【理系からプラント業界】プラントエンジニアとして化学工学を活かそう!業界研究から内定戦略まで徹底解説

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伊東美奈
Digmedia監修者
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

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【理系からプラント業界】はじめに

あなたが学んでいる化学工学は、ものづくりの根幹を支える非常に重要な学問です。

そして、その知識を最もダイナミックに、かつ大規模に活かせる業界の一つがプラントエンジニアリング業界です。

日揮や千代田化工建設といった有名企業に関心を持ちつつも、就職が難しいのでは、具体的にどんな仕事をするのだろう、と不安に思っている方も多いでしょう。

この記事では、化学工学を専門とするあなたが、プラント業界でどのように活躍できるのか、企業の比較、働くメリット・デメリット、そして内定を勝ち取るための具体的な就活対策までを徹底解説します

【理系からプラント業界】プラント業界とは

プラントエンジニアリング業界と聞いても、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。

この業界は、私たちの生活や産業に不可欠なエネルギーや素材を生み出す、巨大な生産設備そのものを作り上げる業界です。

化学工学をはじめとする理系の専門知識が、そのまま社会を支えるインフラ構築に直結します

ここでは、プラント業界の基本的な定義、役割、そしてビジネスモデルについて詳しく解説していきます。

プラント業界の定義と役割

プラント業界とは、大規模な生産設備や処理施設の建設プロジェクト全体を請け負う業界です。

ここでいうプラントとは、化学製品、石油製品、天然ガス(LNG)、電力、製鉄、上下水処理など、生活や産業の基盤となるあらゆるものを生産・処理するための巨大な施設群を指します。

例えば、ガソリンやプラスチック原料を作る石油精製プラントや、海外から輸入した天然ガスを都市ガスにするためのLNGプラントなどが代表的です。

これらのプラントは、何百、何千という機器や配管、制御システムが複雑に組み合わさって機能する、まさに工学技術の集合体です。

プラントエンジニアリング企業は、これらの巨大で複雑な施設が、計画通りに安全かつ効率的に稼働するまでの全工程、すなわちプロジェクトの計画立案から、詳細な設計、必要な資材や機器の調達、現地での建設工事、そして最終的な試運転までを一手に担います。

