HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
就職活動を始める際に、何から始めたら良いか悩む人も少なくありません。
一般的に、先にするべきこととされているのは自己分析と企業研究でしょう。
このうち、企業研究については興味のある業界に絞ることから始めます。
理系の学生の場合は、学業と関連する業界に目を向けてみることから始めると良いでしょう。
例えば、専攻が化学系の場合には、化学メーカーについて調べてみるのです。
ここでは、化学メーカーに焦点を当てて、業界の特徴や代表企業などについて解説していきます。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーとは?
製造の過程で、化学反応を利用して作る製品を化学製品と言います。
その化学製品を製造しているメーカーが化学メーカーです。
作られる化学製品は、主にさまざまな製品に使われる基礎素材や消費者が手にする最終製品の中間材となります。
日本での化学メーカーのはじまりは、農業用肥料の生産とされています。
戦後初期には、政府による「石油化学工業育成対策」を背景に、石油化学製品を主とする化学産業は急成長を果たし、現在では日本の基幹産業のひとつです。
プラスチックやゴム、合成繊維、化粧品、医薬品など、化学メーカーにより製造される化学製品はあらゆる分野に及び、私たちの日常生活に欠かせないものです。
化学メーカーの種類は、その業態により大きく「総合化学メーカー」「誘導品メーカー」「電子材料メーカー」の3つに分けられます。
ここでは、これらそれぞれについて解説していきます。
総合化学メーカー
基礎原料から中間材料、最終製品までを一貫して生産する企業を、一般的に総合化学メーカーと言います。
化学素材から医薬品まで幅広く、総合的な分野で活躍しているため、ビジネスの多様性があります。
企業規模が大きく、部署も多数にわたることが多いため、就職を考えた場合には活躍できるフィールドが広いことが魅力のひとつです。
事業領域が幅広いため、自身の研究技術だけでなく、企業内の異なる事業分野の技術を融合させることになり、さらなる新しい技術を生み出すこともできます。
また、最大手の総合化学メーカーでの研究開発では、世界トップレベルの新技術や新素材の開発に携われる可能性があります。
そこで世界にない製品を生み出したり、新事業を創出したりすることに関われるのが大きな魅力でしょう。
誘導品メーカー
基礎原料をもとにして、製品化する際に必要な材料や部品、すなわち誘導品を製造している化学メーカーが誘導品メーカーです。
誘導品メーカーは、生産した誘導品をほかのメーカーや商社に販売しており、BtoB構図の企業となります。
川の流れに例えて言うならば、川上から川下までを一貫して担うのが総合化学メーカーであり、誘導品メーカーは川中にあたる企業です。
特定の分野に特化した企業が多く、各社の得意分野で独自の技術により、付加価値の高い製品を製造しています。
他社との価格競争に巻き込まれないニッチな市場で、事業を展開している企業も多く存在します。
誘導品メーカーは各社の特色があるため、どのような企業があるかをしっかりと調べ、自分の興味のある分野が一致しているなど、自分にとって魅力的な企業を見つけられると良いでしょう。
電子材料メーカー
電子材料メーカーは、総合化学メーカーや誘導品メーカーが製造した材料を購入し、電子材料を製造しています。
それを電子機器メーカーに売って利益を得ており、川上・川中・川下で言うなら川下に位置する化学メーカーです。
電子材料とは、半導体や液晶基板など電子部品用の特別な部材のことです。
中でも最近メディアで半導体不足の問題が報じられるなど、耳にすることの多い半導体は、パソコン、スマートフォン、各種家電、自動車や航空機などさまざまなものに必要不可欠な素材となっています。
もはや私たちの生活にはなくてはならないものであるため「産業のコメ」とまで呼ばれているのです。
さらにデジタル化が進むことが予想されるため、今後も需要は高まるものと考えられます。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーの動向
就職先を考えるうえでは、志望する業界の抱えている課題や今後の動向についても把握しておく必要があります。
化学製品は石油や天然ガスを原材料として作られるものが多いため、資源のない日本の化学メーカーにおいては、これらの価格変動の影響を強く受けることは避けられません。
海外との価格競争は激化しており、これに対応する必要に迫られています。
また、世界的に環境問題への関心が高まっており、これに対する配慮も求められているのです。
以下で、一つひとつ解説します。
構造改革の必要性
化学メーカーの中でもとくに上流の総合化学メーカーにおいては、石油や天然ガスを原料として基礎原料を製造しているため、これらの原料の高騰は利益を圧迫する原因です。
