貿易業界の研究|勤務先による仕事内容の違いや資格・スキルについても解説

貿易業界の研究|勤務先による仕事内容の違いや資格・スキルについても解説

記事をお気に入り登録する

記事のお気に入りに登録

「記事のお気に入りに登録」のご利用にはログインが必要です。

会員登録がお済みでない方

無料会員登録
伊東美奈
Digmedia監修者
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

「貿易業界ってどんなとこ?」 「就職に有利になる資格やスキルを知りたい」 このように、業界研究で貿易関連を調べている方には沢山の疑問や不安があるでしょう。

この記事では、貿易業界の現状や勤務先による仕事内容の違いに加えて、就職や転職に役立つ資格やスキルなどを紹介しています。

本記事を読むことで、日本における貿易の重要さや業界への就職状況、勤務先の特徴や働く上で大変なことなどを把握できます。

これらの知識を得られることから、貿易業界への転職や就職の準備に取り組むことができるため、スムーズに面接日を迎えることができるでしょう。また、他業種と比較できる材料になることから、これからのライフプランの参考にもなります。

貿易業に対して業界研究を行っている方は、ぜひ、最後まで読んでみてください。

貿易業界とは?

貿易業界は、輸出と輸入を通じて国際的なモノの流通を支える業界です。

企業が海外の製品を仕入れたり、日本の商品を海外市場へ届けるためには、通関手続きや貿易関連の法律を遵守する必要があります。

また、為替変動や関税、貿易協定などの要因も取引に影響を与えるため、これらの知識を持つことが重要です。

このように、貿易業界は多くの企業や専門職が関与する複雑な仕組みを持っています。

グローバルな経済活動の一端を担う重要な分野であり、国際情勢や経済動向によって大きく変動する特徴があります。

貿易業界の現況

貿易業界は、企業規模を問わずさまざまな職種から成り立っており、世界中の社会情勢を反映する特徴があります。

世界の経済に打撃を与えたリーマンショックで、貿易業界の景気は落ち込んでいましたが、その後の日本食ブームによって景気は上向きになりました。また、現在では情報技術の発達によって個人レベルでの貿易が盛んになっています。

国際化が進む昨今、貿易は身近な存在になり、誰にでも取り組める業界となっています。

貿易は日本の生命線

海洋国家である日本は、昔から原料を輸入して製品し、その製品を輸出するという交易を行ってきました。

国土の大半を海で占めることから、資源獲得の手段として特に海運が盛んになり、現在でも遠く離れた外国からタンカーで石油などが運ばれています。仮に、海上ルートがなくなったとなれば、現在の生活水準を維持することが困難になると言えます。

現状では、貿易なくして日本経済を回すことは難しいでしょう。

貿易業界への就職状況

日本の貿易市場の拡大により、貿易業に携わる仕事の需要は高くなっていると言えます。

日本の貿易総額は年々成長しており、他国と比べても貿易取引が多く行われています。SNSやオンラインを駆使することで企業規模に関係なく貿易ができることから、ニーズも比例して上がっています。

貿易業界は、専門的な知識や実務経験が求められるため、自身が企業に見合うだけのレベルを有していれば就労しやすい業界でしょう。

貿易業界の将来性

貿易業界に就職を希望する際、この業界は本当に大丈夫なのか?安心して働き続けられるのか?など、色々不安になってしまう人もいるかもしれません。
そこで、ここでは貿易業界の将来性について紹介します。

DX化

DX化とは簡単に言えばAIを活用して、業務プロセスを改善していくことです。

貿易業界に限らずどの業界でも人手不足の影響により、定型業務はAIに任せるという流れが主流になりつつあります。貿易業界でもDX化が行われており、今後は紙ベースの手続きが減少したり、顧客のやり取りがスムーズになったり、短時間勤務や在宅勤務が可能になる企業も増えていくと考えられます。

グローバル化により市場拡大

近年のグローバル化により他国間での取引が活発に行われるようになっています。

そのため貿易の活発化により貿易業界の市場規模が拡大しています。特に日本の貿易総額は増加傾向にあり、他国に比べても多く取引が行われています。特に海外の企業と多く取引をするということで英語力が必要になるのでTOEICなどの資格で高得点を取っておくようにしましょう。

