HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
今回の記事では、銀行・メガバンクのみずほ銀行のIRを基に分析を行います。
みずほ銀行を分析し、同社の将来性や現在の収益性について解説していきます。
みずほ銀行の歴史をチェック!
みずほ銀行は、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行が合併して設立された銀行です。
それぞれの銀行が規模が大きな銀行として有名であったため、この合併はニュースでも非常に大きく扱われました。
ここでは、それぞれの3行の歴史を紐解きながら、みずほ銀行の合併に至った背景を解説します。
ちなみに、メガバンクは一部の就活生からは「色」別に呼ばれることもあります。
みずほ銀行の場合は企業のコーポレートカラーが青色であることから「青の銀行」と呼ばれています。
<第一勧業銀行>
第一勧業銀行のルーツとしては、「日本最古の銀行」とされる第一国立銀行。
1873年(明治6年)に設立された銀行と日本勧業銀行が合併してできました。
第一国立銀行については、当初はその名の通り「国立銀行」でしたが、1896年には、株式会社組織に改組し、それ以降は商業銀行として確固たる地位を築いてきました。
一方、日本勧業銀行は、官営銀行として近代日本の農・工業の改良発展という国家的・公共的使命を担って設立されました。
その後、1950年には普通銀行に転換し、以後は商業銀行として発展してきました。
2行が1971年(昭和46年)に第一銀行と日本勧業銀行が対等合併により発足したのが、<第一勧業銀行>になります。
特にこの2行については、元々は公的な銀行で有ったが、その後普通の商業銀行に変革した共通項があります。
また、当時は第一銀行が国内資金量順位6位。
日本勧業銀行が国内8位の規模の大きな銀行同士の合併であり、合併後は国内第一位の都市銀行として誕生しました。
<富士銀行>
富士銀行のルーツは、1866年(慶応2年)に安田善次郎が日本橋小舟町に開いた「安田商店」です。
その後、1923年(大正12年)には、安田関係の銀行11行が合わさり、日本最大の新安田銀行としてスタートしています。
つまり、安田財閥の総本家としての立場が富士銀行でした。
その後、戦後の「財閥解体」によって1948年(昭和23年)に商号変更したのが、「富士銀行」になります。
設立同時から鉄道や公共施設などの大規模公共事業に積極的に資金を投資することによって、政府や自治体などの国の機関との関係性を築いてきました。
その結果、公的機関との関係性が非常に強固なものとなっています。
実際に業界では「公金の安田」という名声(批判)があるほど、高い信頼関係を構築することができています。
実際には第一次世界大戦などの戦後の不況や混乱によって、社会情勢が悪化を辿った際に、経営難に陥った中小の銀行を支援したり、合併を行うなどによって、規模を着実に大きくしていきました。
その結果、上述の「第一勧業銀行」が設立するまでの長きに渡って、国内トップの銀行として不動の地位を築いていました。
<日本興業銀行>
日本興業銀行は国策によって「特殊銀行」として始まったのがルーツになります。
「特殊銀行」とは、特定の目的のためにそれぞれ単独の特別法に基づいて設立された銀行。
日本興業銀行は、近代工業のために資金的な面で需要に応えるために作られた銀行となっています。
設立されたのは1902年となっており、他の2行と比べると最も新しい銀行です。
実際に日本興業銀行が日本の製造業に与えた影響は大きく、戦前からの日本の製造業を間接的に支えていました。
結果として、そのことがGHQから「戦争への協力」していたと判断されるほど、大きな影響を与えていました。
特に戦前・戦中は軍需産業への融資が大半を占めており、大きな影響を与えていた証でもあります。
その後、1950年4月には、特殊銀行の元になった日本興業銀行法が廃止され、普通銀行へ転換します。
その後、みずほ銀行の設立までの間は、長期金融を戦略の中心とし、主に法人への融資などを行なっていました。
そのことから、規模は比較的大きな銀行ではありましたが、一般への知名度が低い銀行となっていました。
これら、3行の歴史的な経緯から、みずほ銀行は公的機関との連携を非常に密に取ることができる銀行といえます。
つまり、自治体との関係性が色濃く、その点に強みのある銀行です。
現在でも固有の業務として、宝くじの発行、販売などの公的な側面のある業務を行なっています。
みずほ銀行の戦略とは?
