文系学生は大学院に進むべき?大学院に進むメリットや就活に与える影響を徹底解説!

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伊東美奈
Digmedia監修者
伊東美奈

HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。

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はじめに

現在文系の学部に通っている大学生の中には、このまま就職すべきか大学院へ進学すべきか迷っている人もいるでしょう。

文系の学生が大学院に進学することには、何かメリットがあるのでしょうか。

この記事では、文系の大学院の仕組みや進学のメリットとデメリット、就職への影響などについて解説しています。

また、就職か進学かで迷った場合にどうしたら良いかも合わせて解説しているため、困ったときの参考になるはずです。

文系の大学院に進学すべきか悩んでいるという人は、ぜひ読んでみてください。

【文系学生は大学院に進むべき?】文系大学院の仕組み

大学院に進むメリットについて知る前に、まずはその仕組みについて見ていきましょう。

文系学部の大学院は、大学によって設置されている課程が異なり、基本的には、「修士課程」と「博士課程」のどちらかが設置されている場合も多いです。

また、修士課程と博士課程の両方が設置されている大学もあります。

両者は、在籍して学べる期間や取れる学位が異なる存在です。

それぞれにどのような違いがあるのか、細かい特徴について解説します。

修士課程

学部卒業後、大学院に通う期間が2年間のみの場合は修士課程と呼びます。

対象の学問に対してさまざまな視点から、より詳細な知識やアプローチの仕方を学び、専門性を磨くための学習を行うのが修士課程です。

多くの学部と同じく、ゼミ形式での学びが中心となっており、卒業までに修士論文の提出が求められます。

最初の1年間で卒業に必要な単位をほとんど取得し、そのあとは修士論文のため研究に打ち込む、という人が多いです。

修士課程を修了すると「修士」の学位を取得できます。

学部での学び以上に専門性の高い研究ができるため、興味のある物事について深く学びたい人にとっては良い進学先となるでしょう。

修士の学位は、博士課程で取得できる博士の学位とはまた異なるものであるため、その点は注意が必要です。

博士課程

学部卒業後、大学院の課程として5年の期間が設けられている場合は博士課程です。

博士課程には、以下の2つがあります。

・前半2年間を博士前期課程、後半3年間を博士後期課程に分ける「区分制博士課程」

・5年間のどこにも区切りを設けない「一貫性博士課程」

区分制博士課程であれば、博士前期課程を修了した時点で修士の学位を取ることが可能です。

また、両者ともに5年間の課程を修了し、博士論文が認められれば博士の学位を取得できます。

博士論文を提出せず、定められた期間中に必要単位をすべて取得した状態で大学院を卒業する場合は「満期退学」と呼ばれ、その時点では博士の学位を取得できません。

あとから博士論文を書くことで取得できる場合もありますが、現役の場合よりも審査がきびしくなります。

博士課程には、大学教員やその道の研究者を目指す学生が集まる傾向にあります。

専門職大学院(法科大学院・MBAなど)の役割

専門職大学院は、学術的な研究だけでなく、特定の職業分野で即戦力となる高度な専門スキルの習得に特化した機関です。

代表的なものに、弁護士を目指す「法科大学院(ロースクール)」、ビジネスリーダーを育成する「経営大学院(MBA)」、他にも会計大学院や公共政策大学院などがあります。