顧客の要望に基づき、最適な生産プロセスを構築し、巨大な工場をゼロから生み出す、総合プロデューサーのような役割を果たします。

プラント建設プロジェクトの流れと主な工程

プラント建設は、非常に複雑で長期にわたり、時には数千億円規模の予算が動く一大プロジェクトです。

その主要な工程は、一般的に以下のフェーズで進行します。

まず、フィージビリティ・スタディ(FS)です。

これは事業化調査とも呼ばれ、顧客が計画しているプラント建設プロジェクトが、事業として採算が取れるか、また技術的に実現可能かを調査・評価する段階です。

次に行われるのが基本設計(FEED)です。

FSで事業化が可能と判断された後、プラント全体の基本的な構成、主要な機器の仕様や配置、そして化学工学の核となるプロセスフローなどを決定する重要な工程です。

この基本設計に基づき、詳細設計のフェーズに移ります。

ここでは、プラント建設に必要な全ての詳細な図面、仕様書を作成します。

機器の細かな寸法、配管のルート、電気系統、制御システムなど、あらゆる要素を網羅します。

設計が完了すると、調達(Procurement)が始まります。

設計書に基づき、必要な機器や資材、例えば巨大な反応塔やポンプ、大量の配管などを、世界中のメーカーから最適な条件で購入・調達します。

そして、建設(Construction)フェーズで、調達した機器や資材を建設現場(多くは海外)に送り、現地で設備の組み立て、据付工事を行います。

最後に試運転(Commissioning)です。

すべての設備が完成した後、実際に原料を流し、プラントが計画通りの品質と生産量で安全に機能するかをテストします。

この試運転を経て、問題がないことを確認した上で、最終的に顧客にプラントを引き渡します。

プラント業界における理系学生の必要性

プラントは、物理、化学、熱力学、流体力学といった、理学・工学の様々な法則に基づいて設計され、運転されます。

そのため、プラントエンジニアリング業界は、理系学生の専門知識を最も必要とする業界の一つです。

特に、あなたが専攻されている化学工学は、プラントの心臓部とも言えるプロセス(生産工程)を設計・最適化するために不可欠な学問です。

例えば、石油精製プラントや化学品製造プラントにおいて、原料から目的の製品をいかに効率良く、安全に、そして低コストで作り出すか。

そのためのプロセスフローを考え、熱交換器、反応器、蒸留塔といった主要な機器の容量や仕様を計算し、決定するのが、まさに化学工学の知識です。

プラント全体のエネルギー効率を計算し、環境への負荷を最小限に抑えるための設計も、化学工学の重要な役割です。

あなたの学んできた反応工学、分離操作、伝熱工学といった知識は、机上の空論ではなく、この業界の根幹を担う実践的な技術として直接活かされます。

プラントエンジニアリング企業にとって、化学工学をはじめとする理系の専門知識を持つ人材は、まさに不可欠な存在なのです。

プラント業界のビジネスモデル

プラント業界の基本的なビジネスモデルは、EPC(イーピーシー)と呼ばれています。

これは、Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)の頭文字を取ったもので、プラント建設プロジェクトにおけるこれら全ての工程を一括で請け負う形態を指します。

プラントエンジニアリング企業は、顧客である石油会社、電力会社、化学メーカーなどから、プラント建設プロジェクト全体を受注します。

そして、自社の高度な技術力(Engineering)を駆使してプラントを設計し、グローバルなネットワーク(Procurement)を活かして世界中から最適な機器や資材を調達し、建設現場での施工管理(Construction)を行います。

このように、プロジェクトの最初から最後まで、全ての責任を持って遂行し、完成したプラントを顧客に引き渡すことで収益を上げるのが、EPCビジネスモデルの基本です。

プロジェクトは数十億から数千億円規模になることも珍しくなく、その多くが海外、特に資源国や新興国が舞台となります。

そのため、国際的な競争力と、プロジェクト全体をまとめ上げる高い技術力やマネジメント能力が求められるのが、この業界の大きな特徴です。

【理系からプラント業界】プラント業界で理系学生が活躍できる職種とは

プラント業界と一口に言っても、その中で理系学生が活躍できる職種は多岐にわたります。

プロジェクトの各フェーズにおいて、それぞれの専門知識を活かしたエンジニアが数多く関わっています。

化学工学の知識が直接活きるプロセス設計から、機械工学が求められる機器設計、そしてプロジェクト全体を牽引するマネージャーまで、あなたの適性や興味に応じた多様なキャリアパスが存在します。

ここでは、理系学生が主に活躍する代表的な職種について解説します。

プロセスエンジニア

プロセスエンジニアは、化学工学専攻の学生にとって、その専門性を最も直接的に、かつ最大限に活かせる花形の職種です。

まさにプラントの心臓部を設計する、プロジェクトの根幹を担う存在と言えます。

プロセスエンジニアの具体的な業務内容は、プラントが最も効率的かつ安全に、計画通りの品質の製品を生産するための生産工程(プロセス)そのものを設計することです。

具体的には、まず、原料がどのような化学反応や分離操作を経て製品になるかを示したプロセスフローダイアグラム(PFD)や、さらに詳細な配管計装図(P&ID)を作成します。

これを作成するために、原料と製品の量的な関係を示す物質収支や、プロセスで必要となる熱量や冷却量を示す熱収支の計算を行います。

これらの計算に基づき、反応器や蒸留塔、熱交換器といったプラントの核となる主要プロセス機器の仕様(大きさ、材質、運転条件など)を決定します。

求められる知識・スキルとしては、化学工学の基礎知識、すなわち反応工学、分離操作、伝熱工学、流体工学といった、あなたが大学で学んでいる中核的な科目のほぼ全てが必須となります。

また、近年ではこれらの複雑な計算やプロセス全体の挙動をシミュレーションするために、Aspen PlusやHYSYSといった専門のシミュレーションソフトを活用するスキルも重要です。

