学会発表とは|発表形式の違いや資料作成のポイントについて解説

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伊東美奈
Digmedia編集長
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

「学会発表ってなんだろう?」 「学会発表の形式や資料作成のポイントについて知りたい」 このように、学会発表に臨む方には多くの疑問や不安があるのではないでしょうか。

本記事では、学会そのものに関する知識や学会発表の種類に加え、学会で発表するためのステップや発表資料を作成するポイント、さらに学会発表の雰囲気や適切な服装を紹介しています。

この記事を読むことで、学会発表に必要な知識や準備、聴衆の心に響く話し方や分かりやすい資料作成のコツを把握することができます。その知識をもとに学会発表のための効果的な準備を行えるため、発表に不安がある方でも安心して臨めるようになるでしょう。

学会発表を考えている方やご興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

そもそも学会とは?

学会とは、研究者の成果を発表する場であり、ほかの研究者や専門家とディスカッションする場でもあります。

主に査読や研究発表会、講演会や学会誌、学術論文誌などの研究成果を発表しているほか、研究者同士の交流なども活発に行われています。

日本国内にはおよそ2,000を超える学協会が存在し、学術の各分野の発展を目的とした活動内容は様々です。

学術大会との違い

学会と学術大会では、情報発信の対象者が異なります。

学会は、主に学者や研究者といった専門家同士のやりとりであるのに対し、学術大会は一般の方も含めた情報発信を目的としています。特定分野の専門家でなくとも、興味があれば講演に参加することが可能でしょう。

学術大会で実施されている例として、研修セミナーや臨床セミナー、指導者講習などがあります。

研究会との違い

学会と研究会の違いは、発表する規模や大会の実施などがあります。

学会は、幅広い分野で学術活動を行っている団体であり、開かれる大会では数多くの研究者による活発な議論が行われるものです。一方、研究会はある分野に特化した研究を小規模で行う団体であるため、理念が一定化しやすく目的を達成しやすいと言われています。

両者を質で判断することは難しく、それぞれに特性があるため、内容のクオリティでは比較できないでしょう。

国際会議との違い

国際会議とは、ある分野について2カ国以上の国の方が議論を行う場を指します。

国際会議は参加者が多いことに加え、開催国に大きな経済効果をもたらすことが特徴です。国際会議に参加するためには、英語が堪能であることや会議で発表する予定原稿をまとめたプロシーディングを用意しなければなりません。

学会と国際会議の違いは、複数国で行うか否かという違いがあります。

学会発表の種類

学会発表は、口頭発表とポスター発表の2種類があります。

価値があると認められた学術発表は、発表者の業績として自身の昇進や転職に有利に働く材料となります。そのため、質の高いプレゼンテーションを聴衆に提供しなければなりません。

ここでは、学会発表の種類について2つ紹介します。

ポスター発表

ポスター発表は、会場にA0サイズのポスターを掲示して発表を行う形式です。

発表者はポスターの前に立ち、興味を持った聴衆と相互的なコミュニケーションを行います。聴衆からの求めに応じて研究内容の説明や質疑応答を行うため、直接やりとりできる魅力があるでしょう。

一方的な発表ではないことから、研究内容はもちろん、想定外の質問に対応できる柔軟さも必要とされます。

口頭発表

口頭発表は、舞台上で自身が用意した資料を用いて行うプレゼンテーション形式の発表方法です。

一般的な形式としては、発表者1人につき15分ほどの発表時間と5分ほどの質疑応答が設けられています。質疑応答では想定外の質問に対応する必要がありますが、発表自体は自身の準備次第でクオリティを高めることができます。

ほかの発表者も参加していることから、聴衆がいないというシーンは起こりにくいでしょう。

学会で発表するステップ

学会で発表するためには、いくつかのステップを踏まなければなりません。

所定の手続きを行い、事前に提出する論文を仕上げ、当日の発表に向けた準備に入ります。思い立ってすぐに参加できるものではなく、学会により指定された手順をこなすことが必要です。

ここでは、一般的な学会発表までのステップを紹介します。

参加申し込み

学会発表に向けてはじめに行うことは、参加申し込みの手続きです。

学会によっては、申し込みの時点である程度の概要を提出することがあるでしょう。簡単な概要の一例として、タイトルや発表者の氏名、要点をかいつまんだ内容などが挙げられます。

