【人事のプロが教える】“渇けない世代”の賢いキャリア選び

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伊東美奈
Digmedia編集長
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

人生100年時代と謳われる今、世の中のルールは3年で変わるといわれています。

そんな中で就活の採用市場はどのように変化していくのか、digmeeキャリアアドバイザーの中川さんに聞いてみました。

<中川皓之氏経歴> 同志社大学卒。

就活では大手広告代理店、総合商社、ITメガベンチャーなど トップ企業から内定を獲得。

2014年4月、株式会社ネオキャリアへ新卒入社。

入社初年度から関西採用部の立ち上げ責任者に就任し 人事部長として、入社4年半で計1600人の採用に携わる。

2018年11月、株式会社アスナロを創業し、代表取締役に就任。

今後の就活市場はどのように変わっていくのか

今後就活市場で大きく変わるのは「 就活=大学3年、4年生から始めるもの 」という固定観念が消えていく、ということかな。

現時点でもそうかもしれませんが、これからは日本の採用市場の主流であった「一括採用」はなくなっていく。

その代わりに 長期インターン経由の採用 が今後日本でも広く使われていくんじゃないかな。

実際にアメリカでは長期インターンを通して企業と大学生が意思疎通を行い、そこで採用される、というパターンが主流なんですよ。

「就活ルールの廃止」を受けて改めて問われる新卒の価値

現在の日本の採用市場の主流である一括採用がなくなるということは、 一つの採用枠を新卒と中途が争うということ。

それを受けて「就活ルールが廃止されたから、新卒入社は狭き門になってしまう」なんていう声も上がっていますが、 僕は 新卒採用そのものはなくならない と思っています。

なぜなら、新卒採用と中途採用は根本が大きく違うから。

中途社員の採用パターンは大きく二つあって、一つは人員不足による突発的な採用、もう一つはクオリティ担保のための採用です。

一つ目の採用パターンは、急に社員が辞めたときの穴を埋めるために中途社員を採用するというもの。

二つ目のクオリティ担保というのは、例えば「マーケティングの勉強をしたい」と思っている会社があるとして、勉強の時間が取れないからマーケティングに強い社員を中途で雇って会社の課題点であるマーケティングのクオリティを担保する、というパターン。

中途採用は新卒採用を待っている時間がないときに重宝する採用方法なんですよ。

一方、新卒は社会人としての知見が0の状態だから、 企業特有のカルチャーを柔軟に取り入れられるのが最大の魅力。

中途社員はこれまで働いてきた企業の文化や方針に慣れているから、新しい場所に移ったときに多少の違和感や認知のズレが生じるんですよ。

でも、新卒社員の場合はそういった違和感を覚えることがない。

だから初めて就職した企業にすぐに馴染めるし、会社の方針にも素早く対応できる。

こういう柔軟性って会社にとって大事なんですよね。

ただ、このバランスがどちらか一方に傾いてしまうといけません。

確かに中途社員は転職先の企業の文化に戸惑うことがあるかもしれないけど、これまで自分がいた会社の良い文化を転職先に取り入れる力を持っている。

新卒社員ばかりの会社だと、考えの偏った柔軟性のない文化になってしまうんです。

即戦力として会社に貢献し、これまでの経験や文化を新しく会社に取り入れられる中途社員と、0の状態から会社の文化や方針を吸収して育っていく新卒社員。

これをバランスよく採用できるのが会社や人事にとっての理想だと思うので、 就活ルールが廃止されるからといって新卒の価値が下がってしまう、ということはまずないでしょう

