要約
食品商社は、食品を専門に取り扱う専門商社の1つです。
メーカーと小売の仲介を行って手数料を得ることで、収益を生み出すのが主なビジネスモデルとなります。
総合商社と比べると事業規模はそれほど大きくありませんが、消費者の生活に密着する商品を扱う、やりがいの大きな仕事です。
特に業界トップ3の三菱食品、加藤食品、伊藤忠食品は大学生にも人気の就職先となっています。
はじめに
食品関係の仕事に就きたいと考えている学生の中には、食品商社を本命の就職先と考えている人も多いでしょう。
すでに気になっている企業がある、という学生もいるかもしれません。
そんな学生のために、ここでは

「食品商社とはどのような会社なのか?」 「社員はどんな仕事をしているのか?」 「食品商社にはどのような企業があるのか?」
【食品商社】食品商社とは?
海外や国内で生産された原料を生産者から買い取ってメーカーに販売し、メーカーが製造した商品を小売店に販売するのが主な仕事です。
これをトトレーディング業務と言います。
ただし、近年ではインターネットの普及などによりメーカーや小売店が商社を介さずに、直接取り引きを行うケースが目立つようになってきました。
そのため、食品商社の中には自ら仕入れた原材料を使って、自社商品を開発し、製造・販売ルートに乗せるところまでを生業とする企業も増えてきています。
【食品商社】食品商社の特徴
商社というと学生に人気があるのは一般的に総合商社の方ですが、食品商社のような専門商社には総合商社にない特徴があります。その1つは、消費者の反応を身近に感じられる点です。
食品は消費者の生活に密着しているものであり、良い・悪い、おいしい・まずいといった反応がダイレクトに伝わってきます。
自分の担当した商品が消費者に届き、良い評判を得られれば、仕事に大きなやりがいを感じられるでしょう。
また、先程も述べたように、最近では商社自ら食品を製造・販売するところが増えてきています。
そういった会社では原材料の仕入れから加工、生産、販売まですべてのプロセスに一貫して携わることができるのです。
このような働き方は、他の食品会社ではなかなか経験できないことでしょう。
【食品商社】食品商社の仕事内容
食品商社への就職を希望しているならば、業種への知識だけでなく、職種に関しての知識も深めるようにしましょう。同じ企業であっても職種によって働き方ややりがいがまったくと言っていいほど異なるからです。
また、仕事のミスマッチを減らして早期離職を予防するという意味でも、職種を詳しく知ることは非常に役に立ちます。
食品商社での仕事内容は主に「営業」と「事務」の2つに分けられるので、ここでは両者について詳しく見ていくことにします。
営業
食品商社の職種として中心になるのは営業職になるでしょう。より価格が安くて品質が高く、安全な原料を手に入れるために国内・国外を飛び回って新しい仕入先を開拓したり、自社の取り扱う商品を少しでも多く販売してもらえるように、小売店に売り込みを行ったりすることで、業績に貢献するのが仕事の目的になります。
効率的にクライアントを回るために最短のルートでの移動を心がけ、クライアントの心を打つ訴求力の高いプレゼン資料を準備するなど、結果を出すためには大きな努力も必要となります。
その結果としてコンビニやスーパーなどに自社の商品がズラッと陳列されたところを目の当たりにすれば、大きなやりがいを感じるでしょう。
事務
食品商社の事務職には一般事務と営業事務の2つがあります。
一般事務は総務部や人事部などで働く社員のことで、会社経営に関する帳簿の管理や決算資料の作成や補助、社員の管理や福利厚生制度の促進、社内衛生管理や備品管理などに従事する人たちのことです。
営業事務は営業職の社員のサポートを行うのが主な仕事内容です。
クライアントのデータを入力して顧客管理を行ったり、電話やメールの対応に当たったり、郵便物等の発送を行ったりすることもあります。
一般事務よりも業績に貢献しているという実感が強く、やりがいも大きなものとなります。
【食品商社】食品商社のトップ企業
ここでは食品商社の中でも事業規模が大きく、学生からの人気も高いトップ3の企業について詳しく見ていきます。食品商社への就職を目指すならば企業研究を徹底し、企業ごとの特徴や強み・弱み、将来的な事業展開の見通しなどの違いをしっかりと理解しておきましょう。
「なぜ食品商社の中でこの会社でなければならないのか」を説明できるようになれば、面接で志望動機を尋ねられた際に魅力的な回答ができ、採用担当者からの評価も高くなります。
三菱食品株式会社
食品商社の中でもっとも事業規模が大きいのが三菱食品株式会社です。景気の影響を受けやすい食品会社ですが、長年安定した業績を残しています。
2011年に菱食、明治屋商事、サンエス、フードサービスネットワークの4社が経営統合して誕生した三菱グループの連結子会社で、売上高はおよそ2兆5,000億円となっています。
業界2位の加藤産業株式会社の売上高が1兆円ほどですから業界ダントツのトップ企業と言えるでしょう。
社員数は4,400人と多く、採用は総合職のみで職種による区別はありません。
入社後に事務や営業、マーケティングなどの職種に配置されますが、給料などに差はありません。
社員の平均年齢は43.6歳、平均年収は663万円となっています。
加藤産業株式会社
加藤産業株式会社は兵庫県西宮市に本社を置く、独立系の食品商社です。業界では第2位の事業規模を誇り、売上高は1兆円となっています。
トップの三菱食品株式会社があらゆるジャンルの食品を、バランス良く取り扱っているのと比べると、加藤産業株式会社はインスタント食品や冷凍食品の売上高が、他のジャンルに比べて高くなっているのが特徴です。
社員数はおよそ1,000人、社員の平均年齢は40.2歳で、平均年収は647万円と三菱食品株式会社と比べても遜色ありません。
食品商社は原価率が高いためどうしても利益率が1%以下と低くなりがちですが、加藤産業株式会社は売上経常利益率が1.5%と業界内でも高くなっていることが平均給与が高い理由でしょう。
伊藤忠食品株式会社
伊藤忠食品株式会社は大阪市中央区と東京都港区に本社を置く食品商社です。企業名を見ても分かるように、総合商社である伊藤忠商事の子会社です。
伊藤忠商事との関係からコンビニエンスストアのセブン-イレブンや、スーパーのイトーヨーカドーとの取り引きが多く、食品商社としては3番目の規模の売上高6,600億円を誇ります。
同業他社と比べると健康食品の取扱高が多く、また、食品ロスの解消に積極的に取り組むなど、新しい価値の創造に力を注いでいるのが特徴です。
伊藤忠食品株式会社の社員数はおよそ1,000人で、社員の平均年齢は41.8歳となっており、社員の平均勤続年数は上位2社を上回る18年です。
平均年収は635万円で、従業員1人あたりの営業利益は業界トップとなっています。
まとめ
ここまで食品商社の特徴を紹介してきました。同じ商社でも総合商社と食品商社では仕事の内容や取り扱う商品が全く異なることが分かっていただけたかと思います。
最近は海外から安くて品質の良い食品が大量に輸入されるようになり、市場を取り巻く環境も刻々と変化しており、常に激しい競争にさらされています。
食品商社への就職を目指す学生はそれぞれの企業の特徴をしっかりと把握して、自分に合った就職先を見つけるように心がけましょう。