HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
今回は現在大学で勉強していて、どんな研究室に入ろうか悩んでいる方や、大学選びの基準にしたいという高校生向けに光触媒研究室についてご紹介します。
光触媒研究室に入ることでどんな道へ進めるのか、光触媒研究の現状に将来性、就職先についても紹介しているのでぜひ参考にしてください。
また、とりあえず概要だけでも知っておきたいという方にもおすすめです。
この記事を読めば光触媒研究とは何かの概要がわかるので、詳しく知りたい方はこれを機に研究室に訪問してみましょう。
【光触媒研究室ってどんなところ?】光触媒の実態
光触媒とは太陽や蛍光灯の光を吸収して生まれる酸化力を、さまざまな方法で活用する技術のことです。
もともと光触媒は日本で発見されました。
その技術を用いた商品も、主に日本で開発されてきたことから日本発のオリジナル技術と呼ばれ、世界をけん引しています。
そんな光触媒研究室では、このオリジナル技術を日常の生活に応用できるように、さまざまな研究が行われているのです。
ここからは、光触媒研究が現状はどこまで進んでいてどんなことができるのか、また今後研究を進めることでどんな将来性があるのかについてもご紹介していきます。
光触媒が応用されている分野ごとのテーマや、研究室からの就職先として多い業界のほか、記事の最後には研究室の選び方で迷っている方向けにコツも紹介しております。
ぜひ最後までご覧になってください。
光触媒研究の現状は?
光触媒は酸化チタンを用いて水から水素ガスが得られるため、もともとは重要なエネルギー源になるのではないかと期待されていたものです。
実は大量のエネルギーを取り出せないことがのちに判明し、研究は頓挫してしまいました。
しかし、発想の転換から現状では、消臭効果や防汚効果へと利用されることになりました。
酸化チタン光触媒はアルコールや植物の葉だけでなく、ゴキブリをも酸化させ、二酸化炭素にまで分解させる作用をもっているのです。
具体的には便器や食器の表面に酸化チタン光触媒をコーティングすると、超親水性と呼ばれる作用により水に馴染みやすくなります。
こうすることで光触媒によって油汚れなどは分解され、長時間セルフクリーニング効果が持続します。
最近では東京駅のグランルーフにもこの技術が採用されて話題になりました。
光触媒研究の将来性は?
現状の光触媒の利用は限られた狭い範囲に留まっています。
しかし、今後研究が進めばさまざまな分野で日の目を見ることになりそうです。
酸化チタンは光触媒の効果による成分の分解作用と、超親水性から快適な空間を作り上げるための技術として応用が進められているからです。
これまで酸化チタン光触媒は太陽光からの紫外線のエネルギーしか使用できないため、屋外でしか活用できないことが難点でした。
ところが、酸化チタンの表面に鉄や銅イオンからできる触媒を付着させることで、エネルギーの低いLEDなどの可視光を用いても十分な効力を発揮できるようになりました。
このように、既存の概念を覆すような研究が現在でも進められており、今後もさらなる発展が期待されています。
【光触媒研究室ってどんなところ?】光触媒をテーマごとに解説
現在、光触媒研究はさまざまなテーマに応用できるように研究が進められています。
これまでに実用化されてきたものと、実用化まであとわずかというところまで研究が進んでいる分野について紹介していきます。
今回紹介するのは医療分野、農業分野、住宅分野の3種類です。
どれも将来性の見込める分野ですが、特に医療分野ではこれまでにない新しいがん治療が可能になるかもしれません。
興味のある分野に関してはぜひ自分でも調べてみてください。
医療分野
現在の日本人における死亡原因の第1位はがんです。
若い世代ほど進行が早く、発見が遅れれば治療は不可能であるケースも多い、恐ろしい病気です。
そんながん治療に、酸化チタン光触媒を応用できる可能性もあるとして研究が進められています。
現在の実験では、癌細胞を植えつけられたマウスに対して、酸化チタンの微粒子を注入し、患部に紫外線をあてることで癌細胞の増殖を抑制できることがわかっています。
紫外線の照射という簡単な方法で行えるため、既存の治療法と合わせて全く新しい治療が可能になるかもしれません。
また、酸化チタン光触媒にはウィルスや細菌も分解する抗菌効果があります。
最近では、光触媒を組み込んだ空気清浄機によって、積極的に空中のウィルスや細菌を補足して分解しようという試みがなされています。
農業分野
植物の成長に必要な養水分を液肥として与える栽培方法の養液栽培は、管理が簡単で土壌中の害虫などから被害を受けにくいため、果菜類の生育に用いられている栽培法です。
こちらの方法では環境への配慮から、使用された養液を排水せずに循環する方式が採用されています。
しかし、この方法は数回ならば問題ないのですが、何度も繰り返していると養液中にバクテリアが発生したり、また果菜類から生育を阻害する物質が排泄されたりするため、収穫量が著しく減少していくという問題があるのです。
そこで、循環水に光触媒を使用することで生育を阻害する物質の分解をするという方法がとられています。
光触媒が分解するのは有機物だけなので、カリウムや窒素などの植物の無機物な栄養素は分解されることなく、循環させることができるのです。
住宅分野
