HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
大学院に進学するか社会に出るかどうかは、多くの大学生が悩むポイントです。
なぜならこの選択で、人生を大きく左右することになるかもしれないからです。
理系の場合、大学院に行くとどのようなことをしてどのような生活になるのか、実態が少しでもわかれば決断しやすくなるでしょう。
また、進路決定後に後悔しないためにも、大学院に進むメリットとデメリットをそれぞれ理解しておくことも大切です。
理系の大学院に進むかどうか迷っている人向けに、理系大学院生の実態について解説します。
【理系大学院生の実態】大学院とは
まずは、大学院がどのようなものかを知ることが大切です。
なんとなくのイメージはできるかもしれませんが、もしそのイメージと現実に大きなギャップがあると、進学後に後悔することとなるかもしれません。
大学院に行けば、自分のやりたいことができるのか、欲しいものを得られるのかどうかきちんと調べる必要があります。
ここでも解説はしますが、もし身近に大学院に行っている、もしくは行った経験のある人がいるのであれば、直接話を聞いてみるとより雰囲気がわかるでしょう。
大学院とは
大学院は、博士課程前期の2年間と、博士課程後期の3年間に分かれています。
前期の2年間では修士号を得られ、後期までの5年間を経て博士号を得られます。
就活もあるため、現状は2年間で修士課程を得てから卒業する人のほうが多いです。
大学進学と同じように、大学院へ入る際にも、入試に合格しなければなりません。
在籍している大学以外にも進学は可能です。
卒業するには、論文や研究結果の審査と試験の合格が条件となります。
大学院では何をするのか
大学の学部で取り組んでいた内容についてより深く追及する、または特定の仕事をするために専門性の高い知識やスキルを身につけるために、勉強や研究を行っていきます。
具体的には、論文を読む、繰り返し行う実験の準備や分析、改善策を練るなどの作業を行います。
報告会や学会発表などのイベントに参加することもあるでしょう。
論文を読んだり実験をしたりなどの自主的な研究が主な活動になりますが、受講しなければいけない講義などもあります。
【理系大学院生の事態】大学院生の実態
大学院生の生活は、学部生と大きく違う部分があるのでしょうか。
理系大学生の約4割が院に進学するといわれており、決して少ない人数ではないことがわかります。
しかし、学部生よりもはるかに忙しいなど、大きな変化があると、進学したくても尻込みしてしまいそうです。
学校にはどのくらい行ってどのようなことをしているのか、また私生活はどのようなサイクルになっているのか、アルバイトはできるのかどうかなど、実態をくわしく見ていきましょう。
学校生活
学部生の学校生活は講義やディスカッションなどの授業を中心とすることも多いですが、院生は論文を読んだり実験を行ったりといった研究活動が中心となります。
そのため学校のスケジュールはざっくりしたものとなり、時間内で何を行うかなど細かい部分は自分でスケジュールを立てていくことになります。
学部生も授業時間外や家で課題を行う場合、どの課題にどんな段取りで取り組むか自分で設定してやり遂げますが、院生は学校でも自分で設定して取り組んでいく割合が多くなるということです。
登校日数
理系と文系を合わせると週の平均登校日数は5日ですが、年々減少傾向にあります。
理系は実験設備の関係上、文系に比べて登校日数は多いこともありますが、それでも週に7日通う人はわずか7%です。
スペックの高いパソコンを利用して、自宅でも研究作業ができるようになったことや、講義や報告会がリモートでも可能な環境になってきたことが、登校日数が減少した要因です。
どうしても登校しなければいけない日は存在しますが、学校以外でも取り組めるケースが多くなってきています。
授業時間
研究活動がほとんどのため、実情は授業がほぼありません。
ただし、最低限取らなければいけない単位が設定されているため、必ず授業を受けることにはなりますが、学部生よりは圧倒的に少ない量です。
