HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
機能性高分子とは、日常生活ではあまり聞き馴染みがない言葉です。
しかし、実は私たちが当たり前に使っている製品にも数多く使われています。
機能性高分子研究室で研究・開発された機能性高分子材料は、医療や工業、航空宇宙分野など、幅広い分野で活用されています。
そのため、卒業後の進路も見据えて機能性高分子を学びたい方も多いのではないでしょうか。
今回は、機能性高分子研究室に入るとどのようなことが学べるのか、また、卒業後の進路についてもご紹介します。
【機能性高分子研究室ってどんなところ?】機能性高分子研究室の実態
機能性高分子とは、物質・エネルギー・情報を伝達したり変換したり、貯蔵する作用をもっている高分子や複合材料のことを指します。
一見すると身近にはあまりないように思えますが、実は普通の高分子自体は身の回りにもあふれているものです。
たとえば、洋服などの繊維や、ビニール袋などに使われているプラスチックもすべて高分子に含まれます。
一方で機能性高分子は、外部のものや刺激に対して反応したり、応答したりする機能をもっているのです。
大学の機能性高分子研究室では感光性・導電性・圧電性・高級水性のような機能を発揮させる技術や製品の研究が盛んにおこなわれています。
そこでは高機能分離膜や光機能フィルム、ガスバリアフィルム、人工臓器などさまざまな製品が生まれています。
機能性高分子研究の現状
機能性高分子は、通常の高分子と比べてさまざまな機能を備えた高分子です。
その機能は紙おむつや生理用品、さらに環境に優しい生分解性プラスチックなど、私たちの生活に身近な製品や、医療の現場、さらには航空宇宙分野など幅広く活かされています。
高機能性材料の性質や機能は、それぞれの分子の特性に依存しており、分子特性は合成反応の機構を反映しているのです。
機能性高分子研究室で学べることは、大学や研究室によっても異なります。
主に高分子材料により高度な性能を発揮させるために重要である「分子特性解析」はもちろん、これまでとは異なる分子設計法や合成法による、新たな機能をもった機能性高分子材料の開発などを学べるのです。
機能性高分子研究の将来性
機能性高分子研究室で研究・開発された機能性高分子は、実際に医療製品や工業製品など、さまざまな分野の製品の開発に役立っているのです。
現代は、石器時代、青銅器時代、鉄器時代に続く「高分子時代」と呼べるほど、機能性高分子は生活に欠かせない存在になっています。
そして、まだまだ新しい発見のある分野です。
最近では、ディスプレイの素材や、タッチパネルを貼り合わせる両面テープの素材、またリサイクル可能な部品など、スマートフォンにも応用化学の技術が使われています。
ますます薄く、軽量化するスマートフォンに機能性高分子は不可欠な存在です。
今後も機能性高分子の研究は、研究技術の発達により成長していくと予測されており、需要がますます高くなる研究分野でもあります。
【機能性高分子研究室ってどんなところ?】機能性高分子研究室をテーマごとに紹介
機能性高分子研究室には、幅広い種類の研究テーマがあり、研究室によってもどのような分野の研究ができるのかは異なります。
研究テーマのなかでも代表的なのは、工業・医療・スポーツなどの分野です。
まずは、自分がどのようなテーマについて研究をしたいのか考えましょう。
そのためには、それぞれの分野でどのような研究ができるのか、また、研究したテーマをどのような製品に活用できるのかをしっかり理解しておく必要があるのです。
工業的に利用する
工業分野では、機能性高分子が幅広く活用されています。
たとえば、合成樹脂にある種の光感光性化合物を分散させて皮膜を作り、感光性を与えた「感光性樹脂」は機能性高分子の1つです。
これは印刷版の作製や複写、グラフィックアートの分野、プリント配線、集積回路などの電子産業分野や金属の精密加工など幅広い用途に用いられています。
また、「水溶性アクリルアミドモノマー」は生体適合材料や塗料、接着剤、インク、洗浄剤、レンズ材料などに使われている機能性高分子材料です。
将来的に化学工業系の企業での就職を考えている方や、工業分野で活用される機能性高分子に興味があるなら、研究室で工業分野に関わる研究ができるかどうか事前に調べておくようにしましょう。
医療的に利用する
機能性高分子は、人工腎臓などの人工臓器や縫合材料、医用接着剤、義歯床などの歯科材料など、医療の分野でも活用されています。
温度や光、pH(水素イオン濃度)、音、振動といった環境の変化を認識し、機能性高分子は性質を変化させることができます。
目的に合わせてデザインすれば、カプセル化して血管に流し、がん細胞にピンポイントで治療薬を投与することも可能です。
また、がん細胞のある場所に高分子が集まるようにして、がんの場所を特定することもできます。
抗生物質が効かない黄色ブドウ球菌などの細菌を吸着し、細胞膜を破壊する効果がある新材料も開発されています。
機能性高分子をデザインすることで、細菌を破壊する一方で、ヒト細胞へは無害な材料を合成でき、手術後の傷口に貼れば感染症を防ぐことも可能です。
スポーツに利用する
スポーツで使われるスポーツウェアやスポーツ用品などには、吸汗性やストレッチ性、耐久性といった機能性高分子の機能が大きく活躍しています。
吸汗した汗を生地表面で素早く拡散できる素材や、原綿に消臭加工剤を付与したもの、またグリップ力を上げられるグローブ、紫外線をしゃ断する素材の帽子など、多くの機能性高分子を使った生地の製品が生み出されています。
またウェアだけでなく、プロのスポーツ選手が使用するシューズには、さまざまな機能性高分子の機能を付与したものが使われ、進化を続けているのです。
スポーツに興味がある方や、スポーツに関わる機能性高分子について研究したいという方は、研究室でスポーツに関わる機能性高分子の研究が可能かどうか調べておくとよいでしょう。
【機能性高分子研究室ってどんなところ?】機能性高分子専攻者の就職は?
