【業界研究】生命保険会社の3つの現状とは?損害保険との違いや対策を解説

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伊東美奈
Digmedia編集長
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

はじめに

「保険って何だか難しい」 「生命保険には入っているけど、保険会社ってどんなことをしているの?」 など、「保険」という言葉を知っていても様々な保険商品があるため、それらを商品として売り出している保険会社が、具体的にどのような仕事をしているのか分からないという方も多いでしょう。

本記事では、特に生命保険会社に焦点を当て、会社の組織形態や業務内容等を詳しく解説しています。また、保険業界の現状を踏まえた上で、保険会社で働くメリットや採用したいと思う人材の特徴も紹介しているため、スムーズな就職活動につなげられるでしょう。

特に生命保険業界に興味があり、業界研究を進めたいという方は、本記事を参考に生命保険会社に関する知識を身に付けましょう。

生命保険業界とはどのような業界?

日本の生命保険加入率は男性で81.2%、女性で82.9%と非常に高く、多くの人にとって身近な存在と言えるでしょう。

生命保険会社では、人の生存または死亡、身体の傷害、疾病および介護などで、不測の事故が発生した場合に備えるためのサービスを提供しています。

サービスを受けたい人は、生命保険会社に対して保障内容に応じた保険料を支払います。

その後、契約者の方で約款に記載された事由に該当する保障が必要になった場合に、生命保険会社から一定額の保険金が支払われるという仕組みです。

出典:生命保険に加入している人はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター 参照:https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1221.html

生命保険と損害保険の違いとは?

業界研究を進める上で押さえておきたいのが、生命保険と損害保険の違いです。

生命保険の分野で扱っている保険商品には、定期保険、終身保険、養老保険などがあり、人の生存・死亡に関して一定額を支払うものとなっています。これらは第一分野の保険と言われています。

一方、損害保険の分野で扱っているものは、自動車保険、火災保険、賠償責任保険などで、一定の偶然な事故によって生じうる損害をてん補するための保険です。これらは第二分野の保険と言われています。

なお、上記のどちらにも属さない第三分野の保険には医療保険やがん保険などがありますが、これらは身体の傷害、疾病等が発生した場合に一定額を支払うものとなっています。

この第三分野の保険は、生命保険会社、損害保険会社の双方で取扱うことが可能です。

生命保険会社や損害保険会社で働くメリット

保険業界は、他の業界と比較しても比較的人気の高い業界といわれています。なぜ人気の高い業界なのか詳しく解説するため、そのメリットをしっかり把握しておきましょう。

収入が高い

保険業界の特徴は、他の業界より比較的年収が高いことです。

産業別でみた賃金では、金融業、保険業は全産業の中で3番目に高く、男性のみでは最も高い業種となっています。

出典:(5) 産業別にみた賃金|厚生労働省 参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/05.pdf

顧客と継続的な関係性を築くことができる

保険契約には長期にわたるものもあります。例えば、生命保険における終身保険では、文字通り一生涯にわたり契約が継続することになります。

他の保険商品でも、一生涯ではなくても10年、20年と長期にわたるものもあり、その意味では顧客との関係性も長期間にわたると言えるでしょう。

業界研究で知っておきたい生命保険会社の3つの現状

日本の生命保険会社の歴史は明治時代からと比較的古いものですが、近年では業界の変化スピードが早くなってきています。業界研究を進める上で、業界を取り巻く現状はぜひ押さえておきましょう。

ここからは、生命保険会社の現状を解説します。生命保険業界が直面する環境にも触れているため、ぜひ参考にしてください。

1:銀行窓口で保険商品が販売されるようになった

生命保険は様々な場所で加入できますが、その一つに銀行窓口があります。

銀行での窓口販売は、2001年4月から保険商品を限定して段階的に解禁され、2007年12月には全面的な販売解禁が認められました。

銀行はお金にまつわる総合デパートのような存在であり、まさにお金に関する相談がワンストップで可能となる場所のため、生命保険の販売もその一環として行われています。

出典:保険商品の銀行窓口販売の全面解禁から10年を迎えて-新たに外貨建て保険のトラブルも-|独立行政法人 国民生活センター 参照:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20171221_1.html

2:マイナス金利政策が行われたことにより減収になった

生命保険は契約が長期にわたることが多いという特性上、長期的かつ安定的な資産運用を行う必要があります。

保険会社は国内外の債券や株式等に投資を行っていますが、その主たる投資先の一つが長期国債です。

ところが、2016年以降、日本銀行によるマイナス金利政策導入で、主に長期金利の低下によって、有効な投資先であった長期国債への投資を抑制せざるを得なくなりました。

その影響で資産運用の利回りが低下したことにより、業界として全体的に減収(減益)が生じました。

出典:「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入|日本銀行 参照:https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129a.pdf

