
HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
理系の学生は、就活を始めるにあたってエネルギー業界に興味を持つことも多いです。
エネルギー業界は人の生活に「当たり前」を提供する重要な産業である割には、具体的にどのような業界なのか、どのような仕事なのかを詳しく知る機会はあまりありません。
ここではエネルギー業界について理解を深め、就活を有利に進めるための基礎知識を解説します。
【理系向けエネルギー業界の解説】エネルギー業界とは?
エネルギー業界は、おおまかに石油・ガス・電気という3つの分野に分類することができます。
これら3種を見れば一目瞭然ですが、現代社会を支えるメインのエネルギーを創出する業界であることが理解できるでしょう。
それぞれどのような事業なのか、そこで働く社員は具体的にどのような仕事に従事しているかをまとめます。
石油
エネルギー業界の石油分野では、石油の資源開発や石油化学製品の製造などを行う石油精製などが主な事業となります。
経済産業省・資源エネルギー庁の「エネルギー白書」を見ると、石油への依存度は下がりつつあるものの、やはり 業務他部門エネルギー源別消費原単位の推移では石油は24%(2018年度)を占めています。
1970年代をピークに石油消費量は低下し、地球温暖化対策のため再生可能エネルギーへ転換が進められていることは頭に入れておくべきでしょう。
ただし、石油はエネルギー分野において唯一加工が可能な資源です。
そのため、原油の採掘と調達に関わる資源開発部門と、石油化学製品を製造する石油精製部門とは分けてビジネスを理解する必要があります。
特に外交輸送を行う原油調達部門では、職種によって海外と頻繁に行き来する場合もあるでしょう。
電気
電気分野では、 発電所で出力した電気を人々に届けるのが主な仕事となります。
電気量の予測なども行い、必要なところに必要な電力が行き渡るよう日々業務を実施しています。
電気会社は発電所を保有し、出力した電気を販売するのが一般的なビジネスモデルです。
ご存知の通り、電気はほぼ備蓄不可能なため、今使用している電気エネルギーは今作り出している電気でリアルタイムに賄われています。
電気量予測は30分単位で需要を読み、発電と送電を実施するタイトな業務です。
事業は発電・送電・小売の3部門に分けられており、それぞれ業務内容が大きく異なるため職種選びは慎重に行いましょう。
エンジニアは発電所や通信設備の管理で活躍するため、理系学生であれば狙いどころと言えます。
また、近年では海外の発電所建設や運営事業、IPP(電気の卸業)の海外展開も増えています。
ガス
ガス分野は、 液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)などの原料調達や保管を行い、一般施設や一般家庭などにガスとして提供するのがビジネスモデルです。
ご存知の通り地域のガス会社が供給する都市ガスと、導管が配管がされていない地域に供給するLPガスの2系統があります。
都市ガスは液化天然ガスが主原料であり、地下の導管から地域へガスを供給しているため、インフラ整備も重要な事業の一環となるのです。
一方でLPガスは液化石油ガスを主原料としています。
火力が高いため施設によってはあえてこちらを選択する場合もありますが、事業としては原油や液化石油ガスの輸入業、卸売業、小売業の3部門に分かれているのが特徴です。
原料調達は海外も多く、ガス生産やガスインフラの維持など実に幅広い分野に分かれて経営されています。
エネルギー業界の最新動向
エネルギー業界は現在、大きな転換期を迎えています。
地球温暖化対策の必要性が高まる中で、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが各国・各企業で加速しています。
持続可能な社会を目指す上で、エネルギーの在り方は今後ますます注目されていくでしょう。
また、カーボンニュートラルの実現を目指し、エネルギー業界では脱炭素化に向けた取り組みが急速に進んでいます。
特に再生可能エネルギー分野では、太陽光発電や風力発電の導入が拡大しており、電源構成の大きな転換が進行中です。
さらに次世代エネルギーとして注目される水素やアンモニアも、発電や輸送など多様な用途での活用が期待されています。
