理系農学部で学べる学系|関係が深い業界や卒業後の進路についてもあわせて紹介

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伊東美奈
Digmedia編集長
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

はじめに

「理系農学部では何を学ぶことができるのだろう?」
「理系農学部を卒業すると、どのような会社に入れるのだろうか?」
理系農学部志望の人や在学中の人は、このような疑問や不安があるのではないでしょうか。

本記事では、理系農学部で学ぶことができる学系の内容や関係の深い業界、卒業後に就くことができる職種などについて解説しています。

この記事を読むことで、理系農学部を目指す際にどのような学系を選べば良いのか、卒業後にどのような仕事に就くことができるのかがわかるため、理系農学部の受験を考えていたり、就職先に迷っている人の参考になるでしょう。

理系農学部受験を考えている人や農学部に在籍中で就職に不安のある人は、是非この記事を一読してください。

理系農学部とは

理系農学部は、農業について学べるほか、畜産や林業、水産業など第一次産業について広く学ぶことができるとされています。農業に関する工学や経済学を学ぶ学科もあり多種多様です。

また、近年では農業や林業に関連する微生物や遺伝子工学、有機化学など、専門的な学問も深く学べます。獣医の資格を取得できる学科も農学部に分類されるため、獣医を目指すなら農学部になるでしょう。

このように、広く色々な学問を学ぶことができるところが理系農学部です。

理系農学部を目指す前に考えておきたいこと

理系農学部では、広い範囲の学問を学ぶことができます。数多くある学科の中から何を選ぶのかに関係するため、入学して何を学びたいのかについて、あらかじめ考えておく必要があるでしょう。

卒業後にどんな仕事をしたいのか

農学部を卒業後、どのような仕事をしたいのかも考えておきましょう。企業に就職するのか、国研や大学などの研究者になりたいのか、また企業に就職する場合でも、食品系に進むのか水産系に進むのかによっても、受験する学科が変わってきます。

理系農学部で学べる学系

前述の通り、農業・林業・水産業など第一次産業に関する内容、微生物や遺伝子工学、有機化学などの基礎的な学問など、理系農学部では、広い範囲の学問を学ぶことができます。

以下で、理系農学部で学ぶことができる学系について詳しく解説します。

  • 食品系
  • 農学系
  • 微生物系
  • 畜産系
  • 海洋・水産系
  • 遺伝子工学系
  • 農芸化学系
  • 林業系
  • 土壌系
  • 有機化学系
  • 地球環境系
  • 獣医学系
  • 農業工業学系
  • 農業経済系

食品系

農業や水産業、畜産などで生産されるものは食品の原材料になります。そのため、農学部では食品系の学問について学ぶことができます。食品の加工や保存、あるいは腐敗防止など、原材料から消費者の口に届くまでの一連の流れに関することを学べるでしょう。

食品の栄養素に着目したり、食感について研究したり等、食品に関する多種多様な研究が行われている分野とされています。

農学系

農学部では、農学系の学問を学ぶことができます。農作物の生産性向上や品種改良など、農業に関する広い範囲が対象です。専門課程に進めば、研究室での実験だけでなく大学付属の農場で実習も経験できる場合があります。

微生物系

醸造や発酵などのような、微生物を応用して農産物を人間に有用な食品に加工する研究を行っている大学が多くあります。

工学部にも発酵はありますが、農学部発祥の学問であるとされています。また、生産性の観点から土中の微生物関連の内容を研究しているところもあります。

畜産系

牛・豚・鶏などの家畜の飼育や改良などが畜産系になります。家畜の健康維持、品種改良や品質向上、肉・乳の加工・保存や安全性確保など、畜産に関する一連の内容を学ぶことができます。牧場経営など経営に関する内容も畜産系の学問の対象範囲です。

家畜の健康維持や病気予防など、獣医系と学ぶ内容が重なる部分も多いのも、畜産系の特徴です。

家畜だけでなく、その家畜を育てるための草地に注目して研究している大学もあります。

海洋・水産系

海洋・水産系の学科も農学部です。魚介類や海藻などの捕獲・採集・養殖のような漁業関連の知識を学ぶことができます。資源保護や収穫量の向上など、水産資源に関連した経済的な観点の内容もあります。

マグロの完全養殖や、謎が多いウナギの生態の解明など、時代の先端を行く研究を行っている大学もあります。また、最近よく話題に取り上げられる漂流ゴミやマイクロプラスチックなどの海洋環境保護に関する研究を行っているところもあり、注目される学系でしょう。

