HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
日本を代表する就活サービス「リクナビ」、グルメサイト「ホットペッパー」、不動産サイト「SUUMO」など、様々な業界でトップメディアを運営するリクルートホールディングス社について解説・研究します。
今では「大企業」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、リクルートといえば昔の「ベンチャー」の代表的な企業です。
リクルートがどのような歩みを経て、現在の地位を築き上げることができたのか、そしてこれからどこへ向かっていくのかをIR資料・関連資料を基に紐解きます。
リクルートの歴史をチェック
リクルートの生まれた経緯
創業者の江副 浩正(えぞえ ひろまさ)が1960年「大学新聞広告社」を設立したことが、今のリクルートのルーツになります。
当時の事業としては、人材を求める企業と仕事を求める学生を結びつける新しい情報誌ビジネスからスタートします。
(今のリクナビに繋がっています。
)
当時は「企業への招待」や「就職ジャーナル」、高校の先生に向けた「就職指導」といった情報誌を発行していました。
また、求人情報誌のように広告だけを集めた本はこの時にリクルートが最初に始めたとされています。
(出典:https://www.recruit.co.jp/company/history/)
その後、1970年代になっていくと、人材領域だけでなく、不動産領域においてもメディア(当時は情報誌)事業を行なっていきます。
この時、住宅情報(現SUUMO新築マンション)も創刊されました。
・住宅情報(現SUUMO新築マンション):住宅情報誌
この勢いは1980年になるとさらに加速度的に進んでいくようになります。
1980年になると、不動産情報誌だけでなく、様々な情報誌が創刊されました。
・とらばーゆ:女性向けの求人情報誌
・フロムエー:アルバイト情報誌
・カーセンサー:中古車情報し
さらに、1990年代になると様々な領域の情報誌を創刊していきました。
・ケイコとマナブ:教育情報誌
・ガテン(現TOWNWORK社員):地域に特化した求人情報誌
・ゼクシィ:結婚情報誌
・タウンワーク:求人情報誌
・じゃらん:旅行情報誌
2000年代に入ってくると、インターネットメディアが大きな存在感が出てきており、リクルートのメディアもこぞってインターネットメディアを作っていきました。
・じゃらん
・ホットペッパー
・ホットペッパービューティー
・SUUMO
・はたらいく
そして、2010年代に入ってくると、それぞれのサービスがアプリ対応されました。
そして、現在では多種多様なサービス・アプリを展開しています。
これらのサービス・アプリに共通している点として挙げられるのがリクルートのキャッチコピーである「まだ、ここにない、出会い。
」です。
つまり、サービスを提供している企業とサービスを使いたいユーザーの「出会い」を演出するのがリクルートのサービスです。
リクルートのサービス運営のまとめ
・求人:リクナビやIndeed、タウンワークなど
・受験・進学:リクナビ進学
・通販:ポンパレ
・グルメ:ホットペッパー
・旅行:じゃらん
・結婚:ゼクシィ
・住宅:SUUMO
・美容:ホットペッパービューティー ・中古車:カーセンサー
・その他:ケイコとマナブここまでで、大まかなリクルートの歴史的な経緯について解説していきました。
それでは、次にリクルートの歴史的な転換点とも言える「リクルート事件」についても解説していきます。
リクルート事件とは?
今の学生は「リクルート事件」と聞いても、聞いたことがなかったり、言葉だけは聞いたことがあっても詳しくは知らないという学生が多いのではないでしょうか。
リクルート事件とは、1988年(昭和63年)6月18日に発覚した日本における、過去最大規模の贈収賄事件のことです。
贈収賄(ぞうしゅうわい)とは、政治家や完了などの権限を持った人に対して、個人的な便宜を提供する代わりに、ビジネス上の便宜を得ることです。
具体的には、リクルートの関連会社であったリクルートコスモス社(現:コスモスイニシア)の未公開株が賄賂*として譲渡されていました。
*お金や株などを渡すことで政治家を買収し、自社にメリットがあるように誘導すること。
これだけ聞くと「そこまで大きな事件なの?」と思われるかもしれませんが、この株式を譲渡した相手が大物政治家などが複数含まれていることから、大スキャンダルとなったのです。
また、その後、このリクルート事件とバブル崩壊の両方によって、リクルートが大きなダメージを受け、経営危機に陥りました。
そして、1992年に創業者の江副浩正氏がリクルート株をダイエーに譲渡してリクルートの経営から退くことになったのです。
事件発覚で大きなダメージを受けたリクルートですが、その後も成長していくことになります。
これが不祥事を起こした並みの会社とリクルートの違いといっても過言ではないかもしれません。
並みの会社であれば、日本を揺るがす大事件を起こし、創業者が退任し、身売りされたのであれば普通は徐々に下降線を辿るようになるでしょう。
しかし、リクルートはそこから這い上がり、復活を遂げたのです。
キーワードとして挙げられるのが創業者の江副浩正氏が残した、『リクルートの経営理念とモットー十章』の中の言葉。
「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」です。
江副浩正氏が作った言葉ですが、言葉を印字した青いプレートを社員全員の机に置いて回ったという逸話があるほど、この考え方を大事にしていました。
機会を自ら作り出すベンチャーマインドが浸透していることもあって、リクルートは復活を遂げることができたのです。
リクルートの決算分析や収益とは?