何よりも、物理現象や化学反応を深く理解し、それらを論理的に組み上げて最適なプロセスを構築する能力が求められます。

機器設計エンジニア

機器設計エンジニアは、プロセスエンジニアが決定したプラントの基本仕様に基づき、プラントを構成する個々の機器の具体的な設計を担当する職種です。

プロセスエンジニアがプラントの頭脳だとすれば、機器設計エンジニアは強靭な心臓や血管、骨格を作り上げる役割と言えます。

担当する機器は、大きく静機器と動機器に分けられます。

静機器とは、圧力容器、熱交換器、貯蔵タンク、蒸留塔など、内部に可動部分を持たない機器を指します。

これらの機器は、多くの場合、高温・高圧・腐食性流体といった非常に厳しい条件で使用されます。

そのため、材料力学や構造解析、金属材料学といった機械工学の知識を駆し、厳しい運転条件に長期間耐えうる安全な構造を設計することが求められます。

一方、動機器とは、ポンプ、圧縮機、タービン、攪拌機など、内部に可動部分を持ち、流体や気体を輸送・圧縮する機器を指します。

こちらでは、流体力学や機械設計、トライボロジー(摩擦・摩耗)などの知識が求められます。

機器設計エンジニアは、これらの多様な機器が、プロセス上の要求を満たすだけでなく、安全に、安定して、かつ経済的に長期間稼働するための詳細な設計を行う、機械系エンジニアの専門性が光る職種です。

配管・土木・建築エンジニア

プラントは、プロセス機器や機械機器が単独で存在しているわけではなく、それらが複雑に結びつき、強固な基盤の上に建設されることで初めて機能します。

配管エンジニアは、プラント内に張り巡らされる無数の配管ルートを設計し、流体の流れを最適化する役割を担います。

機器と機器をどのようにつなげば、圧力損失や熱損失を最小限に抑え、かつ安全でメンテナンスしやすい配置になるかを、3D CADなどを駆使して設計します。

土木・建築エンジニアは、それら全ての機器や構造物を支えるプラントの基礎構造、建屋、さらには道路や排水設備といったインフラ全体の設計・施工管理を行います。

特に地震が多い日本や、特殊な地盤の海外で建設する場合、高度な土木技術や建築構造学の知識が不可欠です。

そして、これらの多様なエンジニアたちをまとめ、プロジェクト全体の責任者として牽引するのが、プロジェクトマネージャー(PM)です

PMは、定められた工期、予算、品質、安全を厳格に管理し、顧客との交渉、社内の各エンジニアリング部門、世界中の資材メーカー、現地建設会社とのあらゆる調整を行います。

多くのプラントエンジニアリング企業では、理系出身者がまずはいずれかのエンジニアとして専門性を高め、数々のプロジェクト経験を積んだ後、PMへとキャリアアップしていくのが一般的なキャリアパスとなっています。

技術的なバックグラウンドと、強力なリーダーシップ、タフな交渉力が求められる、プロジェクトの最高責任者です。

【理系からプラント業界】プラント業界の主要企業を徹底比較

プラント業界と一口に言っても、企業によって得意とする分野や強み、働く環境は異なります

化学工学を専攻するあなたにとって、どの企業が自分の興味やキャリアプランに合っているのかを見極めることは非常に重要です。

ここでは、日本のプラント業界を代表する主要な企業グループについて、その特徴や強みを比較しながら解説していきます。

日揮

日揮ホールディングス(日揮)は、日本のプラントエンジニアリング業界のリーディングカンパニーの一つであり、特にLNG(液化天然ガス)分野において世界トップクラスの実績と技術力を誇ります

世界中で建設されたLNGプラントの多くに日揮が関わっており、この分野での圧倒的な強みが同社の大きな特徴です。

化学工学を活かせるLNGの液化プロセスや、石油精製、石油化学プラントにおいても豊富な経験を持っています。

伝統的にプロジェクトマネジメント能力が非常に高いと評価されており、困難な大規模プロジェクトを完遂する力を持っています。

近年は、従来の石油・ガス分野に加えて、非化石燃料分野、すなわち再生可能エネルギー(太陽光、地熱など)や、医薬品・先端医療分野のライフサイエンス、さらには環境関連のプラントにも注力しています。

グローバルな舞台で、エネルギーという社会基盤の中核を担う超大規模プロジェクトに携わりたい、あるいは、最先端の技術分野で新たな挑戦がしたいと考える学生にとって、非常に魅力的な企業です。

千代田化工建設

千代田化工建設も、日揮と並び称される日本の総合プラントエンジニアリング企業の雄です。

歴史的に石油精製や石油化学プラントの分野に非常に強い基盤を持っており、世界中で数多くのプラント建設実績があります。

特に、最新のプロセス技術の導入や、難易度の高いプラントの設計・建設に積極的に取り組んできた歴史があり、高い技術力が国内外で評価されています。

日揮がLNGに強みを持つ一方で、千代田化工建設は石油化学や一般化学の分野で広範なネットワークと実績を有しています。

また、近年では、LNG分野にも積極的に進出し、大型プロジェクトを数多く手掛けています。

さらに、次世代エネルギーとして注目される水素サプライチェーンの構築や、CO2回収・貯留(CCS)技術、再生可能エネルギー分野など、脱炭素社会に向けた新たな技術領域にも積極的に投資・開発を行っています。