3:国内市場が縮小している

少子高齢化による人口減少の影響で、日本国内の市場規模は縮小してきています。

その一方で、アジア、中南米、中東・アフリカ等の新興国では、人口増加による市場拡大が予想されており、保険業界全体としては海外保険会社の買収や出資等を通じて、海外進出を積極的に図る動きがあります。

業界研究で知っておきたい生命保険会社が行っている3つの対策

前項では生命保険会社の置かれている現状を解説しましたが、会社にとって不利な状況をそのまま受け入れているわけではなく、収益確保のための対策も講じられています。

業界研究を進める上でも、以下で紹介するポイントを押さえておきましょう。

1:AIやIoTを導入している

「保険」を表す英語(Insurance)とITを掛け合わせた、「インシュアテック(InsurTech)」という言葉をご存知でしょうか。

この「インシュアテック」の主な目的は、新商品の開発、顧客サービスの改善、保険の販売時や保険金支払時の事務処理業務効率化です。

例えば、新商品の開発には時代の流れを意識することが必要ですが、AI技術の発展によりビッグデータの入手、解析が以前よりも容易になりました。

保険商品は、世の中で発生しうるリスクを膨大なデータと緻密な確率計算を基に設計されているため、ビッグデータと親和性が高いと言えます。

近年では、ウェアラブル端末やスマートフォンから取得できる運動量等のデータに基づいて、一定の条件で保険料をキャッシュバックする商品を開発している生命保険会社もあります。

このような技術の発展により、保険商品が進化し保険がより身近になることは、最終的には保険会社の収益改善につながる動きと言えるでしょう。

2:再編が進んでいる

1996年から始まった金融ビックバンは、保険業界が誕生してからの特に大きな出来事でしょう。

この政策では、どの会社も同じ商品を販売するという「護送船団方式」から、各社が違う商品を販売する方式に移り変わり、保険業に関しての規制緩和や自由化が大きく進められました。

その結果、業界内でも競争が激化し、大手の会社が合併、統合するなどの再編が進みました。近年ではさらなる収益拡大を目的に、海外進出、国内市場の深耕を見据えた再編が進んできています。

出典:金融システム改革(日本版ビッグバン)とは|大蔵省 参照:https://www.fsa.go.jp/p_mof/big-bang/bb1.htm

3:海外進出を推し進めている

国内市場が縮小してきている一方で、海外市場には保険そのものが普及していない地域や、経済成長・人口増加が見込める地域があります。

会社として利益を追求する以上、国内よりも伸びしろのある海外市場へ進出することは当然とも言えるでしょう。

海外進出を効率的に進めていく手段の一つとして、現在では海外保険会社の買収等も盛んに行われるようになっています。

生命保険会社の組織形態

保険会社には2つの組織形態があります。一般の事業会社と同様の「株式会社」と、もう一つは「相互会社」です。

相互会社とは、保険業法で保険会社にのみ認められた特有の組織形態で、その特徴は、保険契約者を社員とし、総社員の集合体である社員総会(総代会)が会社としての最終意思決定権を持つ点です。

事業の結果、利益が発生した場合、株式会社では株主に配当が付与されますが、相互会社には株主は存在しないため、社員総会(総代会)での剰余金の処分を決議することによって、保険契約者である社員に付与されます。

出典:保険業法|e-Gov法令検索 参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=407AC0000000105

生命保険会社の業務内容

生命保険会社は、保険を販売するだけが仕事ではありません。

保険会社が保険を販売することは、業務としては分かりやすく、業界研究の際も表面化しやすいですが、その裏では実に様々な業務が行われています。

ここからは、生命保険会社の業務内容を詳しく解説しましょう。

海外事業部門

日本国内の少子高齢化による人口減少、低金利市場環境の長期化等により、日本の生命保険業界を取り巻く環境は大きく変化しています。

上記のような背景から、生命保険会社の海外事業部門は、海外での事業展開を通じ、海外生命保険市場の収益性、成長性を取り込むことで国内事業の収益を補完する重要な役割を担っています。

具体的には、海外現地法人の設立や海外保険会社の買収などです。なおかつ、当該国の法制度、生活文化やライフスタイルを考慮した業務遂行が求められるため、グローバルな視点を持つ人材が必要な部署と言えるでしょう。

