HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
日本のベンチャー企業の代名詞ともいえる、サイバーエージェント。
ブログサービスの「アメブロ」や動画サービスの「AbemaTV」が有名です。
今回の記事は、サイバーエージェントの事業、成長の軌跡を解説していきます。
目次[目次を全て表示する]
サイバーエージェントの歴史をチェック 〜ネット広告市場の成長とともに発展した企業〜
サイバーエージェントが生まれた経緯
サイバーエージェントの社長、藤田晋氏は1997年3月に青山学院大学経営学部を卒業。
当時ベンチャー企業であった株式会社インテリジェンス(現在のパーソルキャリア)に入社しました。
そして入社から1年後の1998年3月、株式会社サイバーエージェントを設立。
このとき、社長の藤田晋氏は社会人になってまだ1年しか経っていませんでした。
サイバーエージェントの起業資金を出したのは、株式会社インテリジェンスの当時の経営者であった宇野康秀氏です。
つまり宇野氏は入社からわずか1年しか経っていない藤田氏を信じて、起業資金を提供したのです。
後に藤田氏は「僕は宇野さんの背中を見て成長した」と語っており、これらの経緯からサイバーエージェントの経営方針も独自の影響が反映されています。
特に若手を抜擢して新卒1年目であっても責任ある仕事を任せるスタイルは、藤田氏が新卒1年目の時に起業を任せられた当時の文化がそのまま受け継がれているといえます。
創業当時のビジネス
サイバーエージェント設立後、最初に行われたビジネスがネット広告事業です。
設立当初の1998年8月には、自社開発の広告商品「サイバークリック」を販売開始。
当時はネット広告が出始めの頃でしたが、積極的なアプローチを行うことによって短期間で圧倒的な実績を残すことに成功しました。
設立から1年後の1999年には「ベンチャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
2000年3月には東京証券取引所マザーズに上場するなど、急成長ベンチャーとして頭角を現すことに。
その後もネット広告事業を主力に、順調に業績を上げていきました。
転換期〜ブログサービス「アメーバブログ」の開始〜
次の転換期となったのは、サイバーエージェント設立から6年後の2004年。
ブログサービス「アメーバブログ(現Ameba)」の提供開始がきっかけです。
この頃は既に日本のネット広告の市場は大きく、その中でもサイバーエージェントはひと際存在感を放っていました。
ブログサービスを始めた背景としては、従来のネット広告のビジネスモデルにあります。
これまではサイバーエージェントがメディアにお金を支払い、クライアントの広告を掲載してもらう形でビジネスを行っていました。
しかしその金額が膨大になってきたことを受け、サイバーエージェント側でメディアを持ちたいという発想になり、当時流行していたブログサービスへの参入に踏み切ったのです。
しかし、当時は堀江貴文氏が率いる「ライブドア」のライブドアブログが圧倒的な知名度とユーザー数を誇っており、”ブログといえばライブドアブログ”といえるほどの人気を博していました。
そのためサイバーエージェントのブログサービスへの参入は競合他社からかなり遅れたスタートだったのです。
アメーバブログのサービス開始当時は、ユーザーが集まらないというサービスとしての問題だけでなく、システム障害など様々な技術的トラブルが続発。
ネット広告代理店として「営業力」を強みにしてきたサイバーエージェントは、アメーバブログのようなサービスでは今までの強みを活かしきれずAmeba事業は多額の赤字を生み、累積損失は最大で60億円にのぼりました。
しかし多額の赤字を計上してからは、藤田氏が事業部長になるなど様々な改革を行うことで、2010年9月期は24億円の利益へと稼げる事業へと変貌したのです。
赤字から黒字転換した最大の要因は、藤田氏のマネジメントにあります。
もともと藤田氏は営業側の人間であったため、広告代理店業などを陣頭指揮を取ることは容易でしたが、ブログ事業となるとシステム開発などを含めた「プロダクト開発」が重要となります。
ただし、「プロダクト開発」は藤田氏は経験がなかったため、当初は別の人間に任せるようにしていました。
しかし、それが思わしく行かなくなったことから、藤田氏に陣頭指揮をとって様々な経営課題を即断即決するようになったため、プロダクトの品質が改善し、利益を上げられる体制になったのです。
この出来事は、今まで広告代理店であったサイバーエージェントの文化や価値観を大きく変える出来事にもなりました。
大きな要因としては以下の点です。
・従来の広告代理店の強みである「営業力」ではなく、サービスを生み出す「サービス力」がサイバーエージェントに備わった。
・サービスを生み出すための「エンジニア」の必要性が会社に浸透。
社内に技術力のあるエンジニアが増えた。
・単なる「代理店」ではなく、自身が影響力を持つメディア企業へと変貌した。
・多額の赤字を計上しても、正しい方向性で進めば利益が出る事業へ変貌することができた。
そして、2009年にはゲーム事業に参入することになります。
近年はゲーム事業でも安定したヒットを出すことができるようになってきます。
スマートフォン向けゲーム「Rage of Bahamut」は全米No.1を獲得するなど、大きな成果を産むことができるようになってきました。
サイバーエージェントはただの「広告代理店」から広告代理的な機能を有しながらも自社でメディアを保有する、自社でコンテンツを保有する企業へと変貌することになったのです。
インターネットテレビ事業「AbemaTV」への事業投資
2016年に近年で最も力を入れている事業であるインターネットテレビ局「AbemaTV」を開始することになります。
これはまさに、Ameba事業の「メディア」としての機能や「ゲーム事業」のコンテンツの機能をまとめた集大成とも言える事業です。
同社ではかなりの力の入れようとなっており、毎年200億円の赤字を許容するほど力を入れていっています。
Ameba事業の最大の赤字額が60億円と比べると、「毎年200億円の赤字」がどれだけの規模なのか、イメージができるのではないでしょうか。
そして、 現在では「AbemaTV」は圧倒的なユーザー数を獲得することに成功し、徐々にマネタイズの方向へと進んでいっています。
具体的には「AbemaTV」に掲載するCMなどの広告収入が主になります。
特に「AbemaTV」の場合、スマートフォンで閲覧するユーザーが大半のため、従来のTVCMなどでは訴求できなかった若者に訴求できることから、若者に有力な新しいメディアとして期待されています。
サイバーエージェントの決算分析や収益とは?