それに加え、安い天然ガスを原料とする中東諸国の進出やシェール革命によるアメリカのエチレンプラントの増産など、世界的に競争が激化しています。
このような石油化学領域の現状を受け、日本の総合化学メーカーでは新しいビジネスモデルの導入など、構造改革の必要性に迫られているのです。
例えば、総合化学メーカーの最大手である三菱ケミカルホールディングスグループ株式会社(三菱ケミカルHD)では、2021年に石化・炭素事業を切り離し、エレクトロニクスやヘルスケアなどの成長領域に集中する戦略を打ち出しています。
また、三井化学でもポートフォリオを組み換え、ヘルスケアや情報通信技術に積極投資を進めています。
M&Aの増加
M&Aとは、
・株式譲渡:株式の売却・買収によって経営権を移行する手法
・事業譲渡:事業用資産の売却・買収によって事業を売買する手法
・合併:2つ以上の法人を1つに統合する手法
など、会社や事業を売買したり、統合したりするための手法をまとめた呼び方です。
化学メーカーでは、国内マーケットはすでに開拓済みであるため、新たな市場として海外への参入を狙ってM&Aを積極的に行っている企業が多いです。
社内技術の乏しい領域は、M&Aで強化するという方針を打ち出した三井化学のように、成長領域を強化する目的でM&Aを行う化学メーカーもあります。
総合化学メーカー各社は、これまでも新規投資の必要性と優秀な人材の確保のためにM&Aを通じて成長を続けてきましたが、化学業界全体の競争激化により、今後もM&Aなどによる業界再編の動きが増加することが予想されます。
環境問題への配慮
化学産業の発展の中で発生したさまざまな公害問題により、環境に関する法規制が整備され、甚大な環境汚染の多くは解消されてきました。
しかし、近年アレルギー疾患、精神・神経疾患、がんなどが増加している要因に、化学物質の曝露の問題を含めた環境要因が間接的に関与していると考えられており、依然として環境に対する配慮が求められています。
また、パリ協定やSDGsの採択など、世界的にも環境問題への関心が高まっており、化学業界でも持続可能社会に資する製品提供が求められているのです。
温室効果ガスについては、2020年に菅前首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロを目指すとしました。
翌年の気候変動サミットでは、2030年度に13年度比で46%削減すると表明しています。
それに伴い、化学メーカー各社も2030年に向けた温室効果ガス削減の目標を打ち出しています。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーの職種
実際に化学メーカーへ就職した場合には、どのような仕事ができるのでしょうか。
ここでは、どこの企業にも存在する事務などの一般的な職種については省くこととして、化学メーカーに就職した場合に化学系の学生が配属される可能性のある仕事に絞って紹介します。
注意しなければならないのは、同じ職種で募集が行われていても、企業によって業務内容や仕事の範囲がさまざまであることです。
自分のやりたい仕事がどの企業のどの職種で叶うのかは、しっかりと企業研究をして調べる必要があります。
研究開発職
研究開発職は専門的なスキルや知識が求められる仕事であるため、大学での専攻を活かして仕事をしたい理系学生が化学メーカーを志望する際、まず思い浮かぶ職種ではないでしょうか。
今まで世の中になかった新しい技術や、新製品を創りだすことが研究・開発の仕事です。
また、既存の製品を改善するための応用研究なども行います。
研究開発とひとことで言っても、基礎研究、製品開発、分析などをはじめとしたさまざまな業務があるため、部署が細かく分けられている場合も多く、どの業務がどの部署で行われるのかは企業によりさまざまです。
大学の研究室のイメージにいちばん近い基礎研究では、新しい物質を合成したり新しい製法を考えたりしますが、同じ研究開発職でも知的財産を専門に扱う部署や分析のみを行う部署もあります。
製造生産技術開発職
どんなに良い製品を開発したとしても、製造・生産技術が確立しなければ商品化はできません。
その製品の製造に関する技術を開発したり、生産方法の構築をしたりすることが製造生産技術開発職の仕事です。
また、製品をより安全かつ安定的に製造するために、既存の設備の改善をすることも仕事です。
具体的には、化学プラントにトラブルがあれば、トラブルの原因究明のために化学工学的な解析を行い、コストダウンのための製造技術や生産方法についての研究を行うなどをしています。
この製造生産技術開発職の仕事によって、製造の効率化や量産化が可能となり、製品を市場に送り出すことができるのです。
事業戦略に合わせて、製造技術や生産方法の研究を行うことで技術革新を実現し、最終的には企業の売上や利益にもつながるため、ものづくりの最前線を担っているという実感が持てる仕事です。
営業職
