HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
就活をはじめ、「鉄鋼業界に興味を持った」という方も多いでしょう。
鉄鋼業界にエントリーするにあたり、まずは業界に対する深い理解と研究が欠かせません。
そのうえで、自らの研究テーマをどのように志望動機に反映させ、自分自身を企業に売り込んでいくかがポイントになってきます。
今回は鉄鋼業界の特徴と動向、そして将来性について詳しくお伝えするとともに、鉄鋼業界を志望する際の志望動機の書き方について例文も踏まえてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
【鉄鋼業界の志望動機】鉄鋼業界の特徴
鉄鋼業界とは、日本経済の根幹を支える業界のひとつで、品質の面でも世界に比べて高い技術力を有しています。
鉄鋼産業は自動車や産業機械、情報通信機器およびインフラなど、さまざまな産業の基盤となっており、社会的な役割と影響力も非常に大きいと言えます。
鉄鋼業界の動向
2022年度における世界の粗鋼生産量ランキングは1位が中国、2位がインド、そして3位が日本となっています。
特に中国の粗鋼生産量の伸びが目覚ましく、世界的な鉄鋼需要は拡大の一途にありましたが、昨今のロシア・ウクライナ問題をはじめとした世界情勢の影響もあり、昨今は需要が低迷しています。
国内に目を向けると、やはり中国とインドの粗鋼生産量の拡大が、日本の鉄鋼業界に大きな影響を与えていると言えるでしょう。
供給量が増えるということは、それだけ鉄鋼製品の価格も下がるということです。
価格が下がれば、当然供給側の収益も低下していくことになります。
さらにコロナや少子高齢化に伴う国内経済の長期低迷が、国内需要の縮小化を助長しており、これによって大幅な赤字になっている企業も少なくありません。
しかし、苦境に立たされる業界の中においても、日本の鉄鋼メーカーの技術力は高水準を保っています。
粗鋼生産に関するさまざまな特許も有しているため、高い品質の製品を武器に世界と戦っていける下地は十分にあると言えるでしょう。
鉄鋼業界の将来性
人口減少に歯止めがかからない国内情勢を見ると、短期的に日本経済の将来性に光明を見出すことは難しいと言えます。
他方、世界に目を向けると人口は右肩上がりで増加しており、新興国では著しい経済成長を遂げている国もあります。
世界経済の発展途上において、インフラ需要は欠かせません。
あらゆる構造物において鉄が必要とされるため、世界の鉄鋼需要は将来的に伸びていくことが予想されます。
そういった情勢の中で、これからの鉄鋼業界において期待されることは、新技術の開発を背景にした質の高い製品の供給と、需要が伸びることが見込まれる新興国への進出でしょう。
また競争力を高めるための電炉メーカーの再編統合や、日本が得意とする環境への配慮といった面も注目すべき点のひとつと言えます。
【鉄鋼業界の志望動機】志望動機で見られているポイント
鉄鋼業界の志望動機について、企業は応募者の志望動機をどういった点で見ているのでしょう。
志望動機を書く前に、まずは採用担当者の目線で一度考えてみるのも良いかもしれません。
主なポイントは、「熱意」と「達成目標」の2つです。
熱意
鉄鋼業界に限った話ではありませんが、志望動機で特に重要視されている要素は「熱意」です。
その熱意の中に、業界や企業を志望する理由と着眼点、そして志望動機の根拠となる就活の軸がきちんと背景にあるかどうかが鍵となってきます。
熱意は「前向きな気持ち」と解釈されることもあるかもしれませんが、就活においての判断基準はそれだけではありません。
もちろん、表面的なポジティブさは応募者自身の積極性やポテンシャルを評価するひとつの軸にはなり得ます。
しかし、志望する熱意がある人は、「業界のことを深く理解しようと徹底的に研究してしかるべき」と企業は考えるでしょう。
