有機化学研究室って何するの?研究テーマや就職先、将来性を紹介!

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伊東美奈
Digmedia編集長
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

はじめに  

有機化学研究室では、これまでにない新しい分子を作り出す研究に取り組んでいます。

また理論上できていても安定して生産・供給できない分子を、簡単に低コストで生産する合成方法を作り出したりする研究を行っています。

有機化学は、薬品から素材、バイオまで多岐にわたる学問のため、研究テーマも広範囲にわたっているのです。

有機化学の専攻者は将来性も十分にありますが、将来どのような業種で働きたいのかによって研究テーマを選択するという考え方も大切です。

今回は、有機化学研究室の実態から、研究テーマ、そして就職先についてそれぞれ解説していきます。

【有機化学研究室ってどんなところ?】有機化学研究室の実態

有機化学研究室とは、簡単にいうとその名のとおり有機物を取り扱う研究室です。

しかし、有機化学といっても、大学や研究室で取り扱っている内容はさまざまです。

たとえば東京大学1つとっても「有機化学」とつく研究室は、理・工・農・薬・教養の5学部にあるといいます。

有機化学で共通するのは「化学の知識を使って新しい分子を想像すること」です。

これまで地球上に存在していなかった分子を作り出す。

それが有機化学です。

また過去に作られた分子でも、合成方法が複雑なため、コストがかかり過ぎて実用に向いていなかったものを、実用的でコストの低い合成方法を発明することで人類に大変役立つこともあります。

有機化学は、化学の力で日本の「モノづくり」を支える分野です。

新しい触媒の開拓や、マテリアル、バイオなどさまざまな分野で有機化学研究が必要とされています。

有機化学研究の現状 

有機化学研究は、有機化合物に対する基礎的な学術分野というだけではなく、化学産業、薬学、農学、工学と多岐にわたって密接に関係する学問です。

これからの世の中に大きく役立つと同時に社会に対する影響力も大きい研究分野です。

有機化学研究室では、分子構造の解明や新たな分子の開発、そのための新しい触媒の開拓や合成手法の開拓などを研究しています。

有機化学は、合成や物理化学など研究分野が非常に幅広いため、どの研究室に入るかを決めるには、研究室ごとにどのような研究をしているのかを自分でよく調べる必要があります。