技術的な挑戦を重視する社風があり、化学工学の専門性を活かして最先端の技術開発やプロジェクトに携わりたい学生に適した企業と言えます。

東洋エンジニアリング

東洋エンジニアリングは、日揮、千代田化工建設とともに、日本のプラント専業大手3社の一つに数えられる企業です。

同社の大きな特徴は、肥料(アンモニア、尿素)プラントや、エチレンなどの一般化学プラントの分野で、世界的に高いシェアと豊富な実績を持っている点です。

特に、肥料プラントは食糧生産に直結する重要なインフラであり、同社はこの分野で独自の強みを発揮しています。

また、プロジェクトの遂行拠点として、ロシアやインド、東南アジアなどに強固な地盤を築いており、これらの地域でのプロジェクト経験が非常に豊富です。

もちろん、石油化学や石油・ガス精製、電力プラントなど、幅広い分野でのEPCプロジェクトを手掛ける総合力も備えています。

他の2社と比較すると、特定の製品分野や地域において、非常に深い専門性とネットワークを構築している点が特徴です。

化学工学の知識を活かし、特に化学プラントや、新興国を中心とした海外プロジェクトに深く関わりたいと考える学生にとって、注目すべき企業です。

重工系

三菱重工業、IHI、川崎重工業といった、いわゆる重工系メーカーも、プラントエンジニアリング事業の重要なプレイヤーです。

これらの企業は、元々、タービン、ボイラー、エンジン、船舶といった大型機械や構造物の製造を祖業としており、その高度な製造技術や設計技術を基盤にプラント事業を展開しています。

専業プラント企業との最大の違いは、プラントの核となる主要機器(例えば発電所のガスタービンやボイラー)を自社グループ内で製造できる点です。

この強みを活かし、特に電力プラント(火力、原子力、地熱など)や、廃棄物処理などの環境プラント、製鉄プラントといった分野で高い競争力を発揮します。

また、ロケットや航空機なども手掛ける総合力を活かし、CO2回収技術や水素エネルギーなど、最先端の技術開発にも積極的です。

プラント単体だけでなく、その中核をなす機器や技術そのものに深く関わりたい、あるいは、より幅広い事業領域を持つ大企業で安定的に働きたいと考える学生にとって、魅力的な選択肢となります。

電力・ガス系

東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)のように、大手電力会社やガス会社のグループ企業として、プラントエンジニアリング事業を手掛ける企業群も存在します。

これらの企業は、親会社が長年にわたって電力やガスの供給インフラを運用・管理してきた中で培った、高度な技術的知見やノウハウをバックボーンに持っています

特に、親会社が関わるLNGの受入基地や、都市ガスの供給設備、発電所関連のプラントなど、エネルギーインフラに直結する分野において非常に強い基盤を持っています。

また、親会社の設備投資を中心とした安定的な事業基盤を持ちつつ、そこで培った技術を活かして外部の顧客(他の電力・ガス会社や一般工場など)向けのプラント建設も手掛けています。

エネルギー関連、特にLNGやガス関連のプラントに特化して専門性を高めたい、あるいは、インフラ企業のグループ会社という安定した環境で働きたいと考える学生にとって、有力な選択肢となるでしょう。

その他

上記の大手企業以外にも、特定の分野において非常に高い技術力とシェアを誇る、ユニークなプラントエンジニアリング企業が数多く存在します。

例えば、水処理プラントの分野です。

クボタやメタウォーター、栗田工業といった企業は、上下水道施設や工場排水処理、超純水製造設備など、水インフラに関するプラントで高い技術力を持ち、国内外で活躍しています。

また、新日鉄エンジニアリング(現:日鉄エンジニアリング)のように製鉄所の建設・運用で培った技術を活かす企業や、廃棄物処理プラントに特化した企業など、その分野は多岐にわたります。

化学工学の知識は、これらの水処理や廃棄物処理プロセスにおいても、物質収支や反応工学、分離操作といった形で応用が可能です。

総合的なEPCではなく、特定の分野でトップクラスの技術を追求したい、あるいは、環境問題の解決に直結する仕事がしたいと考える学生にとって、これらの専門企業も非常に魅力的な選択肢と言えます。