営業職は、企業や消費者に自社の製品を売り込むのが主な仕事です。
また、顧客とのコミュニケーションからニーズを引き出し、それを開発サイドにフィードバックすることで市場を開拓していきます。
営業職はどの企業にも存在する職種ですが、化学メーカーでは自社の製品の機能や性能を企業や消費者に説明するために、専門的な知識が必要です。
そのため、化学メーカーの営業職は、専攻の知識を活かせる職種として化学系の理系学生に人気があります。
営業と言うと、文系出身者の職種のイメージが強いですが、化学系の理系出身者が多いのも化学メーカーの特徴でしょう。
化学系学部の理系学生であっても、営業の仕事に興味があるという人では、化学メーカーを視野に入れて活動してみると良いでしょう。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーで働く魅力
就職活動においての企業選びは、まず世の中にある業界を知り、興味のあるものに絞り込んでいかなければなりません。
大学で専攻している分野と関係のある業界であるという理由で化学メーカーを調べ始めたとしても、調べていく中でその業界で働く魅力が見出せなければ、ほかの業界にも広げて業界研究を行う必要があります。
何を魅力と感じるかは人それぞれですので、自分にとっての魅力を探してみましょう。
ここでは、一般的に考えられる化学メーカーで働く魅力を紹介します。
やりがいが実感しやすい
私たちの生活は、化学製品であふれています。
医薬品やスマートフォン、衣料品など、生活になくてはならないものの中間材や素材の多くは、化学メーカーで作られているものです。
そのため、多くの人の日常生活を支えているという実感が湧きやすいことが魅力のひとつでしょう。
また、世の中にない新しい素材や画期的な技術を生み出し、多くの人の暮らしをより良く変えられる仕事をしていることで、やりがいを感じられるでしょう。
長い研究の末にようやく世の中に出る技術もあり、その結果として世の中を変えるようなスケールの大きい仕事ができることも大きな魅力です。
また、日本の基幹産業であるため、日本の経済を支えていることや社会の一員として世の中に貢献できることなど、大きなスケール感でやりがいを実感できることが魅力と言えます。
安定した企業が多い
アメリカのシェール開発や中国のプラントにおける生産能力の増加により、海外から安い基礎化学品が入ってくるなど、化学メーカーの競争は激化しています。
しかし、日本企業の高い技術力に支えられていることもあり、日本の化学業界はまだまだ安定した業界と言えるでしょう。
今後発展が望めるあらゆる最新技術にも、化学メーカーの生み出す製品は必要不可欠なものです。
また、化学メーカーの顧客は一般消費者ではなく企業なので、販路がしっかりとしていることにより、安定した経営をしている企業が多いのが特徴です。
現在さまざまな転換期を迎えているとはいえ、依然として我が国の基幹産業であり、生活には欠かせない製品を作っている化学業界は安定した業界であると言えるでしょう。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーの平均年収
就職先を選ぶ場合には、給料についても気になるところではないでしょうか。
平均年収についても、紹介していきます。
2021年において、化学メーカーの平均年収は639万円でした。
2021年3月の各社の有価証券報告書からランキングしてみると、化学メーカーの中での平均年収の高さで1位だったのは、三菱ケミカルで1014万円でした。
次いで、富士フイルムが970万円、3位は積水化学工業で904万円となっています。
化学メーカー全体の平均年収よりも300万円以上高く、三菱ケミカルに関しては432万円もの開きがあることがわかりました。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーに向いている人
就職活動において、自分が志望する業界に向いているかどうかは、就職後のミスマッチを防ぐためにも重要なポイントです。
さまざまな部署がある総合化学メーカーなどの場合、合う、合わないは一概に言えません。
ここでは、とくに理系学生が配属されることの多い研究開発職や、製造生産技術開発職について紹介します。
最終的に自分がその企業に合うか合わないかを見極めるためには、自己分析をしっかり行う必要があります。
必ず客観的に分析してみるのがおすすめです。
粘り強い人
化学メーカーでは、すぐに諦めない粘り強さを持っている人物は歓迎されると言えます。
とくに、研究開発の仕事においてはなおさらでしょう。
研究で結果を出すために失敗はつきものであり、研究テーマによっては非常に長い期間を粘り強く同じ研究に費やさなければならないことも少なくありません。
研究室での研究に苦労した経験がある人も多いと思いますが、度重なる失敗に普通の人ならうんざりするような場合でも、むしろ進んで地道に努力を続けられる人は、向いていると言えるでしょう。