そして、政策支援や技術革新の後押しを受けながら、エネルギーの生産・供給・利用のあり方が根本から見直されつつあります。
【理系向けエネルギー業界の解説】エネルギー業界の仕事内容
エネルギー業界の仕事内容をより深く理解するために、エネルギー業界がどのような流れで動いているかをまとめておきましょう。
日本は国内のみですべの必要エネルギーを賄える環境にはありませんので、海外との交渉も非常に頻繁に必要とされるのが特徴です。
普段当たり前のように身近にある各種エネルギーがどのようにして届けられているか、しっかり理解しておきましょう。
研究開発
エネルギー業界の研究開発では、新たな発電技術や次世代エネルギーの開発が中心となります。
再生可能エネルギーの発電効率を高める技術や、水素・アンモニアなどの新たな燃料の実用化に向けた研究が進められています。
また、CO₂の回収や再利用など、環境負荷を抑える技術開発も重要です。
この分野では、電気・機械・化学・材料といった専門知識や、実験・分析・データ解析のスキルが求められます。
加えて、既存の枠にとらわれない発想力や創造性も不可欠です。
設計・建設
設計・建設部門では、発電所やプラント、送電線などのエネルギー関連施設の設計と建設を担当します。
設備の安全性や効率性を考慮した最適化設計を行い、環境影響評価や建設プロジェクト全体の管理まで幅広く関わります。
この職種では、設計製図のスキルや構造力学、プラント工学などの専門知識が必要です。
また、現場での調整力や安全管理に対する意識、プロジェクト全体を管理するマネジメント能力も求められます。
多くの関係者と連携しながら進める仕事です。
運転・保守
運転・保守の仕事は、発電所やプラントを安定して稼働させるための重要な役割を担います。
日常の運転監視だけでなく、定期的な点検や機器の修理、トラブル対応も含まれます。
また、緊急時に迅速かつ的確な判断が求められるため、安全意識や対応力が特に重視されます。
設備や機械に関する専門知識に加えて、運転操作のスキル、トラブルシューティング能力も必須です。
地道で確実な作業を通じて、社会インフラを支える使命感を持てる仕事です。
資源開発
資源開発では、石油や天然ガスなどのエネルギー資源の探査・採掘・輸送を担います。
まずは地質調査や物理探査を行い、有望な資源を発見し、採掘・生産・貯蔵へとつなげていきます。
この分野では、地質学や採掘技術などの専門知識に加えて、資源の埋蔵量や経済性を評価する力も重要です。
また、海外でのプロジェクトも多いため、グローバルな視野や語学力も強みとなります。
資源の安定供給を支える責任ある職種です。
営業・企画
営業・企画部門では、電力やガスといったエネルギーの販売に加え、新たなサービスやビジネスモデルの提案が求められます。
顧客のニーズを把握し、最適なエネルギーソリューションを提供することが役割です。
また、脱炭素や分散型エネルギーなど新たな市場に対応した事業企画も行われています。
エネルギー市場に関する知識はもちろん、営業力、交渉力、顧客との信頼関係を築くコミュニケーション能力が必要です。
柔軟な発想と行動力が活きる職種です。
エネルギー業界の代表的な企業
エネルギー業界を代表する企業は多岐にわたります。
各分野の主要企業を知ることは、志望企業を選ぶ上でも大切なので、以下を参考にしてみてください。
石油会社
日本の石油業界には、ENEOS、出光興産、コスモエネルギーホールディングスといった大手企業があります。
ENEOSは売上高・国内シェアともに最大手であり、石油の精製・販売に加えて、再生可能エネルギー、水素事業などにも注力しています。
出光興産は昭和シェルとの経営統合を経て業界2位となり、海外資源開発や高機能材料の分野でも展開を広げています。
コスモエネルギーホールディングスは、石油製品の安定供給に加え、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー事業にも注力しています。
いずれも脱炭素への対応が経営戦略の大きな柱となっており、化石燃料からの転換期にある業界をけん引しています。
電力会社
電力業界では、東京電力、関西電力、中部電力の3社が地域を代表する大手企業として知られています。
東京電力は国内最大の電力会社であり、福島第一原発事故以降、再生可能エネルギーへの転換や送配電事業の分社化を進めています。
