HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
人工知能は非常に多くの場所で研究が進められている学問です。
大学もその研究を進めている場所の1つで、それぞれの研究室が独自の視点から人工知能の可能性を探っています。
つまりどの研究室を選択するかによって、人工知能をどのような角度から研究していきたいかが決まってしまう、といえるのです。
以上の理由から、熟慮を重ねたうえで研究室を選択する必要があります。
また、どの大学にどのような研究室が存在しているかを知っておく必要があるため、高校生であっても大学を選択する段階から研究室について意識しておくほうがよいでしょう。
今回は人工知能の研究分野やその就職先まで詳しく述べていきますので、ぜひ参考にしてください。
【人工知能研究室ってどんなところ?】人工知能研究室の実態
旧帝国大学を中心に、全国各地の大学で人工知能の研究が行われています。
旧帝国大学を中心にとしたのは、旧帝国大学は私立大学に比べ科学研究費補助金(科研費)の補助額が多いからです。
2019年に国は「2025年にAI人材育成年間25万人」という目標を掲げており、今後も人工知能研究室への補助金は大きいものになるでしょう。
人工知能研究の現状
人工知能はさまざまな分野で利活用が期待されるため、さまざまな企業よって研究が進められており、開発競争が起こっています。
日本国内でももちろんですが、世界的に見ても同様の潮流であるといえるでしょう。
アメリカだけでも、GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)のような企業が人工知能を研究しています。
また近年では中国のBATH(Baidu、Alibaba・Tencent・Huawei)といった企業群も台頭してきています。
こうした世界の流れを受け、日本国内でも2021年に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が指針を発表しました。
日本が世界をリードしていくための指針となる、「人工知能(AI)技術分野における大局的な研究開発のアクションプラン」を公表したのです。
日本中の企業や大学、専門機関は一丸となって、こうした世界の大企業たちと戦っていく必要があるわけです。
人工知能研究の将来性
人工知能研究はこれからますます発展が期待される分野です。
人工知能に必要不可欠なハードウェアはどんどん進化していますし、世界全体の先端技術の向上には目を見張るものがあるからです。
哲学者のレイ・カーツワイルは、2045年ごろには人工知能が人間の脳を追い越すのではないかと主張しました。
ゴードン・ムーアが唱えた「半導体の性能は18か月で2倍の性能になる一方で、作るコストは半分になる」というムーアの法則を引用したうえで、上記のような予想をしているのです。
レイ・カーツワイルは、このタイミングを「シンギュラリティ」と名付けています。
ただ開発を担うエンジニアは不足傾向にあり、将来的にもエンジニアは不足していくと考えられています。
これからの時代、確かな力を身につけたエンジニアの存在はますます貴重なものになっていくでしょう。
【人工知能研究室ってどんなところ?】人工知能研究室をテーマごとに紹介
一口に人工知能研究室と言ってもさまざまな分野があります。
そのため、どの分野の研究室で研究を深めるか、大学卒業後にも大きく関係してきます。
以下でそれぞれの研究室がどのようなことを研究しているか解説していますので、研究室選びの参考にしてください。
遺伝アルゴリズム
多様な変化をする環境に対応するために生物は多種多様な進化をしてきました。
現存している生物は、環境の変化に対応し損ね絶滅した多くの生物があってこそ存在しています。
その生物全体の、いわばトライアンドエラーに着目したのがこの研究方法です。
多くのリソースを与え、とにかく人工知能に試行錯誤させていきます。
うまくいかなかったパターンとうまくいったパターンの蓄積を重ねることで、より良い答えを出させるのです。
明確な答えがないような問いに対して効果的です。
エキスパートシステム
素人や初心者が、専門家と同じレベルの問題を解決できるよう、アドバイスをするために開発されたのがエキスパートシステムです。
「知識ベース」と「推論エンジン」の2つから成り立っていて、人間でいえば「知識ベース」は脳に蓄積された経験や知識を指し、推論エンジンは論理的な推論を指しています。
かつてはハードウェアの都合で実用的ではありませんでしたが、近年になって実用化され始めた分野です。
材料を入力すれば最適なレシピを教えてくれる「シェフ・ワトソン」が実用化されるなど、さまざまな業界で活用されています。