一般的な大学院(修士課程)が「真理の探究」を目的とするのに対し、専門職大学院は「理論の実践的な応用」を重視します。

そのため、教員も研究者だけでなく、実務家(弁護士や経営者など)が登用されている点に大きな特徴があります。

資格試験の受験資格が得られたり、試験科目が免除されたりするメリットがある一方、課題量が多く非常に多忙な生活になる傾向があります。

将来就きたい職業が明確で、そのために特定の資格や高度な実務スキルが必要な学生にとって、非常に強力なキャリアの武器となる選択肢です。

学部時代の卒論と大学院の研究は何が違うのか

学部時代の卒業論文と大学院での研究の決定的な違いは、「新規性」と「自律性」の要求水準にあります。

卒業論文は、既存の先行研究を整理し、自分なりの見解をまとめることで「論文の書き方の基礎」を習得する、いわば研究の練習台としての側面が強いものです。

一方、大学院での研究は、まだ誰も明らかにしていない「新しい知見」を学界に提示することが求められます。

先行研究を網羅的に調査した上で、自分独自の問いを立て、適切な手法でデータを収集・分析し、客観的な妥当性を示す必要があります。

また、学部生のように教員から手厚い指示を待つのではなく、自ら研究スケジュールを管理し、学会発表や論文投稿を目指す主体性が不可欠です。

単に「もっと勉強したい」という受動的な姿勢ではなく、「未知の領域を自力で解明する」というプロフェッショナルな探究心が求められるのが、大学院という場所の本質的な違いです。

【文系学生は大学院に進むべき?】文系学生が大学院に進むメリットは?

文系学部の大学院には、修士課程と博士課程の2種類があります。

多くの場合、大学院に進学するのはその分野の学びを深めてより知識をつけ、学問に対するアプローチの方法を増やしたいという学生です。

しかし、文系の学生が大学院に進学することにメリットはあるのでしょうか。

大学院に進学するメリットは、基本的にその学問の最先端に近い位置で専門性の高い研究ができることです。

文系の大学院に進学するメリットについて、詳細を見ていきましょう。

学びたいことを集中的に学べる

大学院に進学するメリットは、学びたいことを集中して学べる、という点です。

学部生の間は、その学部に関連する授業のほかにも基礎教養として、別の科目の単位取得が必須になっている場合が多いでしょう。

大学院の場合は、必要な単位も基本的にその分野に関わるものがほとんどです。

そのため自分が学びたい分野について集中的に学び、理解を深められるというのが一番のメリットとなっています。

何を学びたいのか、どんな成果を収めたいのかといった、明確な目標を持って学びに従事できる人であれば、大学院での研究は非常に実りの多いものとなるでしょう。

自分の学びたいことだけに集中できる貴重な機会として、大学院への進学を決める人も少なくありません。

教授との距離が学部生に比べて近い

大学院生は、学部生よりも教授との距離が近いというメリットもあります。

大学院での学びは各研究室が拠点となる場合が多いため、教授との関わりも密接になるのです。

そのため、わからないことや気になることがあればすぐに質問ができ、教授との議論を重ねて学問に対する理解を深められます。

また、そうした自分の所属する研究室の教授との関わりを通して、他大学の教授や研究者と関わりを持つ機会も多いです。

人脈が広がることによって、就活の幅が広がったり研究者への道が拓かれたりすることもあるため、教授との距離は重要だと言えるでしょう。

このように、文系の大学院には本当にその分野について本気で学びたい人にとっては大きなメリットがあるのです。

論理的思考力と文章作成能力が身につく

文系大学院での2年間は、徹底的に「考えること」と「書くこと」を繰り返す訓練の場です。

自身の研究テーマについて、なぜその問いが重要なのか、どのような論理で結論を導き出すのかを、常に批判的な視点で検証し続けなければなりません。

ゼミでの発表や教授からの鋭い指摘を通じて、主観を排除し、誰もが納得できる根拠に基づいた「論理的思考力」が極限まで鍛えられます。

また、数万字に及ぶ修士論文を執筆する過程で、複雑な情報を構造化し、他者に正確に伝えるための高度な「文章作成能力」も身につきます。

これらの能力は、特定の専門知識以上に汎用性が高く、社会に出てからの企画立案、プレゼンテーション、報告書作成など、あらゆるビジネスシーンで大きな武器となります。

「なんとなく」で物事を判断せず、筋道を立てて最適解を導き出せる人材として、自身の市場価値を大きく高めることができるでしょう。

一部の専門職種や公務員試験で加点・優遇がある

文系大学院への進学は、特定の職種や公務員を目指す上で明確なアドバンテージになることがあります。

例えば、国家公務員総合職試験では、院卒者試験という区分が設けられており、最終合格後の採用面接(官庁訪問)において、専門的な知見や思考の深さが評価される傾向にあります。