【理系からプラント業界】プラントエンジニアとして働くメリット・デメリット

プラント業界は、化学工学の知識を活かせる非常に魅力的なフィールドですが、その仕事内容は独特であり、働く上でのメリットとデメリットが明確に存在します

就職活動を進める上で、華やかな面だけでなく、厳しい側面も理解しておくことは、入社後のミスマッチを防ぐために非常に重要です。

ここでは、プラントエンジニアとして働くことの主なメリットとデメリットを、具体的に解説していきます。

メリット:大規模プロジェクトへの参画と達成感

プラントエンジニアとして働く最大の魅力は、やはりその仕事のスケールの大きさにあります

数千億円規模の予算と、数千人もの人々が関わり、数年がかりで一つの巨大なプラントをゼロから作り上げる。

これほどダイナミックで大規模なものづくりに、若いうちから中核メンバーとして携われる業界は、他にはなかなかありません。

特に、自身の専門性を最大限活かせる環境である点は、化学工学を専攻する学生にとって大きなメリットです。

プラント建設は、大学で学んだ化学工学や機械工学といった学術的な知識が、そのままプラントの性能や収益性、安全性に直結する仕事です。

机上の空論ではなく、自分の計算や設計が巨大な構造物として形になり、社会に不可欠なエネルギーや素材を生み出していく。

この社会に役立つ巨大なものづくりを通して、日々の研究や学習が報われる、何物にも代えがたい大きな達成感を得られるはずです。

さらに、グローバルな働き方と高い給与水準も魅力です。

プラントプロジェクトの多くは海外、特に中東、アジア、アフリカ、北米といった資源国や新興国が舞台となります。

そのため、若いうちから海外出張や、時には数年にわたる海外駐在を経験する機会が非常に多く、多様な文化や価値観を持つ人々と協働する、真のグローバルなビジネススキルが身につきます。

また、その仕事の専門性の高さと、プロジェクトの成否を担う責任の重さから、プラント業界の給与水準は、他業種と比較しても総じて高い傾向にあります。

デメリット:激務や転勤・海外駐在の可能性

一方で、プラントエンジニアの仕事には厳しい側面も存在します。

その一つが、プロジェクトの納期や安全管理における極めて高いプレッシャーです。

プラント建設は、プロジェクトの規模が大きいため、工期が一日遅れるだけで、数億円単位の莫大なコスト(違約金など)が発生する可能性があります。

そのため、特に設計の終盤や、建設のピーク時には、タイトなスケジュールを守るために業務が集中し、残業時間が非常に多くなる、いわゆる激務状態になる傾向があります。

また、プラントは一歩間違えば大事故につながる危険な物質を扱うことが多いため、何よりも安全管理が最優先されます。

エンジニアの設計ミスが、将来的な事故の原因になる可能性もゼロではなく、常に大きな責任感が伴います。

さらに、プロジェクトの状況による勤務時間の変動や、勤務地の問題も考慮すべき点です。

プラント建設は、プロジェクトのフェーズ(計画、設計、建設)によって、求められる業務量や働く場所が大きく変動します。

特に、建設フェーズや試運転フェーズでは、プラントが建設される現地(多くは海外や国内の工業地帯)に、数ヶ月から数年にわたって長期出張、あるいは駐在する必要があります。

こうした海外駐自在は、グローバルな経験を積めるというメリットであると同時に、家族と離れて単身赴任となる可能性や、生活環境の厳しい場所で働くストレスを伴うデメリットにもなり得ます。