“渇けない世代”といわれる近年の学生が考える就活軸

最近の就活生は “渇けない世代”っていわれているんです。

例えば高校からストレートで大学に入学した21卒学生は、ほとんどが平成10年生まれ。

スマホやネットで簡単に物が買えるような時代に青春時代を過ごしているわけですから、既にある程度の物理的欲求が満たされている状態なんですよね。

これが渇けない世代と呼ばれる所以です。

この世代の子たちは、以前までの就活生が考えていた部分と違う軸を見ているんです。

以前の就職活動では、新入社員の教育体制や給与などの待遇面に目を向けるのが主流でした。

でも今の時代、そういった部分は「整っていて当たり前」と考えている人がほとんど。

渇けない世代の就活生は 「その企業に属する意義や、そこに属することへのインセンティブ」を強く求めている傾向にあるんです。

今流行りの「オンラインサロン」もその影響を受けてるんじゃないかな。

「何かを学びたい」と思ってオンラインサロンに参加する人もいるけど、大半は「その人の価値観を知りたい」「この人の考え好きだな」っていう理由で参加してるんです。

だから今の就活生の就活軸は そのコミュニティーがどういったカルチャーで、どういう価値観を持っているのかじゃないかと思います。

「個の時代」=「起業の時代」ではない

最近は“ユーチューバー”とか“インスタグラマー”とか、そういう人たちの活躍が注目されていますよね。

こういった人たちが登場してから「個が大事」という考えが一気に広がったと思います。

でも僕は、学生さんはこういう考えに流され過ぎないでほしいんです。

最近は就活せずに起業する学生が非常に多い。

しかも、なぜ起業したいかと尋ねると「会社に縛られたくないから」「社畜にはなりたくないから」っていうんです。

この考え方って、すごく危険だなって思うんですよね。

確かに「個を大切にする」ことは必要だと思います。

でも 「個を大切にする」っていうことは「起業してフリーランスになれ」っていうことではない

起業するのってめちゃくちゃ大変なんですよ!(笑) 仕事はチームや組織で同じ目的意識を持ちながらするものであって、 起業をしたからといって一人だけでできることなんて何もないんです。

しかも、一人だけで仕事をすることほど虚しいものはない。

だからさっきのような簡単な理由で起業を考えてほしくはないですね。

「20年前の就活の常識」に踊らされるな!

よく「おすすめの就職先ランキング」とか目にすると思うんですけど、あれって結局 「親御さんが喜ぶ就職先ランキング」でしかないんですよね。

親御さんから「安定した職に就きなさい」とか「ベンチャーなんて止めておきなさい」とか、就活中に口出しをされた経験ってありませんか? 僕も色んな学生さんと話をしてきたんですけど、親御さんの考えを信じて就活を進めている学生さんって、結構多いんです。

確かに、これまでの経験値は自分たちよりも上だけど、お父さんやお母さんの就活時代って今よりも20年以上前のことなんですよね。

それくらいの頃って、 インターネット革命も起こっていない時代。

そんな時代の話が、本当に正しいと思いますか? それでも未だに「この企業はダメ」とか「その就活のやり方はダメ」とかそういったダメ出しがあるっていうことは、 何十年も前の価値観が未だに更新されず根強く残っているということなんです。

今の時代は 3年で世の中のルールが変わります。

就活生には、そのことをもっと意識してほしいですね。

賢いキャリア選択のすゝめ

就活は「まずは自己分析からスタート」っていう流れが一般的ですよね。

確かに自己分析も大切ですが、 まずは今の社会や経済がどのように変化していくのかを理解することも大事だと思います。

別に経済学を学べっていうことじゃないんですけど(笑) 例えば、平成元年の時価総額ランキングでは日系企業がトップ5を独占していたのに、たった30年で日系企業がトップ20にすらランクインしなくなったんです。

この事実を知らない子って、多いと思いんじゃないかな。

それは「日系の大企業は安定している」という固定観念が未だに残っているからなんですよね。

就活をスタートする際は、これまでの社会の流れを知って 「なぜ今はダメになってきているのか」という部分を考えること、そして世の中のビジネスの構造やルールが変わってきていることを理解することが大切だと思います。

あとは、社会の変化に合わせてこれから考えていこう、っていう柔軟な発想も大事。

よく学生さんから「志望動機がない」っていう質問をもらうんですけど、これってつまり「プロポーズする理由がない」っていうことと一緒なんですよ(笑) 極論になっちゃいますけど、僕は志望動機がない企業には就活しなくていいと思っています。

行きたい企業がない人は いつか自分が本気でやりたいと思うことを見つけたときのために、今基礎スキルをつけておくというスタンスで企業選びをすると良い。

社会構造の変化が激しい今は「HR業界の企業に入ったのに、いつの間にかIT業界の企業になっていた」なんてことが起こり得る時代です。

自分がやりたいことを決めつけるよりも、こういう 柔軟な発想を持って企業選びをするのが賢いキャリア選択方法なんじゃないかな。

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