遺伝子工学系

農作物の品種改良に関連して、遺伝子工学系の学問を学ぶこともできます。遺伝子組み換えで病気に強い品種や、害虫を避けることができる品種を作るなどが、この分野に当たります。

理学や工学にも遺伝子を扱う学科はありますが、農学では農作物の品種改良のように農業に直接関連している内容を扱っているところが多いのが特徴です。具体的には、カイコや稲、テンサイ、ホウレンソウなど産業上重要な生物の遺伝子研究を行ったりするところもあります。

農芸化学系

農芸化学とは、農業が対象としている植物や動物、微生物の働きなどを、化学の切り口から研究する学問です。発酵などを酵素という化学物質として捉えたり、害虫駆除の農薬を研究したりするなど、基礎から応用まで多様な研究が行われています。

理学や工学の化学系学科との違いは、上記の遺伝子工学系と同じく、農業に直接関連する内容を化学の切り口で取り扱っているところでしょう。

林業系

高性能木質材料の開発、木材パルプやバイオエタノールのような木材利用はもちろん、森林育成、森林環境改善など、林業に関する広い分野が対象です。

地球温暖化を防ぐための温室効果ガスの排出抑制など、世界的に注目されている研究を行っているところも、林業系の特徴といえます。

変わったところでは、森林に関連するものとして野生動物や昆虫、きのこなどの菌類を研究しているところもあります。

土壌系

農産物の安定生産と収穫量向上のために、土壌そのものを研究する分野が土壌系です。土の構成成分や含まれる栄養素、土壌中の昆虫やミミズなどの生き物、土中の微生物、土の保水性など研究対象は広範囲にわたります。

土を通して、地球温暖化などの気候変動に関する研究を行っているところもあります。

有機化学系

農芸化学よりもさらに突っ込んだ、天然に存在する化合物そのものを研究する有機化学系の学科も、農学部にはあります。生理活性のある有機化合物の医薬への応用などが対象です。生物有機化学あるいは天然物化学という表現がされている場合もあります。

理学や工学にも、有機化学を研究している学科・研究室はありますが、上述の遺伝子や農芸化学と同様、農学での有機化学系の特徴は、農業に直接関連する内容を有機化学の切り口から研究するところでしょう。

地球環境系

農業や水産業、林業などを個別に対象とするのではなく、生態系全体を包括的に捉えて、地球環境全般を対象とした学問を行っているところもあります。

地球環境保全の観点から、砂漠の緑化や国土保全のための水管理なども研究テーマとして取り上げられています。

獣医学系

家畜やペットなどの病気予防やケガの治療など、動物全般を対象にした医学を学ぶ学科です。動物の生態を個体レベルだけでなく、分子レベルや遺伝子レベルで研究しているところもあります。

農学部のほかの学系と異なり、獣医師の資格を取得するためには6年の修業年限の後に、獣医師国家試験に合格することが必要です。

出典:獣医師国家試験:農林水産省
参照:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/shiken.html

農業工業学系

農業工業とは、高齢化などでの就農人口減少に対して、工学的な観点から解決策を考える学問です。農業農村工学と表現している場合もあります。

水や土地の有効利用や環境保全、自然エネルギーの利用などに対して、工学的なアプローチで取り組んでいるところもあり、農学と工学の学際の学系といえるでしょう。農業法人等による集約化や機械化による農作業の効率化や生産性の向上などに取り組んでいるところもあります。

農業経済系

農業経済系は、農産物の生産や流通などを、経済学の切り口から捉えて考える学問です。農場での生産から流通、消費まで、経済的な観点で農業を捉えて、自然科学と社会科学の学際的な領域に当たる分野といえます。

農場経営のような地域ローカルな内容はもちろん、国家間の食物移動である食糧自給率や世界的な飢餓など、国内の課題から世界的な問題まで、広く取り組むことができる学科です。

理系農学部と関係が深い業界

理系農学部は上記の通り、幅広く多種多様な内容を学ぶことができる学部です。そのため、卒業後の就職先として考えることができる業界も幅広くあります。以下では、その中から代表的ないくつかを取り上げます。

食品

農産物は食品の原材料となるため、食品業界とは深い関係にあります。一口に食品業界と言っても、乳製品や製菓などの加工食品系から、食肉や水産品などの食材系の企業、ジュースやアルコールのような飲料系企業など、さまざまな企業があります。