貿易業界の主な職種

貿易業界には、さまざまな職種が存在し、それぞれが輸出入の流れを円滑に進めるために重要な役割を担っています。

企業が海外と取引を行う際には、書類作成や通関手続き、取引の調整など多くの業務が発生します。

以下ではそれぞれ主な職種について解説します。

貿易事務

貿易事務は、貿易に関する事務作業を担当する職種であり、輸出入の手続きをサポートする役割を持っています。

主な業務は、必要な書類の作成、関係機関との調整、物流会社とのやり取り、通関業務の補助など多岐にわたります。

特に、インボイスやパッキングリストなどの貿易書類の作成は正確さが求められるため、細かい作業が得意な人に向いている職種です。

また、英語を使用する機会も多く、海外の取引先とのメール対応や、契約書の確認を行う場面もあります。

輸出者・輸入者

輸出者・輸入者とは、実際に商品の輸出入を行う個人や企業を指し、国際的な取引の中心的な役割を果たします。

輸出者は国内の商品を海外市場に販売し、輸入者は海外の商品を国内市場に供給する役割を担います。

この職種では、国際市場の動向を把握し、為替の変動や貿易規制、関税の影響を考慮しながら取引を進めるスキルが求められます。

また、物流の手配や貿易リスクの管理、取引先との交渉など、多岐にわたる業務をこなす必要があります。

通関士

通関士は、輸出入に必要な通関手続きを担当する専門職であり、貿易業務を支える重要な役割を担っています。

主な業務は、輸出入申告書の作成、関税の計算、税関とのやり取り、貿易に関する法規制のチェックなどです

この職種に就くためには、国家資格である通関士試験に合格する必要があり、合格率は約15%と難易度の高い資格です。

試験では、関税法、通関業法、関税定率法などの法律知識に加え、実務に必要な計算能力や書類作成のスキルも問われます。

そのため、通関士を目指す場合は、計画的な学習と実務経験の積み重ねが不可欠です。

貿易業界の勤務先とは

1括りにされがちな貿易業界ですが、勤務先によって扱う業務が異なります。

貿易業務のみを行う会社は稀であり、大半の企業は本来の業務に加えて他の業務も兼務することが多々あります。もちろん、勤務先の企業によって純粋な貿易業務のみを行う場合もありますが、その場合は少数精鋭で行うケースが多いでしょう。

ここでは、業界研究に必要な貿易業界の勤務先の特徴を紹介していきます。

メーカー・商社

メーカーや商社では、主に自社または代理店の商品の輸出入を行います。

具体的な業務として、海外の企業との間で貿易関連の書類作成や商品の納期調整、船舶会社の手配などがあります。輸出入全般に関わる業務であるため、企業によってはいくつもの仕事を兼務することがあるでしょう。

メーカーや商社での勤務は、社内外問わず多くの人と関わることから、コミュニケーションが苦にならない人に向いています。

船会社・航空会社

船会社や航空会社は、自社保有の運搬手段を用いて安全かつ迅速に貨物を輸送することを主な業務としています。

そのため輸送に関わる業務がメインとなり、運賃の見積もりや日程の管理、貨物の積み込みや荷下ろしに加え、利用する港との交渉などを行います。

自社内で調整できる書類作成が多いため、貿易業界が未経験の場合でも働きやすく、これから実績を積んでいきたい方に適しているでしょう。

海貨業者(乙仲)・倉庫会社

海貨業者(乙仲)や倉庫会社の仕事は、メーカーや商社の業務を代行しており、港湾での貨物の受け渡しと一時的な貨物の保管を行っています。

貿易の取引に直接関わることはなく、輸出入貨物の通関書類作成や搬入出がメインの業務になります。貿易取引の取り決めや通関までの流れを把握できるため、モノの流れを学びたい方に向いているでしょう。

また、一般事務として入社してから貿易関連の仕事に就くことも可能です。

通関業者

通関業者は、輸出入に関する通関業務を一手に担う職種です。

海外に拠点を置く企業と取引する場合、さまざまな法令やルールを遵守した上で行わなければなりません。関税や消費税を正しく計上し、国から許可を受ける必要があり、そのための通関書類の作成が主な業務となっています。

通関業務に不備がある場合、輸送がストップしたり追加徴税される恐れがあるため、妥協せず確実に仕事ができる人に向いているでしょう。

NVOCC・フォワーダー

NVOCC・フォワーダーとは、クライアントと輸送業者の仲介を行い、通関業務や運送手段の手配などを行う業者のことです。NVOCCは運送手段に船会社を、フォワーダーは航空会社を用います。

主な業務は、輸送会社の手配やスケジュール調整、輸送や通関に関する書類作成に加えて貨物管理も行います。

双方とも、貨物の出発から到着までをコーディネートする業務であるため、貿易業界の経験者が向いている職種と言えるでしょう。

金融会社

貿易業界の金融会社は、貿易に関わる金融業務を担っており、大きく3つに分けることができます。

貨物の輸出において輸入業者から代金が支払われる間までをカバーする「輸出金融」、輸入に関する融資を行う「輸入金融」、外貨による現地貸し付けや外国銀行へ債務を保証する「現地金融」です。

