HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
研究職に興味をもっている方のなかには、将来的に人や生活の役に立つ研究をしていきたいと考えている方も多いことでしょう。
研究職と一口に言っても、さまざまな分野があり、研究内容もまるで違ってくるのです。
今回は、そういったさまざまな分野のなかでも、高分子化学を対象とした研究室では、具体的にどのような研究テーマを扱っているのかご紹介します。
また、学生にとって重要な高分子化学を扱う就職先や将来性についても解説します。
【高分子研究室ってどんなところ?】高分子研究室の実態
高分子化学とは、どのような分野なのか実はよくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
まず中学校のころに習ったように、この世界の物質を細かく分けていくと、原子という物質にたどり着きます。
この原子という目に見えない粒が組み合わさることによって、分子という原子の塊になります。
この組み合わせは数えきれないほどたくさんあり、組み合わせのパターンによってさまざまな性質をもつ新たな分子の開発をすることも可能です。
分子はたった2つの原子が組み合わさってできているものもあれば、数万個もの原子が組み合わさった複雑なものも存在します。
このうち、数千個以上の原子が組み合わさったものを高分子と呼びます。
高分子を研究することで、日常生活に役立つ性質をもった分子の開発をすることが可能なのです。
高分子研究の現状
研究室に取り入れられている機材は、日々性能が向上しており、よりハイレベルな研究ができるようになりつつあります。
それに伴い、研究テーマも幅広いものとなりつつあるのです。
特にプラスチックや繊維、ゴムなどの高分子材料の合成法に関しては、研究技術の向上によって非常に発展している分野でもあります。
なかでも、機能性高分子と呼ばれる物質への研究に取り組む研究室が増えています。
機能性高分子とは、熱や光を当てたり電圧をかけたり、特定の条件下で性質を変える高分子材料のことです。
さまざまな機能をもつ高分子材料の研究をすることで、あらゆる分野への転用が期待できるのです。
既存の合成法だけでなく、新たな合成法を模索する研究室も増えてきています。
高分子研究の将来性
研究室を選ぶにあたって気になる点は、研究対象の将来性についてです。
就職先は安定しているのか、将来的に研究を続けるメリットはあるのかなど、不安に感じるという方も多いことでしょう。
高分子の研究には、機能性の高い新たな高分子材料を作り出すという目的があります。
機能性高分子の技術によって作り出された物質は、エレクトロニクスや医療、輸送、建築などあらゆる分野に活用されているものです。
まさに、人々の生活にとって必要不可欠な分野といえます。
高分子研究では日ごとに新たな高分子が発見されており、新たな物質を作り出すために必要な研究です。
今後も研究技術の発達に伴い、目覚ましい成長が予測されている分野ですので、研究が不要になることはありません。
【高分子研究室ってどんなところ?】高分子研究室をテーマごとに紹介
高分子研究室と一口に言っても、その研究対象はさまざまです。
高分子のなかには自然界で植物や生体を構成しているものや、これまで世界に存在していなかった無機物、ガラスや岩石など生き物とは違うけれど自然界に存在しているものなど、さまざまな種類があるからです。
研究対象に幅があるため、研究室ごとに研究のテーマは違います。
それぞれにどのような特徴があり、どのようなテーマにそって高分子の研究がおこなわれているのか、具体的な例を紹介します。
天然高分子
天然高分子とは、自然界の産物である高分子のうち、人為的に作り出されたものではない高分子のことです。
主に動物や植物の体を構成することで、その生命や形態の維持や保護をおこなっている高分子です。
セルロースやたんぱく質、多糖、ゴムなどが例としてあげられます。
一部の例外はありますが、多くの天然有機高分子は酵素で分解されるという特徴があります。
その特性を活かし、生分解性材料として用いられることがあるのです。
天然高分子の研究室では、微生物の働きによって分子レベルまで分解される特殊なプラスチックや合成繊維など、酵素の力で分解できる有機化合物を作り出す研究などがおこなわれています。
また、動植物から取り出した高分子を利用して、新たな特性をもつ材料の合成などをする場合もあります。
合成高分子
動物や植物の体を構成しているたんぱく質や天然ゴムなどを天然高分子と呼ぶのに対し、合成高分子とは、合成樹脂や合成繊維など人工的に作り出した高分子化合物のことです。
ナイロンやプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、接着剤などさまざまな分野で合成高分子が利用されています。
石油化学工業の進展とともに合成高分子を生産する工業が発展したことによって、高分子化学工業も進展を遂げてきました。
合成高分子の研究室でおこなわれているのは、プラスチックやナイロンといった身近な物質を作り出す研究だけではありません。
熱や光といった外部刺激に反応して形や性質を変化させるなど、これまでにない新たな特徴のある機能性高分子を作り出す研究もおこなわれているのです。
無機高分子
無機高分子とは、もともと自然界に存在しているもののうち、骨格に炭素を含まない高分子の総称です。
動植物の体内では無機高分子を作り出すことができません。
天然のものでいうと、水晶や石英、めのうなど、ケイ素を骨格とする二酸化ケイ素などがあげられます。
また、ガラスや粘度、無機塩類も無機高分子に含まれるものです。
無機高分子の研究室では、有機材料と無機材料などの性質の異なる素材を分子レベルで複合化された、ナノハイブリッド材料を作り出す研究などがおこなわれています。
これらの物質は、有機成分や無機成分単体では得られないすぐれた特性を有しているため、近ごろ注目されている分野でもあるのです。
また、研究室によってはこういった材料を作り出すだけでなく、さまざまな分野へ応用する研究も同時におこなわれています。
【高分子研究室ってどんなところ?】高分子専攻者の就職は?