また粘り強いことは、同時に強い精神力が備わっていると言えます。
これは、研究職以外の仕事であっても求められる資質です。
自己分析の結果、粘り強い性格を証明できるエピソードがあれば、積極的にアピールしましょう。
協調性がある人
就職した場合、実際にどこの部署に配属されるかで必要となる資質は多少異なりますが、化学メーカーの仕事は協調性の求められる仕事が多いです。
とくに化学系の学生が志望することの多い研究開発の仕事は、チームで活動することが多いため、チームワークを大切にできる協調性のある人が求められます。
また、生産技術開発職の仕事でも、多くの人とコミュニケーションを取りながらひとつの目的を達成するために協力できる人が向いています。
工場を動かすことも決して1人でできることではなく、多くの人と力を合わせて連携して働かなくてはなりません。
このように、化学メーカーでは高い専門性だけでなく関係部署との連携が多いため、選考ではコミュニケーション能力が重視されるのです。
分析力がある人
分析力があることも、化学メーカーでは求められることの多い資質と言えます。
とくに研究開発の仕事はトライアンドエラーの連続であり、成功の裏には膨大な失敗があるのが通常です。
データからなぜ成功しなかったのかを分析して再試行を繰り返すことで、新しい素材や技術の開発が叶うのです。
化学メーカーでは、分析力を求められるのは研究開発職だけではありません。
工場トラブルに対応する生産部門の仕事も、トラブルの原因究明のために分析力が求められます。
大手の化学メーカーでは、分析部門がいくつもある場合があり、ほかの研究部署からの依頼を受けて分析のみを行う部署もあります。
化学メーカーで研究開発に携わりたい場合において、分析力は必要不可欠で重要な能力です。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーの就活に活かせる資格3選
化学メーカーは専門的な知識や技術を求められる仕事が多いため、入社後に関係部署から必要な資格を取るように言われることが多いです。
もちろん採用が決まれば取得は入社後でも構わないのですが、とくに大手の企業は競争が激しいので、少しでも採用を有利にするために取得を考えてみるのも良いでしょう。
ここでは、化学メーカーへの就職活動を成功させるために、持っていると有利な資格3つを難易度や実用性を考慮して紹介します。
エントリーや面接でアピールできるように、早めに準備しておきましょう。
危険物取扱者
国家資格であり、難易度も高くないうえに化学メーカーに限らず汎用性もあるため、業界を限らず取得しておくと便利でしょう。
危険物取扱者は、消防法でいう「危険物」の取り扱いができる資格です。
化学メーカーではさまざまな試薬を日常的に使用しますが、これらの試薬は消防法の「危険物」に該当するものが多いです。
研究職以外の工場や品質管理などの業務でも、危険物を扱うことが必要になります。
この資格には、取り扱える危険物の範囲により、甲・乙・丙の3種類があります。
乙・丙はとくに受験に必要な要件がなく、誰でも受験可能です。
すべての種類の危険を取り扱える甲には一定の受験資格がありますが、専攻が化学系の就活生であれば「化学に関する学科または課程」を15単位以上習得していることで受験資格を充足していることになります。
QC検定
QC検定の「QC」とは「Quality Control」の略であり、品質管理の知識を問う試験です。
受験資格はとくになく、誰でも受験可能な試験です。
1級から4級まであり、どの級からでも受験することができます。
国家資格ではないため馴染みのない人も多いですが、化学系の資格としては実用性が高く、近年受験者も増加傾向で認知度も上がっています。
品質管理や品質保証に関係する部署や技術職での実務に直結する資格ですが、この資格が活用できる場面はそれだけではありません。
化学メーカーの研究職を志望するのであれば、QC検定の知識は効率的な研究を進めるために非常に役立ちます。
具体的には、実験データを示すために再現性は何回必要か、どのデータを補完すれば根拠を示すことができるか、正しい統計ができているかなどに活用できるのです。
難易度が高くはなく、化学メーカーでは多くの場面で活用が期待できる実務に直結しやすいため、取得すべき資格と言えるでしょう。
知的財産管理技能検定
知的財産管理技能検定は難易度が高めですが、とくに化学メーカーでは実務との関わりが大きいため、取得しておくと重宝する資格です。
知的財産管理技能検定とは、特許権をはじめとする知的財産に関する国家試験です。
法律系の資格であるため、文系の資格のイメージがあるかもしれませんが、化学メーカーなど理系のものづくりには必要不可欠の資格と言えます。
研究職では、製品の特許出願や検査、調査は常に行われており、ある程度の規模の企業では知的財産を専門に扱う部署があるのが一般的です。