そして、「なぜこの業界でなければならないのか」を強力に後押しする就活の軸があって初めて熱意として認められるのです。
何を成し遂げたいのか
入社後に何を成し遂げたいのかを強くイメージできているかどうかも、志望動機の大きな評価ポイントです。
就職した後の将来像について勘違いしやすいのは、「企業が自分を成長させてくれる」という考え方です。
企業は採用した社員を成長させるために存在する組織ではありません。
人材というリソースを使い、より大きな利益を求めていく営利団体なのです。
そのため、自身が成長する過程で会社に利益をもたらし、長期にわたって企業業績に貢献できるかどうかが重要です。
つまり、「この人なら将来的に自社に利益をもたらしてくれそうだ」「ぜひ自社の一員として一緒に働いてもらいたい」と採用担当者に思わせることができるかどうかがポイントと言えます。
具体的には、これまでのあなたの経験と強みをどのように活かすことができるのかをアピールしましょう。
【鉄鋼業界の志望動機】志望動機の書き方
では、ここからは実際に志望動機を書く際に押さえておくべき点をお伝えしていきます。
まずは結論ファーストを意識し、自分が伝えるべき結論から書き始めましょう。
志望動機は小説や物語ではありませんので、文章の基礎構文である起承転結は適しません。
なぜ志望しているのか
最初に、なぜ鉄鋼業界で働きたいと思ったのか、なぜその企業でなければならないと思ったのか、志望動機の結論を書きます。
コツは、「ただ単に魅力を感じたから」「昔から興味があったから」と漠然と曖昧な表現をするよりも、最初に述べた志望動機の結論を補足説明していくエピソードにつながる工夫をすることです。
たとえば、自身の研究テーマにつながるキーワードを盛り込んだり、応募企業の企業理念に言及したりするなどがその一例です。
エピソード
次に、結論として書いた志望動機の理由について、具体的根拠を持って説明していきましょう。
過去の自らの経験や大学および大学院での研究成果などは、直接的な志望動機の根拠として親和性が高く、説得力があります。
さらに、自身の性格や価値観などの特性を述べることで、志望理由が生まれたきっかけと背景が補完されますので、あなた独自の個性的な志望動機に一歩近づくことができるでしょう。
大事なのはリアリティとエピソードであり、「○○という場面で○○と思った」といった具体的な話は特に有効です。
入社後にやりたいこと
結論としての志望動機を書き、そして志望動機の説明をしたら、入社後にやりたいことを述べましょう。
結論→理由→将来展望の構成は流れがスムーズで、読み手にも伝わりやすいため多くの方が活用しています。
入社後にやりたいことを最後に伝えることで、熱意や意欲を底上げする効果もあると言えます。
また、具体的に何がやりたいかを述べるためには業界と企業研究が欠かせませんので、必然的に業界・企業研究に対する深掘りが十分にできていることのアピールにもつながるでしょう。
【鉄鋼業界の志望動機】鉄鋼業界を代表する企業
世界の粗鋼生産量ランキング3位を支える日本の鉄鋼業界にはさまざまな企業があります。
ここでは、その中でも業界を代表する企業3社について紹介していきましょう。
いずれも東証プライム上場の日本を代表する鉄鋼メーカーです。
日本製鐵株式会社
日本製鐵株式会社は粗鋼生産量で国内首位、世界4位の企業で、技術力に定評があります。
高級鋼板では圧倒的な存在感を占めており、日本を代表する鉄鋼メーカーのひとつです。
2012年に新日本製鉄と住友金属が統合して誕生した新日鉄住金が2019年4月に商号を変更し、日本製鉄として新たなスタートを切りました。
日本製鉄は、高い技術力に裏付けされた高品質な製品を安定的に供給できる点が主な強みです。
また、積極的な研究開発と人材育成、売上収益の3割以上を占めるグローバル展開も特徴的です。
今後のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロとすること)などの市場変化にも十分対応していける素地があり、持続的な企業成長が期待されています。