それでは、早速サイバーエージェントの決算分析を見ていきましょう。
まず、以下の表が直近、5期分のサイバーエージェントの決算指標になります。
同社の決算書を見る際には、2016年に始まったインターネットテレビ局「AbemaTV」の投資が大きな水準となっていますので、その投資額がどのくらいなのかをチェックしながら決算指標を見ていくのが良いでしょう。
それでは、主要な指標の直近5期分の推移です。
(出典:https://www.cyberagent.co.jp/ir/library/trend5year/)
売上については順調に伸びていることがわかりますが、営業利益はFY2016*までは伸びていますが、それ以降が下がっている傾向になっています。
(FY:fiscal year(決算年度)のこと。
FY2016は2016年決算期を指します。
)
グラフでは以下のようになっています。
(出典:https://www.cyberagent.co.jp/ir/library/ataglance/)
これはAbemaTVへの投資を拡大していった時期に重なります。
毎年200億円程度と莫大な投資額となっています。
(出典:https://www.cyberagent.co.jp/ir/library/segment/)
つまり、AbemaTVへの先行投資額を除くと、おおよそ以下の事業利益を上げていることが見込まれます。
FY2015:350億円
FY2016:467億円
FY2017:516億円
FY2018:509億円
このように見れば、直近の2018では利益額が微減していますが、当初のグラフのように利益が大きく下がっている状態ではないことがイメージできるでしょう。
・セグメント別決算情報
それでは、次にサイバーエージェントのセグメント別の売上や利益の金額を見ていきましょう。
メディア事業について見ていきましょう。
売上は、FY2018は売上が314億円となっており、営業利益についてはAbemaTVの投資額を相殺すると−178億円となっています。
メディア事業の売上は、サイバーエージェント全体の売上で見た場合、わずか7%。
ここだけ見ると、全体の売上の比率も大きくはありませんが、同社の知名度向上にも寄与する事業となっています。
次に創業時からの屋台骨、インターネット広告事業を見てみましょう。
売上だけでも、全社の半分以上を稼いでいるのがこの事業になります。
さらには、利益に関していえば、7割以上も稼いでいます。
そして、最後に、ゲーム事業を見ていきます。
ゲーム事業については、特に利益の金額がどうしてもヒットタイトルによって左右されやすいといわれています。
しかし、同社ではゲーム事業でも安定的に収益を上げていることがわかります。
特に売上は、全体の35%ではありますが、利益は全体の84%とかなりの利益を稼いでいます。
サイバーエージェントは、広告とゲームの二大柱で大きな利益を出し、メディア事業への先行投資を補填できる体制となっています。
サイバーエージェントの年収や社員数とは?
それでは、続いてサイバーエージェントの年収や社員数について解説していきます。
同社の有価証券報告書のデータを基に分析していきましょう。
(出典:https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/EKpj/RGR6/Hmt2.pdf)
グループ会社も含めた全体の従業員数としては4853人となっていますが、その中でインターネット広告事業が1862人となっており、38%となっています。
そして、ゲーム事業は1404人となっており、29%となっています。
この二つの事業を合わせると、67%となっています。
近年、サイバーエージェントのイメージとしては、AbemaTVのイメージが強いため、メディアの会社というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、実際にはサイバーエージェントの本業はインターネット広告事業とゲーム事業だとなっており、人員構成をみてもそのようになっています。
また、年収の水準としても平均年齢が32.2才において、709万円ですので、ベンチャーとしても水準は比較的高い部類に入るでしょう。
こういった背景もしっかりと把握した上で、数値を分析するようにしましょう。
サイバーエージェントに向いている人とは?
まず、サイバーエージェントの社風としては、もともと創業者の藤田晋氏が若い時から任されていたこともあって、同社でも若い時から、そのように若い時から責任を持って仕事を任されるような環境を望んでいる人にはぴったりマッチするでしょう。
入社3年目以内の管理職の比率は22.8%と非常に高いです。
このデータは新卒に限定しているわけではないため、中途も含まれてはいますが、サイバーエージェントは年功序列を排除して若手社員にも新会社の立ち上げを任せるなど、優秀な若手層を抜擢するカルチャーが浸透していることがわかるデータです。
まとめ
この記事ではサイバーエージェントの歴史からIRの分析、同社の戦略を解説していきました。
近年、新しいチャレンジを続けるサイバーエージェントは就活生に人気の企業です。
同社が飛躍した時代背景、創業の歴史をしっかりと理解して、対策に臨みましょう。