HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
新型コロナウイルスの流行の影響を受け、ステイホームを中心とした新しい生活様式が生まれました。
急速にニーズが高まった業界のひとつに、運輸業界が挙げられます。
インターネット上で世界中から物やサービスを購入することが当たり前になったために、物流量が大幅に増えたのです。
高まり続ける需要に対して変革の時期を迎えている運輸業界は、成長過程にあると言えるでしょう。
今回は運輸業界を目指している学生に向けて、運輸業界を徹底的に解説していきます。
【運輸業界の業界研究】運輸業界の仕事内容
社会を支えるインフラとして私たちの生活において、必要不可欠な存在なのが運輸・輸送の仕事です。
この仕事は江戸時代に始まったと言われており、主に川の流れを利用して運ぶ「水運」が主流だったとされています。
ご存じのとおり「物を運んでその報酬を貰う」のが基本的なビジネスモデルですが、業務内容は大きく4つに分けられることをご存じでしょうか。
運輸業界は、物流・陸運・海運・空運の4つに分類されています。
まずは、それぞれの基本的な業務内容について触れていきましょう。
物流
生産者と消費者をつなげる役割を果たす、私たちの生活に最も近いものが物流業界です。
物流業界の業務内容は、輸送時期の調整のための「保管」、倉庫への入出庫などの「荷役」、ラベル貼りなどの「流通加工」、梱包材で包む「包装」、適切な乗り物で荷物を運ぶ「輸送」、輸送のための環境を整える「情報管理」の6つに分類できます。
この物流業界は、需要の高まりに対する人材不足が問題視されています。
また、主な物流業界として、日本通運や日本郵政株式会社、ヤマトホールディングス株式会社などが代表的です。
陸運
お客様や貨物を鉄道やバス、タクシーなどで目的地まで運ぶ、もしくはトラックで荷物を運んだりするのが主な役割で、それに伴う倉庫やターミナルもビジネスに含まれます。
そのため、引っ越し会社もこの陸運に分類できるでしょう。
さまざまなものを短いスパンで運べるのがメリットですが、大量輸送が難しい、また目的地まで遠すぎる場合に利用できないというデメリットがあります。
たとえば、JRなどの大手鉄道会社やバス・タクシー事業は陸運に分類されます。
海運
海運業界は、船舶を用いてお客様や貨物を海上運送するのが主な役割です。
一口に船舶と言っても客船、貨客船および貨物船など用途に応じた多様な船が用いられています。
海運業界は、重機や乗用車など重量のあるものを大量に運ぶことができるのが強みです。
そして、そのために運輸コストも他の運輸業に比べて安価で済むのも大きな魅力です。
しかし、その分運用する際に時間がかかるというデメリットもあります。
代表される企業に日本郵船株式会社、株式会社商船三井、川崎汽船株式会社などが挙げられます。
空運
お客様や貨物を、航空機を用いて目的地まで運ぶのが空運業界です。
この業界の中で最も多いのは旅客輸送ですが、その運送スピードを活かして生鮮食品や観葉植物などの輸送や、海外からの輸入など運送業でも重宝されています。
しかし、詰める量が少ないために重いものを運ぶのには適さないのが大きなデメリットです。
ANAホールディングス株式会社、日本航空株式会社、名鉄運輸株式会社などの大手に加え、株式会社スターフライヤーなどの新規参入事業も大きな存在感を放っています。
【運輸業界の業界研究】主な職種
ここまでご紹介したように、一口に「物や人を運ぶ」と言っても、それに伴うさまざまな形態があり、使い分けがされています。
目的に応じた多様なインフラが整備されているからこそ、私たちは何不自由なく日常生活を送れているのです。
業界の種類が分かったところで、実際にどのような業務に携われるのか、職種について触れてみましょう。
運輸業界の業務は主に営業・管理・企画の3本柱と言われています。
それぞれの業務について、次項で詳しく見ていきましょう。
営業
物流サービスの営業職は、基本的に法人に物流サービスを提案するのが主な仕事です。
そのため、営業の形態においては「BtoB」に分類されます。
営業は、物流を外注したいと考えている企業のニーズを的確に把握し、適切な運行ルートや倉庫や運賃を選定し、資料にまとめて提案します。
クライアントの規模に応じて、倉庫からのピッキングや受発注の管理などのソリューションを最適な形で提案し、契約を結んで企業の売上を作るため、企業の成長のためには欠かせない存在と言えるでしょう。
管理
物流業界の生産性、業務効率を上げるために欠かせないのが管理業務です。
受発注管理・物流コストの管理・輸送配送管理・在庫管理のほか、検品や梱包、仕分けなどの幅広い作業が管理業務としてひとくくりにまとめられています。
物流管理業務の目的は、コストを適正にすることと、商品の品質を維持することの2点です。