どんなに素晴らしい技術や製品を生み出しても、強い知的財産権を得られなければ利益につながりません。
そのため、知的財産に関する知識は化学メーカーに限らず、製造業でも非常に重要になってくるのです。
また、製造業以外の業界においても役に立つ非常に実用性の高い資格です。
【化学メーカーの業界研究】化学メーカーを代表する企業
ここまでで化学メーカーに関する概要をお伝えしましたが、次に代表的な化学メーカーにどのような企業があるのかを紹介します。
ここで紹介する企業は、化学メーカーの中でも誰もが一度は耳にしたことのある日本を代表する大手の企業です。
ほかにも化学メーカーは多数ありますので、まずはここで紹介する大手企業を切り口として、業界内にあるほかの企業についても詳しく調べてみましょう。
複数の事業領域を持つ大手の化学メーカーを見てみることで、興味のある領域を探してみましょう。
三菱ケミカルHD
総合化学企業三菱ケミカル株式会社をはじめとするグループ会社を管理・統括する持ち株会社です。
2022年4月より、持株会社・事業会社ごとに経営していた体制から「One Company, One Team」の考え方のもと、グループ全体を一体的に運営する体制に移行しました。
これに伴い、2022年7月1日より株式会社三菱ケミカルホールディングスから、三菱ケミカルグループ株式会社へ社名変更しています。
傘下の事業会社である三菱ケミカルや田辺三菱製薬などに社長を置かず、HDが意思決定を担い、投資判断のスピードを速めるなどの組織改革に取り組んでいます。
就任2年目のジョンマーク・ギルソン社長が打ち出す、これらの新戦略がうまく機能するかどうかが注目すべき点でしょう。
住友化学
住友化学株式会社は、住友グループの中核を担う大手総合化学メーカーです。
国内の化学メーカーとしては、三菱ケミカルグループに次いで第2位の売上高を誇っています。
戦後、除虫菊から殺虫成分の類縁化合物ピレスロイドを、工業的に化学合成する技術を確立させたことから始まりました。
現在、家庭用・園芸用殺虫剤の原料で世界一のシェアを占める一方、マラリアを媒介する蚊防除用の蚊帳を通じて、社会貢献としても事業をプログラム化しています。
1958年に愛媛でエチレンおよび誘導品の生産を開始し、石油化学部門へ進出し総合化学メーカーへと成長していきました。
日本の化学メーカーの中でも農業化学部門・農業事業を有しており、農作物の安定的な供給、世界の人口増加に対応するための食糧増産に貢献している点が特徴的です。
富士フイルムHD
富士フイルムホールディングス株式会社は、富士フイルム株式会社と富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧:富士ゼロックス)を傘下に持つ持株会社です。
富士フイルム株式会社は、1934年に写真フィルムの国産化を目指すため、大日本セルロイド(現:ダイセル)の写真事業を分社し設立されました。
ここで紹介する化学メーカーの中では、唯一他業種からの参入した企業です。
インスタントカメラ「チェキ」などで馴染みがありますが、2000年以降は写真フィルムの製造で培われてきた化学合成などの技術力を応用して、液晶ディスプレイの材料や医療・医薬品、機能性化粧品、サプリメントなど、メディカル・ヘルスケア分野など新規分野への事業展開を積極的に行っています。
売上の柱が複数あるため、事業ポートフォリオを組み換えながらリスク分散できることが強みと言えます。
旭化成
旭化成株式会社は化学の技術をベースに、ケミカル、繊維、エレクトロニクスなどの「マテリアル」、住宅・建材を主とする「住宅」、医薬、医療、クリティカルケアを担う「ヘルスケア」の3領域で事業展開している総合化学メーカーです。
旭化成のはじまりは、当時輸入に頼っていた農業を変え、社会を豊かにしたいとの想いから立ち上げた農業用肥料となる硫酸アンモニアの生成工場でした。
また、絹の特徴を持った人口繊維を安く人々に届けたいという思いから、当時世界最大生産能力を誇る工場を立ち上げたのが繊維部門のはじまりです。
そこから現在までケミカル・テクノロジーを中核とし、事業を多角化する中で、幅広い技術を融合させて確立してきた数々のコアテクノロジーが強みと言えます。
川上から川下までの製品を扱っている総合化学メーカーであり、事業領域が広いため、さまざまな事業分野に挑戦できる可能性があることが魅力のひとつです。
おわりに
化学メーカーは、私たちの生活に必要不可欠な製品に関わる、非常に重要な役割を担っている企業です。
そして、世の中に新しい技術を生み出す研究職はとても魅力的な仕事です。
紹介した企業は誰もが知る超大手の企業ばかりですが、名前に馴染みがなくても魅力的な技術を持つ化学メーカーは数多く存在します。
自分に合う企業を見つけるためには、ここから派生させて関連のある業界や企業を調べてみることが重要です。
また、自分を正しく把握していないと自分に合う企業を見つけることはできませんので、自己分析もしっかり行っておきましょう。