
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
就職活動で特定の業界を検討する際、「きつい」といったネガティブな評判が耳に入り、不安を感じる就活生は少なくありません。
特に、社会の基盤を支えるゼネコン(総合建設業)業界は、スケールの大きな仕事である反面、体力的に大変だというイメージを持つ人もいるでしょう。
この記事では、ゼネコン業界の実態を多角的に分析し、「きつい」という評判の真相と、その上で働くことのやりがいやメリットを掘り下げていきます。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界はきつい?
ゼネコン業界は、超高層ビルやダム、インフラといった大規模な建設プロジェクトを担うため、社会的な影響力が非常に大きいのが特徴です。
そのスケールの大きさから、仕事の達成感はひとしおですが、工期の厳守や現場での安全管理など、責任の重さからくるプレッシャーも存在します。
残業や休日出勤が多いという声がある一方で、最近では働き方改革も進んでおり、以前と比較して労働環境の改善に取り組む企業が増えています。
一概に「きつい」と断じるのではなく、仕事内容や職種、企業ごとの文化を深く理解することが重要です。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界の仕事内容
ゼネコン業界の仕事は、建物を建てるというプロセス全体を統括する、非常に多岐にわたる専門的な業務で構成されています。
プロジェクトの企画段階から始まり、設計、施工、そして引き渡し後のメンテナンスまで、一つの建物に関わる全てを管理します。
建設現場で働く職種のイメージが強いかもしれませんが、実際には本社や支店での企画・営業・事務など、様々な役割を担う社員が連携して一つのプロジェクトを成功に導きます。
企画・営業
企画・営業部門の仕事は、新しい建設プロジェクトの種を見つけ、具体化することです。
顧客であるデベロッパーや官公庁、一般企業などに対して、建設計画の提案を行い、契約の獲得を目指します。
土地の有効活用法や、顧客の抱える課題を解決するための最適なソリューションを提案するコンサルティング的な要素も含まれます。
市場調査や競合分析を行い、プロジェクトの採算性を検討するなど、建設が始まる前の重要な土台作りを担います。
設計
設計部門は、プロジェクトの骨格となる建物のプランを作り上げます。
構造、意匠、設備など、専門分野ごとに分かれて連携し、建物の機能性、安全性、そして美しさを両立させる図面を作成します。
顧客の要望や予算、法規制などを満たしつつ、建築家としての創造性を発揮することが求められます。
設計図は施工現場の全ての基準となるため、緻密な計算と正確な表現が不可欠な仕事です。
施工管理
施工管理は、建設現場の監督・指揮官としての役割を担います。
設計図に基づき、スケジュール通りに、予算内で、安全に工事が進むよう、現場全体をマネジメントします。
職人さんへの指示出し、資材の発注・管理、品質チェックなど、多岐にわたる業務を遂行し、現場の全てを掌握します。
予期せぬトラブルや天候の変化にも柔軟に対応し、問題を解決していく能力が求められる、プロジェクト成功の鍵を握る仕事です。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界の主な職種
ゼネコン業界には、建設プロジェクトを成功に導くために不可欠な、様々な専門職が存在します。
現場で汗を流す職種から、プロジェクト全体をデスクで支える職種まで、それぞれの役割が連携して機能しています。
就職活動で職種を選ぶ際には、自分の適性や興味関心が、それぞれの職種で求められるスキルや日々の業務内容と合致しているかを見極めることが重要です。
現場監督(施工管理技士)
現場監督は、施工管理のスペシャリストです。
建設プロジェクトの品質、工程、安全、予算といった四つの重要要素を管理します。
現場での作業指示や、図面通りに工事が進んでいるかの確認、協力会社との調整など、現場の最前線で指揮を執る役割です。
この職種は、技術的な知識はもちろん、多くの人をまとめ、動かすための強力なリーダーシップとコミュニケーション能力が求められます。
技術開発・研究
技術開発・研究職は、建設技術の未来を創造する役割を担います。
耐震技術の向上や、環境負荷の低い新素材の開発、さらにはAIやIoTを活用したスマート建設技術の研究など、多岐にわたります。
既存の技術にとらわれず、より安全で効率的、そして持続可能な社会を実現するための革新的なソリューションを生み出すことがミッションです。
大学や研究機関との連携も多く、専門知識を深く追求したい人にとって魅力的な職種です。
事務・経理
事務・経理職は、建設プロジェクトや企業運営を円滑に進めるためのバックアップを担います。
建設現場での資材の受発注や請求書処理、本社での財務管理や人事労務管理など、企業の基盤を支える重要な役割です。
