はじめに
教育実習を受けた方の中には、一般企業への就職を考えているケースも多いのではないでしょうか。
就活で重要な学生時代に力を入れたこと、通称ガクチカはもちろん、教育実習について述べることも有効です。
今回は、教育実習の経験をガクチカにする際のポイントについてお伝えしていきます。
教育実習の経験を就活にうまく活かすために、ぜひ参考にしてみてください。
【教育実習をガクチカになるの?】ガクチカとは
まず、ガクチカとは何なのかを簡潔にご紹介します。
先述の通り、ガクチカとは「学生時代に力を入れたこと」の略で、採用面接での質問やエントリーシートなどでよく尋ねられる項目です。
学生時代に力を入れて取り組んだことや、その詳細なエピソードなどを回答するものであり、この内容や受け答えで採用担当者は学生のさまざまな素質を確認します。
教育実習といった限られた人しか経験のない内容のガクチカは、そのトピックだけでも興味をもたれやすいでしょう。
【教育実習をガクチカになるの?】企業はなぜガクチカを聞くのか?
就活で重要な位置を占めるガクチカですが、なぜ企業はガクチカを尋ねるのでしょうか。
実際に企業側がガクチカを聞く理由を知っておくと、面接などを有利に進められるので、事前に把握しておきましょう。
企業側の質問の意図を知っておくことで、狙いが定まった内容のガクチカを作成することができます。
とくに、教育実習といった特殊なエピソードを使う場合は、採用担当者の狙いを把握しておくことが重要です。
ここでは、3つの要素に分けて、企業側が見ているポイントをご紹介します。
人間性を見るため
ガクチカは、学生時代に一生懸命になって取り組んだことを尋ねるものです。
就活生の人間性を知るには、志望理由や自己PRよりも、個人の差が出やすいガクチカが適しています。
企業、会社という組織は、多くの人間が集まって動いているものです。
その人の人間性だけでは、もちろん仕事の出来を判断するのは難しいです。
しかし「一緒に働いていて気持ちがいい人と働きたい」と思うのは、誰でも感じるものでしょう。
そういった意味で、ガクチカによって人間性を確認する必要があるのです。
適性を見るため
企業は、就活生の適性を見るためにもガクチカを利用します。
適性とは、その企業自体との相性という意味もありますが、入社後にどのような部署、仕事を任せるのかという、働くうえでの適所を探すという意味合いが強いでしょう。
例えば、ガクチカの内容にコミュニケーション能力をメインに据えた話をする就活生なら、チームで動く仕事が合っていると判断されます。
逆に言えば、ガクチカの内容は入社後の配属に関わる可能性があるということです。
教育実習というエピソードを軸に、自分の特徴を伝えられるようによく内容を練りましょう。
入社後に活躍できそうかを見るため
配属だけではなく、入社後にどのような活躍をしてくれるのかを判断するためにも、ガクチカが使われます。
ガクチカのエピソードは、その人が集団やチーム、社会活動の中でどのように考え、動いていくのかを見るのに適しているからです。
企業は基本的に、入社後に活躍できるかどうかという項目を重視して採用活動を行うため、この部分が魅力的に感じられるような内容を書くことが大切です。
教育実習という経験を、うまく入社後のビジョンと絡められると良いでしょう。
【教育実習をガクチカになるの?】教育実習の経験はガクチカになる?
ここまでで、ガクチカを企業がどういった視点で見ているのかを解説してきました。
就活生のパーソナリティを判断するのに適していることから、ガクチカは重要なトピックの一つと理解できたのではないでしょうか。
教育実習の経験も、もちろんガクチカの内容にふさわしいトピックです。
自分が教育実習を通じてどんなことを学び、気づいて、行動していったのかを示せば、アピールとして申し分ありません。
とくに、何を課題とし、どのように改善していったのかという能動的なアクションは、好印象につながるケースが多いでしょう。
授業で工夫した点や、生徒との関わり方などをエピソードのメインに据えることで、ガクチカを独自性のある魅力的な内容にできます。
【教育実習をガクチカになるの?】教育実習の経験をガクチカにするときのポイント
ガクチカは、教育実習という経験でも十分にアピール要素となる項目です。
自分の経験を深掘りしていき、具体性を上げたうえで伝えたいことを明確にすることが重要です。
ここからは、実際に教育実習の経験をガクチカに反映していく方法をご紹介します。
効率的に魅力のアピールにつながるようなガクチカを作成するためには、いくつかポイントがあるので意識しておきましょう。
以下のような点に気をつけることで、企業により良く自分をアピールできます。
課題に対しての取り組みを述べる
ガクチカで必要なのは、自分がその経験の中で何を課題と感じたのか、という課題設定の部分です。
教育実習の中で、自分が直面した課題に対してどのような取り組みを行ったか、具体的に説明できると良いでしょう。