物流市場が急速に拡大したことを受け、従来の方法の見直しが求められ、管理業務で KPI(物流管理指標)を高い水準で維持することが求められています。
企画
物流企画は、物流のネットワークを最適な規模にするために、経営戦略や事業戦略の企画や立案などを行う業務を指します。
大まかに言えば、物流センターの配置と広さを決めて、出入りする輸送の配分を決めることが主な業務です。
顧客の住所や物流量は流動的であるために、適切にコントロールするのは至難の業です。
そのため、業界の動向を見抜き、将来の状態まで見極める力が求められます。
情報収集が要になる、物流業界の砦とも言える業務です。
その他
ここまでご紹介した業務のほかにもさまざまな仕事があります。
たとえば、物流業界なら実際に荷物を運ぶドライバーの仕事があります。
しかし、中型免許・大型免許・運行管理者などの資格が必要な場合があるので、実際にこの仕事に従事する方は事前に取得しておかなければなりません。
また陸運の場合、技術職(土木、電気など)のほか、運転士や駅員として働いている方も少なくありません。
そして海運なら航海士、空運ならパイロットなど、子どもが憧れるような仕事も多くありますが、それぞれ専門の資格が必要になるので注意が必要です。
【運輸業界の業界研究】市場規模
運輸業界は20兆円を超える非常に大きな市場規模を誇っており、日本の経済への影響も大きい業界として知られています。
そして、7年連続でGDPがプラスになっているというデータが物語るように、今後さらなる成長が見込まれているのも特徴です。
内訳は物流が約13兆円、空運が約1兆円、陸運(鉄道)が約10兆円、海運が3兆円と言われています。
なかでも、ネット通販の拡大やフリマアプリの浸透により、宅配便の個別取扱数が増加していることから物流業界の成長が目立ちます。
平均年収
大きな市場規模を誇る物流業界ですが、年収はどうなっているのでしょうか。
運輸系全体の年収は、大手に限ってはかなり高くなっています。
特にインフラを担っている鉄道、航空などは全体的に高いイメージです。
各業界の平均年収は物流が約580万円、陸運(鉄道)が約560万円、空運が約560万円、海運が約800万円となっています。
しかし、パイロットや航海士など有資格の業種と管理業務などでは当然年収にばらつきがあります。
【運輸業界の業界研究】業界の課題
平均年収も高く、大きく成長を続けている運輸業界ですが、急激な市場規模の拡大に伴い大きな課題も抱えています。
私たちの生活がECに依存すればするほど物流業界への負担は大きくなり、今までのビジネスモデルでは対応できなくなってきました。
ここからは、現在の物流業界が抱えている大きな課題を3つにまとめて紹介していきます。
これらの問題は、我々の生活を豊かにするためにも解決していかなければいけません。
物流業界を目指す方は、頭の中に入れて就活に臨んでください。
ドライバー不足
物流業界では、長い間ドライバー不足が深刻な問題として捉えられています。
宅配便の個数は右肩上がりに増加し続けているのにもかかわらず、少子化の影響で若い世代のドライバーが減少しているのです。
そのような問題の解決のため、作業の省人化や自動化を実現するIoT技術への注目度が高くなっています。
たとえば、商品の到着状況の確認、インターネット上での在庫管理などが自動化されることにより、作業が効率化されドライバーの負担の軽減につながっているのです。
労働環境の問題
ドライバーの人員不足だけでなく、労働環境も問題視されています。
ドライバーは人材不足から1人当たりの業務量が増え、長時間労働になりがちでした。
そして、2024年までに適用が猶予されている「働き方改革関連法」が実際に効力を発揮するようになると、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されます。
これは2024年問題とされ、予想される会社の利益減少、トラックドライバーの収入減少・離職、それに伴う荷主側の運賃負担の上昇といった問題に備えてさまざまな施策が進められています。
コロナウイルスによる大打撃
ステイホームでオンラインショッピングへの需要が高まり物流業界は上向きになりましたが、旅客業は大きな打撃を受けました。
特に空運への影響は大きく、多くの定期便が運航停止となり、客室乗務員の他業種への出向などが大きく報道されたのは記憶に新しいでしょう。
政府のgotoキャンペーンによりある程度持ち直しましたが、海外への渡航に制限があるため低迷が続いています。
また、陸運でもバスやタクシーは利用者が激減し、海運業も減収となるなど、各業界への影響は深刻なものでした。
【運輸業界の業界研究】業界の動向
運輸業界は2024年問題に向けての構造の改革や、コロナウイルスによる業績の低迷の立て直しなど、大きな問題解決のための佳境に立たされています。
