HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
VR(Virtual Reality)とは、映像や音響の技術を駆使して、仮想世界を作り、あたかもそこに現物があるかのように感じさせるコンピューター技術のことです。
ゴーグル状のヘッドセット(ヘッドマウントディスプレイ)を装着して、戦闘や冒険をするゲームは、すでに体験された方も多いと思います。
それだけの暮らしの中に溶け込んでいるVRを研究・開発して、新しいモノを作りたい、将来のビジネスにしたいと思っている方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、そうした希望をがある方にとってVRを研究するための手法や研究のテーマ、VRに関わる就職先や将来性について紹介します。
【VR研究室ってどんなところ?】VR研究室の実態
VRは、さまざまな技術の集合体です。
VRをどう活用するか、何をできるようにするか、といった目的によって研究や開発のテーマが変わってきます。
ただ、どの大学でも入力や出力、シミュレーションなどVRそのものの仕組みについて研究することが多いです。
たとえば、映像を360°見ることができる、というのは画面処理工学です。
また視覚や聴覚といった感覚を刺激するVRは、人間工学や認知科学になります。
つまりVR研究室もそれぞれの目的によって、研究・開発のテーマが異なります。
違いが出てくるのは音声解析や画像解析など、何に使うのかという部分です。
VR研究の現状
冒頭で説明したとおり、現在VRが使われている領域の主役はゲームです。
2016年にPlayStation VRが発売され、ゲーム業界のVRブームに火がつきました。
コロナ禍が続く影響もあり、家庭で過ごす時間が増え、家族一緒に楽しめるVRヘッドセットの販売台数も、2016年の1,800万台から2020年には6,200万台に達しました。
市場規模も2016年に16.8億円だったものが2020年には83億円まで急速に拡大しています。
VRはエンターテインメントの分野だけに利用されているわけではありません。
旅行業界であれば旅行先のイメージ、不動産業界であれば事務所や住まいの内装イメージを具体的に映像でわかりやすくするために、VRを活用したサービスの提供が始まっています。
コロナ禍ではなおさら必要なサービスです。
今後、VRはエンターテインメント以外でも日常生活で必要とされていくでしょう。
VRの将来性
2020年のVR市場は、約18億ドル(約1,970億円)とされており、前年比で31.7%の増加となっています。
また、VRは2025年までの予想成長率もトップで、年平均成長率30.3%で、2025年には60億ドル(約7,580億円)と予想算出されているのです。
この市場拡大の背景には、2020年から本格的に導入される5Gの普及があります。
高速・大容量通信を実現させる5Gにより、IoTの利用はさらに拡大するでしょう。
インターネットにあらゆる端末が接続され、コンテンツやサービスのクラウド化や、コンテンツ管理やメンテナンスも進みます。
その結果、VRはさまざまなフィールドで活用されるようになります。
【VR研究室ってどんなところ?】VR研究室をテーマごとに解説
VRとは「限りなく実体験に近い体験ができる」技術を指します。
したがって、人間のあらゆる感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)にアプローチして「実体験に近い経験」ができる分野を広げることが今後の課題です。
前述の「研究の現状」でお伝えした、旅行先のイメージを利用者に提案する際に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)など使ってVR空間で旅行先の雰囲気を体験してもらうこともその一例です。
VR研究所で扱われているテーマはさまざまですが、大きく分けて次の3つ分野をご説明します。
音声解析
音を媒介とし、聴覚情報を処理する仕組みの解明をし、さまざまなシステムに応用する研究があります。
その場にいるかのような臨場感や音作りを研究しています。
たとえば自分の部屋にいたまま、有名なホールで音楽を聴いているかのような臨場感を提供する技術や、サッカースタジアムで試合観戦をしているような技術の研究をしているのです。
収音・伝送・再生技術といった技術の研究を進めています。
VRにおいて、音声信号をもとに解析している研究室もあるのです。
画像解析
VRにおける画像解析や処理技術に重点を置いて、生活に役立つシステムや機器を作り出す研究があります。
ある研究室では、画像処理を用いたジェスチャー認識技術の実現を目指しています。
ジェスチャーで各種家電製品の制御を可能にするインテリジェントルームを作っているのです。
室内に設置した複数台のズームカメラの画像から操作する人のジェスチャーを認識し、テレビのチャンネル操作、ボリューム操作などができます。
そのほか、人工知能が人間の手を必要とせず、自分で答えの出せる深層学習を用いた入退室管理システムや、工場の安全管理システムの構築をしています。
いずれも画像処理を基本とした人間の行動を分析した研究です。
人の感覚とVRをつなぐ
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、視覚による実体験の再現です。
平衡感覚を加えると高層ビルでの労働災害の体験VRになります。
このように、人の感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚など)に現実とは違う疑似体験を与える研究があります。
人の感覚器官とVRをつなぐ研究がメインの研究室も数多くあるのです。
たとえばある研究室で、被験者は実際に食べているものとまったく違うものを食べている疑似体験ができる「メタクッキー」という実験をしています。
クッキーを食べる人にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着してもらいます。
手に取ったのはバタークッキーですが、食べる人にはチョコレートクッキーに見えるのです。
さらにヘッドマウントディスプレイ(HMD)からチョコレートのにおいが出るようにしました。
この状態でクッキーを食べてもらうと、実際にはバタークッキーを食べているのに、8割以上もの人が「チョコレートクッキーの味がした」と答え ました。
このように特定の感覚に与える情報を操作すれば、他の感覚をもコントロールできるとわかります。
【VR研究室ってどんなところ?】VR研究室の就職は?