また、一部の地方自治体や研究職公務員では、修士号の取得が応募要件となっていたり、試験結果に加点されたりするケースも存在します。

民間企業においても、シンクタンク、コンサルティングファーム、リサーチ部門などでは、専門分野に精通した院卒者を積極的に採用する枠組みがあります。

心理学を専攻して公認心理師や臨床心理士を目指す、あるいは社会福祉学を深めるなど、資格と直結するルートも文系には多く存在します。

自分の志望するキャリアが「高度な専門性」を重視するものであれば、大学院での2年間は決して遠回りではなく、むしろ最短ルートになる可能性を秘めています。

奨学金の返済免除を狙える

大学院進学には多額の費用がかかりますが、文系学生にとって非常に大きな経済的メリットとなり得るのが、日本学生支援機構(JASSO)の第一種奨学金(無利子)における「特に優れた業績による返還免除」制度です。

これは、大学院での在学中に優れた研究業績を上げた学生に対し、奨学金の全額または半額の返還が免除される仕組みです。

評価の対象は修士論文の質だけでなく、学会での発表実績、学術雑誌への論文掲載、授業成績、学内活動への貢献など多岐にわたります。

文系学問は理系に比べて実験設備などのコストがかからない分、自分自身の努力とアウトプット次第でこの制度を勝ち取りやすい側面があります。

数百万単位の借入が免除される可能性は、将来の生活設計において計り知れない恩恵となります。

「返済への不安」を進学のブレーキにするのではなく、免除を目標に研究に邁進することで、学術的な成果と経済的な利益を同時に手にするチャンスがあるのです。

【文系学生は大学院に進むべき?】文系学生が大学院に進むデメリットは?

