HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
日本を代表する電機メーカー、コングロマリッド企業である日立製作所。
TVや洗濯機などの「家電製品」のイメージが強いかもしれませんが、実は家電製品の売上比率はわずか5%程度に止まります。
日立は、家電メーカーから社会インフラや情報通信サービス企業へと大きな発展を遂げています。
日立製作所といえば、最も気になるのがイギリスでの原発事業の撤退でしょう。
財政面、業績面の観点、今後の戦略面から分析を行います。
日立製作所の事業領域をチェック!
まずは、日立製作所の事業領域を確認していきましょう。
それぞれのセグメント別の売上収益率は以下のようになっています。
事業収益率を見ると、「情報・通信システム」と「社会産業システム」「電子装置システム」だけで全体の54%を占めています。
また、特定の事業に依存することなく、分散して利益を上げていることから、何か一つの事業が厳しくなったとしても日立グループとしての安定性は極めて高い状況といえるでしょう。
【日立製作所のインダストリー】
・情報通信システム
全体の約2割の売上を占める情報システム事業。
「システムインテグレーター」として、企業向けのシステム開発やパッケージの導入など、幅広い事業を行なっています。
特に公共向けのITソリューションやクラウド、AIを活用した新しいシステムサービスなどに力を入れています。
近年力を入れているのが「Lumada(ルマダ)」です。
日立独自のクラウドサービスであり、日立の強みであるIoTのデータを元にした新しい ビジネスモデルになります。
日立グループ全体の強みを生かした提案を行うことが強みです。
・社会・産業システム
現在、最も力を入れている分野が、社会産業システム。
具体的には水ソリューションや鉄道システム、原子力・自然エネルギー発電システム、エレベーターやエスカレーターなどが該当します。
原子力発電はアメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)との事業統合を行いました。
しかし、イギリスでの新規事業の廃止から特別損失を計上しており、日立全体の経営に大きな影響を与えています。
・電子装置・システム
半導体の関連装置や計測、分析装置、医療機器などを行う事業になります。
最先端の計測制御装置を持つだけでなく、医療機器にも強みを持っています。
・建設機械
ショベルカーなどの建設用機械を取り扱う部門となります。
国内だけでなく、新興国からの受注も好調に推移しており、業績面も伸びている事業です。
・高機能材料
レアメタルや金属、半導体素材など、高機能素材を中心に扱っています。
世界的なニーズの拡大から、業績は好調に推移してきています。
・オートモティブシステム
オートモーティブシステムは、主に自動車関連の部品などを扱う事業となっています。
日産系の部品メーカーを子会社化したこともあり、日産自動車との関係性が深くなっています。
・生活・エコシステム
冷蔵庫、洗濯機などの白物家電や空調システム製品など、一般的な家電を扱っています。
近年では、徐々に取り扱いを縮小してきており、WoooブランドのTVは撤退するなど、選択と集中を進めてきています。
生活・エコシステム事業の売上比率は5%になるなど、会社の方針として家電事業は縮小傾向にあります。
決算状況を分析!
次に、日立製作所でのIRの分析を行います。
まずは直近5期分の売上高と純利益です。
(出典:https://www.hitachi.co.jp/IR/library/stock/hit_sr_fy2017_4_ja.pdf)
グループ全体の売上9兆円を維持しています。
国内の他の企業と比べると大きな規模にはなるのですが、他国のライバルとなるGEやシーメンスとは差をつけられている状況です。
利益は5000億円前半を毎年安定的に積み上げてきており、利益率も高い水準を維持しています。
それでは、次に給与・待遇面をみていきましょう。
日立製作所の平均年齢は41.7才、平均年収が871万円となっています。
(出典:https://www.hitachi.co.jp/IR/library/stock/hit_sr_fy2017_4_ja.pdf)
メーカーの中でも年収は高い水準となっています。
メーカーだけに限定した場合の平均年収でも、536万円となっています。
(参考:https://doda.jp/guide/heikin/)
さらに、 勤続年数も18.8年と非常に長いことから、日立製作所では安定的に長く働くことができ、高年収も期待できる会社といえるでしょう。
【NEWS】ニュースで話題のイギリスの原発撤退の影響は?
近年の日立関連で最も大きなニュースは、2019年1月に発表された「イギリスの原発事業の撤退」です。
ニュースリリースによると、以下のように記載されています。
日立は、2019 年 3 月期連結決算において、その他の費用として減損損失等約 3,000億円、また、2019 年 3 月期個別決算において、特別損失として英国原子力発電所建設プロジェクト 凍結に伴う損失約 3,000 億円を計上する見通しです。
(出典:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/01/0117.html)
イギリスの原発事業は日立だけでなく、日本政府やイギリス政府を関巻き込んだ一大プロジェクトとして発足しました。
しかし、東日本大震災の影響から、原発事業のリスクが表面化。
リスク回避のためのコストが非常に高騰したことが撤退の主たる要因です。
特別損失の3000億円は莫大な金額ではあるものの、日立グループそのものの基盤を揺るがすほどの損失ではないといえます。
実際に日立では、毎年5000億円程度の利益をコンスタントに出せているため、十分に担保することができる金額です。
ただし、特別損失が3000億円で済んだ場合の話となります。
イギリスで建設中の原発は、総工費が3兆円ともいわれています。
中断したため、全額が損失になるわけではありませんが、3000億円からさらに損失金額が増えてしまった場合には、日立グループ全体への影響も少なからずあるかもしれません。
まとめ
この記事では、日立製作所についての分析を行ってきました。
一般的な日立のイメージは白物家電を作っているメーカーという印象でしょう。
しかし、 実際には家電事業は全体の比率の中でもかなり小さく、本業は情報通信システムや社会システムなどのかなり大規模なビジネスが主となっています。
この記事でも解説した本当の日立製作所のビジネスをしっかりと理解して、選考の対策を進めていきましょう。