、そして民間併願層がこのルートをどう活かすべきかを編集部が分析します。
・都庁を「SPIだけ」で受けられるという情報の正確な意味
・筆記がSPIのみになる「Ⅰ類B新方式」の仕組みと対象区分
・「SPIだけ」に潜む落とし穴(2次試験の比重・倍率上昇)
・大学3年生から挑戦できる秋の「第2回」の存在
・公務員試験の勉強なしで都庁を受けたいと考えている人
・民間就活のSPI対策を都庁受験にも流用したい人
・「SPIだけ」という情報の裏取りをしてから動きたい人
目次[目次を全て表示する]
結論:筆記がSPIだけの「新方式」はある。ただし試験全体はSPIだけではない
最初に、検索してたどり着いた疑問へ端的に答えます。都庁のⅠ類B採用試験には、筆記試験がSPIだけで完結する「新方式」という区分が実在します。一方で、選考全体で見ればSPIは入口にすぎません。この2つを分けて理解することが、このテーマの出発点です。
「筆記はSPIだけ」は事実
令和8年度のⅠ類B新方式では、第1次試験は基礎能力検査=SPI3(テストセンター方式)のみでした。従来型の公務員試験にある五肢択一の教養試験、記述式の専門試験、論文はいずれも課されません。
つまり法律・経済・時事などの公務員試験科目を一切勉強せずに、都庁の1次選考を受けられるのは事実です。民間就活のSPI対策がそのまま通用します。
しかも受検は全国のテストセンターから日時を選んで受ける方式でした。指定日に会場へ集まる従来型の公務員試験と比べ、受験のハードルは物理的にも大きく下がっています。
「SPIだけで合格」は誤解
一方で、新方式の選考はSPIで終わりません。1次を通過すると、プレゼンテーション・個別面接・グループワークで構成される第2次試験があり、最終合格はその評価で決まります。
筆記の比重が軽いということは、裏を返せば人物評価の比重が極めて重いということです。「SPIさえ高得点なら受かる」試験ではないことを、最初に押さえておきましょう。
令和8年度の実績では、1次合格発表が4月14日、2次試験が5月8日〜20日、最終合格発表が5月29日という流れでした。SPI通過はゴールの半分手前にすぎない、というスケジュール感覚を持っておいてください。
「SPIだけ」の正しい言い換え
編集部として正確に言い換えるなら、新方式は「筆記対策はSPIだけでよい試験」であり、「SPIだけで決まる試験」ではありません。
この違いを理解しているかどうかで、対策の時間配分がまるで変わります。SPIは早めに仕上げ、浮いた時間を2次対策に回すのが新方式攻略の基本設計です。
「SPIだけ」で何が免除されるのか:一般方式との比較
「SPIだけ」のインパクトを正しく測るには、同じⅠ類Bの「一般方式」で課される試験と比べるのが早道です。ここでは両方式の筆記負担を比較し、新方式で免除されているものを具体的に確認します。
一般方式で課される筆記の重さ
令和8年度の一般方式の第1次試験は、五肢択一式の教養試験、1時間30分の論文、2時間の専門試験(記述式)というフル装備でした。行政区分の専門試験は憲法・行政法・経済学などの分野から出題される記述式で、相応の学習期間を要します。
一般に、この水準の筆記を仕上げるには数百時間規模の勉強が必要とされます。大学3年の後半から民間就活と並行して積み上げるのは、正直かなりの覚悟が要る分量です。
さらに一般方式は1次試験が指定日の一斉実施(令和8年度は4月19日)で、日程の融通も利きません。筆記の重さと日程の固定という二重の制約が、一般方式の参入障壁になっています。
新方式で免除されるもの一覧
両方式の筆記負担を表で比較します。新方式が「SPIだけ」と呼ばれる理由が一目でわかるはずです。
| 試験内容 | 一般方式 | 新方式 |
|---|---|---|
| 教養試験(五肢択一) | あり | なし |
| 専門試験(記述式) | あり | なし |
| 論文 | あり | なし |
| 基礎能力検査(SPI3) | なし | あり(テストセンター方式) |
