大学教員は将来の選択肢としてどうなの?大学教員の厳しい現実を紹介

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はじめに

大学や大学院を卒業したあとの進路は、一般企業に就職するだけではないのをご存じでしょうか。

資格を取り士業に進むという選択肢もありますし、もう一度進学する人や試験を受けて公務員になる人もいます。

そして、大学教員という進路も存在します。

生涯を通して学びの場に携われる大学教員は、大学院生を中心に人気が高い進路ですが、狭き門としても知られているのです。

大学教員の現状について、さまざまな視点から説明していきます。

【大学教員】大学教員とは

大学教員とは、研究を行うとともに、自分の研究分野に関する講義を行う大学職員の総称です。

大学教員にはさまざまな肩書きがあり、年収や業務内容に影響します。

上のポストから学長、教授、准教授、講師、助教、助手に分類され、それぞれに定員があるのが特徴です。

そのため、順調にキャリアを築いていっても定員に空きがなく、学部の増設などが行われない限り昇進できないという側面もあります。

肩書きは、大学内の活動実績や経験、スキルに応じて付与されるのが一般的であり、教授になるためには厳しい条件を満たす必要があります。

講師は教授または准教授に準ずる職務でありますが、大学外の人がゲストとして講義のみを行う場合が多く、著名人が副業として、講師の名を受けて大学で授業をするなど本業が別にあるケースも多いのです。

【大学教員】大学教員の仕事内容とは

大学教員と言えば、学生に対して講義を行っているイメージが強いと思いますが、業務内容はそれだけではありません。

専門分野の研究活動をしながら、大学の運営にまで携わっているのです。

大学教員は研究に対する活動をしながら、学生へ学びの場を提供し、学校運営にも携わるというまったく異なる3つの側面を持っていることをまず頭に入れておきましょう。

より詳しく大学教員の仕事内容について、それぞれを掘り下げて解説していきます。

講義

主な仕事の一つに、大学での講義があります。

大学では、あらゆる専門的な分野を学ぶために多くの講義が開かれており、大学教員は平均して週3日ほど講義を受け持っていると言われています。

講義はただ教壇に立つだけではなく、スライドや資料の作成などの準備も含まれるのです。

近年ではオンライン講義が浸透しているために、その機材を用意する必要もあります。

さらに、テスト作成、採点、学期末には成績をつけるなどの業務も行わなければなりません。

また、ゼミや研究室を受け持っているのなら実験などの活動もあります。

さらに、卒業論文の作成の際の添削や批評、コメントなども業務に含まれます。

その際、レポート課題など文章を多く読まなければならないので、研究との両立が大変になると言われているのです。

研究

教育と並行して、自分の専門分野の研究も行います。

研究内容は、文献調査、実験、フィールドワーク、国内外の学会参加や発表、論文の作成と学術雑誌への投稿、専門書の執筆などが挙げられます。

論文は海外に発表するために、日本語と英語の両方で作成しなければならないケースも多く、かなりの時間を要するのです。

また前述した研究活動だけでなく、助手やアルバイトの雇用と管理や、研究費を多くもらうための申請などの資金面の工面や、学会への出席や研究のための海外出張など、本業に関わる多くのことをやらなければなりません。

学生への高度な教育水準を保ちながら、自分の研究を続け、定期的に多言語で論文を発表するための時間の工面に悩む教員が多いようです。

大学の運営

所属している大学の運営にも携わることは、意外と知られていないのではないでしょうか。

学部や学科内のクラス編成などのカリキュラム計画をはじめとし、学生向けガイダンスや説明会・試験の企画運営、非常勤および専任教員人事の採用の際の求人と審査、学内のイベントの企画運営、学内委員会などの組織運営、入試問題などが挙げられます。