建設という専門性の高い業界においても、企業活動の基本的な部分を支えるこれらの職種は不可欠であり、正確性と効率性を求められます。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界がきついとされる理由
ゼネコン業界が「きつい」と認識される背景には、いくつかの共通した要因があります。
しかし、これらの要因は、仕事の性質上避けられない部分と、企業の努力によって改善可能な部分に分けることができます。
就活生は、これらの「きつさ」が具体的にどのようなものかを知り、自己分析の視点に取り入れることが大切です。
労働時間の長さと休日出勤
建設プロジェクトには必ず厳格な工期があり、これを守るためのプレッシャーは非常に大きいです。
特に工事が佳境に入ると、作業の遅れを取り戻すために労働時間が長くなりがちで、休日出勤を余儀なくされるケースも少なくありません。
現場の状況は天候や予期せぬトラブルによって左右されるため、計画通りに進まないことへの対応が長時間労働の一因となることがあります。
現場特有の人間関係と環境
建設現場は、ゼネコン社員だけでなく、多くの協力会社の職人さんたちと連携して一つの目標に向かう場所です。
多様な人々とのコミュニケーションが必要であり、特に現場監督は、年齢や立場が異なる人たちをまとめ上げる高い対人スキルが求められます。
また、現場は基本的に屋外であり、夏は暑く、冬は寒いといった厳しい環境下での作業が多くなるため、体力的な負担も無視できません。
責任の重さとプレッシャー
ゼネコンが手掛ける建物やインフラは、社会の安全と機能に直結しています。
一つでもミスがあれば、大事故につながりかねないため、施工管理には極めて重い責任が伴います。
この責任感からくるプレッシャーは、精神的な負担となり得ます。
特に大規模なプロジェクトほど、関わる人数も多く、問題発生時の精神的な負荷は計り知れません。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界の現状・課題
ゼネコン業界は、社会のインフラを支える重要な役割を担いつつも、いくつかの深刻な課題に直面しています。
これらの課題は、企業や業界全体で解決に向けて取り組んでいる最中であり、就活生が業界研究をする上で、将来性を見極めるための重要な視点となります。
慢性的な人手不足と高齢化
建設業界全体で、若年層の入職者が少なく、現場で働く技能者や技術者の高齢化が進んでいます。
これにより、技術やノウハウの伝承が難しくなるという課題を抱えています。
各社は採用活動の強化はもちろん、外国人労働者の受け入れや、女性技術者の活躍を促す環境整備など、多様な人材を確保するための取り組みを加速させています。
働き方改革と生産性向上
長時間労働の是正は、業界全体の最優先課題の一つです。
2024年4月からは建設業においても時間外労働の上限規制が適用され、企業はより効率的な働き方への転換を迫られています。
これに伴い、ドローンやAIを活用した現場の効率化、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設計・施工プロセスの高度化など、テクノロジーによる生産性向上が急務となっています。
環境問題への対応とSDGs
現代社会において、環境への配慮は不可欠です。
ゼネコン業界も例外ではなく、脱炭素社会の実現に向けた省エネ技術の開発や、再生可能エネルギーの導入、建設廃棄物の削減などが強く求められています。
単に建物を建てるだけでなく、持続可能な社会の実現に貢献する建設のあり方を追求することが、企業の社会的責任となっています。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界に向いている人
ゼネコン業界で活躍できる人材には、いくつかの共通する特徴があります。
大規模なプロジェクトを成功に導くためには、専門的な知識だけでなく、人間的な魅力や行動力が不可欠です。
自分の持つ資質や興味が、この業界で求められる人物像と合致しているかを確認してみましょう。
ものづくりへの熱意と興味がある人
自分が携わった建物やインフラが、何十年も社会に残るというスケールの大きな「ものづくり」に、心から魅力を感じる人はこの業界に向いています。
単なる作業ではなく、一つの作品を世に送り出すという熱い思いを持ち続けられる人は、厳しい環境下でも高いモチベーションを維持できます。
建設プロセス全体に興味を持ち、技術的な知識を積極的に学んでいける探求心も重要です。
チームでの協働を厭わない人
建設プロジェクトは、一人では決して完成できません。
設計、施工管理、営業、そして数多くの協力会社の職人など、多様な専門性を持つ人々が一つのチームとなって動きます。
自分の意見をしっかりと持ちつつも、他者の意見に耳を傾け、円滑なコミュニケーションを通じて共通の目標達成に向けて動ける協調性が不可欠です。