今後は大きな変化が訪れようとしている業界なので、新しい発表がないか、ニュースや新聞に目を光らせておきましょう。
ここからは、業界全体の動向について、2つに分けて説明します。
就職活動で業界研究は必須なので、自分の言葉で説明できるよう、少しずつリサーチを進めていくようにしてください。
ネット通販の定着
先ほどから何度か触れていますが、リモートワークなどの新しい生活様式が定着し、ネット通販を利用する方が大幅に増えました。
しかし、この需要の拡大はさらなるドライバー不足を引き起こすことになります。
そのため、「置き配」などによる過剰なサービスの撤廃が進んでいます。
この置き配は利用者にも多くのメリットがあり、このサービスを好んで活用している方も少なくありません。
また、ドライバーの配送効率を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)を使ったソリューションの展開も見られています。
海外展開
少子化による国内市場の縮小を見越し、国外への事業展開に力を入れる企業も少なくありません。
グローバル化が進み、さらにオンラインショッピングなどで国境を越えてやり取りができるようになり、海外への市場展開は大企業を中心に進んでいます。
たとえばヤマト運輸株式会社の場合、シンガポールなどアジアを中心とした25ヶ国に拠点を持つといった事業展開に力を入れています。
また国際的な輸送業だけではなく、物流や製造、販売に関するコンサルティング業務なども行っており、自社のノウハウを活かしたロジスティクスを展開していることも注目すべき点のひとつです。
【運輸業界の業界研究】求められる人物像
ここまで、運送業界の業種や職種、市場の規模や抱える課題など、さまざまな視点から業界全体を解説してきました。
しかし、これらは基本的な知識であり、自分の目指す企業が定まったのであればより細かなリサーチが求められます。
そして、就活に向けて業界や企業が求めている人物像を把握し、それにマッチする自分の強みをアピールすることはとても大切です。
最後に、運輸業界において必要とされる人材の特徴を4つピックアップしましたのでぜひ参考にしてください。
人々の生活を支えたい人
人々の生活を支えたい、人の役に立つ仕事をしたいと思っている方は運輸業界に適性があります。
運送業は、人々の生活の基盤となる、非常に重要な役割を果たしているのはこれまで説明してきたとおりです。
今後大きな問題を抱えていますが、問題に直面しても誠実に仕事に取り組む姿勢が求められます。
特にパイロットや運転士は人々の命も背負うので、そのような覚悟を持って日々の業務に臨める強い精神を持った人が適任と言えるでしょう。
コミュニケーション力がある人
コミュニケーション能力も運輸業界で求められる能力のひとつです。
運輸業界はさまざまな拠点や工程を経て荷物や乗客が輸送されるために、各部署との連携が必須です。
ビジネスにおけるコミュニケーション力は、相手の要望を適切にくみ取り、要点を把握しながらも自分の意見を述べられることを指します。
それだけではなく、チームとしてうまく機能できる協調性なども、チームワークが重視される運輸業界では特に重要視される能力のひとつと言えます。
視野が広い人
視野が広く、物事を多面的に見られる人も適性があります。
先ほども述べたように、運輸業界は業務量の過多による人材不足や、コロナウイルスの影響による利用客の減少などさまざまな問題を抱え、現在のビジネスモデルでは対応が難しくなってきています。
どうすれば効率的に業務を進められるか、どのようなソリューションを用いれば問題解決に役立てるかなど、既存の枠組みに捉えられない視点で物事を判断できる人材は、今後の運輸業界で重宝されるでしょう。
語学力がある人
語学力も評価される能力のひとつです。
運輸業界ではグローバルな展開が進んでいるため、語学力がある人は管理や企画のロジスティクス部門や、空輸業界の地上スタッフや客室乗務員などで活躍できるでしょう。
たとえば、海外の見地スタッフの問い合わせに対する回答や運賃の交渉、官公庁とのやり取りなどの際に力を発揮できます。
また、海外への転勤の可能性もあるので、語学力を活かして働きたいと考えている方にとっても魅力的な業界と言えるでしょう。
まとめ
運輸業界は、私たちの生活がある限りなくならない業界と言われていますが、長年培われたそのビジネスの構造は、テクノロジーと融合し変革の時期を迎えています。
たとえば、ドライバーの健康状態や荷台の空き状況まで管理するIoT技術の導入などさまざまな改革が進んでおり、そのため業界の動向を細かくチェックしておかないと面接で不利になってしまうかもしれません。
自分に適性のある業界や職種を見極めつつ、物流業界の業界研究を進めていくようにしてください。