ワークライフバランスを安定的に保ちたい、あるいは、家族と過ごす時間を最優先したい、と考える人にとっては、この働き方が大きな負担となる可能性があります。

【理系からプラント業界】プラント業界が求める強みとは

プラント業界は、その専門性の高さから、採用においても明確な基準を持っています。

化学工学を専攻するあなたは、すでにこの業界が求める重要な素養の一つを持っていますが、それ以外にも求められる強みや、内定を獲得しやすい学生の属性が存在します。

ここでは、プラント業界がどのような人材を求めているのか、そして、あなたの強みをどうアピールすべきかを解説します

化学工学・機械工学・電気電子工学の重要性

プラント業界で技術職、特にエンジニアとして働くには、工学系の専門知識が不可欠です。

その中でも、特に重要視されるのが、化学工学、機械工学、そして電気電子工学の三つの分野です。

あなたが専攻されている化学工学は、前述の通り、プラントの心臓部であるプロセスフローや主要機器の仕様を決定するプロセス設計の核となる、最も重要な分野の一つです。

プラント業界を志望する上で、最大の強みと言えます。

機械工学は、反応器、熱交換器、ポンプといった各種機器の設計や選定、プラント全体に張り巡らされる配管設計など、プラントを物理的に構成するあらゆる要素に関わります。

電気電子工学は、プラントを自動運転させるための計装(センサーや制御バルブなど)や、制御システムの設計、さらにはプラント全体に動力を供給する電力供給設備など、プラントの神経や血管にあたる部分を担います。

あなたが化学工学専攻であれば、まずはプロセスエンジニアとしての適性が最も高いと言えますが、プロジェクトはこれらの異なる専門分野のエンジニアが協力して初めて成り立つものです。

したがって、自分の専門分野だけでなく、他の分野の知識も積極的に学ぶ意欲や、他分野のエンジニアと円滑にコミュニケーションを取る能力も重要になります。

構造力学・流体力学などの基礎

プラント業界のエンジニアとして働く上で、専攻分野に関わらず、工学の基礎的な理解は不可欠です。

特に、材料力学、熱力学、流体力学、機械力学は工学の基礎として四力と呼ばれますが、これらの知識はプラント設計のあらゆる場面で必要とされます。

例えば、化学工学専攻であっても、配管内を流れる流体の挙動を理解するためには流体力学の知識が必要ですし、反応器や蒸留塔といった巨大な構造物が自重や圧力、風、地震などに耐えられるかを計算する上では、構造力学(材料力学)の基礎的な概念が関係してきます。

もちろん、熱交換器の設計やエネルギー効率の計算には熱力学が欠かせません。

選考の技術面接などでは、専門的な研究内容だけでなく、こうした工学の基礎概念を正しく理解しているか、そしてそれをどのように実際の設計に応用できるかを問われることがあります。

大学の講義で学んだ基礎的な内容を、今一度しっかりと復習しておくことが重要です。

内定を獲得しやすい学生の属性とは

プラント業界、特に日揮や千代田化工建設といった専業大手企業は、そのプロジェクトの専門性の高さや、エンジニアとして一人前になるまでに長期間の育成が必要となることから、学部生よりも大学院修士課程(M1・M2)を修了した学生の採用割合が非常に高いという顕著な特徴があります。

特に、化学工学や機械工学といった、プラントのコア技術に直結する分野を修士課程で深く掘り下げ、一つの研究テーマに真摯に取り組んだ経験が高く評価されます。

なぜなら、修士の研究活動を通じて、困難な課題に直面し、それを自らの力で分析し、解決策を見出してきた経験は、プラントエンジニアリングという、まさに問題解決の連続である仕事に直結するからです。

企業が求める専門性と、プロジェクトを遂行する上で不可欠なタフネス(粘り強さ)を兼ね備えていると評価されやすいのです。

実際に内定を獲得している学生の多くは、自身の研究テーマそのものがプラントに直結するかどうか以上に、その研究プロセスで何を学び、どのようなスキルを身につけ、それがどう入社後の業務に活かせるのかを、論理的に説明できる学生です。

【理系からプラント業界】プラント業界の就活対策と選考フロー

プラント業界は、理系学生、特に化学工学専攻の学生にとっては大きなチャンスがある業界ですが、その選考は専門性も高く、独自の対策が必要です。

ここでは、プラント業界の内定を勝ち取るために、志望動機の作り方から面接対策、エントリーシートのコツまで、具体的な就活対策と選考フローについて詳しく解説します

志望動機でアピールするべき「化学工学を活かしたい」以外の要素

プラント業界を志望する化学工学の学生の多くが、化学工学の知識を活かしたい、という志望動機を語ります。

これはもちろん大前提として重要ですが、それだけでは他の多くの学生と同じになってしまい、差別化ができません

あなたのユニークな強みや熱意をアピールするためには、以下の要素をプラスすることが非常に効果的です。

一つは、グローバルな視点や大規模なものづくりへの意欲です。

プラント業界の仕事は、その多くが海外を舞台とした、社会インフラを構築する仕事です。

単に自分の知識を活かしたい、という内向きな理由だけでなく、世界中の人々の生活や産業を支えるインフラ建設に、エンジニアとして携わりたい、というスケールの大きな熱意を伝えることが重要です。