| 2次の口述試験 | 個別面接 | プレゼンテーション+個別面接+グループワーク |
筆記3種が丸ごと消える代わりに、2次の口述試験が個別面接だけからプレゼン・グループワークつきの構成に変わる。これが「SPIだけ」の実像です。
免除されるのはあくまで「筆記の科目」であって、「評価そのもの」ではありません。筆記で測っていた力の代わりに、人物面をより多面的に見る設計になっていると理解しましょう。
準備時間の差はどれくらいか
SPI対策に必要な期間は、集中すれば1〜1.5カ月が目安です。一般方式の筆記対策が半年〜1年単位であることを考えると、準備時間のコストは桁違いに小さいといえます。
ただしその分、新方式には後述するとおり受験者が集まり、競争は激しくなっています。「楽になった」のではなく「勝負所が筆記から人物評価に移った」と捉えるのが正確です。
浮いた時間の使い道こそが新方式の戦略の核心です。筆記対策に使うはずだった数百時間を、ガクチカの深掘り・都政研究・プレゼン練習に再配分できると考えれば、この方式の本当の価値が見えてきます。
SPIだけで受けられるのは誰か:対象区分と受験資格
新方式は誰でも・どの職種でも受けられるわけではありません。ここでは令和8年度の実績をもとに、対象となる試験区分と受験資格を確認します。自分が対象に入っているかを最初にチェックしてください。
対象区分は行政・ICT・技術系の6区分
令和8年度の新方式(春実施)は、行政190人・ICT11人・土木30人・建築6人・機械5人・電気6人の6区分で募集されました。事務系志望なら行政、IT志向ならICTが主な選択肢です。
一方、心理・衛生監視・栄養士・獣医・薬剤などの資格系区分は一般方式のみでの募集です。自分の志望区分が新方式にあるかを、まず試験案内で確認しましょう。
なお、行政と技術系では2次試験のプレゼンテーマの性質も変わり得ます。技術系は研究内容や専門性に関する発表が想定されるため、自分の学びを言語化する準備がそのまま活きます。
受験資格は年齢が中心・学歴要件なし
Ⅰ類Bは「大卒程度」の試験ですが、これは問題レベルの目安であり、大卒の学歴が必須という意味ではありません。受験資格は年齢要件が中心で、令和8年度の春試験では22〜29歳(採用年4月1日時点)が対象でした。
年齢要件は年度や実施回によって異なるため、受験を考えたらまず最新の試験案内で自分の生年月日が対象に入るかを確認してください。
学歴不問という設計は、既卒者や社会人経験者にも門戸が開かれていることを意味します。新卒学生だけでなく、キャリアチェンジ層も競争相手になり得ると意識しておきましょう。
一般方式との同時併願はできない
同一年度のⅠ類B試験では、一般方式と新方式のどちらか一方を選んで申し込む形とされています。「両方に出して保険をかける」戦略は取れません。
筆記対策の状況と2次選考への適性を天秤にかけ、申込前にどちらのルートで勝負するかを決める必要があります。この意思決定こそが、都庁受験の最初の関門だと編集部は考えます。
迷ったまま締切を迎えるのが最悪のパターンです。申込開始(令和8年度は2月16日)より前、遅くとも年明けには方式を決め切るスケジュールで検討を進めましょう。
「SPIだけ」の落とし穴①:合否の中心は2次試験にある
ここからは「SPIだけ」という言葉に安心した受験者が陥りがちな落とし穴を分析します。1つ目は、合否の重心が2次試験にあるという構造の見落としです。筆記が軽い試験は、筆記以外が重い試験でもあります。
プレゼンテーションという独自関門
新方式の2次試験の目玉はプレゼンテーションです。近年の実施では事前にプレゼンテーションシートを作成・提出し、当日発表する形式が取られています。
お題に対して自分の考えを構造化し、限られた時間で伝える力が問われます。SPIの点数では測れない領域が合否を分けるのが新方式の本質です。
都政への関心が浅いままだと発表内容が一般論に終始するため、日頃から東京都の政策トピックに触れておく準備が効きます。