当然、それらの組織の編成や活動に伴う年間予算の管理と執行も業務に含まれます。

時期によっては、この運営活動の会議や書類作成に追われ、研究活動に時間を割けないこともあるでしょう。

大学教員は勉学に携わることをするだけではなく、大学運営の業務を遂行するための事務系作業とコミュニケーションスキルが必要になるのです。

【大学教員】大学教員の平均年収

このように、3つの異なる業務のバランスを取ることが難しい多忙な大学教員ですが、どれほどの収入が得られるのでしょうか。

私立大学か国立大学かによって平均年収は異なり、一般的に国立、公立、私立の順に高いと言われています。

また、助手や助教と教授の間ではかなりの開きがあるのも事実で、助手は平均年収が400円台後半、助教では500万円台半ばほどです。

講師になると600万円台、准教授となると700万円台と上がっていきます。

そして、教授の平均年収は1000万程となっており、日本の平均年収の2倍にもなるのです。

しかし、教授の平均年齢は60歳近く、長い下積み時代を経てほんの一握りの人しかなれないポストであるため、単純に額面以外の苦労もあるのは事実です。

定年がないために長く働けることはメリットではありますが、年功序列で順調に昇給できるわけではないことを理解しておきましょう。

【大学教員】大学教員の働き方

さまざまな業務がある大学教員ですが、限られた時間でどのように働いているのでしょうか。

大学教員には、講義や研究室、ゼミなどの決まった授業も存在しますが、それ以外の決まった働き方・時間的な制約はありません。

しかし、先ほども述べたように、生徒の課題確認やテスト作成などの教育に付随する業務や、論文執筆の際に国内外の資料や論文に目を通すなど必要な作業が非常に多くあります。

新しい論文は常に出され続けるため、仕事がなくなるということはありません。

時間的制約は少なく働き方も自由ですが、定時や目標がないためにやるべきことを自分で設定し、時間配分やスケジュール管理も兼ねながら、3つの業務をバランス良く進めていかなかければなりません。

プライベートと仕事を完全に分けることが難しいのは、ワークライフバランスを重視する人間にとってストレスになる可能性があります。

【大学教員】将来性

大学教員の将来性は、正直なところ良いとは言えないでしょう。

少子高齢化は、大学の経営にも深刻な影響を与えています。

有名大学に人気が集中しているために、経営が赤字の大学も多く存在し、オープンキャンパスや体験入学などのイベント開催をするも学生の確保が難しくなっています。

そして、大学の規模が縮小すれば、必要な教員のポストも少なくなっていくのです。

現在大学院の修士課程を終えたのにも関わらず、助教や助手になれず非常勤講師として30代まで過ごしている者も決して少なくはありません。

そして、年収が高いからと将来が保証されているわけではありません。

教育に力を抜き指導がマンネリ化すれば、実践的な活動を行う講師たちに人気が集まり淘汰されていきます。

【大学教員】大学教員になるためには

厳しい現実を知ったとしても、一般企業に就職せず研究に携わりたい、教育者の立場に立ちたいという思いを持つ学生は多いでしょう。

「好き」を仕事にすることには厳しい側面がありますが、仕事が楽しければ人生における8割の時間が楽しくなるというのも事実です。

大学教員になるためには、必要なステップがあります。

一般的に認知されている2つの方法について、説明していきます。

教員を目指す方は、今後の進路を判断するために理解しておきましょう。

修士・博士課程を取るのが一般的

大学教員になるためには大学院に進学し、修士課程・博士課程を修了してから、修士号、博士号を取得して大学に採用してもらうのが一般的です。

標準修業年限は修士課程2年、博士前期課程は3年となっており、在籍時に論文を提出し合格しなければなりません。

博士課程を修了するためには、2つを合わせた少なくとも5年の年月が必要になるため、卒業時には27歳を超えています。

しかし先述した通り、専任教員のポストにはなかなか空きが出ないため、スムーズに就職できる例はほんのわずかです。

また、教授に助手として雇ってもらう、もしくは他大学からスカウトされる、大学や研究機関でポストドクターなどとして働くなどのケースも見受けられます。

講師は学士でなる人もいる

学士とは、大学の4年間の課程を修了すれば与えられる学位です。

講師になるためには、2つのうちのどちらかの能力が必要と言われています。

一つめは、教授や准教授の資格に該当していること、もう一つは専攻分野について大学で教育を提供できる能力を認められていることです。

そのため、講師の形態は助教と准教授の間のポジションである大学の専任講師で、もう一つは新聞記者や起業家のような人たちが自分たちの分野について講義を持つ、ゲストの講師に二分化されています。