それでは、早速リクルートの決算分析を見ていきましょう。
まず、以下の表が直近、5期分のリクルートの決算指標になります。
(出典:https://recruit-holdings.co.jp/ir/library/supplemental_financial_data_201804_jp.pdf)
すでに直近では、2兆円を超えるほどの売上を叩き出していますが、この5期を見ても圧倒的に成長をしていっていることがわかります。
通常、ここまでの成長は規模の小さなベンチャー企業であれば、実現している会社はいくつかありますが、リクルートホールディングスレベルの規模で、ここまで急成長している企業は国内を見てもほかになかなかないでしょう。
それこそ、誰もが知っているようなIT系のサービス企業でも売り上げは数百億円〜数千億円程度が一般的です。
最も大きな規模になると楽天ですが、1兆円をギリギリ超えているという規模ですので、リクルートホールディングスの2兆円を超えるすごさがわかるでしょう。
(出典:https://recruit-holdings.co.jp/ir/financial/upload/presentation_material_201806_jp.pdf)
それでは、<人材派遣事業><メディア&ソリューション事業><HRテクノロジー事業>の一つ一つの事業を解説していきます。
まず、最も大きな売上を出している「人材派遣事業」。
(出典:https://recruit-holdings.co.jp/ir/financial/upload/presentation_material_201806_jp.pdf)
この派遣のビジネスモデルとしては、労働者を派遣先に派遣をさせ、その対価を得るのがビジネスモデルとなります。
この場合、どうしても売上が大きくなりがちになることに留意が必要です。
というのも、派遣型のビジネスモデルの場合、最終的には労働者に支払う人件費の分もいったん、売上として計上されることが一般的です。
何故ならば、発注している派遣先の会社から見た場合、派遣会社に支払う費用は全額「外注費」になります。
そして、その中から派遣会社は派遣社員に人件費として支払うのです。
そのため、どうしても売上が上がりやすい構造になってしまうのです。
また、さらにリクルートの場合、国内の派遣事業だけでなく、海外でも派遣会社を傘下に収めるなどをして、海外展開を積極的に図っているのです。
そして、実際に今では派遣事業においても、海外の方が金額も大きくなっているのです。
次に、全体では6799億円の売り上げがあるメディア&ソリューション事業を見ていきましょう。
これが国内で数多く展開しているリクルートのメディア事業です。
こちらに関しては、堅調な収益を挙げており、リクルートを代表する事業ではありますが、伸び率という意味では、そこまで高くはありません。
売上においても全体で3.3%増となっています。
実際には飽和市場で国内の人口が伸びていない中でここまで増加させているのは驚異的ではあるのですが、他の伸びているリクルートホールディングス内での事業と比べると、どうしても伸び率では高くない状況です。
そして、リクルートホールディングスの中で、最も力を入れているHRテクノロジー事業。
事業名「indeed」として有名です。
リクルートホールディングス全体の売上比率としては、まだまだ大きくはありませんが、その伸び幅については非常に驚異的に成長している事業です。
これは国内の他の企業の新規事業と比較して圧倒的な規模や成長率があるだけでなく、他のベンチャー企業丸ごとと比較しても規模が大きいためです。
売上が2185億円と聞くと、2兆円グループのリクルートホールディングスから見ればまだまだ1割というイメージになるかもしれません。
しかし、他のメガベンチャーの売上と比較してみると一目瞭然です。
メガベンチャー1社分の売上がこのindeedだけで稼ぎ出しており、しかも驚異的な成長率を遂げているのです。
・サイバーエージェント 4195億円(2018年)
・DeNA 1393億円(2018年)
・LINE 1671億円(2018年)
・メルカリ 334億円(2018年)
何故、ここまで驚異的な伸びを示しているのかというと、「リクナビ」や「リクルートエージェント」「タウンワーク」などはどうしても国内のエリアに限定されてしまうサービスですが、indeedの場合、すでにリクルートが買収した時点で海外の企業であるため、海外展開を積極的に行なっていました。
そのため、国内だけの小さな市場に限定されないことが挙げられます。
また、ビジネスモデルも検索モデルであることから「求人業界のGoogle」とも呼ばれ、Indeedのユーザー数が増えることで指数関数的に収益である広告料も大きくなっていくことから、驚異的な伸びを実現したのです。
リクルートの年収や社員数とは?
