HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
大学で物理学を学んでいる学生の中には、本格的な就職活動のスタートが迫っているにもかかわらずいまだに進路が決まらないと悩んでいる人も多いのではないのでしょうか。
特に物理学をはじめとする理学部系は就職に不利と言われることも多く、「それなら大学院に進もう」と考えている学生も多いかもしれません。
そこで、ここでは大学で学んだ物理の知識を活かして仕事ができる業界を紹介します。
進路に悩んでいる学生はぜひ参考にしてください。
物理学科は就職に不利なのか?
結論からいうと、物理学科は就職に不利であるということはありません。
物理学科とよく比較される学科に、理系学科があります。
たしかに理系学科では工学部や理学部などは、就職先で直接的に活かせることも多いでしょう。
実際に、エンジニア職や製造業界など、大学で学んだことを発揮できる業種も多く存在します。
対して物理学科は、履修しても就職後にあまり役立てることができないため、就職に不利だと思われることがあります。
しかし、新卒採用で重視されるのは、その人の個性やポテンシャルなため、どこの学部学科などはあまり関係がないといえるでしょう。
そのため、物理学科だから不利だと思わずに、大学で得た知見や自身を魅力的にアピールできるかどうかが重要なのです。
物理学を研究した人のアピールポイント
就活で大事なのは大学で学んだことをアピールすることだと先述しましたが、ではどのような点をアピールしたらいいのかわからない人もいるでしょう。
次では、物理学を研修した人のアピールポイントとなることをいくつか紹介します。
これらのアピールポイントは多くの企業で好印象を与えることなので、面接や自己PRに盛り込むことで採用に結びつけることができるでしょう。
自分ではアピールポイントと思わなかった点を見つけられる可能性もあるため、ぜひ参考にしてみてください。
論理的思考
物理学では、現象や事象などのあらゆることに法則性を見出す学問です。
仮説を立て、それが必然であることを立証するための根拠を1つ1つ検証していきます。
このように物理学を研究している人は、物事を体系的に捉え根拠を考える論理的思考力が身についているといえます。
筋道を立て、物事をロジカルに考えられる力は、どんな仕事をする上でも役立つものです。
とくに社会人に必須な力でもある問題解決力や合理的な判断は、どちらも論理的な思考が備わっていないと身につきません。
そのため、就活でも大きな武器となり、文系職・理系職問わず重宝される能力でしょう。
アピールする際は、論理的思考力を実際の業務と結びつけ、具体的にどのように役立つかを示すと好印象です。
物事を追求して考える力
物理学を研究している人は、世間の一般的な常識である事象や法則に対して、本当に正しいものであるか、別の法則が考えられないかを追求しています。
物事のあらゆる可能性を追求する力は、他の就活生と差別化を図れるアピールポイントとなるのです。
なぜなら、このような力は物理学を研究している人ならではの強みであり、業務をおこなう上で大切なことでもあるからです。
仕事に対してこだわりがある人は、どんな仕事でも吸収が早く、自発的に成長していけるような印象をもたれるでしょう。
企業が就活生を選考する際は、将来性を重視し、入社して成長してくれそうな特徴をもつ人材は積極的に確保したいのです。
面接などでは、仕事へのこだわりや入社後に貢献したいという志望への意欲を示すことができるでしょう。
物理学を研究した人におすすめの業界とは
物理学を研究した学生は決して就職で不利ということはありません。
特に専門性の求められる分野では物理に関する知識や、そこに付随する数学や化学の知識は就職活動において高い評価を受けます。
特におすすめの業界として以下のようなものがあります。
電機メーカー
物理学を修めた学生におすすめの業界としては電機メーカーがあります。
電機メーカーというとテレビやエアコン、パソコンなどを製造している企業というイメージがありますが、近年の電機メーカーは家電だけでなく多岐にわたる事業を展開しているのが特徴で、得意なことを活かして活躍できるフィールドがたくさんあります。
特にロボットや自動運転技術などの分野は今後の動きが注目されるところであり、物理学を学んだ知識を最先端の分野で活かせるチャンスです。
有名企業例
電機メーカーとして知名度が高く、学生からも人気のある企業としては日立製作所や三菱電機、パナソニックなどの総合家電メーカー、情報通信分野で強みを持つ富士通やNEC、映像音響分野で有名なSONYなどがあります。
日立製作所