前者の場合は、修士・博士課程を修了し正式に大学に雇用される必要がありますが、ゲスト講師の場合は講義に必要な能力があると認められれば必要な資格はありません。

そのため、各分野のスペシャリストが非常勤として呼ばれているケースも多いのです。

公募に申し込む

大学ごとや学部ごとに、公募が行われている場合もあります。

この場合、ビジネスマンから大学教員へのキャリアチェンジが可能になります。

しかし、誰でも簡単に公募に応募すればなれるわけではありません。

明言されていませんが、少なくとも大学院の修士課程を修了していなければ応募は厳しい状況です。

そして、自分の現職や学生時代に研究したもので得意の分野を見つけ、学会へ入会し論文を書き、ある程度の評価を得て初めて公募するスタートラインに立てると言えます。

現職の業務と並行しながらの研究活動や執筆活動、そして公募に応募するのはかなりタイトなスケジュールになりますが、一定の評価が得られれば教員として新しいキャリアを始められる可能性は高くなります。

【大学教員】教授になるには運が必要

大学教員を目指すものの多くは、キャリアの目標を教授に設定しているでしょう。

しかし、教授は必ずなれるというものではありません。

現在は教授になるどころか、博士課程を卒業しても助手になれず、非常勤やポスドクとして30代を超えても働いている人が多いのです。

教授になるためには、実力だけではなく運が必要です。

大学教員は常に定足数を満たしており、定年がないため、当てもなく誰かが止めることで空きが出るのを待たなければなりません。

さらに、自分の研究分野の欠員が出る確率は非常に稀であり、多くの時間がかかることを覚悟する必要があります。

教授になれず生涯を終えてしまう人がいる反面、若く有名大学の出身でなくても、研究分野に空きが出てすぐに教授になれてしまう場合もあります。

大学教員は、実力だけでは渡り歩けない世界なのです。

【大学教員】向いている人は

大学教員という教育者と研究者への道は、狭く厳しいものです。

どんなに優秀でも、ポストが空くまで待たなければならず、どれだけ待てば教員になれるという保証もありません。

また教育者と言っても、大学や専門分野によってカラーや活動がガラリと変わるために、中学や高校の教師とはかなり異なる立場となります。

安定性もなく非常に多忙ですが、生涯好きなことの研究に費やせるという大学教員に適性があるのは、どのような人なのでしょうか。

向いている人の特徴を2つに分けてみました。

学問への情熱がある人

大学教員に向いている人の絶対条件は、学問への情熱です。

教員になることがそもそも難しく、そこからさらに教授になるためには多くの困難があります。

まじめにコツコツと研究に勤しんでいても、正当に評価されないこともあるでしょう。

仮に大学教授になってからも、研究でつまずく、成果が出ない、予算が降りないなどうまくいかないことの連続です。

目立ちたい、給料を得たい、成果が欲しいという欲求だけでは、決して渡りきることはできません。

それでも研究を続けられる、学問への情熱があるかどうかが教育者として生涯をまっとうできるか否かの条件なのです。

もっと学びたい、知りたいという情熱の火を燃やし続けられる人は、教員としての適性があると言えるでしょう。

同じ作業を繰り返せる人

講義や大学運営は、毎年同じ単調な作業を繰り返し行わなければなりません。

それは研究活動においても言えることで、納得する結果が得られるまで同じことを繰り返し行い続ける必要があります。

とにかく何事にも粘り強さを持って、コツコツ取り組まなければならないのが大学教員です。

そのため、単調な作業にストレスを感じる、同じ作業を繰り返して飽きが来て辞めてしまうという人は向かないでしょう。

逆に、単調な作業の中にも楽しみを見つけながら、繰り返して行える人は素質があると言えます。

ルーティーンに窮屈さを感じるのであれば、講義で学生の質疑応答の時間やグループワークを設けてみるなどの工夫をすると、単純作業から少し脱却できるかもしれません。

まとめ

大学教員になるための道は、決して安易なものではないことを伝えてきました。

先述したように、博士課程を修了しても就けるポストがないオーバードクター時代となっており、研究者が食べていくのは難しい時世になっています。

ポストを増やすためには学部や大学を増設するしかないのですが、少子化のためにそれも難しいのが現状です。

それでも生涯研究を続けたい、やりがいを重視したいという方は、まずは大学院に進学して修士課程を取ることを目指していきましょう。

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