JFEホールディングス株式会社
JFEホールディングス株式会社は粗鋼生産量国内2位、世界10位台のJFEスチールが中核の持株会社です。
また、同社のスチール研究所は鉄鋼分野でも世界最大級とも言われています。
JFEホールディングスの特色として挙げられるのは、カーボンニュートラル事業に積極的に力を入れている点です。
JFEグループは、気候変動問題への取り組みを最重要課題と位置付け、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定しました。
持続可能な社会の実現に向けて、自社技術を通じたJFEグループのCO2排出量の削減、社会全体のCO2削減への貢献拡大により企業価値の向上を図っていくとしており、具体的には鉄鋼事業で2024年度末CO2排出量を18%削減(2013年度比)するという計画があります。
神戸製鋼所
日本国内で高炉(製鉄工程の上流にあたる製鉄所の中核設備)を持つ一貫製鉄会社は、日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所の3社しかありません。
株式会社神戸製鋼所は高炉国内3位の企業で、アルミ・銅、産機・建機・電力など複合経営を行っています。
高張力鋼板(ハンテン)について独自の技術を有していることから、鉄鋼は自動車比率が高く、航空業界にも強みがあります。
同社も日本製鐵同様、売上高の3割以上を海外が占め、グローバル展開に積極的です。
100ヶ所以上もの海外拠点を有していることは、積極的なグローバル展開の裏付けとも言えるでしょう。
中長期経営計画では海外売上比率50%以上を掲げていることからも、海外での営業活動がよりいっそう躍進していくことが想像されます。
【鉄鋼業界の志望動機】鉄鋼業界の職種
次に、鉄鋼業界の主な職種について解説します。
鉄鋼業界の主な職種は、「研究開発」「生産」「営業」の3つに大別されます。
同じ業界でも職種によって携わる業務は異なってきますので、それぞれの職種の特徴をよく理解しておきましょう。
研究開発
鉄鋼業界の企業は、現在世界的な生き残りをかけてさまざまな研究開発に取り組んでいます。
研究開発職は企業の存続と発展に関わる極めて重要なセクターで、各社技術の粋を結集して投資を行っています。
たとえば鋼材研究の分野の場合、新たな特性を持つ鋼材の開発に注力しており、硬度・柔軟性・耐久性などが異なるさまざまな素材を次々に製品化してきました。
鉄を中心とした研究開発の進歩は環境面にもおよび、産業全体の活性化と日本経済の技術革新にも大きな影響を与えています。
素材のほかに、製造工程の効率化に取り組む企業もあり、コスト面での成果につながる研究開発も多く見受けられます。
鉄鋼業界の企業がどんな研究開発を行っているかを知りたい方は、各企業のホームページやプレスリリースなどを確認すると良いでしょう。
生産
鉄鋼業界の生産職種は、製造現場における生産ラインでの進行管理や材料の発注など、生産に関わるものが主な業務です。
生産に関わる業務は多岐にわたります。
たとえば生産管理の場合、設備の保全・人の配置・目標設定・品質のチェックに至るまで、素材を製品として作り上げるまでの業務の流れを把握することが必要です。
最初は特定の作業や業務に従事することが多いかもしれませんが、現場の責任者クラスになると、統率能力と全体を俯瞰して問題を事前に解決する能力が求められます。
営業
営業は、その名の通り自社製品を取引先に売り込む職種です。
しかし、特定のクライアントへのルートセールスだけでは販路の拡大はありません。
業界を横断して、企業の問題解決を軸にいかに自社製品を提案することができるかどうかが業績に大きく影響します。
内需の停滞により、鉄鋼企業の多くは海外展開に力を入れています。
能力次第では海外拠点を中心とした海外営業を任されるケースもあるため、英語のスキルなどは将来的なキャリアに活かされる余地が十分にあると言えるでしょう。