日本の暑い夏では、地方によっては今でも打ち水の習慣があります。
打ち水とは庭先や家の壁など、家の周辺に冷たい水をまいて、蒸発する際に熱を奪うという性質を利用して周辺の温度を下げるものです。
古くから行われているこの習慣にも、光触媒を用いてより高い効果を得られるシステムが開発されています。
新エネルギー・産業技術総合開発機構による「光触媒利用高機能住宅用部材プロジェクト」によって開発された家の新冷却システムは、光触媒によってコーティングされた壁を使用し、そこに水をかけると超親水性によって少ない水量でも薄い膜となって全体に広がります。
こうすることでより効果的に水が蒸発して、家を効率的に冷却することが可能になりました。
【光触媒研究室ってどんなところ?】光触媒の就職先
研究室を選ぶうえで、どんな就職先への実績があるのかを考えることも重要なポイントです。
光触媒研究はさまざまな分野で活躍できますが、今回はそのなかでも光触媒研究室からの就職者が多い業界をご紹介します。
今回紹介するのは研究所、電気やガス業界などのエネルギー産業、製造業の3種類です。
進みたい業界がある方は、研究室に入る時点で希望の就職先に目星をつけておくとよいでしょう。
就職した先で自分の興味がある分野の仕事ができなければ、モチベーションも上がらず長続きしない可能性が高いです。
まだ希望の就職先がない場合でも、なるべく早い段階で目星をつけておきましょう。
研究室によっては卒業後の進路をホームページに掲載しているので、応募する前に一度確認しておくことをおすすめします。
研究所
在学中に研究した成果をもって、そのまま研究所に就職する方もいます。
研究所に就職すれば自分の好きな研究を仕事にできるため、モチベーションも上がります。
また、興味のある分野で勉強と研究をしながらお金がもらえるというのは、もちろん大変なこともありますが、やりがいを感じられる素晴らしいことです。
しかし、研究所は一般企業とは違い、専門性の高さゆえに採用人数は非常に限られています。
学生時代に研究実績を積んでおくことが必須です。
研究所への就職を希望する方は、早い段階から研究に打ち込むようにしましょう。
研究所では一般的に納期に追われることが少ないため、残業も少ないです。
しかし、成果が得られなければ、途中で研究を打ち切られてしまうこともある厳しい側面もあります。
電気やガス業界
つぎに紹介するのはエネルギー産業系です。
植物が太陽光を利用して二酸化炭素と水から酸素を生み出すという光合成を、光触媒を用いて人工的に行おうという研究もエネルギー業界では進んでいます。
日本は「2050年までに脱炭素社会の実現を目指す」という長期的な目標を掲げています。
それを達成するため、二酸化炭素を削減するあらゆる研究が行われているのです。
太陽光に含まれる紫外線に反応して水を酸素と水素に分解する作用をもつ光触媒は、上述の人工光合成に大きく貢献しています。
光触媒を用いた混合粉末型光触媒シートは、水中において太陽光をあてるだけで水素と酸素を生成します。
このように未来の環境のことを考えて研究をしているエネルギー産業への就職も、世界の未来を担うやりがいの感じられる仕事です。
製造業
最後に紹介する製造業ですが、光触媒は自動車業界などで注目を集めています。
光触媒には防汚効果や防臭効果、抗菌作用が認められているため、自動車のコーティングなどに利用されています。
光触媒の含まれたコーティング材を利用すれば、車体への抗菌、防汚、防さび効果が期待できるでしょう。
さらに、車内のクリーニングに使用されることも多くなりました。
スプレータイプの可視光応答型光触媒を利用すれば、太陽光だけでなく車内のLEDにも反応して高い消臭効果と抗菌作用を発揮します。
こうした製品の開発や研究ができる製造業への就職も、多くの人の助けとなってやりがいのある仕事です。
今回は自動車業界についてのみご紹介しましたが、興味がある場合はそのほかの製造業に関してもぜひ調べてみてください。
【光触媒研究室ってどんなところ?】研究室の選び方
研究室選びで重要なのは、自分がやりたいことを見極めることです。
興味がない研究を行っているところに入っても、モチベーションは上がらず苦痛になってしまうでしょう。
また、研究室に入れば有利な就職先も選べるようになります。
つまり、学生生活だけでなく今後の社会人生活の大枠も決まってしまうのです。
そのため、研究室を選ぶ際には徹底的な自己分析を行うことが重要になります。
自分がどんな分野に興味があるのか、どんな研究をしたいのか、どんな企業に就職したいのか、将来はどうなっていたいのかを大学2年生の前半までには済ませておく必要があるでしょう。
また、以下の記事では研究室の選び方をより具体的に紹介しています。
https://digmee.jp/article/310190 ぜひそちらをご覧ください。
【光触媒研究室ってどんなところ?】まとめ
今回は研究室選びで困っている大学生や、大学選びに迷っている方向けに光触媒研究についてご紹介しました。
光触媒とは何なのか、現状と将来性、就職先、そして、研究室の選び方について解説してきましたが概要だけでも理解していただけたのではないでしょうか。
研究室に入るとおのずと就職先も絞られてきます。
なんとなく選ぶのではなく、しっかり自分の意志で興味をもった分野を選ばなければいけませんが、この記事がその一助となれば幸いです。