適切な課題設定ができているかどうか、その課題に対し効果的なアプローチができているかどうかなどは、企業がガクチカで興味を持つポイントです。
課題に対してのアプローチの仕方は、そのまま入社後の社会人としての振る舞いに結びつきます。
仕事に通じる部分は、企業が比重を置いて見ています。
この部分をしっかり組み立てておかなければ、効果的なガクチカになりません。
実習中に自分が行ったことを可能な限り思い出して、整理してみると良いでしょう。
具体性を持たせる
ガクチカは具体的な内容であるほど、採用担当者に伝わりやすいものになります。
なるべくエピソードを具体的にすることで、わかりやすいうえに説得力のあるガクチカになるでしょう。
そもそも就活生と採用担当者は初対面であり、お互いのことを知らない状態です。
さらに教育実習というのは、民間企業で働く人々にとってあまり知識のないものであることが多いでしょう。
話をわかりやすくするためにも具体性は必要ですし、企業で働く姿をイメージさせるためには、採用担当者にもわかるように説明しなければなりません。
説得力を持たせるために有効なのは、数字やデータを用いることです。
数字は客観性があるので、教育実習でどのような成果を出したのかを明確に示すことができます。
強みをどのように活かせるかを述べる
ガクチカは、企業に自分が働いている姿をイメージさせることが大切です。
そのため、自分が経験で得た学びや気づきなどを、入社後どのように活かしていくかを述べる必要があります。
基本的にはエピソードのあとに、端的に強みをどのように活かしていくのかというビジョンを示すと良いでしょう。
これもまた仕事をしていく中で、どのような場面、どのような状況で活かせるのかを具体的に示しましょう。
教育実習は、その経験自体が民間企業での仕事に直結するイメージが湧きにくいものなので、具体的に示すことがより重要になります。
実習の経験をよく深掘りしておき、自分の持つ強みとつながる経験であるかどうかを考えたうえで、ガクチカを作成しましょう。
【教育実習をガクチカになるの?】教育実習をガクチカにするときの注意点
ここまでで、教育実習をガクチカにする際のポイントをご紹介しました。
内容を具体的にすることが、良いガクチカを作成するうえで大切であることが理解できたかと思います。
しかし、ただ具体的にするだけでは不十分な点もあるので、注意が必要です。
ここからは、教育実習をガクチカにするときの注意点をご紹介していきます。
教育実習をうまくエピソードとして用いたうえで、良質なガクチカを作成するためには、以下のような点に注意しましょう。
経験のみを述べない
教育実習の経験は、民間企業の採用面接を受ける就活生の中では目立つエピソードです。
しかし、ただ教育実習での体験を述べるだけでは、ガクチカとして不十分と言えます。
これはもちろん、教育実習というトピックに限らず、アルバイトや部活などをガクチカにする場合も同様です。
ただ教育実習という経験をアピールするだけでは、就活生自身の考え方や強みが伝わることはありません。
先述したように、ポイントを押さえ、アピールするのはどんな部分なのかを考えてガクチカを作成しましょう。
専門用語を使わない
具体性を持たせることが大切であることをこれまでも述べてきましたが、ただ詳細に書くこともガクチカとしては不十分です。
先述の通り、採用担当者と就活生は初めて会うため、お互いの事情やバックボーンを知っているわけではありません。
専門用語などを使われると「それはどういう意味なの?」という、本質から逸れた質問が必要になってしまいます。
教育実習はとくに馴染みがない可能性も高いため、できる限り専門的な言葉は避け、一般的な言葉に言い換えておきましょう。
質問の対策をしておく
教育実習の経験をアピールすると、必ずと言っていいほど尋ねられるのが「どうして民間企業を志望したのか」という点です。
わざわざ教育実習を経て、なぜ民間企業を選んだのかについて、具体的な理由を説明できることが望ましいでしょう。
「ただ教職が難しいと感じた」「教職よりも民間に就職する方が良いと感じた」といった後ろ向きに聞こえる可能性がある言い回しは避け、できるだけポジティブな表現にします。
この部分に納得のいく説明があれば、教育実習の経験もプラスに働くでしょう。
【教育実習をガクチカになるの?】ガクチカの伝え方のポイント
ガクチカの組み立て方は、ここまでで理解できたのではないでしょうか。
ここからは、実際に面接などでガクチカを伝える際の大切なポイントをご紹介していきます。
ESや履歴書などに記載する場合は、この部分を参考に構成を考えると良いでしょう。
社会人に求められるのは、論理的な話し方です。
相手の時間を取らせず、簡潔にわかりやすく話をする力は、どのような場面でも有用です。
ガクチカを話す際も以下の点に注意して、わかりやすい伝え方を心掛けましょう。
結論ファースト
上記で述べたように、論理的な話し方は社会人に求められる重要な要素です。
ガクチカにおいてももちろん、結論を最初に述べるようにしましょう。