【鉄鋼業界の志望動機】志望動機を書くうえでの注意点
鉄鋼業界への理解が深まったら、いよいよ志望動機の作成に取りかかりましょう。
先述した「書き方」にプラスして、書く前の準備として「これだけは意識しておいた方が良い」とされている注意点を2つに絞ってお伝えします。
抽象的な表現になっている
まずは、抽象的な表現をできるだけ排除しましょう。
志望動機は企業にとって自分がいかに有益な人物であるかをアピールするためのものです。
採用担当者に「この人なら自社に利益をもたらしてくれそう」「ぜひ一緒に働いてみたい」と思ってもらえることが非常に大切だと言えます。
そのためには、業界の成長性(将来性)や企業のネームバリューといった抽象的な理由ではなく、自分の能力をフルに活かすことができるような具体的で魅力的な動機が必要になってくるのです。
福利厚生や給与がベースの志望動機になっている
働く環境は非常に重要です。
就業時間や就業日数、有休取得率などはたしかに気になる点ではありますが、福利厚生や給与をはじめとした「働きやすさ」を前面に出した志望動機は好ましくありません。
なぜなら、同じ待遇の同業他社でも代替が効くと思われてしまうからです。
どうしてもその会社でなければならない点は、もっとほかにあるはずです。
就業条件は、企業選択の条件として持っておくことは問題ありませんが、志望動機のベースとして組み込むのはおすすめしません。
【鉄鋼業界の志望動機】例文
では、実際に鉄鋼業界を目指す方のために、鉄鋼業界の志望動機の例文を2つご紹介します。
これまでにお伝えした書き方のポイントや注意点も踏まえ、自身に合ったものがあればぜひ参考にしてアレンジしてみてください。
例文①
私が貴社を志望する理由は、素材の研究や新しい製品の開発など、イノベーションを探求し続けている貴社に、常に挑戦できる風土があると感じたからです。
私は学生時代、スポーツ系のクラブに所属し、全国大会への出場を目指すために日々練習に励んでいました。
当初チーム力は大変弱く、メンバーの力がまったく発揮されていない状態でした。
キャプテンに任命された私はメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、練習方法を幾度となく変え、相手チームを研究するなど試行錯誤を重ねた結果、チーム力はみるみる上昇して結果的に全国大会への出場を果たすことができたのです。
失敗を恐れず挑戦した結果だと自負しており、貴社への入社後も、持ち前の行動力で貴社製品のシェア拡大に向け、世界中を飛び回りたいと考えています。
例文②
私は大学で材料学を専攻しており、鉄という素材に無限の可能性を感じています。
業界内でも高い技術力を有している貴社で、学生時代に学んだ材料学の知識と経験を活かし、鉄鋼を通じて社会に貢献していきたい一心で貴社を志望しました。
材料学を学ぶ環境に身を置くことで、世の中の構造物を構成するさまざまな素材について、その特徴を理解すればするほど、素材の世界に傾注していくようになりました。
特に鉄については、汎用性の面で優れていることはもちろん、温度や加工方法ひとつで大きく特性が変わります。
同じ鉄でも用途に応じていくらでもその姿を変えられる点に、材料学の本質を見出せました。
貴社に入社後は、素材の可能性を見極め、鉄鋼業界の最先端を歩むイノベーションを巻き起こしていきたいと考えています。
まとめ
今回は、鉄鋼業界の特徴と動向、将来性も含め、業界へのエントリーに向けた志望動機の書き方についてお伝えしてきました。
まずは業界研究をしっかり行い、自身の経験をもとに、なぜ鉄鋼業界を志望するかの動機と将来の展望を固めましょう。
そのうえで、志望動機の作成に取りかかってください。
志望動機の書き方にはセオリーがあります。
今回紹介した構成と注意点を意識しながらも、あなたの特性を活かしたオリジナルの志望動機を作り上げてください。