音声・画像認識
音声・画像認識のAIは、「1.データ集め」「2.ラベル貼り(タグつけ)」「3.学習させる」「4.成果の評価と改善」という流れを繰り返して開発されます。
音声認識も画像認識もすでに実用化されている技術です。
しかし音声認識はそれぞれの言語の特徴をとらえる必要があったり、日常会話などで行われる省略に対応する必要があったりと、なかなか難しいところがある分野です。
画像認識、特に顔認識はKDDIや富士通がマスクを着用していても顔や表情を認識できるシステムの開発をしていて、発展が著しい分野になっています。
AIが音や画像を正確に認識できるよう、改良が求められています。
感性処理
感性には次の2つの意味があります。
1つは「外界の情報を知覚し感じる能力」のこと、もう1つは「感情」のことです。
感性処理とは、この2つの意味のうち前者に注目した、人の認知をもとにした感覚をもつAIの研究です。
言葉だけとらえると感情をもったAIを研究、開発することのように思われますが、そうではありません。
たとえば音や香り、照明や温度などを総合的に判断して、「人にとってより心地よい環境にするための制御」をすることが考えられます。
機械学習
膨大なデータの中から一貫性のある法則性を見つけ出し、判断や予想をしようとする研究が機械学習の分野です。
前述した音声認識や画像認識も機械学習によって成り立っています。
またどのような学習をしていくか、どう学習していくかという「学習の特徴づけ」は人間が行います。
よく似たものとして取り上げられるディープラーニングは、AIが自主的に学習していくという点で機械学習と異なるのです。
ただ、まったく異なる分野ではなく、この機械学習に含まれる分野です。
ゲーム
コンピュータをゲームの相手にできるシステムなどが研究されています。
またゲームで使用されている人工知能として重要なのが、味方や敵として登場してくるキャラクターの行動制御でしょう。
そのようなキャラクターたちはゲーム内の状況を自ら判断し、自律的に行動しています。
これはキャラクターAIと呼ばれるもので、3種類あるゲームAIの1つです。
ほかにはゲーム全体のバランスを調整する「メタAI」、プレイヤーやAIにとって最適なルートを提案する「ナビゲーションAI」があります。
今後さらにゲーム分野は発展していくことが予想されるため、ますます研究が盛んになるでしょう。
推論
さまざまなルールを課すことで、矛盾のない答えをAIが導けるようにするシステムのことです。
迷路やオセロのような、スタートとゴールが明確な問題に対して強力な効果を発揮します。
ただ有名な問題にフレーム問題があります。
フレーム問題とは、無限のフレーム(情報、枠)をロボットに与えてしまうと、発生する無限の可能性を推論し続けて動かなくなってしまうという問題です。
そのために迷路やオセロを処理するAIにはそれ以外の情報を与えないようにしています。
有限の情報であればこの推論は非常に有効に働くため、前述した(機械)学習と対にすることで効果的なシステムとなります。
探索
さまざまなデータの集まりから、指定した条件に合致するものを抽出するシステムです。
また最初に与えられた状態から目的の状態に至るまでの変化をパターン化し、場合分けすることを指すこともあります。
状態の変化にどのようなパターンがあるかを分析する、と言い換えることもできます。
機械学習や推論は、目的に応じたデータを探索し、場合分けができなければ十分な効果を発揮できません。
そのため探索は、機械学習や推論といったシステムの基盤になるものであるといえるでしょう。
知識表現
知識をコンピュータで表現できるように形式化することを指します。
そもそも知識とは情報の組み合わせです。
たとえば「氷」や「冷たい」という情報の組み合わせが、「氷は冷たい」という知識になっているわけです。
機械に知識をあつかわせる際は、この情報をネットワークのような形でデータベース化、定義づけながら構成していく必要があります。
そうして構成されたネットワークを知識表現というわけです。
言い換えれば、知識表現に関する研究とは、AIが新しく得た知識を既存のネットワークに関係づけながら効率よく蓄積させていくための研究のことです。
データマイニング
データベース技術と機械学習が結びついたもので、大量のデータから必要な情報を選択させる研究です。
ある事象の問題解決やリスクの軽減、ビジネス機会を創出する際に活用されています。
顧客の購買傾向を分析したデータマイニングの有名な例として、「おむつとビールは一緒に買われる」というものがあります。
【人工知能研究室ってどんなところ?】人工知能専攻者の就職は?