続いて、リクルートの年収や社員数について解説していきます。
同社の有価証券報告書のデータを基に分析していきましょう。
ちなみに、このデータはリクルートホールディングス自体となりますので、細かい年収を見るときはグループ会社ごとに調べることが必要といえます。
(出典:https://recruit-holdings.co.jp/ir/library/supplemental_financial_data_201804_jp.pdf)
平均年齢は35.1才・平均年収は958万円となっており、他の一般的なメガベンチャーと比較してもかなり高い水準となっています。
これは、この年収がホールディングスとなっており、他のグループの事業会社を統括する立場であるため、年収が高くなっています。
また、グループ会社それぞれが共通してmissionグレード制を採用していますが、その上げ幅などは会社によってかなり異なります。
リクルートに向いている人とは?
それでは、次にリクルートに向いている人についてご紹介します。
基本的にリクルートホールディングスはあらゆるメディアや事業領域を持っていることから、その領域ごとに求められるものは異なります。
特にリクルートホールディングスについては、メガベンチャー1社分の売り上げを稼ぐ驚異的なサービスであるindeedを保有するなど、非常に規模感の大きな事業となっており、その分難易度なども非常に高くなっています。
グループ全体の社員数は4万人を超えていますが、ホールディングスは600名程度となっています。
そのため、実際にリクルートホールディングスに内定が出たのは京大や東大などでもトップクラスの学生など、ほんの一部の人しか採用されないようです。
その他の領域としては、リクナビ・リクルートエージェントなどを運営する、リクルートキャリアやタウンワークを運営するリクルートジョブズ。
SUUMOなどを運営するリクルート住まいカンパニーなど色々な会社がありますが、どの会社にも統一する点としては、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という観点から、自発的に積極的に動こうとする姿勢やマインドが強く求められます。
具体的には、上司などから「それで、結局あなたは何をしたいの?」ということを様々な局面で問われます。
社内の評価制度である「WILL CAN MUST」という考え方があり、「WILL(どうありたいのか?) CAN(今何ができるのか?・何ができるようになりたいのか?) MUST(やらなければならないことは何なのか?」を問われます。
リクルートは、 自分から動いて考えたいという人に向いている会社です。
また、ベンチャーマインドはありますが、一方で大きな会社でもあり、知名度もあるためベンチャー思考だけれど、小さい企業であまりに大きなリスクを取りたくないという人にもおすすめです。
さらに、リクルートは退職後起業をする人が非常に多いことから、
将来的に起業をしたい人、具体的に内容は決まっていないけれど起業に興味のある人にもぴったりです。
リクルートでは、2019年入社予定者から国内の主要9社を対象に新卒の一括採用を行うことになりました。
対象会社は、以下の9社となります。
・株式会社リクルートホールディングス
・株式会社リクルートキャリア
・株式会社リクルートジョブズ
・株式会社リクルート住まいカンパニー
・株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
・株式会社リクルートライフスタイル
・株式会社リクルートアドミニストレーション
・株式会社リクルートコミュニケーションズ
・株式会社リクルートテクノロジーズ
一括採用を行うことで、学生側としても効率的にエントリーすることができるだけでなく、自分の適正にあった会社をさらに選びやすくなるメリットもありますので、興味がある学生は一度、エントリーを検討してみましょう。
まとめ
この記事ではリクルートの歴史からIRの分析、同社の戦略を解説していきました。
近年、新しいチャレンジを続けるリクルートは就活生に人気の企業です。
同社が飛躍した時代背景、創業の歴史をしっかりと理解して、対策に臨みましょう。