本社は東京、主力工場は茨城県日立市にある日立製作所は家電メーカートップの売上高があり、学生からも人気があります。
限られた資産を採算性の高い分野に集中的に投資する「選択と集中」という戦略が功を奏して、SIを中心とする情報システム分野や産業用機械やエレベーターなどの産業システム部門で高収益を上げています。
最近は海外への交通インフラの売り込みも盛んです。
その一方で話題となった日立化成の売却など不採算部門の切り捨ても多く、以前の総合家電メーカーというイメージは薄れつつあります。
SONY
東京都港区に本社を置くSONYは「世界のSONY」と呼ばれることからもわかるように、日本国内だけでなく多国籍に事業を展開するコングロマリット企業です。
事業分野も非常に幅広く、テレビやプレイステーションなどのAV機器を得意とする製造メーカーでありながらも、音楽事業や出版業、銀行業、損害保険業など様々な事業を手掛けています。
売上高では日立製作所に及びませんが営業利益では上位であり、業界トップの収益性の高さが魅力です。
医療機器メーカー
高齢化やコロナウイルスの影響で医療機器のニーズが高まっていることもあり、医療機器メーカーも物理学を学ぶ学生に人気があります。
医療機器メーカーの中にもMRIやCTスキャンなど医療用撮影機器を得意とするメーカーもあれば、心臓に埋め込むペースメーカーや人工透析装置などの医療機器を得意とするメーカーもあります。
また、医療機器メーカーの営業職であるMRは医療機器に関する深い知識が必要とされるため、大学で学んだ専門的な知識を活かせるチャンスも多いでしょう。
有名企業例
医療機器メーカーの中でも医療用撮影機器を得意とする企業には、かつて光学機器メーカーとして活躍していたオリンパスやキヤノン、富士フィルムなどがあります。
治療機器開発メーカーとしてはテルモや日本光電工業、オムロンなどがあります。
オリンパス
1919年に創立されたオリンパスは新宿区に本社を置く光学機器メーカー、医療機器メーカーです。
かつてはカメラメーカーとしての知名度が非常に高かったのですが、スマホの普及などにより現在は医療機器分野が売上の多くを占めています。
特に内視鏡に関しては世界の70%のシェアを持つリーディングカンパニーであり、近年はアジア諸国にも内視鏡医のトレーニングセンターを設立するなど、アジア地域のマーケット拡大にも力を注いでいます。
テルモ
テルモは渋谷区に本社を置く医療機器メーカーです。
医療機器メーカーはBtoBが多いですが、体温計や血圧計など個人消費者向けの製品も幅広く製造・販売していることから馴染みのある人も多いでしょう。
業界ではオリンパスに並ぶ国内最大手のひとつであり、特にカテーテルやステントなど心臓血管の分野に強みがあります。
近年では再生医療の分野にも進出しており、代表的なものには心不全の治療に使われる「ハートシート」があります。
半導体メーカー
半導体は身近なところではパソコンやスマホ、家電などにも搭載されている部品であり、電子機器の制御のためには欠かせないものです。
以前は半導体と言えば日本の代名詞でしたが、現在は競争も激しくシェアも海外に奪われがちです。
しかし、世界的な市場規模は拡大を続けており、その中で高品質な日本の半導体の需要は依然として高いままです。
物理学を学ぶ学生の活躍フィールドとしては非常に魅力的な分野であることは間違いありません。
有名企業例
半導体メーカーとしては海外ではintelやサムソン、マイクロンなどがよく知られています。
国内企業では売上ランキング国内トップのキオクシアや、ソニー子会社のソニーセミコンダクタソリューションズなどがあります。
ソニーコンダクタソリューションズ
ソニーコンダクタソリューションズは東京都港区に本社を置く、SONY100%出資の半導体メーカーです。
生産拠点として熊本や長崎、大分などに製造工場があります。
モバイル機器などに搭載する各種LSI、レザー、ディスプレイデバイスなどを主に開発しており、中でもスマホのカメラの画像品質を格段に引き上げることができるイメージセンサーは非常に高い評価を受けており、今後は自動運転の分野にも活用が期待されている注目の技術です。
キオクシア
国内売上高トップ(世界では12位)にランキングされているのが、港区に拠点を置くキオクシア株式会社です。
元々は東芝の半導体部門でしたが、2018年に分社して現在のキオクシアという社名に変更になりました。
半導体の中でもスマホのメモリーカードやパソコンのSSDに使われるNAND型フラッシュメモリを主に製造しており、この分野では世界2位のシェアを誇ります。
半導体メモリの市場は今後も急速に拡大していくと見られますので、学生にとって魅力的な就職先と言えるでしょう。
文系の業界も?