興味のある学問の分野に対して理解を深めるという面では、文系の大学院にもさまざまなメリットがあるとわかりました。

しかし、メリットがあるならばデメリットも存在します。

文系の大学院に進むことで発生するデメリットとは、一体どのようなものなのでしょうか。

文系の学部生が大学院へ進学する場合、時として就活にも関わるような弱みができる場合もあります。

大学院への進学を決める前に、デメリットについてもしっかり理解しておきましょう。

思っているより学べる期間が少ない

大学院で学べる期間は、必ずしも長いとは限りません。

5年間しっかり学べる課程があるところもあれば、もっとも短くて2年間しか期間が用意されていないところもあります。

そして、その2年間のうち1年は必要な単位の取得に追われ、かつ就活も同時進行で行わなければなりません。

そのため、思っているほど学べる期間は長くなく、得られるものも多くない、という可能性があります。

また、大学院へ進学するためには学費がかかることも忘れてはなりません。

5年間の博士課程であっても、途中で学費の支払いが難しくなって最後まで在籍できない場合もあります。

進学を検討している大学院の課程は学びを深めるのに十分な期間が用意されているか、最後まで学費を支払える当てはあるのかなど、しっかり考えておく必要があるでしょう。

進路が不安になる

文系の学生が大学院へ進学するデメリットとして大きいのは、進路への不安が大きくなることです。

多くの学生は大学教員や研究職を志して大学院へ進学しますが、必ずしもその全員が教授になれるわけではありません。

技術職に直結するような理系学部とも趣が異なるため、就活で有利になることが少ないのも現状です。

そのた就職先が決まるという確証がない、という不安を抱えて日々を過ごすことになります。

就職先が決まっても、大学院で学んだことが必ず活かせるとは限らないため、大学院での研究がある意味無駄になってしまう可能性もあるのです。

社会に出る年齢もほかの人より高くなってしまうため、キャリア形成のためには綿密な計画と努力が必要になります。

学費や生活費など金銭的な負担が増える

大学院進学における最大の懸念点は、社会に出るのが2年遅れることによる「経済的コスト」の増大です。

まず、国立大学でも年間約54万円、私立大学であればそれ以上の授業料に加え、入学金が必要になります。

さらに、その2年間を「学生」として過ごすため、学部卒で就職した同級生が稼ぐであろう数百万から一千万円近い生涯年収の機会損失が発生します。

奨学金を借りる場合は、将来的にその返済が重くのしかかるリスクも考慮しなければなりません。

また、文系研究であっても、資料収集のための交通費や書籍代、学会参加費など、研究を深めるほど出費は増える傾向にあります。

アルバイトを増やせば研究時間が削られるというジレンマに陥りやすく、金銭的な余裕のなさが精神的な焦りに直結することもあります。

進学を決める前に、親からの支援、奨学金、給付型助成金などの資金計画を綿密に立て、現実的なシミュレーションを行うことが不可欠です。

同級生とライフステージにズレが生じる

大学院に進学すると、周囲の友人たちが社会人として自立していく中で、自分だけが学生のままでいることによる「ライフステージのギャップ」を強く感じることがあります。

学部卒で就職した同級生は、2年目、3年目と仕事の責任が増し、経済的な余裕を持って旅行や趣味を楽しんだり、中には結婚や出産を経験したりする人も現れます。

一方、院生は日夜研究に追われ、金銭的にも自由が利きにくい生活が続きます。

久しぶりに会った友人の「仕事の話」についていけず、疎外感を感じたり、社会に取り残されているような焦りを感じたりすることも少なくありません。

特に、研究が思うように進まない時期はこの対比が辛く感じられるでしょう。

この精神的なズレを乗り越えるためには、比較の軸を他人に置くのではなく、「自分は今、将来のために必要な専門性を蓄積している」という確固たる目的意識を持つことが重要です。

研究のストレスが精神的な負担になる可能性

文系大学院での研究は、孤独で終わりのない作業になりがちです。

明確な正解がない問いに向き合い続ける過程では、「自分の研究には価値があるのか」「このまま書き続けて終わるのか」という強い不安に襲われることが多々あります。

特に修士論文の執筆時期には、膨大な資料との格闘や論理の矛盾に悩み、不眠や食欲不振に陥る学生も少なくありません。

理系のようにチームで実験を行うのではなく、一人で文献を読み、考察を深めるスタイルが多い文系だからこそ、行き詰まった時の閉塞感は深刻です。

また、指導教員との相性も精神面に大きく影響します。

批判的な指導が続くと自信を喪失しやすく、研究室という狭い人間関係の中でストレスを抱え込んでしまうケースも見られます。

適度にリフレッシュする時間を持つことや、同じ悩みを共有できる院生仲間を作るなど、メンタルケアを意識した生活を送らなければ、研究を完遂する前に燃え尽きてしまうリスクがあります。

【文系学生は大学院に進むべき?】就活への影響は?

文系の学生が大学院への進学を希望している場合、就活への影響を理由に再検討を促される場合があります。

大学院への進学は、就職にどのような影響をおよぼすのでしょうか。

文系の大学院での学びは、社会で役立つ技術やスキルが身につくものではない場合が多いです。

そのため、企業の採用担当者からは「採用の旨みがない」と思われることも少なくありません。

ここからは、具体的に就活にどのような影響があるのかを解説します。

文系の大学院への進学が就活にもたらす影響について理解し、進学するかを検討してみましょう。

コミュニケーション能力が低いと思われることがある

文系の大学院卒であるという経歴は、採用担当者に「コミュニケーション能力が低いかもしれない」という印象を与える可能性があります。

実際の大学院では活発に議論を交わしてコミュニケーションを取るところもありますが、世間一般のイメージとして、大学院にまで進むような人には研究者肌の人が多く、気難しいという印象をもたれがちです。