それでは、次にみずほ銀行の経営戦略を解説します。
(*2018年5月22日に行われた「みずほフィナンシャルグループの経営戦略」で説明された内容を参照)
まずは骨子となる同社の基本の戦略について解説します。
大きく分けると以下の4点が骨子となります。
(出典:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/ir/briefing/pdf/20180522_1.pdf28ページ)
まず、最も気になる「1:組織・人員の最適化」について解説していきましょう。
(出典:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/ir/briefing/pdf/20180522_1.pdf29ページ)
みずほ銀行では、現在約8万人の社員がいるグループですが、26年度までにはトータルで約1.9万人の人員削減を行おうと考えています。
これだけを見るとネックに感じるかもしれません。
実際に一部のニュースではこの情報を元に「1.9万人のリストラ」と報道している報道機関もありました。
しかし、実際に同社が発表している計画書によると以下の通り、フロントへの再教育などの再配置も含めて調整を行うとあります。
(参照:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/ir/briefing/pdf/20180522_1.pdf30ページ)
つまり、実際にリストラをしていくという訳ではありません。
しかし、再教育や再配置などが行われることは決まっているため、このような銀行に「安定性」を求める人には向かなくなってきているのも事実です。
これは、実際にみずほ銀行頭取 である藤原 弘治氏がインタビューに答えていますが、以下のように答えています。
逆説的かもしれませんが、中途半端な言い方よりもあえて踏み込むことで「雇用を大切にする」というメッセージをここに込めています。
今後リストラや早期退職を募る予定はありません。
バブル期に大量採用した層がこれから退職期を迎え、かつ新規採用人数をコントロールすることで、今後10年間かけて人員の最適化を図るということです。
つまり現行員がリストラにおびえる必要はなく、その意味で現在の雇用はしっかりと守るという宣言でもあるのです。
こういったことからも、安易なネットニュースに流されずに、そのニュースや戦略の本質にしっかりと目を向けるようにしましょう。
ただ、繰り返しにはなりますが、リストラには怯える必要はないのですが、再配置などは必ず起こりうるため、安定性を求める行員はいらないと明言されています。
実際に藤原 弘治氏は、以下のようにインタビューで答えています。
新規採用者だけではなく、現在の行員たちにも積極的に異文化吸収の機会を用意していきたいです。
積極的に異業種企業に研修、派遣することで、新しい視点や思考方法、人間性を磨く武者修行に励むとともに、ときに「銀行の常識は世間の非常識」であることも学んでほしいのです。
反対に安定・安心を求め、現状に満足してしまう社員はいらないです。
(出典:https://president.jp/articles/-/25267?page=2)
次に「2:システム構造改革」ですが、これはIT業界では有名な話ですが、みずほ銀行のシステムは、日本の企業のシステムの中でも最も複雑で大規模なシステムといわれます。
そして、システム構造改革は多くのトラブルを抱えながら、遅延していきましたが、2019年にようやく完遂します。
(出典:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/ir/briefing/pdf/20180522_1.pdf29ページ)
その結果、1000億円程度の費用削減になると想定されています。
今までは合併した3行分のシステム費用が丸ごと計上されていたものが、一つに集約されるため、コスト削減になると考えられています。
そして、その他にはチャネルの再構築や経営資源のシフトを行うことによって、さらに無駄なコストを抑えた利益が出やすい体制を築こうとしています。
みずほ銀行の決算状況を分析!
次に、みずほ銀行でのIRの分析を行います。
まずは直近5期分の主要指標です。
(出典:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/report/yuho_201803/pdf/bk_fy.pdf2ページ)
表を見ると収益的には右肩上がりになっていますが、利益額としては増えていない状況となっています。
ただし、現時点において利益を出している状況があります。
それでは、なぜ利益が減少してしまっているのか?
この傾向は、他の銀行でも同様の状況となっています。
最大の要因として挙げられるのが、「マイナス金利」です。
マイナス金利とは一体何なのでしょうか?
マイナス金利は日本政府が現在行なっている金融政策です。
金利を下げて(マイナスにして)日本国中の企業や個人がお金を借りやすくして、そのお金で経済を活性化してもらおうという政策となっています。
お金を借りる側としてはありがたい施策ではありますが、お金を貸す側である銀行は利益が減少する要因となってしまいます。
上記の状況から、多くの銀行では厳しい状況に立たされています。
しかし、みずほ銀行などメガバンクの場合は、確かにマイナス金利の影響で利益は減少していますが、利益を確保できています。
マイナス金利という極めて厳しい市場環境の中でも、利益を出している点を評価できる決算資料となっています。
まとめ
今回の記事では、みずほ銀行について分析を行ってきました。
特にみずほ銀行は日本を代表する規模の大きな3行が合併してできた銀行となっています。
また、近年はマイナス金利などの影響で以前よりも銀行の就職人気が落ちていますが、マイナス金利は一過性のものでもありますので、自分なりに分析をして、志望業界を決めるようにしましょう。
また、メガバンクは特に会社によって社風やカラーが異なる業界でもあります。
そのため、一つ一つの会社の社風を把握するだけでなく、その合併前の企業の文化や歴史などについて把握するようにしましょう。