また、共著として発表する場合には、共著者についても触れておくケースもあるため、参加する学会のホームページなどで確認することが大切です。

概要・要旨の作成

参加申し込みをした後、講演概要と要旨の作成に取り掛かります。

概要・要旨に関する文字数や様式は、参加する学会によって異なるため事前に確認しましょう。また、締め切り日を過ぎて提出してしまうと、概要集に掲載されない可能性があるため、注意が必要です。

共著者がいる場合は、執筆した内容で問題がないか事前確認を行いましょう。

発表資料作成

次は、発表形式に合わせた資料を作成します。

ポスター発表に申し込んだのであれば、聴衆の立場から見やすいポスター作りを心掛けましょう。試作したポスターを壁に貼ってどのように見えるか、誤植はないかなどを念入りに確認することが重要でしょう。

口頭発表を行う場合には、会場で使用するスクリーンのサイズに合わせたスライドを作成します。一般的には4:3の比率だと言えますが、オンライン開催であれば16:9が望ましいでしょう。

発表の準備

一通りの準備を終えたら、本番を想定した発表の練習を行いましょう。

練習を行う際は、自身の研究室で先生や共著者を聴衆に見立てて行うと効果的でしょう。その分野に精通していることから、練習で尋ねられる質問は会場でも問われる可能性があるため、質の高いリハーサルができると言えます。

挙がった質問の意図を汲みとり、なぜその質問がなされたかという点を分析して発表の質を高めていくと良いでしょう。

発表資料を作る際のポイント

学会で使用する発表資料は、発表する形式によって変わります。

口頭発表であればスライド、ポスター発表であればポスターを作成しましょう。使う媒体は違えど、聴衆に分かりやすく伝える手段であることは共通しています。

ここでは、分かりやすく理解してもらうための発表資料を作るポイントを紹介します。

  • 構成を考える
  • 見やすいデザインを作る
  • 読み手を意識して作成する

構成を考える

発表資料を作成する際は、根底となる構成部分から考えます。

はじめに、発表に至るまでの背景や目的を聴衆に知ってもらいます。次に、研究へのアプローチを提示してその結果を簡潔に伝えましょう。研究結果への自身の考察を入れ、今回の発表を総括します。

構成の順序をまとめると、「背景・目的」「研究方法と結果」「考察」「結論」となります。一連の流れを組むことで聴衆に伝わりやすい資料に仕上がるでしょう。

見やすいデザインを作る

発表資料のデザイン作成は、PowerPointが適しているでしょう。作成するポイントは、「レイアウト・フォントの大きさを揃える」「使う色と文字量は少なめにする」「グラフや図を使用する」の3つです。

スライドの場合には、1スライド1ポイントを見やすいレイアウトで作成し、スライドと原稿を分けると良いでしょう。ポスターであれば、A0サイズまたはPC対応のレイアウトに余白を残して作成すると分かりやすく仕上がります。

読み手を意識して作成する

スライドやポスターを試作した段階で、先生や仲間に確認してもらいましょう。

作成した資料を客観的に見てもらうことで、自身で気付けなかった誤植やレイアウトのズレなどの発見につながります。作成中は主観的になりやすいため、第三者による指摘は欠かせません。

読み手を意識した発表資料を心掛けることは、学会発表において聴衆から良い印象を得やすくなるでしょう。

学会で発表する際のポイント

学会での研究発表は、経験豊富な研究者でも緊張してしまうことがあるでしょう。

会場では大勢の聴衆を前に話をするため、経験が浅い若手研究者にとっては大きなプレッシャーがのし掛かるでしょう。しかし、本番へ向けた準備をしっかり行うことで、納得のいく学会発表が可能になると言えます。

ここでは、学会で発表する際のポイントを紹介します。

  • 事前練習をしておく
  • 聴衆を意識して話す
  • 研究背景から説明する
  • つなぎ言葉を活用する
  • 時間内に終わるようにする
  • 堂々と話す
  • 質疑応答も気を抜かない

事前練習をしておく

本番を想定した練習を事前に行いましょう。

自身の頭の中で練習を行うのと実際に人前で練習するのでは、当日のクオリティに大きく影響します。発表の流れをリハーサルすることで、新たな改善点が見つかることがあり、客観的な意見や指摘によるブラッシュアップが図れます。

なお、事前練習は喉に負担が掛かる可能性があるため、本番直前に行うことは控えると良いでしょう。

聴衆を意識して話す

発表を行う際は、聴衆を意識した話し方を心掛けることが大切です。

聞き手を無視したプレゼンテーションは、自身との間に壁を作りやすくなります。発表者自身がリラックスすることで聴衆との距離が近くなり、伝えたいことが届くようになるでしょう。