はじめから、どの企業でどんな研究をしていきたいのかを決めてから、その分野に強い研究室を選ぶというのも現実的な考え方です。

有機化学研究の将来性

有機化学研究の将来性は、基本的に明るいと予想されているのです。

有機化学の基礎的な「反応」、「合成」、「構造」の研究に加えて、化学や医薬以外にも材料工学やバイオ分野への展開はまだまだ伸びる余地があります。

有機化学はコアになる学術分野をベースとしながら関連分野へ拡大・展開・融合して日本のモノづくりに役立っています。

今後、持続可能な社会を作っていく基盤の技術として、環境資源・エネルギー関連と安全・安心を支える科学技術の開拓が差し迫った課題といわれているのです。

つまり、環境・資源・エネルギー関連では有機薄膜太陽電池、水を水素と酸素に分解する触媒の開拓、水素によるクリーンなエネルギー供給技術の開拓などがあげられます。

また安全・安心を支える科学技術としては、医薬品の開発に必要不可欠な不整合性プロセスの高度化や、センサー有機分子の開発などが期待されているのです。

【有機化学研究室ってどんなところ?】有機化学研究室をテーマごとに紹介 

有機化学研究室には、上記で述べたように多くの研究テーマがあります。

そのなかでも有機化学の基盤研究テーマとして次の4つを取り上げ、それぞれ詳しく紹介していきましょう。

・構造有機化学:構造化学とも呼ばれています。分子構造を論理的に考えていく研究

・反応有機化学:有機化合物の反応と仮定について研究していく分野

・合成有機化学:有機化合物の新たな合成方法を研究していく分野

・生物有機化学:生体における化学変化や化合物を研究していく分野

 構造有機化学  

構造有機化学とは、物理化学の一分野です。物質を構成する分子構造や結晶構造について、論理的に研究します。

物理化学の分野のなかでは非常に大きな位置を占めているのです。

構造有機化学では、物質を構成している原子・イオン・分子、そしてそれらの原子核と電子の動き、物理的性質の諸法則について、理論的な研究をしています。

原子核と電子の動きは量子力学で説明できるので、構造有機化学の基盤の1つとして量子化学があります。

また、計算機の発達に伴い、構造有機化学の成果は、液晶の物性からタンパク質の高次構造といったさまざまな物質の性質を予測し、かつ設計することが可能になりました。

そのため、構造有機化学に基づく研究は、薬学をはじめ、分子生物学、天文学などの進歩にも貢献しています。

 反応有機化学  

反応有機化学は、有機化合物の反応と、過程についての研究分野となっています。

有機化合物は、薬品からさまざまな機能性材料までを網羅しています。

反応有機化学では、これまでに知られている有機化学反応を使って、さまざまな有用な有機化合物の合成研究をするのです。

さらにそのための触媒開発や、新しい合成手法の開発など新反応開発について研究・開拓していきます。

有機化学の魅力の1つとして、複雑な構造をもつ有機分子の発明をすることや、合理的に反応を使って合成することです。

まだ存在しない有機化合物は無数にあります。

それを人類に役立てるため迅速に、かつ、低コストで供給する方法の開発のために、有機反応の開発を研究する重要な分野といえます。

合成有機化学   

合成有機化学は、有機化合物の新たな合成方法を研究する、有機化学の一大分野です。

有機化合物は炭素原子を含む分子で、炭素と炭素、炭素と水素の結合をもち多くの種類が存在しています。

原油、天然ガスなどのエネルギー、木材、比較、繊維などは生物由来の天然有機化合物です。

原油からは、ガソリン、プラスチック樹脂、医薬品、塗料などさまざまな人口有機化合物を作り出してきました。

有機化学では、単純な有機化合物から官能基変換などの手法を用いてより複雑な化合物を合成します。

すでに知られている化学反応の特性や、化学反応を行う順番、組み合わせなどから合成計画を立てます。

この合成計画が正しければ目的の有機化合物が得られるのです。

合成有機化学では、これまでの知見をもとに有用な合成計画を研究していく分野です。

生物有機化学  

生物有機化学は、生体における化学変化や化合物を研究していく分野といえます。

生化学と有機化学、2つの視点で取り扱い、有機化学的手段を用いて生化学現象を解明する学問です。

これまで生化学は、生体分子を他の生体分子との関連性から研究していました。

生体有機化学では、分子そのものの分子構造を有機化学的にアプローチすることでよりミクロな現象を解明します。

生体を作っている主要な物質は有機化合物です。

それらの物質は、有機化学の原理に基づいています。

代謝、呼吸、遺伝その他の生体の仕組みは、主要な生体物質の糖質、核酸、脂質、アミノ酸、タンパク質の構造、性質、反応から理解できます。

生体有機化学研究では、生体に作用する新しい有機分子を開拓する学問です。

【有機化学研究室ってどんなところ?】有機化学専攻者の就職先は?    

有機化学専攻者の就職先には、化学メーカー、製薬メーカー、食品メーカー、化粧品メーカーなどがあります。

また最近では、自動車メーカーでも一定数の需要なあり注目されています。

分子を操り、さまざまな有機化合物を作る有機化学は、ものづくりの基礎技術であるためにさまざまな業種で需要があるのです。

石油から作られる、薬品、繊維、プラスチック、染料、化粧品、合成香料、塗料、接着剤のほか、植物由来のものまで世の中のほぼすべてにおいて有機化学専攻者が必要とされています。