加工食品系業界では、乳製品や製菓以外でもハムやベーコンなどの肉製品、ケチャップや調味料、製パン業なども加工系の業種です。

近年では健康志向から、特定保健用食品や機能性表示食品が注目されており、そのようなものを製造している企業にも、農学部出身者が多く進んでいるとされています。

農林・水産

農学部の実習などで学んだことを直接活かせる、農業や林業、水産業などの第一次産業の業界も、農学部と関係が深い業界です。現場系の仕事が多いことがこの業界の特徴と言えます。

農業法人などの大規模農業企業や牧場・養豚場や養鶏場などの畜産系企業、森林組合や木材を作る製材加工会社、水産加工会社などが、農林・水産系業界への就職の代表例でしょう。

高い生産性が得られる改良された種や苗、新種の花卉などの開発を行っている種苗メーカーなども、農業系の企業と言えます。

公社・団体・官公庁

農研機構や森林研究・整備機構、水産研究・教育機構のような国立研究開発機構や独立行政法人、都道府県の農業試験場、地方公共団体の農政課など、公社・団体・官公庁には多くの就職先候補があります。

また、JICA海外協力隊で野菜栽培指導を行うことなども、公社・団体・官公庁への就職といえるでしょう。

理系農学部の進路

上記では、理系農学部を卒業した人の就職先として関係の深い業界を取り上げました。以下ではそれらの業界に卒業生が進んだ場合に、就くことが多い職種・仕事内容について解説します。

研究・技術者としての道が多い傾向ですが、それだけではなく実業系の仕事もあるため、気になっている人は参考にしてみてください。

  • 農業
  • 農業系研究・技術者
  • バイオ技術者
  • 食品系研究・技術者

農業

農学部出身者で農業に就く人は多いでしょう。家業の農家を継ぐために農学部に入ったという人もいますが、実家が農家ではない人も、農業に就くことはできます。

近年、少子高齢化の影響で、農業を継続できなくなり辞める農家が増え、耕作放棄地が増えていることが問題になっており、このような農地を再生・集約化し、大規模農場を経営するという農業法人が増えています。このような農業法人も農学部出身者の就職先となるでしょう。

農業系研究・技術者

農学部の卒業生の進路として多いのが、農業系研究・技術者の道です。都道府県の農業試験場や畜産試験場のような地方独立行政法人が主な就職先となります。また、国立研究開発法人や独立行政法人も進路としては考えられ、前述の農研機構などはその代表格と言えるでしょう。

上記は国や地方公共団体の職員としての研究者の道ですが、企業に就職して研究・技術者として進むという道もあります。種苗メーカーなどは、品種改良された種や苗の開発を継続的に行っており、そのような会社に入って研究職に就くということもできるでしょう。

農学部を卒業した後、大学院に進んで修士号や博士号を取得して、そのまま大学に残って助教や准教授、教授などの教育者としての道を歩む人もいます。

バイオ技術者

農学部では微生物系や遺伝子工学系の学問を学ぶことができます。そのため、バイオ技術者になる人も多いと言われています。製薬会社や化粧品会社などが主な就職先になると言われていますが、遺伝子組み換え技術を活かした、種苗メーカーという進路もあるでしょう。

上述の通り、理学や工学のバイオテクノロジーと比較して、農学部で学ぶバイオテクノロジーは品種改良や遺伝子操作による新種開発など、農業に直接関わる内容が多いため、種苗メーカーなどの技術には活かされやすいと言えます。

食品系研究・技術者

農作物は食品の原材料であるため、農学部卒業生の就職先で食品系企業は多いと言えるでしょう。特に農学部では、食品加工や保存、発酵など食品に関連する多くの学問を学ぶことができるため、その知識を活かして食品系の会社に進み、研究・技術者になる人は多いとされています。

新製品開発や既存製品の改良などはもちろんですが、生産技術の改良・向上、保存・流通技術の改良・開発、賞味期限や消費期限を延長する新技術の開発など、農学部出身者が活躍できる食品系研究・技術の仕事は多いと言えるでしょう。

理系農学部の学系や卒業後の進路を理解しよう

本記事では、理系農学部で学ぶことができる学問・学系や、卒業後にどのような就職先があるのか、どのような職種に就くことができるのか進路についても紹介してきました。

理系農学部への受験を考えている人、農学部を目指して勉強を開始している人、既に農学部に在籍していて今後の進路について迷っている人などは、この記事を参考に、農学部に対する理解を深めて、今後の進路を検討してみてください。

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