もし海外インターンや留学経験、高い語学力(TOEICスコアなど)があれば、それはグローバルな環境で働くことへの高い適応力を示す具体的な証拠として、積極的にアピールしましょう。

もう一つは、研究で培った論理的思考力や仮説検証能力の伝え方です。

プラントエンジニアリングの仕事は、予期せぬトラブルや困難な課題の連続であり、その本質は問題解決です。

したがって、選考ではあなたの問題解決能力が厳しく見られます。

研究で直面した問題に対し、自分はどのような仮説を立て、それを検証するためにどのような手順で実験や分析を行い、最終的にどう解決したか、そのプロセスを具体的に説明することが極めて重要です。

結果が成功したか失敗したかよりも、その過程をいかに論理的に説明できるかが、あなたのエンジニアとしての素養を示す上で評価されます。

OB・OG訪問やインターンシップの活用方法

プラント業界の仕事は、そのスケールの大きさや専門性の高さから、学生が外部から具体的なイメージを掴むのが難しい業界の一つです。

そこで非常に有効なのが、OB・OG訪問やインターンシップの活用です。

OB・OG訪問では、実際に働いている先輩社員から、職種ごとの具体的な業務内容や、一日のスケジュール、プロジェクトの苦労話、そして海外駐在のリアルな実情(生活環境、家族の帯同など)といった、パンフレットには書かれていない生の声を聞くことができます

これにより、自分が本当に入社後も活躍できるか、ミスマッチがないかをチェックすることができます。

また、そこで得た具体的な情報を、面接などで志望動機に織り交ぜることで、企業研究を深く行っているという、志望度の高さをアピールすることにも繋がります。

インターンシップは、業界特有の働き方や、自分の専門性がどのように活かされるのかを、体験的に理解できる絶好の機会です。

多くの企業が、実際のプラント設計プロセスを模した設計課題や、チームでのグループワークなどを通じて、プラントエンジニアリングの仕事の面白さや難しさを学べるプログラムを用意しています。

また、インターンシップでの評価が高ければ、その後の本選考で優遇措置(一部選考免除など)を受けられる企業も多いため、志望度の高い企業には積極的に参加することをお勧めします。

専門性の高い面接への対策(技術面接で聞かれること)

プラント業界の選考、特に技術職の選考では、一般的な面接に加えて、学生の専門知識や工学的な基礎力を確認するための技術面接が実施されることがあります。

ここでは、人事担当者ではなく、現場のベテランエンジニアが面接官となることが多いのが特徴です。

まず、化学工学の基礎的な知識について問われることがあります。

例えば、熱力学の第一法則と第二法則を説明してください、代表的な分離操作の原理(蒸留、抽出、吸収など)を説明してください、反応速度論の基本的な考え方を説明してください、といった、大学の講義で習うレベルの基本的な質問です。

これらに正確に、かつ簡潔に答えられるよう、基礎をしっかり復習しておく必要があります。

さらに、自身の研究内容に関する深い掘り下げが行われます。

なぜその研究テーマを選んだのですか、その研究の新規性や社会的な意義は何ですか、研究で使った分析機器の原理を説明してください、他の研究手法との違いは何ですか、あなたの研究内容を、専門知識のない人にも分かるように3分で説明してください、といった質問です。

これらの質問に備え、自分の研究の背景、目的、手法、結果、考察を、専門用語を使わずに分かりやすく、論理的に説明できるように、徹底的に準備しておきましょう。

エントリーシート(ES)作成の具体的なコツ

プラント業界のエントリーシート(ES)では、あなたの専門性や論理的思考力と同時に、エンジニアとして、また大規模プロジェクトの一員として不可欠な素養である、「リーダーシップ」「協調性」「タフネス」の3つを、具体的なエピソードで示すことが非常に重要です。

協調性やリーダーシップは、プラント建設という巨大プロジェクトが、決して一人の天才エンジニアによって成し遂げられるものではなく、多様な専門分野のエンジニアや、世界中の協力会社とのチームワークによって成り立つものだからです。

研究室での後輩の指導経験、サークル活動やアルバイトで、意見の異なるメンバーの意見をまとめ、一つの目標に向かってチームを導いた経験などを具体的に記述しましょう。

タフネスは、プロジェクトが、予期せぬトラブルの連続であり、時には厳しい納期や、困難な環境(例えば、海外の辺鄙な建設現場など)で粘り強く業務を遂行する必要があるからです。