また、発表時の姿勢や声量、スピード、話す「間」を意識することで、聴衆とアイコンタクトが可能になり、聞き手と話し手に余裕が生まれやすくなります。

研究背景から説明する

聴衆に興味を持ってもらうために、研究を行った背景や目的から説明します。

冒頭から核心に触れた内容を説明しても聴衆の頭の整理が追い付かず、的を射ていない発表として判断される可能性があります。ロジカルな発表を行うには、「なぜ」「何」「誰」を用いたフレームワークをもとに話すと良いでしょう。

研究に至った背景を聴衆と共有することで論点の整理ができ、スムーズな導入が可能になるでしょう。

つなぎ言葉を活用する

スムーズに説明を行うためには、つなぎ言葉を使うと良いでしょう。

便利なつなぎ言葉として「さらに」「付け加えると」「最後に」などがあります。同じような内容を説明する場合には「同様に」などを用いると自然な流れになるでしょう。

また、いくつかの項目を述べるときには「これにはいくつかの理由があります」と前置きした上で「1つ目は」という話し方をすると、聴衆が話の時系列を把握しやすくなります。

時間内に終わるようにする

学会発表の本番では、時間内に終わることが求められます。学会で発表する時間は、一般的に15~30分ほどとなっています。

しかし、発表セッション全体の時間が押していると発表時間が短縮される場合があるため、短く説明する形式も準備しておくと良いでしょう。また、セッション全体の時間が余ることで延長されることもあることから、本編に加味したバージョンも作成すると安心です。

堂々と話す

人前で話す際は、堂々と立ち振る舞うことで聴衆に安心感を与えることができます。とくに話し始めが重要とされ、はじめの20秒ほどで発表者に対する印象が出来上がるでしょう。

聴衆に堂々とした印象を持ってもらうには、簡潔な自己紹介が効果的です。あいさつをして所属と名前を名乗り、簡単な職歴と発表するタイトルを端的に言うと良いでしょう。

あらかじめ何を言うか決めておくと、本番でもスムーズな自己紹介ができます。

質疑応答も気を抜かない

学会発表は説明して終わりではなく、質疑応答にも注力することが大切です。

聴衆は、様々なアプローチから質問をぶつけてくる可能性があります。この時点で気を抜いていると、聴衆が納得する回答ができず、お互い不完全のまま終わるでしょう。

質疑応答のコツとしては、簡潔に答えることを念頭に置き、想定外の質問には考えていなかったと伝えることです。曖昧な回答は聴衆の信頼を損なうため、避けた方が良いでしょう。

学会発表はどんな雰囲気?

学会発表の雰囲気は、行われる分野や規模によって大きく異なります。

たとえば、学生が多く参加する学会では企業による交流会が催され、研究者と学生のコミュニケーションが行われます。研究者主体の学会になると、同じ専門分野の方が集まりハイレベルな講演がなされるでしょう。

ここでは、研究発表を行う場にふさわしい服装について紹介します。

どんな服装が適切?

学会に参加する際の服装は、清潔感があり説得力を感じさせる服装が一般的です。

男性であればスーツ着用、女性の場合にはスーツ以外にもフォーマルなスタイルであれば問題ないでしょう。人前に立つマナーとして、だらしない印象を持たせるコーディネートはNGです。

発表を聞くために参加する場合には、ややカジュアルなコーディネートでも良いでしょう。しかし、露出が多い服装や、派手なデザインの服装は避けた方が良いでしょう。

最近はオンライン開催も増加

新型コロナウイルスの影響を受け、最近ではオンラインで学会発表を行うケースが増えています。

オンライン開催は、時間や場所の制約を受けないことに加え、アーカイブ動画として後日視聴ができるメリットがあります。全国から参加できるため、学会発表の間口が広くなったと言えるでしょう。

また、場所を選ばないことから研究室から発表を行い、想定外の質問に研究室の資料を用いて説明するなど、柔軟なやりとりが可能でしょう。

研究成果を学会で発表するなら準備を入念にしておこう

自身の研究成果をしっかりと伝えるためには、入念な準備が欠かせません。

念入りに準備を行うことで、本番で有意義な説明やディスカッションが可能になると言えます。また、予想外のトラブルに対しても、冷静に対処できるようになるため、客観的な視点を持って準備することが肝要でしょう。

学会発表は、新たな発見が得られる場でもあることから、準備を怠らずに臨みましょう。

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