「物理学科で学んだことを活かして仕事をするならば理系企業に就職しなければならない」と思い込んでいる学生も多いですが、実はそんなことはありません。
一般的に文系の学生が活躍している業界の中にも物理学科を卒業した学生が活躍できるフィールドは存在します。
例を挙げるなら金融業界やコンサル業界はその最たるもので、理系の頭脳が最大限に活かされる専門職が用意されています。
固定観念にとらわれることなく幅広い選択肢の中から就職先を選ぶようにしましょう。
金融業界
金融業界では超低金利政策の影響もあって金利だけでは収益を出すことが難しくなってきており、その代わりとして株や債券、外為などのデリバティブ(金融派生商品)を積極的に推進しています。
デリバティブで収益を出したり、リスクを抑えたりするためには市場の動向や企業の業績など膨大なデータを分析する必要がありますが、このときに物理学の経験が大きな武器になります。
このような仕事を「クオンツ」と言いますが、クオンツのニーズは今後さらに高まっていくと考えられます。
有名企業例
理系の学生に人気のある金融業界の企業としては、メガバンクであるみずほ銀行・三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行、証券会社の野村證券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券、保険会社である東京海上日動火災保険・三井住友海上火災保険などがあります。
みずほ銀行
みずほ銀行は東京都千代田区に本店がある都市銀行であり、三菱UFJ銀行や三井住友銀行と並ぶ3大メガバンクのひとつです。
日本興業銀行・富士銀行・第一勧業銀行の合併により2002年に誕生した企業であり、唯一財閥系ではありません。
みずほ銀行はみずほフィナンシャルグループの銀行部門ですが、他の銀行グループのように縦割りではないため、証券部門や信託部門との連携が非常に密です。
幅広い分野で活躍したい学生にはおすすめです。
SOMPOホールディングス
SOMPOホールディングスは東京都新宿区に本社を置く持株会社で、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険の経営統合によって誕生しました。
傘下には損保ジャパンを筆頭に数多くの保険会社を抱えていて、東京海上ホールディングスやMS&ADインシュアランスグループホールディングスと並んで三メガ損保の一角を占めています。
統計学など数学や物理学の知識を活かして金融商品の開発やリスクの算出などを行う「アクチュアリー」の採用にも積極的です。
コンサル業界
コンサルティング業務というと企業の経営者とともに経営戦略を策定したり、財務や決算をサポートして健全経営を実現したりするといったイメージがあるため、経済学や経営学を学んだ学生に向いていると思われがちですが、実は理系の学生にもおすすめの業界です。
というのも、コンサルタントには数多くのデータから必要なものを取り出して分析し、問題解決のためのメソッドを見つけ出すという理論的思考力が求められるので、物理学で学んだ経験がとても役に立つからです。
有名企業例
コンサル業界で世界的に有名な企業としてはマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループ、デロイトトーマツコンサルティングなどがあります。
国内では野村総合研究所やアビームコンサルティングが有名です。
アビームコンサルティング
アビームコンサルティングは東京都千代田区に本社を置くコンサルティングファームです。
NECグループの一企業で、日本国内では最多のSAP認定コンサルタントが所属しています。
アビームの由来が「Asian Beam」であることからもわかるように、日本の企業でありながらアジアを中心に海外に強いコンサルファームとして定評があります。
将来海外で活躍できるコンサルタントを目指すなら非常に魅力的な企業と言えるでしょう。
野村総合研究所
野村総合研究所は東京都千代田区に本社を置く国内最大のコンサルティングファームであり、シンクタンクです。
元々は野村證券の情報システム部門でしたが1988年に独立して、現在は野村證券なども傘下とする野村ホールディングスのグループ企業のひとつとなっています。
野村総合研究所は経営戦略とITの融合が強みで、アプリケーションや情報基盤システムを自社で開発できる環境があるので、物理学科など理系の学生が活躍できるチャンスが多くあります。
物理学科の人が選考対策で気を付けるべきこと
物理学科の人はアピールの仕方によっては、選考を有利に進めることが可能です。
しかし逆に、物理学科の人が選考対策で、とくに注意すべきこともあります。
これを理解せずに選考を進めてしまうと、希望する企業から内定がもらえないといった事態になる可能性もあるでしょう。
多くの人がやってしまいがちなこともあり、自分にも当てはまる特徴があった人は要注意です。
選考が終わってから後悔しないように、注意点を1つずつ押さえて選考に望んでください。
理系だからと楽観的にならない
先述したように、新卒採用はポテンシャル採用のため、学科や学部は採用に大きく影響しません。
理系は文系に比べて就職しやすいと楽観的に考える就活生がいますが、実際はそのようなことはないため、対策を怠るのは絶対にやめましょう。
企業選考は対策に時間をかけることが重要で、面接でこのような考えが見抜かれる可能性も十分にあり得ます。
対策に時間をかけなかった結果、業界・企業研究が不十分だと判断され、面接でも適切な受け答えができないでしょう。
能力は十分なのに、対策をおこなわなかった結果、意欲や自身の魅力を十分にアピールできず、内定をもらえないとなってしまったら非常にもったいないです。
理系だから有利だと慢心せず、企業研究や面接対策はしっかりおこないましょう。
研究・卒論が忙しいからと就活をおろそかにしない
物理学部は、文系などほかの学生と比べて、研究や卒論が忙しいでしょう。
しかしだからといって、就活をおろそかにすると、希望の企業へ就職できなくなってしまいます。
就活は、インターンのESを書く、面接対策や企業研究など、やるべきことが多くあります。
そのため、4年生で忙しくなる前に、できることは先にやっておくなどの工夫が必要です。
まとめ
ネットでは「就職無理学部」と揶揄されるほど就職が難しいと言われる物理学部ですが、大学で学んだことを活かせる業界はたくさんあります。
他の学部と比べると就職先も多岐にわたっていて、IT企業でSIer(システムインテグレーター)として活躍する学生も多いですし、ここで紹介したように金融業界で数理的な能力を活かしてアクチュアリーやクオンツ、金融アナリストなどで活躍している人もいます。
物理学部だから就職で不利になるということはないので、大学で学んだことを武器にして就職活動で積極的にアピールしていきましょう。