資産運用部門

生命保険会社では集めた保険料等の資産運用が行われていますが、その規模は非常に大きく、生命保険会社は機関投資家としても重要な存在となっています。

投資業務そのものを担う資産運用部門は、会社の損益を大きく左右する重要な部署です。

その業務の特性上、専門性を要求されることになるため大きな責任が伴いますが、非常にやりがいのある仕事と言えるでしょう。

ホールセール部門

ホールセール部門では、比較的規模の大きい法人向けの保険取引を行っています。例えば、企業向けに提供される保険である団体保険や確定給付企業年金などの取扱いです。

その他、企業に勤務する従業員への福利厚生制度の一環として、団体扱保険等の取扱いも行っています。

リテール部門

リテール部門とは、営業職員や保険代理店による個人向けの保険販売を管理・統括する部署です。各営業拠点を統括するマネージャーや、各代理店を担当するマネージャー等、役割は多岐にわたります。

保険に加入する側から見て、比較的身近な存在であることも特徴の一つです。

生命保険会社の保険販売のやり方

保険の販売方法は、販売の担当者から直接説明を受けて加入するのが一般的でしたが、近年ではインターネットによる販売も広く行われるようになってきました。

このような新しい販売方法の台頭は、業界研究でも押さえておきたいポイントです。以下で、これらの販売方法の特徴について詳しく解説しましょう。

ネット販売

生命保険には、インターネットからも加入が可能な商品があります。ネット販売の長所は、加入希望者が自分の好きなタイミングで手続きできることです。

保険会社にとっても販売コストを様々な部分で抑えられるため、ネット販売に傾倒する会社もあります。

ただし、インターネット上での手続きとなるため、情報をきちんと自分自身で理解、把握することがより一層求められるでしょう。

直接販売

直接販売は保険会社に所属する営業職員が、自社の保険商品を販売する手法です。対面で説明や手続きをしてくれることで手厚いサポートが期待できるのと同時に、加入者の安心感にもつながります。

間接販売

間接販売は、来店型保険ショップのような保険代理店、銀行窓口等から販売されるような手法を指します。

つまり、保険会社から直接販売されるのではなく、代理店等を通じて販売されるという部分が大きな特徴です。

最近では、一社専属の代理店ではなく複数の保険会社の商品を取扱う代理店も増えているため、各保険会社の商品比較もしやすくなっています。

生命保険会社の利益

生命保険会社の業界研究を行っていると、聞きなれない言葉を目にすることがあるでしょう。

例えば、生命保険会社の利益は「基礎利益」と呼ばれます。この言葉は一般事業会社では営業利益に近い指標の名称です。さらに、基礎利益は、利差益、死差益、費差益の3つに大別されます。

ここでは、上記の生命保険会社の利益がどのように生み出されているかを解説しましょう。

資産を運用する

生命保険会社は、契約者から集めた保険料を元手に、莫大な資金で資産運用を行います。この資産運用で得られた利益が予定(計算)していたものよりも多ければ、それらが利差益となるのです。

保険契約が長期化する傾向にある生命保険では、長期的かつ安定的な資産運用が求められます。ただし、近年では日本国内でのマイナス金利政策導入により、外国債券や外国株式への投資割合を増やす傾向になっています。

保険料による利益

保険料は、将来の支払に備える目的の純保険料と、人件費や広告費等の経費部分に充てる付加保険料の2つで構成されています。

保険料による利益では、予定(計算)よりも実際に支払った保険金が少ない場合に生じるものを死差益と言います。また、予定(計算)していた事業費(販売コスト等)よりも、実際の費用が少なかった場合に生じる利益が費差益です。

それぞれの用語をしっかりと覚えておきましょう。

生命保険会社が採用したい人材とは?

ここまで、生命保険会社のことを中心に業界研究を進める上で、押さえておきたいポイントを詳しく解説してきました。

ここからは、生命保険会社がどんな人材を採用したいと考えているのかを見て行きましょう。

実行力がある人

生命保険会社には様々な業務や役割がありますが、どの立場であっても相手の求めていることを汲み取り、柔軟に提案・対応できる能力が求められます。

特に保険自体が形のない商品であるため、営業の立場であれば相手の話をよく聴きながら、相手が求めているものは何か、保険を通じて具現化できるような人材が求められるでしょう。

誠実な人

生命保険は契約期間が長期にわたることも多く、その人生に寄り添い「保障」という社会的使命も担う商品です。

そのような商品の特性を考えると、相手に対して誠実であることがより一層求められる業界であると言えるでしょう。

生命保険会社に就職したいなら業界研究で現状を知っておこう

本記事では、生命保険の業界研究に役立つ情報を解説してきました。近年、保険業界を取り巻く環境では様々な変化が生じています。

その変化の中で生き残るためには、柔軟に対応できる人材が必要不可欠です。

業界研究で会社、業界を知ることは就職への第一歩です。入社することはもちろん大事ですが、入社した後に何をしていきたいのかをよく考え、就職活動を進めて行きましょう。

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