近年では、日本の大手銀行によるアジアの貿易決済を取り込む動きが見られています。

保険会社

貿易業界における保険とは、日本企業が海外取引を行った際の損失をカバーするものです。

海外取引には、経済制裁や自然災害といったカントリーリスクや取引先の不払いなどの信用リスクが生じます。国別の引き受け方針や海外の格付け・与信枠に基づいた保険をかけておくことで企業の損失を防ぎます。

貿易保険を扱う会社では、それらのリスク管理に対応する業務を行うため、輸出入取引や海外投融資の経験がある人物が求められます。

貿易業界で具体的な大手企業

貿易業界には多くの企業が存在しますが、その中でも特に規模が大きく、影響力のある大手企業がいくつかあります。

ここでは、代表的な総合商社である三菱商事、三井物産、伊藤忠について紹介します。

三菱商事

三菱商事は、日本を代表する総合商社の一つであり、天然ガスや鉄鉱石などの資源分野に強みを持っています。エネルギー事業や金属資源事業を中心に、幅広いビジネスを展開しており、世界中の国々と取引を行っています。

また、インフラ事業や食品、金融などの分野にも進出しており、多角的な経営を行っているのが特徴です。

同社の平均年収は約2090万円と、商社業界の中でも高水準にあります。職種や業務内容によって年収は異なりますが、特にボーナスの割合が高いことで知られています。

三井物産

三井物産は、総合商社の中でも特に鉄鉱石や石油などの資源分野での取引が多い企業です。エネルギー関連事業を中心に、機械、化学品、食品、インフラ、物流など、幅広い分野でビジネスを展開しています。

また、海外の資源開発プロジェクトにも積極的に関与しており、国際的なビジネスネットワークを構築しています。

同社の平均年収は約1900万円とされており、商社業界の中でも高い水準を維持しています。商社ならではのダイナミックな取引を行う機会が多く、経済の動向や国際情勢の変化に柔軟に対応する力が求められます。

伊藤忠

伊藤忠は、総合商社の中でも特に食料や通信、アパレルなどの非資源分野に強みを持つ企業です。

他の大手商社が資源関連事業に重点を置く中で、消費者向けビジネスを積極的に展開している点が特徴です。

また、国内外の小売事業やブランドビジネスにも力を入れており、生活関連分野での影響力を拡大しています。

平均年収は約1700万円とされており、他の商社と比べても高水準です。

特に、食料や繊維関連の事業に強みがあるため、これらの業界に興味がある人にとっては魅力的な企業といえます。

丸紅

丸紅は総合商社の中でも特に、食料や化学品などでの取引が多い企業です。

穀物事業が主な売り上げになっています。
平均年収は約1600万円とされており、商社の中でも特に高い水準になっています。

特に穀物事業に強みがあるので、その分野に興味がある人はおすすめの企業になります。

住友商事

住友商事は金属、輸送機、生活、メディアなど幅広く事業を展開する総合商社です。

国内国外問わず拠点を持っており、幅広くグローバルな事業を展開しています。また財閥系商社で五大商社の一角になります。

平均年収は約1750万円と総合商社のなかでも特に高い給与になります。

貿易業界の資格・スキル

貿易業界で勤務するにあたり、必ずしも資格は必要ありません。

しかし、高いスキルや知識を求められる貿易業界を志望するならば、公的に証明できるものがあると有利に働くでしょう。経験者が優遇されやすい現状ですが、未経験でも資格やスキルを獲得することで職に就きやすくなります。

ここでは、貿易業界で有利になる資格やスキルを紹介します。

通関士

貿易取引を行う上で欠かせない通関業務を行う職業が通関士です。

通関士は国家資格であり、指定の試験をクリアする必要があります。受験料は3,000円、1年に1回しか受けることができません。試験内容と時間は、通関業法が50分、関税法に関する問題が100分、通関書類の作成実務などが90分となっています。

また、これまでに通関業者や官庁における通関事務の経験者は、1部の試験が免除される可能性があります。

出典:8.通関士試験|税関 参照:https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/shiken/shikencontents_jr.htm

英語やその他言語のスキルと資格

貿易は、海外企業と取引することを業務をしているため、 世界中で話されている英語のスキルは欠かせません。

そのため、貿易関連の求人ではTOEICのスコアを指定していることが多く、およそ500点以上が目安とされています。また、英文書類作成の能力を証明する日商ビジネス英語の資格も、採用の可否に大きく影響します。