チーム全体の成功に貢献したいという意識を持っている人は、この業界で活躍できます。
粘り強さと問題解決能力に自信がある人
建設現場では、予期せぬトラブルや設計変更、天候不順など、計画通りにいかない事態が日常的に発生します。
そのような状況に直面した際に、すぐに諦めずに解決策を探し、粘り強く対応できる力が求められます。
問題の本質を見抜き、論理的に解決へと導く能力は、特に現場監督などの職種においてプロジェクトを成功させる鍵となります。
社会貢献性の高い仕事にやりがいを感じる人
ゼネコン業界の仕事は、人々の生活や経済活動に不可欠なインフラを整備・維持するという、非常に高い社会貢献性を持っています。
自分が関わった建物が地図に残り、多くの人々に利用されることに大きな誇りや喜びを感じられる人は、日々の業務の困難を乗り越える強い動機を持つことができます。
社会の基盤を支える責任感を持って働きたい人に向いています。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界に向いていない人
ゼネコン業界が持つ特性や仕事の進め方は、人によっては適性の違いから「向いていない」と感じるかもしれません。
ここで挙げる特徴に当てはまるからといって、必ずしも入社を諦める必要はありませんが、入社後のミスマッチを防ぐためにも、これらの要素をしっかりと把握しておくことが重要です。
決まったルーティンワークを好む人
建設プロジェクトは、一つとして同じものがなく、現場ごとに状況が大きく異なります。
そのため、毎日同じ作業を繰り返すというよりも、刻々と変わる現場の状況に応じて、柔軟に対応策を考え、行動することが求められます。
予測不能な事態や変化への対応にストレスを感じやすく、決まったルーティンを好む人には、特に施工管理職は負担が大きいかもしれません。
屋外での作業や体力的な負担を避けたい人
特に施工管理職の場合、建設現場での勤務が基本となるため、天候に関わらず屋外で長時間過ごすことが多くなります。
夏場の暑さや冬場の寒さ、泥や埃といった現場特有の環境に抵抗がある人、また、ある程度の体力的なタフさが求められる仕事であるため、デスクワーク中心の生活を強く望む人には、この業界は向いていない可能性があります。
成果がすぐに目に見えることを求める人
大規模な建設プロジェクトは、計画から完成まで数年を要することが一般的です。
自分が関わった仕事の成果が形になるまでに時間がかかるため、短期間で明確な成果や達成感を求める人にとっては、もどかしさを感じるかもしれません。
長期的な視点を持ち、地道な努力を積み重ねるプロセスそのものに価値を見いだせないと、モチベーションの維持が難しくなることがあります。
【ゼネコン業界はきついのか】ゼネコン業界に行くためにすべきこと
ゼネコン業界への就職を目指す就活生が、内定を勝ち取るために今からできる具体的な行動は数多くあります。
単なる業界研究に留まらず、自身の適性を明確にし、それを企業に伝えるための準備が重要です。
ライバルと差をつけるために、戦略的な就職活動を進めましょう。
現場訪問やインターンシップへの参加
ゼネコン業界への理解を深める最も良い方法は、実際の建設現場を見ることです。
現場見学やインターンシップに積極的に参加することで、座学では得られない現場の雰囲気や、そこで働く人々の熱量を肌で感じることができます。
これらは、志望動機を具体的にする上で強力な材料となり、入社後のミスマッチを防ぐ上でも非常に有効です。
建築・土木関連の知識を学ぶ
文系出身者であっても、入社後にスムーズに業務に取り組むためには、建築や土木の基本的な知識を自主的に学んでおくことが望ましいです。
専門書を読む、関連資格の勉強を始めるなど、意欲的な姿勢を示すことは、選考においても高く評価されます。
技術的な知識を持つことで、入社後のキャリアパスも広がりやすくなります。
チームで何かを成し遂げた経験を言語化する
ゼネコンの仕事はチームワークが命です。
学生時代のアルバイト、サークル活動、ゼミでの研究などで、多様なメンバーと協力し、困難を乗り越えて何かを成し遂げた経験を具体的に言語化できるように準備しましょう。
その際、自分がチームの中でどのような役割を果たし、どのような課題解決能力を発揮したのかを明確に伝えることが重要です。
まとめ
ゼネコン業界は、確かに厳しい側面も持っていますが、それ以上に社会の基盤を築くという大きなやりがいと、技術革新に挑み続ける未来がある魅力的な業界です。
長時間労働の是正や生産性向上といった課題に対し、業界全体で真摯に取り組んでおり、労働環境は改善に向かっています。
この記事を読んで、もしあなたが少しでもこの業界に興味を持ったなら、ぜひ臆することなく一歩踏み出し、自分の目で業界のリアルを見てみてください。
あなたのものづくりへの熱意と社会貢献への意欲を、スケールの大きな仕事で実現できる場所が、ゼネコン業界にはあります。