教育実習の場合は「教育実習での○○」といった形で表すとわかりやすくなります。
一日に何十、何百人もの就活生を見なければならない採用担当者に印象を残すためには、出だしで引っ掛かりを持たせなければなりません。
ただし、内容を大げさにしてしまったり、そのあとのエピソードと関係のない話を書いたりといったことは避けましょう。
目標を伝える
結論を述べたあとは、教育実習において自分が感じた課題や目標を述べます。
課題解決は確かに企業で働く社員として、能動的に動くことができるというアピールにつながりますが、個人的に目標を設定して、そのために動いていくということも大切です。
自分の持つエピソードに合わせて、課題解決型の内容と目標達成型の内容どちらがふさわしいのかを判断しましょう。
ここで示した目標や課題と、その後の取り組みに齟齬がないかもあらためて確認しておくと、矛盾なくわかりやすいガクチカになります。
取り組みを述べる
目標や課題について述べたら、その目標・課題を達成もしくは解決するために、どのようにアクションを起こしたかを述べます。
ここは、仕事に対する取り組み方にもつながる部分のため、具体的に示すことが重要です。
自分なりに工夫したことや努力したことを詳細に述べることで、企業に入社したあとの働く姿をイメージさせやすくする効果もあります。
取り組みの部分を詳細にするためには、事前にできる限り教育実習での経験を思い出しておき、一つひとつの取り組みを自分自身が理解しておくことが大切です。
成果を挙げる
最後に、その取り組みによって課題や目標がどのような結果になったのかを述べます。
成果の部分は、できる限り数字などの具体的・客観的な指標を用いると効果的です。
主観的に「頑張った」と言っても、周囲に与えた影響や誰かへ貢献できたかなど、会社員に求められる利益の創造ができたかどうかがわかりません。
また、周囲からの評価やもらった言葉なども数字には劣るものの、客観的な視点での評価のため、具体性を上げることにつながります。
積極的に用いると良いでしょう。
【教育実習をガクチカになるの?】教育実習をガクチカにした例文
それでは、ここから教育実習をガクチカにした場合の例文を掲載します。
それぞれ「発言数・生徒の積極性の向上」「採点などの書類整理の効率化」「生徒とのコミュニケーションの円滑さ」を目標・課題として設定していたというエピソードです。
自身の経験に置き換えて、ぜひ参考にしてみてください。
例文①
私が当初教育実習生として教壇に立った際、私語が目立ち、挙手などの積極的な授業参加もほとんどない状態でした。
自分が教育実習生であることから生徒の求心力が低いことに加え、学級自体に難があると考えました。
そこからは、ただ授業を進めるのではなく、生徒へ話しかけるような形での授業を計画しました。
実習の担当教員の先生からアドバイスをもらいつつ、生徒が発言しやすい空気作りとして自らの声のトーンや話し方を工夫したり、考えをまとめる時間を作ってから質問の機会を設けたりといった改善を行いました。
結果として、授業最終日に行ったアンケートでは、生徒からの満足度が95%以上という高評価となり、先生方からも評価していただくことができました。
例文②
当初、教育実習生として授業計画などの事務的な作業が遅く、家でも長く準備のために作業を続けなければならない状態でした。
授業をすることはもちろんですが、この事務作業をスピーディーかつ正確に終わらせることで、実りのある授業につながることは理解できました。
そのため、効率的に事務作業が終わるような段取りの組み方を考えたのです。
実際に、先生方がどのような方法で授業計画や採点などの事務作業を終わらせているのかを観察しました。
ときには質問しながら、時間で区切るタスクと片付ける枚数で区切るタスクを把握することでメリハリをつけ、優先順位を判断する方法を学んだのです。
結果として、最終日近くには、すべて就業時間内に終わらせたうえで、余裕がある状態にまで改善することができました。
例文③
教育実習生として実習に赴いた当初は、緊張などから授業での声が小さく、生徒から話しかけられてもうまく答えることができませんでした。
しかしコミュニケーションが円滑にできなければ、授業での求心力だけでなく、授業内容の理解への妨げになる可能性もあると判断し、改善を意識することにしたのです。
まず挨拶を大きな声でするという基本的なことから、目を見て話すこと、そして何よりも生徒の話に深く耳を傾けることを意識しました。
結果として、アンケートなどで生徒から好印象を抱いている旨を多くいただき、先生方からも「生徒から信頼されているのがわかる」と言っていただけるようになりました。
まとめ
今回は、教育実習をガクチカに利用できるのかについて焦点を当て、気をつけるべきポイントや例文などをご紹介しました。
ガクチカは教育実習という経験自体が評価されるのではなく、その経験を通じて得た学びや取ったアクションを評価されます。
自分の教育実習の経験を深掘りして、アピールになるエピソードを見つけましょう。