また、積極的なコミュニケーションを取る場合でも、同じ分野の人たちとの専門性が高い会話に慣れていると、うっかり専門用語を多用してしまう場合があります。

そのため、相手に伝わるよう平易な言葉で自分の意見を述べることが苦手だと思われる場合もあるのです。

就活の場合は努めて明るく振る舞う、専門用語は使わないように気をつけるといった工夫が必要になります。

年齢がネックになることがある

大学院卒業後の就活では、年齢がネックになる場合もあります。

修士課程であれば、卒業時はまだ20代前半であることが多いため、そこまで年齢が就職に影響するということはありません。

しかし、博士課程の場合は順調に卒業できても20代の後半です。

そのため、同年代の人たちがすでに企業内でのリーダー的なポジションにいることも多く、新卒として採用されるまでのハードルが上がってしまいます。

また、公務員のように募集に年齢制限がある職業もあるため、そういった職に就きたい場合は大学院への進学がかえって足を引っ張る可能性もあるのです。

将来的に自分がどのような職業に就きたいのか、その職業従事者の平均的な年齢はどれほどか、年齢制限のある職種ではないかなどは、進学前に確認しておいたほうが良いでしょう。

強みがないと就職に有利にならない

基本的に、大学院に行く学生はその分野への深い関心があり、学びに意欲的で何かしらの目的意識をもっているものです。

一方で、一度は就活をしたもののうまくいかなかったために、消去法で大学院に進んだという人も世の中には一定数存在します。

そして、そのように目標をもたず、フラフラしているように見える人物を企業は警戒するのです。

入社してもやりたいことが定まらず、仕事にやりがいを見出せないまま退職されてしまっては、企業側も採用や教育にかけたコストが無駄になってしまうため、しっかり目標をもって行動できる人物が好まれます。

大学院で何を目標にどのようなことに取り組んだのか、それによって培われた自分の強みや価値とは何かを明確に説明できなければ「単に就活から逃げて大学院を選んだ人物だ」と捉えられてしまうのです。

修士卒として初任給が学部卒よりも高い

文系院卒が就職する際、給与面での直接的なメリットとして挙げられるのが「初任給の設定」です。

多くの企業では、学部卒と修士卒で給与体系を分けており、一般的には月額で2万円から4万円程度、修士卒の方が高く設定されています。

これは、大学院での2年間を「高度な専門教育を受けた期間」として評価しているためです。

年収換算ではボーナスも含めると数十万円の差になり、この差は基本給をベースに計算される昇給や退職金にも長期的に影響します。

また、外資系企業や一部の専門職では、さらに大きな差が設けられているケースもあります。

学部卒の同期より2年遅れて社会に出ることにはなりますが、その分、スタート時点での待遇が優遇される点は、金銭的な機会損失をある程度リカバリーする要素となります。

もちろん、この差に見合うだけの論理的思考力やアウトプットの質が期待されているという責任感を持って仕事に臨む必要があります。

専門知識が直接活かせる業界は限定的である現実

文系大学院で培った「専門知識そのもの」が直接仕事に直結するケースは、残念ながら理系に比べると非常に限定的です。

例えば、歴史学や文学、哲学といった純粋学問の研究内容をそのまま業務で使う企業は極めて稀です。

多くの民間企業は、特定の知識よりも、研究の過程で磨かれた「課題解決能力」や「情報収集力」を期待しています。

そのため、面接で「私の研究テーマは〇〇なので、この知識を活かしたい」と主張しすぎると、企業側から「うちの仕事には関係ない」「頭が硬そう」と敬遠されるリスクがあります。

文系院生が就活で成功するためには、研究内容という「コンテンツ」ではなく、研究を通じて得た思考のプロセスという「ポータブルスキル」を、いかにビジネスの文脈に翻訳して伝えるかが鍵となります。