現在、VR業界の市場が拡大し、求人も増加傾向にあります。
VR研究室の卒業生であれば、その知識を利用して専門職に就くことや大手企業に入ることもできるでしょう。
あるいはベンチャー企業を狙ってみるという選択肢もあります。
ここでは、それらの選択の一つひとつを掘り下げて見ていきましょう。
VRプログラマーとして就職できる
VRプログラマーとは、主にゲーム・アプリの企画・開発・運用に携わる職業です。
代表的な仕事として3DCGデザイナーとエンジニアがあります。
3DCGデザイナーとは、3Dのコンピューターグラフィックス(CG)をデザイン・作成する職業です。
研究室で学んだ専門知識に加えて、デザイン力や3Dの知識が必要なので、そのスキルも身につける必要があります。
VRエンジニアとは仮想現実に関する技術を開発するエンジニアです。
VRの制作にはCGや実写映像、さらにこの2つを組み合わせたARがあります。
プログラミング言語や3DCG技術を用いて、実際に商品化する仕事が多いです。
VRエンジニアもプログラミング言語や3DCGデザインのスキルも必要になってきますので、専門知識以外のスキルも身につけておきましょう。
大手就職も可能!
2020年に約18億ドル(約1,970億円)だったVR市場は、2025年には60億ドル(約7,580億円)になると予想されています。
これだけ市場が拡大すれば、VRを扱っている大手企業も今後、VR研究室出身の学生を採用する機会が増えるでしょう。
KDDIやソフトバンクといったVR事業に力を入れている大企業に就職することも可能です。
KDDIは、「KDDI えらべるVR」という法人・ビジネス向けのデバイスの選定からネットワーク、コンテンツ制作、映像を表示させるためのプラットフォームまで含んだパッケージサービスを提供しています。
このサービスでは、旅行先や住まいのイメージを映像で現実感のあるプレゼンテーションができるのです。
ソフトバンクは、「VRSQUARE」という個人向けコンテンツの配信に力を入れています。
スマートフォンからの配信で、スポーツや音楽、舞台などのさまざまなVR体験ができるサービスです。
今後プロ野球をはじめ、プロバスケットボールB.LEAGUEや格闘技、音楽ライブ、フェスや舞台といった、さまざまなコンテンツを配信する予定です。
ほかの大手企業でも、今後VR事業に注力する可能性は高いでしょう。
やりたい分野があるならベンチャーもおすすめ!
研究室の知識を活かしたいとか、自分がやりたいと思う分野がはっきりしている場合は、その分野に特化したベンチャー企業を選ぶ方法もあります。
以下の企業は、業界でも有名でユニークな会社です。
・ナーブ株式会社
VRコンテンツのプラットフォームの提供をしている会社です。
不動産や観光業界をはじめ、さまざまな業界でVRプラットフォームを展開しています。
・株式会社360Channel
VR動画配信プラットフォーム「360Channel」を配信している会社です。
VR・AR・MRコンテンツも制作しています。
このように、やりたい分野がはっきりしている場合にはそれらに特化したベンチャー企業を志望してみてもよいでしょう。
【VR研究室ってどんなところ?】VR研究室の選び方を紹介
VRの研究テーマや研究所を出たあとの就職先についての概略は以上です。
VRの研究は学術的な要素もありますが、マーケットとしても規模が大きく、就職先にも大きく影響してきます。
そもそもVRに関心・興味がある方なら、自分自身が取り組む研究・開発というのは決まっているでしょう。
まずは自分がどんな研究をしたいか、そして将来どんな職業に就きたいかを見直してみてください。
研究室の選び方がわからないという方は、「研究室選び方」の記事をぜひ参考にしてみましょう。
おのずと研究室が決まってくるでしょう。
【VR研究室ってどんなところ?】まとめ
この記事ではVR研究室を中心にVRについてご説明しました。
本文でも述べましたが、VR業界は今後非常に成長していく市場です。
そのため研究対象とする分野としても、就職ジャンルとしても魅力のある業界といえます。
自分の興味・関心のあることを仕事にするのは難しいです。
しかしVRがあなたにとって面白く、やりがいのある分野だと思えるなら、VRの研究をして就職につながるよう挑戦してみてください。
もちろん、研究対象や就職先だけにこだわって進路を決める必要はありません。
VR研究室を選ぶところから、じっくりと考えて検討してみるとよいでしょう。