化学メーカー

有機化学専攻者の就職先として最初にあげられるのは化学メーカーです。

化学メーカーでは、原材料の調達から製品開発までの一連の流れを取り扱い、またその一部を請け負う企業です。

電化製品や自動車、日用雑貨など消費者にわたる最終製品の原材料となる中間財を生産しています。

BtoBによるビジネスが主な産業であるため、一般には知られていない企業も多いですが日本には多くの優良メーカーがあります。

化学産業の産業規模は日本では自動車産業に次ぐ規模となっているのです。

日本の基幹産業ともいえるでしょう。

有機化学研究は、こうした化学メーカーの基盤技術です。

主な化学メーカーには住友化学、三井化学、三菱ケミカル、帝人、東レ、旭化成、日東電工などがあります。

製薬メーカー   

製薬メーカーは医薬品の製造や研究開発から販売までを手がけています。

もちろん、製造した医薬品の効果の確認も重要な業務です。

有機合成専攻者は医薬品の開発や、製造技術の開発に携わることを求められます。

特に低分子医薬品を創出する、大手医薬品メーカーの活躍が期待されています。

1980年代から2000年頃にかけて日本がバブルに湧いていた頃、製薬業界でも新薬バブルという時代がありました。

当時有機合成専攻者は非常にもてはやされていましたが、近年では新薬、特に大型新薬は開発されにくくなっているのです。

その代わりジェネリック医薬品が主流になることで、ジェネリックメーカーから有機合成専攻者の需要は高くなっています。

主な製薬メーカーには、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、田辺三菱製薬株式会社などがあります。

自動車メーカー 

化学専攻の学生にはあまり知られていませんが、自動車メーカーも有機合成専攻者を一定数採用しています。

自動車メーカーでは、自動車を軽量化したり、強度を増したりするために骨格の部品・部材の研究を行っています。

それらは、化学メーカーや材料メーカーから供給されますが、実際に自動車を設計、組み立てていく過程で意図したとおりの性能や仕上がりになるとは限りません。

そこで材料メーカーの技術者と開発を進められる人材が必要になるのです。

自動車にはさまざまな産業の技術が詰め込まれています。

そして、有機化学の技術も必要とされています。

たとえば、高分子の研究者や、有機・無機・複合材に詳しい研究者が求められているのです。

近年自動車の差別化や機能アップのために、内装品や外装品などの樹脂、塗装、コーティングなど樹脂(レジン)が絡む部分でニーズがあります。

トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、株式会社スバル、ダイハツ工業株式会社、スズキ株式会社、またそれらの関連企業などがあります。

食品・飲料メーカー 

食品・飲料メーカーもまた、有機化学専攻者の就職先としてニーズの高い業界です。

食品の構造を研究することで、より売れる食品、飲料開発に貢献することが期待されているのです。

食品には、合成甘味料や香料などが商品の味や香りをよくする目的で使われています。

また商品の腐敗を遅らせ、安全に消費者へ届けるために酸化防止剤や合成保存料が使われています。

これら合成添加物の開発に有機化学専攻者のニーズがあるのです。

近年ではトクホ(特定保健用食品)などがもてはやされる傾向となっています。

トクホの特長的な成分、キトサン、低分子アル銀酸ナトリウムなどの抽出方法、生産管理にも有機化学の知識が活用できます。

食品の構造組成を分析・研究することで生産性向上や製品の安全性につながりますが、これも重要な仕事の1つです。

主なメーカーとして、サントリー、味の素株式会社、株式会社明治、キリン、アサヒビール株式会社、日清食品株式会社などがあります。

【有機化学研究室ってどんなところ?】研究室の選び方とは? 

有機化学に限った話ではありませんが、一度決めた研究室を変えることは、基本的に不可能です。

研究室に入ってみたら研究分野が希望と違ったなどといったことがないように、また教授ごとに研究室の体質もあるので、自分自身でよく調べましょう。

目指す企業があるのならば、その企業はどんな研究者を欲しがっているのかを事前にリサーチしたうえで研究室を選びましょう。

詳しくは「研究室選び方」をぜひ参考にしてください。

【有機化学研究室ってどんなところ?】まとめ 

有機化学研究室とは、簡単にいえばその名のとおり有機物を取り扱う研究室です。

主な研究は、新しい有機物、新しい分子の合成・開拓です。

これまで地球上にはない分子、自分でイメージした分子を設計・デザインして合成して作り出す研究、実験をしています。

新しく分子を作るだけではなく、すでに発見されて人類に有用と思われる分子を、より簡単により低コストで作り出す方法を研究する学問でもあります。

有機化学は、モノづくりを支える分野として、就職でも困ることはありません。

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