専門性に固執しすぎず、自分の能力を汎用的な強みとして再定義する柔軟性が、文系院卒の就職には不可欠な要素と言えます。

研究に没頭しすぎて就活スタートが遅れやすい

文系院生が陥りがちな最大の失敗は、研究の面白さや修士論文のプレッシャーに飲まれ、就職活動への着手が遅れてしまうことです。

大学院1年目の後半は、研究テーマが固まり始め、学会発表の準備やフィールドワークなどで最も多忙を極める時期です。

しかし、この時期は民間企業のインターンシップや早期選考が始まるタイミングと完全に重なります。

「今は研究が大事だから、落ち着いたら就活をしよう」と考えているうちに、気づけば大手企業の選考が終わっていたという事態になりかねません。

学部生と異なり、院生は研究という大きなタスクを抱えながら並行して就活を行う「二足のわらじ」が求められます。

学部時代の就活スケジュールを過信せず、M1の夏から意識的に情報を収集し、効率的な時間管理を行う必要があります。

研究の質を落とさず、かつチャンスを逃さないための「戦略的な先手」が、院卒としてのキャリアを左右します。

【文系学生は大学院に進むべき?】入試に向けて対策しよう

文系大学院の入試は、学部入試のような「暗記の量」を競う試験とは本質的に異なります。

合格を勝ち取るためには、自分がどのような問題意識を持ち、既存の研究に対してどのようなアプローチで新しい知見を加えようとしているのかを論理的に証明しなければなりません。

主な試験科目は、語学、専門科目、そして口述試験(面接)ですが、最も重視されるのは事前に提出する「研究計画書」です。

これは単なる希望を述べる書類ではなく、研究の実現可能性を示す設計図であり、あなたの論理的思考力が凝縮されたものです。

早期からの準備が合否を分けます。

研究計画書の作成方法と重要性

研究計画書は、大学院入試において配点が最も高いと言っても過言ではない最重要書類です。

構成要素としては、「研究テーマ」「研究の背景(先行研究の整理)」「研究の目的と意義」「研究方法」「期待される結果と展望」をA4用紙数枚にまとめます。

まず、自分が解決したい「問い」を明確にし、なぜその研究が今必要なのかを先行研究との比較で説得力を持って記述する必要があります。

「これが好きだから調べたい」という主観的な動機ではなく、「既存の研究にはこの欠陥があるため、この手法で補完する」という客観的な論理が求められます。

作成にあたっては、志望する教授の著書を読み込み、自分の関心がその研究室で受け入れ可能かを確認することも不可欠です。

何度も推敲を重ね、他者に読んでもらって論理の飛躍がないかをチェックするプロセスが、合格への一番の近道となります。

英語(外部試験)のスコアを早めに確保するコツ

多くの文系大学院入試では、英語の試験が課されます。

最近では独自の筆記試験を行わず、TOEICやTOEFL、IELTSなどの外部試験のスコア提出を求める大学院が増えています。

英語対策のコツは、とにかく「早めに目標スコアを出し切る」ことに尽きます。

入試直前期は専門科目の勉強や研究計画書のブラッシュアップに膨大な時間を取られるため、M1に進学する前、あるいは学部4年生の夏までには必要なスコアを確保しておくのが理想的です。

特にTOEFLやIELTSは受験料が高く、試験日程も限られているため、計画的な受験スケジュールが求められます。

また、文系の研究において英語は「入試のため」だけでなく、先行研究として海外の文献を読むための「必須の道具」です。

単なるテクニックとしての英語学習ではなく、学術的な文章を読む基礎体力を養う意識を持つことで、入学後の研究活動もスムーズに進めることができるようになります。

口述試験(面接)で必ず聞かれる定番の質問

口述試験は、提出した研究計画書をもとに、複数の教員から厳しい質疑応答を受ける場です。

ここで試されるのは、研究への情熱だけでなく、批判的な質問に対しても冷静かつ論理的に応答できる「研究者としての素養」です。

必ず聞かれる定番の質問には、「なぜこのテーマを選んだのか」「なぜ他大学ではなく本学なのか」「先行研究との違いは何か」「具体的にどのような史料やデータを用いるのか」といったものがあります。