人工知能について研究した場合、どのような就職先があるのでしょうか。
人工知能に関する研究テーマを紹介はしてみたものの、具体的なイメージはつきにくいかもしれません。
ここでは以下の3種類の職業を紹介します。
どの職業についてもその職業に就くための明確な資格は存在していませんが、分析に必要な高度な数学的知識だけではなく、分析した結果を活用につなげていくスキルなどが必要です。
つまり、「コンピュータ関係の仕事なんだから理系に強ければ良いんだろう」というものではありません。
活用につなげていくスキルの具体例として、分析したデータを活用してもらうためのプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力などがあげられるでしょう。
以下で詳しく述べていきますので、参考にしてみてください。
AIエンジニア
ITエンジニアの一部で人工知能をあつかう職業です。
人間と同様の知能をコンピュータに与え、動作させるためのプログラムなどを構築します。
またさまざまなデータをAIに流し込み、AIを教育していくこともAIエンジニアの仕事です。
AI技術を採用している企業や、AI関連の教育者、専門組織における研究者としての活躍が望めます。
近年は家電や車がインターネットにつながるようになったり、第一次産業でもAIの活用が増加したりと、現場で利活用に期待がされている状況です。
そのため今後ますます必要とされる人材でしょう。
これからもどんどん変化していくことが確実な分野です。
自分自身のスキルを積極的に向上させていく姿勢や、理系だけにとどまらない知識や発想も重要になってきます。
データサイエンティスト
AIエンジニアをより細分化した職の1つです。
この職業が注目されるようになった背景にはビッグデータの存在があります。
ビッグデータとは、構造化されていないさまざまな種類の膨大なデータのことです。
総務省ではその一例として以下のようなデータをあげています。
こうしたさまざまなデータをアルゴリズムや統計といった手法を用いて分析し、必要な情報を見極め、ビジネス状況を改善していくための提案をします。
プログラミング等の数学的知識が必要になることはもちろんですが、企業のビジネスの状況を改善していくという仕事の都合上、マーケットの状況やトレンドを把握する力も必要です。
データアナリスト
AIエンジニアをより細分化した職の1つです。
データサイエンティストと共通する部分もありますが、アナリストという名前からもわかるように、よりデータの収集・分析に特化した職業です。
言い換えれば、担当する領域はデータサイエンティストより少し狭いといえるでしょう。
データを分析して課題を洗い出して目標を明確化したり、優先順位をつけたりします。
データアナリストには「コンサル型」と「エンジニア型」がいます。
コンサル型のデータアナリストはマーケティング会社等に勤務し、仮説を立てたり市場の分析をしたりする「分析担当者」というイメージでとらえればわかりやすいでしょう。
一方エンジニア型のデータアナリストはWebメディア等に勤務し、入力したデータを自社の製品の性能向上につなげていく「データ活用に特化したエンジニア」というイメージです。
【人工知能研究室ってどんなところ?】研究室の選び方とは?
ここまで述べてきましたが、概要や進路はなんとなくわかったとはいえ、「研究室選びができない」という人もいるでしょう。
そうした場合は、研究とはそもそもどのようなものか、研究室選びの前には何をしておくべきか把握しておくことがおすすめです。
また目先のことだけにとらわれず、卒業した学生がどうなっていくのかという視点で考えることも重要になってきます。
いずれのポイントも具体性を意識した行動がカギといえるでしょう。
どうしても判断がつきにくい、研究室選びのコツが知りたいという人は、ぜひ「研究室選び方」の記事を読んでみてください。
研究室選びで不安を感じている人も、きっと参考になるはずです。
【人工知能研究室ってどんなところ?】まとめ
以上、人工知能研究室の分野や就職先について言及してきました。
人工知能研究室でどのようなことに取り組むのか、就職先はどうなるのか、なんとなくイメージできたのではないかと思います。
冒頭でも述べたように、どの研究室を選択するかによって、人工知能を研究していく方向付になることも理解しておきましょう。
安易に研究室を選択するのではなく、十分に下調べや自己分析を行ったうえで決定するようにしてください。
皆さんの大学での研究ライフが素晴らしいものになることを祈っています。