発表そのものの練習も重要です。制限時間内に結論から話す、根拠を2〜3点に絞る、質問には端的に答えるといった基本動作は、練習量に比例して確実に上達します。
グループワークと個別面接もセット
2次試験ではプレゼンに加えてグループワークと個別面接も実施されます。初対面の受験者との協働、志望動機の深掘りと、民間就活の選考に近い場面が続きます。
民間併願層には馴染みのある形式ですが、それは競争相手も同じです。就活慣れした受験者が集まる中での相対評価になることを想定しておきましょう。
SPIは「早く仕上げて忘れる」が正解
合否の重心が2次にある以上、SPIに何カ月もかけるのは配分ミスです。編集部の推奨は、SPIを1〜1.5カ月で目標水準(正答率7割以上の安定)まで仕上げ、残りの期間を2次対策と都政研究に投資する設計です。
「SPIだけだから直前にやればいい」でも「SPIが不安だからずっとSPIをやる」でもなく、短期集中で仕上げて次へ進むのが正しい付き合い方です。
「SPIだけ」の落とし穴②:手軽さゆえに倍率が上がっている
2つ目の落とし穴は競争環境です。「SPIだけで受けられる」という手軽さは、当然ながら受験者を集めます。公表されている実施状況から、新方式の競争がどう変化しているかを確認しましょう。
新方式の倍率は1年で4.2倍→5.4倍に上昇
令和8年度の実施状況によると、Ⅰ類B新方式の倍率は5.4倍で、前年度の4.2倍から1.2ポイント上昇しました。行政区分に限れば6.1倍(前年度4.5倍)です。
受験者数も1,847人から1,958人へ増えており、「SPIだけルート」の人気は数字にはっきり表れています。
この傾向は今後も続く可能性が高いと編集部は見ています。受験を先延ばしにするほど競争が緩む見込みは薄いため、「受けるなら早い学年から動く」が合理的な判断です。
一般方式2.1倍との逆転現象
興味深いのは、フル装備の筆記が必要な一般方式の倍率が2.1倍と、新方式より大幅に低いことです。筆記負担の重さが出願のハードルになり、母集団が絞られているためと考えられます。
「SPIだけのほうが簡単」とは、倍率で見れば必ずしも言えません。準備コストの低いルートには人が集まり、競争率が上がる。就活市場の一般法則が、都庁でもそのまま起きています。
「気軽な併願先」のつもりで挑むと弾かれる
倍率6倍前後という数字は、民間でいえば人気企業水準です。「民間のついでにSPIだけ出しておこう」という温度感の受験者は、同じ発想の数千人と競うことになります。
編集部の分析では、新方式で勝ち残るのは「筆記免除に釣られた層」ではなく「浮いた筆記対策時間を2次準備に再投資した層」です。手軽さを入口にしつつ、本気度で差をつけましょう。
筆記がSPIだけと聞いて、解答集や替え玉受検などの不正で乗り切ろうと考えるのは論外です。テストセンター方式は会場での本人確認が徹底されており、不正が発覚すれば合格取り消しを含む重大な扱いになります。公務員を目指す試験での不正は経歴に致命傷を残します。正攻法以外の選択肢はありません。
大学3年生でも「SPIだけ」で挑める:秋の新方式・第2回
「SPIだけ」ルートには、もう1つ知られていない選択肢があります。秋に実施される「新方式・第2回」です。令和7年度の実績では春試験より年齢要件が広く、大学3年生の年齢から受験できる設計でした。民間就活と並走する学生には特に重要な情報です。
第2回の仕組み(令和7年度実績)
令和7年度の新方式・第2回は、8月に申込、9月にSPI3(テストセンター方式)の1次試験、11月にプレゼン・グループワーク・個別面接の2次試験、11月末に最終合格発表という日程でした。行政・土木・建築・機械・電気の5区分で実施されています。
受験可能年齢は春の試験より1歳下からに設定されており、大学3年生の秋の時点で都庁に挑戦できるのが最大の特徴です。
民間就活のスケジュールと重なるメリット