また、取り引き先の言語の習得も重要視されることを留意しておきましょう。

貿易実務検定

貿易関連の知識を証明する貿易実務検定は、業界未経験者にとって強い武器となります。

貿易実務検定の試験では、貿易マーケティングや実務関連、現場で使われる専門用語などが出題されます。C級、B級、A級と3つのレベルに分かれており、未経験の場合にはC級から受験してみるといいでしょう。

実務経験者が優遇されがちな貿易業界ですが、然るべき資格を有することで誰にでもチャンスがある業界でもあります。

貿易業界で働くメリット

貿易業界で働くことには、さまざまなメリットがあります。

特に収入の高さや語学力を活かせる点、大手企業で働ける可能性があることは、多くの求職者にとって魅力的な要素となっています。

以下ではそれぞれのメリットについて解説します。

収入が高い

貿易業界は、他の業界と比較して収入が高い傾向にあります。

総合商社や大手メーカーでは、海外市場との取引が多いため、大規模なビジネスを展開することができます。

また、商社などでは年収の中でもボーナスの割合が大きく、個々の業績が給与に反映されやすいのも特徴です。

近年、日本の貿易総額は増加傾向にあり、それに伴い貿易関連の仕事の需要も拡大しています。

このような背景から、業界全体としての成長が続けば、給与水準の上昇も期待できるでしょう。

語学力を活かせる

貿易業界で働くメリットの一つとして、語学力を活かせる点が挙げられます。

貿易の仕事では、海外の取引先や現地のパートナー企業との交渉が必要になるため、英語をはじめとする外国語のスキルが求められます。

特に総合商社や大手メーカーでは、日常的に英語を使う機会が多く、語学力があれば業務を円滑に進めることができます。

また、語学力を証明するためにTOEICや英検などの資格を取得していると、選考時に有利になることがあります。

大企業で働ける可能性がある

貿易業界には、総合商社や大手メーカーなどの大企業が多く存在します。

そのため、大手企業に就職するチャンスがあり、安定した収入や充実した福利厚生を得られる可能性が高いのが魅力です。

商社やメーカーはグローバルな視点を持ち、海外市場をターゲットにした大規模なビジネスを展開しており、安定性と成長性を兼ね備えています。

大手企業では、研修制度が充実していることが多く、語学研修や海外勤務の機会も提供されることがあります。

また、福利厚生の面でも、住宅手当や退職金制度などが整っているため、長期的に働きやすい環境が整っています。

貿易業界の大変なこと

専門性が高い仕事の1つである貿易業界は、大きなやりがいとともに大変な仕事でもあります。

海外の企業とやりとりを行う以上、時間の都合がつきにくかったり、法令の則った業務遂行が求められます。また、携わる人員の多さから高度なコミュニケーション力も必要とされるでしょう。

ここでは業界研究をする上で欠かせない、貿易業界で見られる大変なことを紹介します。

規制や法令変更に伴う対応

貿易業界は、数多くの規制や法令に則って業務を行わなければなりません。

代表的なものを挙げると、関税法や外為法、輸出貿易管理令や輸出入取引法などがあります。また、輸出入に関連する国内法として、文化財保護法や林業種苗法なども挙げられるでしょう。

これらの法令は、永続的なものでなく途中で改正されることがあります。法令は連動している場合が多いため、改正後のルールに対応するには多大な労力が必要になります。

取引先との時差に応じた対応

外国企業とやりとりを行う貿易関連の仕事は、勤務時間が不定期になりがちです。

海外企業との時差により、早朝出勤や定時後にやりとりを行うことが多々あります。たとえばアメリカに拠点を置く企業とやりとりする場合、時差によって昼夜真逆になるため、朝早く対応する場合があります。

また貿易業界は時差が生じる仕事であることから、残業につながりやすく定時に帰社できないケースも見受けられるでしょう。

運送業者の手配

貿易関連の仕事は、世界中の生産工場や納入先、銀行などと絡めて業務を行います。

その中でも、現在深刻な人手不足とされているのがトラック運転手です。社会情勢の悪化に伴い物流業界も多大なダメージを受けたため、運送会社の減少が顕著になっています。さらに、運転免許の取得率の減少も拍車をかけているでしょう。

輸送手段が確保しにくい現状においては貿易会社の負担が増しており、精神的にもつらい部分があります。

まとめ

貿易業界の求人需要は未だ上昇傾向にありますが、AIの発達によって人的コストが減る可能性があります。

また、仕事内容に関しては勤務先によって業務の幅や内容が異なることが多く、実際は志望企業に問い合わせることが確実な情報を仕入れる方法です。

貿易業界の実情を把握し、業界研究を進めていきましょう。

この記事を友達におしえる!

LINEで送る ツイートする シェアする URLをコピーする

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます