HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
理系大学生の多くは、4年で大学を出ず、そのまま大学院に進学します。
医学部など一部の理系学部は6年制ですが、工学部など4年で卒業できる学部においても卒業後、さらに研究を続ける方が多いです。
4年で卒業できる学部であっても、どうして多くの方がすぐ就職せず大学に残る選択をするのでしょうか。
大学院卒業までにかかる年数や大学院進学のメリット・デメリットについて紹介します。
就職するか大学院に進むかは、将来を左右する大きな分岐点となるので、慎重に選択しましょう。
大学の「学位」とは?
大学以上の学校を卒業した方には、学位が与えられます。
日本の学校教育法でその称号が決められています。
1991年の法改正で大学を卒業した方には「学士」という学位が与えられることになりました。
大学院を卒業した方へ与えられる学位は、それ以前から決められています。
大学卒業後2年の修士課程を終えた方には「修士」、さらに3年の博士課程を終えた方に「博士」という学位が与えられるのです。
英語で修士のことをMaster、博士のことをDoctorと呼び、日本でもこれら2つの学位を英語で呼ぶこともあります。
レジュメなどで省略表記をする際も、修士をM・博士をDと書くことが多いです。
修士課程1年目にあたる学生を「M1」、博士課程2年目にあたる学生を「D2」といった形で表現します。
理系大学院は何年で卒業できるの?
まずは理系の大学院を卒業するまでの年数や、条件について知っておきましょう。
当然卒業するまで学費や生活費がかかります。
奨学金を借りるとなれば、返済額も大学に在籍した年数分だけふくらみます。
卒業までにかかる時間とお金を考え、大学院に進学するかどうか決めなければなりません。
大学卒業後も研究を続けるだけのモチベーションをキープしなければならないため、大学院進学は決して楽な道ではないことを認識しておきましょう。
学士取得には何年かかるの?
大学院に進むためには、当然大学を卒業し、学士の学位を得なければなりません。
4年間で定められた一定数の単位を取得したうえで、卒業研究や論文を完成させることが条件です。
大学の偏差値や学部によって卒業研究や論文に求められるハードルは異なります。
いずれにせよ、大学で4年間学んだ成果をしっかりと示す必要があります。
理系の場合、研究にかなり時間を割かなければいけない場合も多いです。
院試や就職活動を早めに終え、4年次はできるだけ早期から取り組むようにしましょう。
卒業論文や卒業研究をスムーズに終えると、大学院に進むための準備にも余裕をもって臨めます。
研究発表から大学院に入学するまで時間があれば、その期間を短期留学などのスキルアップに充てることも可能です。
修士取得には何年かかるの?
大学卒業後、さらに2年間の修士課程を終えた方は修士の学位を得られます。
こちらも大学と同じく、修士論文や研究を完成させなければなりません。
修士論文や研究は、大学の卒業論文よりも準備期間がどうしても短くなります。
修士課程に進む時点で、自分の研究したいテーマについて絞り込んでおく必要があるでしょう。
もちろん修士論文以外にも、修士課程で取得しなければならない単位があります。
理系の大学院生はかなり忙しくなる場合もあり、時間的拘束のきびしいアルバイトが選べない方も少なくありません。
また、就職活動と並行して論文を進めなければなりません。
どのようにスケジュール管理をするかが、修士課程の2年を有意義なものにするかにおいて非常に重要です。
博士取得には何年かかるの?
修士課程を終えたあと、さらに3年間の博士課程を終えることで博士の学位を得られます。
理系でも博士まで進む方は決して多くなく、学業で非常に優秀な成績を修めていることが必須条件です。
大学卒業から修士や博士と大学に残り続けると、浪人や留年、休学などをしていなくても27歳で社会に出ていくことになります。
大卒の方と比べても5年の差は相当大きいです。
この期間を無駄にしないだけの知識や研究成果を得なければなりません。
もちろん、博士課程修了後も大学に残り、研究職になることを前提にしている方も多いです。
博士課程に進む場合には、修士以上に終了後のキャリアについて明確なプランを立てておかなければなりません。
大学の担当教官はもちろん、ご両親ともよく相談し、後悔のない選択をしましょう。
博士課程前期と博士課程後期とは?
大学によって博士課程が設置されているところ、されていないところがあります。
博士課程が設置されている大学では、学位卒業後の2年を博士課程前期と呼ぶのが一般的です。
博士課程前期修了後の3年が、博士課程後期になります。
一方博士課程を設置していない大学では、博士課程前期を修士課程と呼びます。
修士課程、博士課程前期のどちらを出ていても、2年間大学院で学び単位を取得していることに違いはありません。
就職活動などでも修士・博士課程前期どちらを出ているかで差がつくのではなく、あくまで呼び方の違いだけとなります。
もともと博士は5年で取得できる学位のところ、修士課程を終えている方は3年に短縮されるという見方をすることも可能です。
修士課程と博士課程を取るメリットとは?
大学を卒業後も大学院に残り、修士課程や博士課程に進むメリットについて考えてみましょう。
社会に出ればすぐに社員として給与を得られるのですから、その収入に見合うだけのメリットがなければ進学する意味合いは薄れてしまいます。
理系だと、大学院に進学する学生の割合が文系よりも圧倒的に高いです。
文系では過半数の学生が大学4年で就職の道を選びますが、理系では逆になります。
しかし周りの友人や知人が進学するからという理由だけで進学を選ぶのではなく、自らのキャリアを考えて進路を定めましょう。
修士課程を取るメリット
まずは修士課程を取るメリットについて紹介します。
理工系学部の学生は、多くが修士課程に進学します。
それは進学に大きなメリットがあるためです。
実際に大学院へ進んだ学生にその動機を聞くと、より深い専門知識を身につけたいといった答えが返ってくることも多くあります。
もちろん進学後にしっかり勉強すれば、その望みはかなえられるでしょう。
しかしその知識を、その後のキャリアに活かすことこそが重要です。
進学を選ぶのなら、修了後の進路についてもしっかり考えておきましょう。
就職際の選択肢が増える
修士課程に進学する大きなメリットの1つは、就職時に選択肢が増えることです。
大手企業の研究職などでは、大学院まで進んでいることが採用条件になっている、または採用時に有利になることも珍しくありません。
そうした会社は多くの場合給与体系でも大卒や院卒で差がついています。
大学院に進学したことが経済的なデメリットになりにくいでしょう。
これは専攻分野について深い知識を得ることがその後の研究や調査に活かされることはもちろん、より論理的思考に磨きがかかっていると、企業から評価されるためでもあります。
大学院の研究室から就職斡旋を受けられる、教授と企業にパイプがあるといった事情があれば、より就職を考えたときに大学院へ進むメリットは大きくなります。
研究に没頭できる
大学院に進学すると、より自分のやりたい研究に没頭でき、時間を費やせることも大きなメリットです。
特に学部生の1~2年生では教養や語学といった必修単位の授業準備などがあります。
多くの学生は、専攻分野の勉強に多くの時間を割けません。 大学4年間で専攻分野や希望分野について「十分研究できなかった」、「もっと勉強したいと」考える学生が多いのも理解できます。
卒業論文や卒業研究も単位取得のためには、どうしても一定の期限までに提出することが必要です。
「卒業論文の研究テーマに関してやり残しがある」、「加筆修正を加えてもっとよい研究結果を出したい」と考えている方は大学院に進学するメリットは大きいでしょう。
就職してしまうと、どうしても仕事に追われ、学生時代の研究を続けることが難しくなります。
博士課程を取るメリット
続いて、博士課程に進むメリットについても見ていきましょう。
理系学生でも、修士課程、博士課程前期を修了後さらに3年間の研究を続ける方はそれほど多くありません。
それでも博士課程を取りたいと思う学生は、より自分の研究テーマに情熱を注いでいることは間違いないでしょう。
しかし現実的なことを考えると、やはり進学のメリットとデメリットをよく比較して決めることも大切です。
20代での3年間はキャリアに大きく影響するので、慎重に決定しましょう。
研究者や大学教授になることが可能になる
博士課程を取る大きなメリットは、研究者や大学教授として生涯大学に残り続ける道が開けるという点です。
必ず大学に残らなければならないという決まりはありません。
しかし、実際に博士課程に進む方の多くは進学時点で研究職などを志します。
博士課程で論文が高く評価されれば、研究員としてより有名な大学に進める可能性もあるでしょう。
留学などのチャンスも巡ってきやすくなります。
理系大学の多くは学部や大学院だけでなく附属の研究機関を設置しています。
そうした場所に勤めたいと願う学生も多いです。
現在取り組んでいる研究がライフワークになりうると感じている方や研究職を天職だと感じる方にとっては、博士課程への進学が非常に大きなメリットとなります。
ある分野の深い知識を得ることができる
博士課程に進学すると、自分の研究分野に関して、ほかの学生と比較し、圧倒的な知識を得られます。
特定の分野に精通したい方や究めたい方が博士課程進学を選びます。
研究機関に残りその研究を続けたい場合、その研究を周囲に認めてもらわなければなりません。
研究のために予算を得ることも必要です。
そのため、研究に専念したいと考える学生も、その研究成果をいかにプレゼンするかも考えていきましょう。
もちろん研究の先達がいる場合は、その方に師事するという形で研究を進めることもできます。
博士課程修了後にどんな形で研究を続けるかは、人によってさまざまです。
大学を移って研究を続ける方も多いので、研究を続けながら大学関係者や教員と良好な関係を築くことも大切にしましょう。
修士課程と博士課程を取るデメリットとは?