高分子化学を専攻していた場合、大学を卒業したあとの就職先として、どのような職業があるのか気になっている方も多いはずです。
高分子化学の将来性は安定しており、さまざまな分野で日常生活に密接に関わっているものでもあります。
研究によって作り出されたさまざまな素材は、その特性を活かして化学工業や製造業、医療、福祉、食品産業などあらゆる分野に使用されているのです。
高分子化学を学んだあとの就職先について、具体的な例をご紹介します。
化学工業
高分子化学を専攻していた方の就職先としてもっとも多いのが、化学工業へ就職するケースです。
化学工業とは、ある物質に化学反応を施し、より価値の高い物質へ転換する工業のことです。
大学で学んできた研究内容を、そのまま活かせるというメリットがあります。
化学工業のなかにもさまざまな分野があるのです。
卒業後も研究を続けていきたいと考えている場合は、身につけた経験や知識を最大限に活かして活躍できる場となります。
就職先にもよりますが、仕事内容は研究だけではなく営業や品質評価、量産化など製品を作り出す一連の流れのすべてに関わることがほとんどです。
研究以外にもさまざまな業務に携わることによって、さまざまな経験につながる職業です。
製造業
製造業と聞くと、工場で決められた製品を作る職業を思い浮かべますが、工場勤務だけが製造業の仕事ではありません。
高分子化学で作り出された物質は、製造業を通して自動車の部品やプラスチック製品、ゴム製品などに使用されます。
そのため、よりよい製品を作る目的で研究や開発をおこなっている会社もあるのです。
高分子の研究を活かして日常生活に役立つ製品を作りたいと考えている場合、製造業がおすすめです。
製造業のなかでも化学系のメーカーであれば、企業の大半が高分子化学と深い関わりをもっているため、卒業後の進路として選ばれやすい職種でもあります。
高分子の重合など、学生時代に学んできたことも仕事の一環として任されるケースが多くあります。
そのスケールは学生時代と違い桁違いになるため、やりがいをもって取り組める職業です。
食品産業
食品産業とは、食料品の供給に関係する産業の総称です。
食料品の流通や加工、外食産業なども含まれるため、とても幅広い職種でもあります。
食品産業と聞くと、あまり高分子化学との関連性がないように感じるかもしれません。
高分子化学のなかでも、特に天然高分子化学を学んだあと、その知識や経験を活かしてより健康によい食品の研究、開発に携わるという進路もあるのです。
健康食品をはじめとした、さまざまな食品の製品開発や研究をおこなう仕事ですので、食と研究の双方に興味があるという方には向いている就職先といえます。
食品産業に就職して研究を続けていく場合、健康に働きかける効果があるかどうかだけでなく、味や形状など、購入者の目線で製品を作ることが必要です。
医療・福祉
高分子化学は、医療や福祉といった分野にも活用されています。
もともと研究室で医療に役立てる研究をおこなっていた場合、就職先として選ぶケースが多いのは医療や介護の分野です。
現代の医療現場では、注射器や縫合用の糸などさまざまな用途で高分子が活用されています。
医療や介護の現場でも使用される生体適合性樹脂や吸水性樹脂、ガスバリア性樹脂などは、高分子の研究によって作り出された素材です。
また、生体親和性材料などさまざまな機能を持もつ素材の研究をおこなっている機関もあります。
高分子化学を用いた新たな素材は、医療の発展に大きく貢献することが予測される分野でもあります。
学生時代に培ってきた知識を、医療の現場に活かしたいと考えている方には最適な就職先といえるでしょう。
【高分子研究室ってどんなところ?】研究室の選び方とは?
高分子の研究対象は幅広く、研究室の数も豊富です。
そのため、どのように研究室を選んだらいいのかわからずに迷っているという方も多いことでしょう。
研究室の選び方によっては、将来の就職に有利な研究ができることもあります。
高分子に関わる就職先は、高い専門性を有していることがほとんどです。
そのため、どこの企業に就職したいなど希望する就職先や業種が大まかにでも決まっているのであれば、その職業に近い研究をおこなっていたほうが就職活動で有利に働きます。
研究室選びは学生としてだけでなく、そのあとの進路にも大きく影響することもあるため、とても大事なプロセスです。
研究室の選び方について詳しく解説した記事がありますので、こちらもあわせて読んでおくと参考になります。
【高分子研究室ってどんなところ?】まとめ
高分子研究室では数千個を超える原子の集まりである高分子を研究し、新たな機能のある素材を作り出すなどさまざまなテーマを取り扱っています。
特殊な機能をもつ高分子材料は、電子工学や医療、建築、環境に関わる分野をはじめ、さまざまな分野に転用できるため、高分子研究は今後も大きな進展を遂げていくと考えられています。
卒業後も高分子化学に携わる研究を続けていきたいと考えているのであれば、研究室の選び方次第で目標に大きく近づくことができるのです。