関西電力は関西エリアを中心に事業を展開し、原子力発電所の再稼働や環境対応型の電源開発に積極的です。
中部電力は、中部地方を主な供給エリアとし、近年では「中部電力ミライズ」などを通じた新サービスの展開にも取り組んでいます。
電力自由化や脱炭素の流れを受けて、いずれの企業も発電方法の多様化と、顧客ニーズに応える電力サービスの強化を進めています。
ガス会社
ガス業界の主なプレイヤーとして、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社が挙げられます。
東京ガスは首都圏を中心に都市ガスの供給を担い、電力や海外事業にも進出しています。
また、水素や再生可能エネルギーといった新分野の技術開発にも力を入れています。
大阪ガスは関西エリアを基盤とし、海外のLNG(液化天然ガス)事業やバイオガス事業など、グローバルな展開が特徴です。
東邦ガスは中部地方におけるガス供給を担い、地域密着型のエネルギーサービスの提供を進めています。
いずれも都市ガスから電力、さらにはエネルギーソリューションへと事業領域を拡大し、エネルギーの多様化に対応しています。
その他エネルギー会社
再生可能エネルギーやエンジニアリング分野でも、注目すべき企業があります。
JERAは東京電力と中部電力の火力発電事業を統合して誕生した会社で、世界規模で発電・燃料供給を手がけています。
再生可能エネルギーを中心に事業を展開するレノバは、バイオマスや太陽光、風力といったクリーンエネルギー開発に特化しています。
また、日揮ホールディングスや東洋エンジニアリングは、エネルギー施設の設計・建設・運営支援を行うエンジニアリング企業として国際的に活躍しています。
これらの企業は、エネルギーの供給だけでなく、開発・建設・マネジメントの側面からも業界を支えている存在です。
【理系向けエネルギー業界の解説】理系大学生に求められる力
実に幅の広いエネルギー業界ですが、理系大学生が就職を考える際には、どのような点に留意すれば良いのでしょうか。
まず、いかにエネルギー業界といっても、事務系の職種では学部学科は問われないのが一般的です。
一方で、技術系は理系大学生が占める割合がほとんどですので、やはり狙うのは技術分野と言えるでしょう。
果たしてどのようなスキルやポテンシャル、基礎知識が求められるのでしょうか。
理系生が学ぶべき分野
理系学生が技術職を目指して就活するなら、 機械系や電気系のほかに資源や化学に関する知識を蓄えておくべきと言えます。
現在は資源やエネルギーの国際的な環境が激変していることもあり、日本の天然ガスの輸入量も大幅に増加傾向にあります。
世界の資源の現状や日本の状況を化学的な観点で理解することも必要ですし、バイオマスや鉱物資源などの知識があればより有利になることは間違いありません。
もちろん再生可能エネルギーや環境問題についても自分なりの意見やビジョンを持って就活に臨むことが大切です。
資源・エネルギー問題にはどうしても経済や社会の知識も必要となりますので、日々関連記事やニュースを集めて最新情報を頭に入れておくように努力しましょう。
エネルギーに関する研究をしておけば就職には有利
エネルギー業界は現在、 化石燃料によるエネルギー生産の効率化だけでなく、次世代エネルギーの研究・開発にも力を入れています。
もちろん再生可能エネルギーもそうですし、これからの地球環境を考えたうえでどのような解決策を見出していくべきか、日夜思案している企業ばかりです。
理系学生の新しい観点やビジョン、アイディアにも興味を持っている企業が多いですし、既存の知識をきちんと得たうえで、新たな解決策を生み出していくポテンシャルが求められていることは事実です。
もちろん一足飛びに答えが出るようなものではありませんが、日頃からエネルギーに関する研究を行い、自分なりにビジョンを持って就活に臨むことは高いアドバンテージになるでしょう。
まとめ
理系学生であれば、 エネルギー業界への就職を目指すことも多いはずです。
実に多岐にわたる業界であり、特に近年では世界的にエネルギー市場が大変革の中にあるため、幅広い知識が必要とされることは否めません。
就活にあたっては、全体的な基礎知識は持ちつつ、自分がどのような分野で、どのような部門でどの職種を目指すのかを明確にしておく必要があります。
将来は大きな発展が見込める業界ですので、ぜひ自分が活躍できるフィールドを探してください。