学部生よりも深く専門的な内容を取り上げた講義もあれば、授業の中で院生が順番にみんなの前で発表していくスタイルをとっているものも見られます。
大学や教授にもよりますが、評価方法がテストではなく、レポートの場合が多いのも特徴です。
学部生と同じで、必須の授業は1年目など最初に多く取ってしまい、学年が上がってからは研究など、より自分がやりたいことに時間を割けるようにしている院生が多いようです。
評価方法や授業の形式など具体的なことは、事前に公開されていたり1回目の授業で説明されたりします。
研究
院生の学校生活の中心となってくるのは、やはり研究です。
特に、学年が上がってからや、報告会や発表が近い時期などは、研究にプレッシャーがかかってきます。
理系の大学院の約30%がコアタイムを設定しています。
コアタイムとは、1日のうち必ず実験と向き合わなければいけない時間帯のことです。
理系の場合、修士課程は10時から、博士課程は9時からコアタイムが始まる大学院は多いようです。
また理系院生は平均して、修士課程で7.8時間・博士課程で8.5時間と、長い時間を研究室で過ごしています。
日常生活
多くの院生は、午前中から登校し、日中を学校で過ごし、午後6時を過ぎてから帰宅します。
食事は学食を利用したり、自炊中心で弁当を持参したりと人によってさまざまです。
授業がない日や研究室に行かない日は、休日としてそれぞれ自分の好きなことをして過ごします。
休日に課題や研究に取り組むこともあります。
学部生の頃よりも、遊んだり、アルバイトに費やしたりする時間が少なく感じるかもしれません。
報告会や発表が近い時期や、レポートがいくつも重なってしまう時期などは、忙しくなります。
学習時間
学校以外で学習に費やす時間は、学部生も含めて週平均5時間程度だというデータがあります。
論文を読んだり、レポートを書いたりするのを自宅で行う人が多いようです。
院生のほうが、研究や課題に多くの時間を費やす傾向にあります。
登校日は研究室に長い時間いることが多いため、やはり休日の学習時間の確保が必要になります。
しかし、ほとんどの院生が週2日以上の休日を取れているため、プライベートの時間はきちんと確保できると考えて良いでしょう。
アルバイト
院生の6割ほどがアルバイトをしています。
平日は授業があったり、研究室にこもったりしているので、アルバイトは土日限定になることが多いです。
夏休みや春休みの長期休暇を利用してアルバイトをする人もいますが、そのあいだ、研究や課題をやらなくて良いわけではないため、自分で無理なくスケジュールを組まなくてはいけません。
奨学金を利用する人も多いですが、学部生の頃と合わせると額も大きくなるので「アルバイトをしたほうが良い」と考える院生が多いです。
就活
修士課程のみで卒業を予定している人は、修士課程1年の夏からインターンに参加するなど就活を始めます。
インターンは拘束時間が長いため、長期休暇を利用したり大学のコアタイムと被らないようにしたりと、スケジュール管理が重要になります。
学生にとって就活は大きな関門のため、時期によっては研究よりも優先したくなることがあるかもしれません。
しかし、研究室に顔を出さない日が増えると、良く思わない教授もいるため、しっかりと両立できるように調整する必要があります。
卒業間近になって慌てて就活を始めると、試験や発表に影響をおよぼしてしまうかもしれません。
就活は学部生同様に、卒業の2年から1年半前から余裕をもって、長い時間をかけて取り組めるようにしたほうが良いでしょう。
【理系大学院生の実態】大学院生のメリット
大学院に進むか就職するか迷っている人にとって、大学院生になるメリットは非常に気になるポイントです。
これらのメリットに強い魅力を感じるのであれば進学すべきです。
以下で紹介するメリットのほかにも、社会に出るのを先延ばしにする目的で院生になる人もいます。
研究を深めたいという意志はもちろんあるのですが「課外活動などやりたいことが多く、学生の期間を延ばしたい」という考えから院に進む人もいるようです。
