HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
「エントリーシートってちゃんと読まれているの?」 「グループディスカッションで落ちる理由は何?」 今回は就活生が見落としがちな人事が見ているポイントを、元ネオキャリア採用責任者である中川皓之さんが語ります。
就活では大手広告代理店、総合商社、ITメガベンチャーなど トップ企業から内定を獲得。
2014年4月、株式会社ネオキャリアへ新卒入社。
入社初年度から関西採用部の立ち上げ責任者に就任し 人事部長として、入社4年半で計1600人の採用に携わる。
2018年11月、株式会社アスナロを創業し、代表取締役に就任。
エントリーシートを実施する目的とは
企業がエントリーシート(以下、ES)を求める背景は、大きく2つあります。
一つは人事がそこまで考えずに、とりあえず惰性で学生に提出させているパターンです。
実は「とりあえずやらなきゃ」ぐらいでしかやってない企業も全然ありますよ。
もう一つは、採用工数の関係で限られた人数の学生にしか会えないという場合です。
企業によっては人事の専属ではなく、他の業務との兼任で人事を担当している方もいらっしゃいます。
限られた時間しかない人事からすると、先に書面で確認して興味がある子だけにアプローチするのは合理的です。
就活生からはよく「ESって本当に見られているのか」と聞かれますし、結局前者の企業では人事はESを見ておらず、後者はきちんと見て判断しているということですね。
エントリーシートで「他想力」を表現せよ
自分というプロダクトを企業へどういう風に売り込むかが重要なんですよ。
僕自身が考える、 自分を企業へアピールするために必要な力は「他想力(他人を想う力)」です。
「他想力」を持っている学生がESを書くとき、「人事は何万人もの応募者のESを見ているのだ」ときちんと想像して、人事の目に止まるESにするために書き方を工夫しているんです。
人事の立場を想って工夫を凝らす学生と、何も考えずに文字数を埋めるだけの学生、この両者ではビジネスパーソンとしてすでに差がついてますよね。
他想力がある学生は、ESの見た目が違います。
タイトルを太字にいたり、重要な箇所は色を変えていたりするんですよ。
「ES=堅い文章を書かないといけない」というルールはないから、そういった工夫があると自然と目を引きますね。
それから、文章構成の工夫が凝らしてありますね。
ESの回答で「アルバイトを頑張りました」という定性的な情報だけ書かれていても、人事はその学生がどのくらい頑張ったのか判断できないんですよ。
「頑張った」という定性的情報を、どうすれば伝えられるのかを考えて書かないと意味がない。
頭のいい学生は、結論から始まる文章構成で、エピソードの根拠に数字を含めて記述するなど、一工夫してますね。
グループディスカッションを実施する目的とは
人事がグループディスカッション(以下、GD)を行う3つの理由があります。
一つは、学生のコミュニケーション能力を測るため。
相手のことを考えて傾聴的な姿勢を取りながら、自分でもきちんと主張できるか。
グループディスカッションは、その学生が人と対話するときのバランスを見るいい機会です。
また、仮に学生が入社した際に、チーム内でどの立ち位置になるのかイメージしやすいですよね。
「この人はチーム全体をうまくまとめてくれそうだな」とか、入社後の役割を考えるためにも役立ちます。
二つ目は思考力を測るため。
面接では自己内省の深さは分かるものの、それとは異なる思考力、例えばアイデアの発散能力、収束能力、構造理解力、抽象思考力などは、グループディスカッションでしか測れないものもあります。
三つ目は学生に企業理解を深める目的です。
人事が一方的に話して、受動的に会社情報を受け取るだけではつまらないじゃないですか。
そこでGDで自社の課題に関連するグループワークに取り組んでもらい、能動的に参加することで自社で働く面白さをイメージしてもらうという使い方をしてますね。
人事が教えるGDの必勝法
GDはコツさえつかめば、全員必ず合格できる選考だと思ってます。
GDにおけるキラーワードがあって、それは「一回、目的から整理しない?」というセリフ。
GD中に解決策を出そうとするあまり、目的から外れていく学生が非常に多いんですよ。
そこで 目的をぶらさずに、議論の方向性をつくっていける学生は優秀ですね。
これだけでほとんどのGDには落ちないと思います。
また、 相手の意見をちゃんと傾聴した上で自分の意見を言うこと。
抽象度が高く答えが決まっていないテーマを議論する中で「自分の意見が全て正しい、他は間違ってる」と相手の意見を全否定する発言は、人事からするとマイナスの印象です。
答えがないことを理解した上で、きちんと頭の中を整理できる学生が評価が高いですね。
一方、GDに落ちてしまうのは「全く何も喋らない学生」か「表面的なテクニックに頼る学生」です。
全く何も話さない学生は評価のしようがない。
だから、まずは自分なりの発言を必ず出して議論に参加してほしいですね。
表面的なテクニックに頼る学生というのは、例えば「まずは役割分担から始めようか」と最初だけ仕切って、議論中は自分の意見は何も出さない子です。
または、難しいビジネス用語を多発して議論を分かりづらくしたり、やたらとフレームワークを使って本質を考えられていなかったり。
議論への貢献ができていないから、こうした学生も評価は高くないですね。
面接で重視するのは「努力の基準値」
面接において、 僕が最も重視してみていたのは「努力の基準値」です。
どれだけのことをやれば「努力した」と満足するか、その基準は人によって様々です。
例えば、Aくん、Bくんは野球部のチームメイト。
その野球部は全国大会ベスト4の成績を残しました。
野球において出した結果をみると、二人は横並びですよね。
まずはAくんを面接して「優勝するためにできたことはあったと思う?」と聞くと、Aくんは「後悔なくやりきったので、特にないです。
」と答えました。
一方のBくんは同じ質問に対して「今考えてみると、やれることとして〇〇がありました。
当時の自分は頑張ったつもりですが、自己満足だったなと思ってます。
」と答えました。
二人は同じ経験をしていますが、その裏側にある感覚は異なります。
この場合、Bくんの方が努力の基準値が高いといえるでしょう。
一定の成果に満足せずに今後も努力する姿勢が期待できる。
人それぞれ感じ方は異なりますから、努力の基準値が低いから一概に悪いというわけではないです。
しかし、 自分の努力基準と会社が求める基準がマッチしているかはポイントですね。
例えばその人の努力の基準値と大幅に異なる会社で働く場合、その人自身にフラストレーションが溜まると思うんです。
「自分は頑張ってるのに、会社はきちんと評価してくれない」と不満を抱えてしまう。
一方、会社は他のメンバーの基準を変えるわけにもいかないですよね。
この問題はどちらか一方が悪いというよりは、努力の基準値がマッチしていないことから生じる問題だと思います。
自分に向かって「もっとやれることがあるな」と考えて行動できる、 自己研鑽(けんさん)の欲求が高い学生はどこの企業も欲しがる人材でしょう。
あなたを求める会社はきっとある
これから就活する学生の皆さんに伝えたいのは、企業の選考で落ちても「自分は社会から全く必要とされてない」と思わないでほしいということ。
採用する企業からの目線でいうと、採用活動は会社全体の経営戦略に基づいて行われるので、求める人材の要件はあらかじめ決まってます。
だから、いくら優秀な学生でもその企業に合ってないと採用には至らない。
結局、内定が取れるかどうかって企業との相性が大きいんですよ。
日本にある企業数って今、168万8000社あるんですよ。
その中のどこかに、自分に合ってる会社はきっとあるんじゃないでしょうか。
あなたを求めている企業は必ず見つかるので、自信をもって就活を臨んでくださいね。