機能性高分子研究室で学んだあとは、どのような道を進みたいかによってさまざまな進路を選べます。
具体的には、大学などの研究機関で研究者になるという道があります。
加えて就職先としては、材料メーカーや化学メーカーなどへ就職する方が多いようです。
また、医療器具メーカーや再生医療のような臨床応用を指向した企業に就職する方もいます。
機能性高分子を専攻したからといって、就職が高分子関係に限定されることはありません。
現在はほとんどの製造業で高分子関係の研究がされているため、高分子を扱うことのできる科学者や技術者は、製造業全体に大きな需要があります。
そのため、機能性高分子研究室で学んだあと、就職を考えているなら幅広い企業へ就職のチャンスがあります。
化学工業
機能性高分子専攻者の就職先としてもっとも多いのが、化学工業分野の企業です。
化学工業分野の企業は、機能性高分子研究室で学んだことをそのまま活かせます。
そのため、就職後も研究室で学んだことを活かしたいという方には特におすすめです。
化学工業の分野では、触媒技術やポリマー設計技術、電気・電子材料など、多くの製品に使われている機能性高分子の研究や開発に携わることができます。
新たな素材や製品の開発に直接関われるので、やりがいのある仕事といえます。
採用に関しては、メーカーによっては各大学の研究室とつながりがある場合もあり、教授推薦というかたちで採用試験がおこなわれることもあるようです。
景気の影響を受けづらいので、安定した収入を得られ、総合職の場合は他業種よりも給与の水準が高いことも魅力です。
食品産業
食品産業系でも、機能性高分子研究室で学んだことを活かせます。
食品業界に欠かせない食品包装には、機能性高分子の機能が活用されているものも数多くあり、安全でコストを抑えた製品の研究がされています。
食品の分野に関心があるのなら、機能性高分子研究室で学んだあとに食品産業の企業への就職を目指してみるのもおすすめです。
さらに、健康や美容への意識がますます高まっている昨今では、栄養やおいしさなどの感覚、体調調節機能などを有する「機能性食品」が注目を集めています。
食品メーカーへ就職することで、機能性高分子研究室で学んだ技術を活かし、身体機能や美容、腸内環境などを整える新たな機能性食品素材の開発に携われるかもしれません。
医療・福祉
就職先として、医療や福祉系の企業を選ぶこともできます。
医療用の機能性高分子のことを医用高分子と呼び、代用欠陥や人工心臓、人工食道など生体内部に使われる材料と、義歯や義眼のように生体外部で使われる材料があります。
炎症を起こさずアレルギー反応がないなど、医用高分子にはさまざまな条件が求められ、機能性高分子の機能が存分に発揮される分野です。
また医療だけでなく介護の分野でも、介護用ロボットなどの開発にも機能性高分子の研究が用いられたり、介護用のおむつにも機能性高分子である吸水性ポリマーが用いられたりしています。
学んだことを医療や福祉に役立てたいという方は、医療・福祉系の企業への就職を目指してみてはいかがでしょうか。
自動車産業
自動車産業の分野では、軽量化や地球温暖化防止などに役立てる新素材に機能性高分子が使われています。
たとえば、振動を効率よく吸収し、車内を快適な空間にしてくれる防振ゴムや、従来よりも高い耐熱性をもったゴム、耐久性、軽量化、リサイクル性などのすぐれた性能をもつ部品などです。
また、直接肌に触れる内装や部品だけでなく、自動車の塗料にも機能性高分子が用いられ、自動車がより安全で快適になるような製品が開発されています。
機能性高分子は、今後の自動車産業の研究や開発にとって大きく需要がある分野であるため、機能性高分子専攻である経歴は大いに活かせます。
自動車産業に興味があるなら、自動車産業系の企業への就職を考えてみるのもいいかもしれません。
【機能性高分子研究室ってどんなところ?】研究室の選び方とは?
機能性高分子研究室と一口に言っても、入る研究室によって研究する対象は大幅に異なります。
そのため研究室は、「研究室で何を学びたいのか」や「将来の進路」について考えたうえで選ぶのがおすすめです。
将来の進路についても、企業に就職するなら研究室にいる期間は1年です。
しかし、博士課程まで進学するならば6年いることになります。
博士課程への進学を考えていたり、研究者になりたいと考えていたりするなら、研究室選びは特に重要です。
まず一番に大切にするべき点は、自分が「おもしろそう」と思えることを研究しているかどうかです。
おもしろいと思えるだけで、研究にものめり込むことができます。
何時間でものめり込んで研究できるような研究室を選ぶのがおすすめです。
さらに知りたい方は、以下の記事で研究室の選び方を詳しく知ることができます。
ぜひ参考にしてください。
【機能性高分子研究室ってどんなところ?】まとめ
今回は、機能性高分子研究室でどんなことが学べるのか、また卒業後の進路についてもご紹介しました。
記事のなかでご紹介した通り、機能性高分子は化学工業や医療、食品、自動車などさまざまな分野で活用されています。
興味をもって研究に取り組めば、卒業後も学んだことを活かせるので、卒業後化学メーカーなどへの就職を考えている方には特におすすめの研究室です。
機能性高分子研究室へ入ることを考えているなら、自分の興味のあることや卒業後の進路についてしっかりと考えたうえで研究室選びをしましょう。