それでは、多くの人にとってメリットだと断定できるものを紹介していきます。
高い専門性が身につく
院に進学すると、広く深い知識や専門的なスキルが身につきます。
ほかの人に比べて、より専門的で高度な作業を必要とする仕事をこなせます。
また、自ら研究に取り組む経験は、自分でスケジュール管理をしたり調査や分析をしたりして、論理的に考える力を育ててくれるのです。
研究結果の発表などは、見やすい資料を作ったり要点をまとめてわかりやすく話したりすることが求められます。
そのため社会に出たときに、状況を把握する能力やプレゼン能力がほかの人に比べて高いという特徴があります。
初任給が高い
企業によって差はありますが、基本的に院卒の給料は高めに設定されています。
平均値で見ると、大卒の初任給が20万円程度なのに対して、院卒は23万円程度です。
平均しても3万円高いことになります。
近年は年功序列が崩れ、昇給しにくい状況が続いているため、初任給が高いのは多くの人にとって、非常に魅力的なポイントです。
特に一人暮らしの場合だと、住宅や食費など生活に必要な資金がかさむため、月に3万円差があるのは大きいです。
就活が有利になる
理系の人材は多くの企業に重宝されます。
医療分野やIT企業など、あらゆる分野で深い専門知識と、たしかな技術力を持った人材が求められています。
需要がある一方で、理系学生のあいだでも良い条件の就職先への競争が激しくなっている分野もあるため、内定獲得まで苦労する人がいるのも事実です。
院卒というたしかな学歴があれば、ある程度の専門性と実力が証明されます。
さらに院で築いた実績は、企業からも高評価をされる可能性が高いです。
院で高い評価を得られれば、学校推薦や教授推薦によって大企業に就職できることも珍しくありません。
ただし、院に進学すれば必ず内定が獲得できるわけではないため、甘く見てはいけません。
つまり、比較的良い条件での就職に成功する可能性が高くなるということです。
修士のほうが就職しやすい
日本では院に進学しても、博士課程まで履修しない人が大半です。
社会人になるのが遅くなったり、学費の都合だったりと理由はさまざまありますが、博士よりも修士のほうが就職しやすいのも、理由の1つです。
わざわざ博士号を取らなくても、修士号で就職先の候補は充実しています。
むしろ、日本では博士号を活かせる就職先は少ないのが現実です。
もし博士号を取得するモチベーションがあるのなら、就活は海外に目を向けてみると、給与や働き方など好待遇な仕事と出会える可能性が高くなります。
【理系大学院生の実態】大学院に進むデメリット
大学院進学は、必ずしも人生にとってプラスの要素ばかりをもたらしてくれるわけではありません。
進学後に後悔しないためにも、進学のデメリットも十分に考えておきましょう。
また、進学したい気持ちはあるけれど、これらのデメリットのせいで実際に進学するのは難しいと考えている人は、対策や工夫ができれば進学を実現できるかもしれません。
いずれにしても、これらのデメリットについて理解し、自分なりに考えてみることが大切です。
学費がかかる
進学の大きな壁となるのが、お金の問題です。
入学金や授業料に加え、一人暮らしの場合は生活費などもかかります。
すでに社会人となって給料をもらっている人は、欲しいものを買ったり遊んだりするお金も自分で稼げます。
しかし、学生のままだと、毎月まとまった金額を得るのは難しいにもかかわらず、学費を支払わなければいけません。
奨学金は将来への負担になり、アルバイトも限度があるため、お金の問題をどう解決するか考える必要があります。
拘束時間が長い
学部生の頃は自由な時間が比較的多いものです。
しかし、院生はそうもいかないのです。
学部生の頃に比べて、研究室に拘束される時間が長く、読む論文の量も多くなり、課題もしっかりこなさなくてはいけません。
学校に拘束される時間は8時間ほどになり、社会人が仕事をする時間とほとんど変わらないのです。
研究以外にやりたいことがある場合、院生になっても社会人同様、自由に使える時間に制限ができてしまうことを覚悟しておく必要があります。