大学3年の秋は、サマーインターンを経てSPI対策が仕上がってくる時期です。第2回はまさにその時期に受検できるため、民間対策の成果をそのまま都庁にぶつけられます。
仮に不合格でも、翌年春の試験に再挑戦する道は残ります。編集部としては、民間併願層にとって第2回は「早期に都庁の選考を経験できる実質ノーリスクの機会」だと評価しています。
ただし第2回の実施有無・日程・年齢要件は年度ごとに発表されるため、例年夏頃の公式発表を必ず確認してください。
第2回を受ける際の注意点
第2回は毎年度の実施が約束された試験ではなく、実施区分・採用予定者数・年齢要件も年度ごとに設定されます。「秋にもあるはず」と思い込んでスケジュールを組むのは危険です。
また、秋は民間の秋冬インターン選考やES締切も重なる繁忙期です。申込・受検予約・受検日をカレンダーで一元管理し、期限切れによる機会損失を防ぎましょう。
最新の実施情報は東京都職員採用の公式サイトで発表されます。夏頃からの定期チェックを習慣にしてください。
「SPIだけ」ルートで挑む前の最終チェックリスト
最後に、新方式への出願を決める前に確認すべきポイントをチェックリストにまとめました。「SPIだけ」という言葉の印象で飛びつく前に、1つずつ自分の状況と照らし合わせてください。全部にチェックがつけば、出願準備に進んで問題ありません。
出願前チェックリスト
編集部が推奨する確認項目は以下の7つです。
・志望する試験区分(行政・ICT・技術系)が新方式で募集されているか確認した
・最新の試験案内で年齢要件(受験資格)を確認した
・一般方式との併願はできないことを理解し、方式を決めた
・SPI対策に1〜1.5カ月を確保できるスケジュールを引いた
・2次試験(プレゼン・面接・グループワーク)の存在と比重を理解した
・倍率5倍超の競争であることを踏まえた覚悟がある
・申込期間・受検期間を公式サイトで確認した
特に見落とされがちなのが2次試験の比重と申込期間の短さです。この2つは毎年のように後悔の声が出るポイントです。
迷ったときの判断軸
それでも新方式か一般方式かで迷う場合は、「筆記の積み上げ」と「対人評価」のどちらで勝負したいかを軸にしてください。専門科目を仕上げる時間と意欲があるなら一般方式、民間就活で培った対人スキルとSPIで戦うなら新方式です。
自分の強みが活きる土俵を選ぶことが、倍率の数字を比べるよりも本質的な方式選択だと編集部は考えます。
それでも決めきれない場合は、SPIの模擬問題と公務員教養試験の過去問を1セットずつ解いてみてください。手応えと「これを続けられそうか」という感覚が、どちらの土俵で戦うべきかを教えてくれます。
チェック後の最初のアクション
チェックリストを通過したら、最初のアクションは「SPI対策本を1冊決めて1周目を始めること」と「申込日程をカレンダーに登録すること」の2つです。意思決定を行動に変換するまでが出願準備です。
あわせて、都政の課題に関するニュースを週に数本読む習慣を今日から始めましょう。2次試験のプレゼンで語る材料は、直前の詰め込みではなく日々の積み重ねから生まれます。
まとめ
この記事では、「都庁はSPIだけで受けられるのか」という疑問に対して、新方式の仕組みと注意点を編集部が分析しました。
結論をあらためて整理します。都庁Ⅰ類B新方式は、筆記試験がSPI3(テストセンター方式)のみで、教養・専門・論文が免除される実在のルートです。ただし合否の中心はプレゼンテーション・個別面接・グループワークの2次試験にあり、「SPIだけで受かる」試験ではありません。
さらに、手軽さゆえに受験者が集まり、倍率は5.4倍(行政6.1倍)まで上昇しています。SPIを短期集中で仕上げ、浮いた時間を2次対策と都政研究に再投資できる人が、このルートの本当の勝者です。
大学3年生なら秋の第2回という選択肢もあります。試験制度・日程・受験資格は年度ごとに変わるため、出願前には必ず東京都職員採用の公式サイトで最新の試験案内を確認したうえで、自分の強みが活きる方式で挑戦してください。