修士課程や博士課程を取るデメリットについても紹介します。
非常に魅力の大きい修士課程、博士課程進学ですが、やはり2~5年という年月を考えるとそのデメリットも見過ごせません。
4年で大学を卒業し、社会に出てお金を稼いでいる同級生が周りに多いと、焦りを感じる方もいらっしゃいます。
就職が決まったという知らせが遅くなるため、家族や親戚に不安を感じさせてしまうことが気になる方も多いです。
進路を決める際はメリットだけでなく、デメリットも冷静に確認したうえで熟考しましょう。
お金がかかる
まず考えなければならないのは、大学院進学でかかるお金についてです。
修士課程の2年だけを考えても、その金額は軽視できません。
国立でも2年で100万円程度、私立となれば200万円程度が卒業までに必要となります。
博士課程まで考えると国立で300~400万円、私立では500万円以上の費用を見込まなければならないでしょう。
もちろん学費だけでなく、そのあいだの生活費なども工面する必要が生じます。
奨学金を借りるという手もありますが、将来返済しなければいけない場合は負担がかなり大きくなるのでよく考えましょう。
すぐれた業績を残すなど一定の条件で奨学金返済が免除される場合もあります。
進学の際は返済条件を含め、奨学金制度もよく調べておくことをおすすめします。
社会に出る時期が遅れる
修士で2年、博士で5年の時間をかけて大学に残り続ける分、社会に出る時期が遅れることも大きなデメリットです。
大学院でなければ深い専門知識を得ることは難しいです。
しかし、アルバイトではなく「社員」としてフルタイムで働いて、はじめて身につくビジネススキルも多く存在しています。
大学院に進むと就職の選択肢が確実に広がると感じる方や、将来も大学に残り研究職として働きたい方なら大学院進学がその後のキャリアにつながるでしょう。
しかし大学院を出ても、学部卒と同じ土俵で就職活動をしなければならないのなら、大学院卒業という経歴は不利になることさえあります。
就職を1つの区切りとして考えるなら、理系の方も大学院進学はかなり慎重に考えなければなりません。
理系大学生は大学院に進学すべきか?
最後に、理系の大学生が大学院へ進学するべきかどうかを総合的に考えてみましょう。
最近は「ポスドク問題」が話題になったこともあり、大学院を出ても決して将来の好待遇が約束されているとは限らないことを知り、不安を感じている方も多いです。
「学部卒で就職したほうが、収入面では安定を得られるのでは」と感じるのも無理はありません。
それでも自分の研究テーマにもっと熱意を注いで取り組みたいという気持ちがあるのなら、大学院に進学する価値は十分あります。
やりたい研究があるなら進学すべき!
大学院に進学するか否かを決める大きなポイントは、やりたい研究があるかどうかです。
それまでの学校とは異なり、大学院は講義を受けるというより研究をメインに活動することとなります。
なんとなく通学して、なんとなく授業を受ければいいところではありません。
主体的に自らの研究テーマに取り組む必要がある場所です。
やりたい研究がしっかり定まっていないと、せっかくの2年間が有意義な時間にならない可能性もあります。
逆にしっかり研究成果を出せれば、学部卒よりも条件のよい研究職を得られる可能性もあるかもしれません。
また、大学に残って一生涯を研究に費やせる可能性が開けることもあるでしょう。
「大学4年間で学びが不十分、不完全でまだまだ学びたい」という意欲が消えないのなら、ぜひ進学をおすすめします。
まとめ
この記事では、理系大学生の大学院進学(修士課程・博士課程)について紹介してきました。
特に高学歴の大学では多くの学生が大学院に進むため、その傾向に従い、自然と大学院に進学してしまう方も多いです。
しかし、必ず大学院に進まなければならないというルールはないのです。
大学院で何を研究するか、どのように有意義な時間を過ごすか決まっている方が、自らの意志で進学を決めることで、はじめて大学院進学にメリットが生まれるでしょう。