研究活動で、なかなか良い結果が出なくても諦めずに試行錯誤を続けた経験や、困難な状況下でプレッシャーに打ち勝ち、粘り強く取り組んで成果を出した経験などを具体的に示すことで、あなたのストレス耐性や粘り強さをアピールできます。

これらの要素を、研究活動や課外活動の具体的なエピソードに落とし込んで記述することが、選考を突破するES作成のコツです。

【理系からプラント業界】よくある質問

プラント業界への就職活動を進めるにあたり、多くの理系学生が抱くであろう疑問や不安について、あらかじめお答えしておきます。

就職難易度や、自身の研究テーマとの関連性など、気になるポイントを解消し、自信を持って選考に臨んでください。

日揮や千代田化工などの難易度は?自分でも内定できる?

日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリングの専業プラント大手3社は、日本を代表するグローバル企業であり、学生からの人気も非常に高いため、就職難易度は非常に高いと言わざるを得ません。

しかし、だからといって不安に感じる必要はありません。

なぜなら、化学工学を専攻し、かつ大学院修士課程を修了(あるいは修了見込み)のあなたは、まさにこれらの企業が最も求めている中核的なターゲット層そのものだからです。

企業側も、あなたのような専門性を持った学生に出会いたいと強く望んでいます。

もちろん、激しい競争があることは事実ですが、自身の研究に真摯に取り組み、そのプロセスで培った論理的思考力や問題解決能力を、前述した就活対策に沿ってしっかりとアピールできれば、内定を獲得するチャンスは十分にあります。

Gpp>過度に恐れず、自信を持って、自分の強みをぶつけてください。

 

研究テーマと仕事内容が直結していなくても大丈夫?

結論から言えば、直結していなくても全く問題ありません

例えば、大学院での研究テーマが、最先端のバイオプロセスや環境触媒に関するものであっても、石油・ガスプラントのプロセスエンジニアとして採用され、活躍することは十分に可能です。

企業が評価しているのは、あなたの研究テーマそのものの専門性(それ自体が直接ビジネスに使えるか)よりも、むしろ、その研究活動を通じて身につけた...「論理的思考力」「問題解決のプロセス」です。

面接では、研究テーマがどう活かせるか、ではなく、研究で培ったスキルや考え方が、入社後、プラントエンジニアという仕事でどのように活かせるのかを、自信を持って説明できるように準備しましょう。

化学工学を活かせる業界は他に何がある?

化学工学の知識は非常に汎用性が高く、プラント業界以外にも、ものづくりに関わる様々な業界で応用できます。

例えば、化学メーカー(三菱ケミカル、住友化学、三井化学など)では、新しい化学製品の研究開発はもちろん、それを量産化するためのプロセス開発、工場の生産ラインを設計・管理する生産技術、製造部門などで、化学工学の知識が不可欠です。

また、素材メーカー(鉄鋼、非鉄金属、セラミック、ガラスなど)においても、高温プロセスや反応プロセスを制御する生産技術、設備開発などで活躍の場があります。

さらに、食品メーカーや医薬品メーカーといった、一見すると化学工学とは縁遠そうに見える業界でも、製造プロセス(発酵、分離、精製、乾燥など)の設計や、品質管理、生産管理といった分野で、化学工学の知識が応用されています。

プラント業界は、これらのメーカーが製品を作るための工場そのものを作り上げる仕事であり、その点で他の業界とは一線を画すダイナミックさがある、と言えるでしょう。

【理系からプラント業界】まとめ

化学工学を専攻するあなたにとって、プラントエンジニアリング業界は、大学で培った専門知識を最もダイナミックかつ大規模に活かせる、非常に魅力的なキャリアの選択肢です。

日揮や千代田化工建設といったトップ企業で働くことは、グローバルな舞台で社会の基盤を支えるという、大きなやりがいと達成感を与えてくれるでしょう。

一方で、その仕事は激務であり、大きな責任とプレッシャーを伴うことも事実です。

この記事で解説した業界の特性、仕事内容、そしてメリット・デメリットを深く理解し、自分自身の価値観やキャリアプランと合致するかを真剣に見極めてください

その上で、この道に進むと決めたなら、自信を持って選考に臨んでください。

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