就活の時間の確保が大変
学部生よりも大学のスケジュールの調整が難しいため、就活が大変です。
たくさんの時間を費やして量をこなしていく学部生の就活と異なり、企業研究を熱心に行い、的を絞ってエントリーすることになります。
研究室に行く時間を極端に減らせないため、就活はプライベートの時間を費やすことも多くなります。
ある程度就活に注力したい場合は、事情を理解してもらえるよう、日頃から教授とコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことが大切です。
社会に出るタイミングが遅れる
モラトリアム期間を延ばしたくて進学する人も中にはいます。
しかし、社会に出るのが遅くなるほど、デメリットだと感じる人のほうが多いです。
修士号では2年、博士号ではさらに3年働き始めるのが遅くなります。
初任給の差があるとはいえ、就職した友人がその数年間で実績を出し、高給を得るようになるかもしれません。
キャリアを積む際、若さが武器になることもあります。
進学を選べば、その分逃してしまうチャンスもあるということです。
【大学院生の実態】大学院を活用するには
大学院に進学した場合、気になるのはそのあとの就活です。
基本的に初任給は高く、好条件での就職が決まりやすい傾向にはありますが、必ず就職を成功させられる保証はありません。
大学院への進学を就活へ最大限活かすためには、進学後は以下のことへ積極的に取り組んでいくと良いでしょう。
研究活動に多くの時間を割かなければいけないうえ、アルバイトや課外活動などやりたいことが多いとなかなか大変かもしれませんが、ぜひ意識して取り組んでみてください。
イベントに多く参加する
院生が参加できる学術イベントはたくさんあるため、できるだけ多くのイベントに参加するよう心掛けましょう。
いろいろな人の研究の話を聞くことで論理的思考力が磨かれ、自ら発表する機会があると、資料作りやプレゼンのスキルを磨けます。
また、多くの人に自分のことを知ってもらえるきっかけにもなるでしょう。
自分の興味がある分野にくわしい人物とも出会えるチャンスがあります。
初対面の人と話す機会も増え、コミュニケーションスキルも磨かれます。
ここでの出会いが今後重要な人脈につながったり、成長の大きなきっかけになったりする場合もあるのです。
さまざまな刺激を得られる良い機会のため、学術イベントには積極的に参加していきましょう。
形に残る成果を残す
院で何をしていたのか、あとでわかりやすく提示するため、形に残る成果が出せるように努力しましょう。
論文を書くのはもちろん、賞に応募するのも良い手段です。
形に残るような活動をすると、自分が主体的に取り組んでいることを強く実感できるため、研究へのモチベーションも高くなります。
また、就活の際にもアピールしやすくなります。
高い評価や実績が得られなかったとしても、努力した形がきちんと残っていれば、評価の対象になるのです。
仲間を作る
ほかの院生とコミュニケーションを取り、仲良くなることが大切です。
同じ研究室でも、ほかの研究室でもかまいません。
1人の活動が多くなると、孤独を感じてしまうこともあるでしょう。
同じような境遇の仲間がいると、研究を続けていく際にも励みにもなり、一緒に息抜きをしたり、困っていることを相談して助け合ったりすることもできます。
高い専門性を持った優秀な人と仲良くなれれば、社会に出たあとも、仕事をする際に助け合って良い成果へつなげられます。
まとめ
院生の生活は、学部生に比べて自由時間は少ないのが特徴です。
それは、自ら計画を立て主体的に研究に取り組む時間が多くなるからです。
院卒は大卒と比べて初任給は高くなる傾向にありますが、2年から5年社会に出るのが遅れるため、逃してしまう仕事のチャンスもあるかもしれません。
進学を決める際には、メリットとデメリットをしっかりと吟味してからにしましょう。
大学院を就活へ活かすためには、学術イベントへ積極的に参加し、具体的な成果や仲間を作るように心掛けましょう。