また、「修士課程修了後の進路(博士進学か就職か)」についても高い確率で問われます。

答えを丸暗記するのではなく、自分の研究計画の弱点(ツッコミどころ)をあらかじめ把握し、それに対するカウンターを用意しておく「防御力」が必要です。

指導を仰ぎたい教授との対話を楽しむ余裕を持てるまで、研究内容を自分自身の言葉で咀嚼しておくことが合格を引き寄せるポイントです。

【文系学生は大学院に進むべき?】卒業後のキャリアパス例を紹介

「文系院卒は就職に不利」という言葉を耳にすることもありますが、それは過去の話になりつつあります。

実際には、院で磨いた高度なリサーチ能力や論理的思考力を高く評価する企業や機関が数多く存在します。

研究者を目指す道だけでなく、その専門性を社会の課題解決に役立てる道など、キャリアの選択肢は意外なほど多様です。

自分の専門性をどう市場価値に変換するか、代表的な3つのルートを見ていきましょう。

一般企業への就職

文系院生の最も一般的な進路は、民間企業への就職です。

特に、膨大なデータを分析して戦略を立てるコンサルティングファーム、社会の動向を読み解く広告代理店、複雑な法務や財務を扱う金融機関などは、院生の論理的思考力を高く評価します。

また、メーカーの企画部門や人事・労務、海外事業部など、高い文章力や異文化理解力が求められる部署でも重宝されます。

就活のポイントは、研究テーマそのものではなく、「課題を発見し、根拠を揃えて論理を構築した経験」を、ビジネスの現場でどう再現できるかをアピールすることです。

院卒であることを「頭でっかちな学生」と捉えられないよう、柔軟性と協調性を兼ね備えていることを示すエピソードも用意しておきましょう。

2年間の猶予を活かして、学部生よりも一段深い企業研究と自己分析を行うことで、納得感のある内定を勝ち取ることが可能です。

大学教員や研究員を目指すアカデミックポスト

研究そのものを職業にする「アカデミックポスト」は、多くの院生が一度は憧れる王道のルートです。

修士課程を修了後、さらに3年間の博士後期課程に進学し、博士号(Ph.D.)を取得することがスタートラインとなります。

その後、大学の助教や講師、あるいは特任研究員(ポスドク)としてキャリアを積み、教授職を目指します。

この道は非常に険しく、ポストの数に対して志望者が多い「氷河期」の状態が続いていますが、人類の知の最前線に立ち続けることができる唯一無二の魅力があります。

文系の場合、著書の出版や権威ある学会誌への論文掲載が、職を得るための決定的な実績となります。

早い段階から国内外の学会でネットワークを広げ、研究費(学振など)の獲得に挑戦するなど、実力主義の世界で戦い抜く覚悟が必要です。

また、近年では大学だけでなく、高等専門学校(高専)や私立高校の専任教諭として専門性を活かす道も注目されています。

シンクタンクや公的な研究機関への就職

「研究」と「社会貢献」の中間に位置するのが、シンクタンクや公的な研究機関です。

三菱総合研究所や野村総合研究所などの民間シンクタンクは、政府や企業からの依頼を受け、社会問題や経済政策について高度な調査・分析を行います。

ここでは文系の専門性(社会学、経済学、政治学など)がダイレクトに活かされる場面が多く、院卒者の採用が非常に活発です。

また、日本貿易振興機構(JETRO)やアジア経済研究所、国立の博物館・図書館などの公的機関も魅力的な進路です。

これらの職場では、特定分野の深い知識と、それを客観的なデータとしてアウトプットする能力が求められます。

単なる事務作業ではなく、専門家として「社会の仕組みを作るための提言」に関わりたい学生にとって、非常にやりがいのあるキャリアパスと言えます。

公務員試験と並行して対策を進める学生も多く、高い専門性と実務能力の両輪をアピールすることが採用への鍵となります。

【文系学生は大学院に進むべき?】就職か大学院進学で迷っている人がやるべきこと

就活に対する影響なども鑑みた↑で、どうしても学びたいことがある人はおのずと大学院に向かいます。

一方、まだ就職するか大学院に進学するかを迷っている人もいるでしょう。

文系学部の大学院に進学するかどうか迷っている場合は、一度視野を広げて、情報を集めてみるのがおすすめです。

現在の自分はどのような企業に就職できるのか、実際に大学院に進んだ人はどうしているのかなど、身の回りのことについて突き詰めていくと、自分の本当に進みたい道がわかるでしょう。

そこで、大学院に進むか迷っている人がやるべきことについて解説します。

まずは就活をしてみる

大学院に進学するか迷ったら、まずは就職活動に手をつけてみましょう。

就職活動においては、自分の適性や進みたい道を知るために入念な自己分析を行います。

また、興味のある企業から業界研究を広げて、多くの企業について調べることも可能です。

そのため、実際に就活をしてみると、本当に自分が大学院に進みたいと思っているのか、それとも就職したくなるのかわかる場合があります。

また、就活をしたことで、あらためて興味をもった業界や職種もあるかもしれません。

インターンシップでも良いので、会社で働くということを知って、イメージを膨らませることが大切です。

同期の友人や就職したOB・OGの話も聞きつつ、やりたいと思える仕事がないか探してみましょう。

研究室を訪問してみる

希望の研究室はあるものの、本当に大学院に進学して良いものか迷ったら、実際に研究室を訪問してみるという手もあります。

在学中の大学であれ外部であれ、自分が行きたいと思っている大学院を訪問してみましょう。

その研究室でどのような研究が行われているのかを目の当たりにすることで、自分の中のイメージとどれだけ一致しているかを確認できます。

それによって理想と現実とのギャップに気づくこともあるでしょう。

本当に自分が学びたいことを学べそうか、やりたい研究ができそうかを知ることは、就職と進学どちらに進むかを決める重要な手がかりになります。

自分のやりたいことができそうだと感じれば進学を、どうもそれができなさそうだと感じれば、別の選択肢を選べるでしょう。

大学院に進んだ先輩に就活状況を聞く

大学院に進学するか迷った場合、さらに先を見据えて検討する方法もあります。

実際に大学院へ進学した先輩に、現在の就活状況を聞くことで、将来的な自分のイメージにつなげる方法です。

大学院に進んだ先輩がいるならば、聞ける範囲で就活の進行状況を聞いてみましょう。

可能であれば、修士課程に進んだ先輩と博士課程に進んだ先輩の両方から話を聞くのがおすすめです。

実際にその課程に在籍している人の現実的な話を聞くことで、自分の望む進路が実現できそうなのかがわかります。

言い換えると、その現実を知らないまま想像だけで進学を選んでしまうと、いざ就活という段階になって痛い目に遭う可能性もあるため、事前の情報収集はおこたらないようにしましょう。

おわりに

ここまで、文系の学生が大学院に進学する場合のメリットやデメリット、就活への影響などを解説してきました。

技術的な知識が身につく理系の大学院と異なり、文系の大学院はあまり就職に有利にはなりません。

大学院に進んだことで、採用担当者から良くないイメージをもたれる可能性すらあります。

そのため、よほど強い意志をもって学びたいことがある学生以外は、安易に進まないほうが良いと言えるでしょう。

自分が本当にやりたいことは何か、そのあとの人生設計も含めて、よく考えたうえで進路を選ぶことのがおすすめです。

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