HRteamに新卒入社。 キャリアアドバイザーの経験を経てマーケティング事業へ異動。 アドバイザー時代にサービス立ち上げや人材開発、人事の業務に携わり、現在では「Digmedia」のメディア運営責任者を担っている。
はじめに
理系学部の場合、研究職や専門職へ就職するか、大学院へ進学するというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
平成30年度の文部科学省の調査では、工学部の80%、理学部の56%、農学部の42%が専門的・技術的職業従事者として就職しているというデータがあります。
しかし、理系学部だからと言って、必ずしも専門職に就職しなければならないというものではありません。
今回は、理系学生がマーケティング職を目指せるのか、具体的な方法について解説していきます。
【理系でマーケティング職に就職できる?】マーケティングとは
まず、マーケティング職の業務内容について説明します。
マーケティングとは、一言で言うと「売れる仕組みを作る」仕事です。
モノやサービスを顧客に提供するために、商品開発、販売のための戦略、広告から効果の検証までさまざまな業務を行います。
確実にターゲットに届けるためには、3C(顧客・競合・自社)分析を基本とした、徹底したリサーチが必要になります。
現在はデジタル化の流れを受け、ITを駆使したWebマーケティングや、SNSマーケティングが主流です。
【理系でマーケティング職に就職できる?】理系でマーケティング職に就くのは可能なのか
結論から言うと、理系学生がマーケティング職に就職することは可能です。
マーケティング職に限ったことではなく、文系職には理系ならではの強みを活かせる職種が多くあり、文系職でも理系学生を歓迎する企業も珍しくはないのです。
また、研究職から文系職へ変える人も多く見られる現在、「理系だから専門職」という概念は大きく崩れつつあります。
具体的にどのような業務があり、理系学生に適性があるのか、大きく3つに分けて見ていきましょう。
市場調査
「市場調査」とは、企業が商品やサービスの開発・販売をするにあたって、市場をよく理解するための調査活動のことです。
マーケティングリサーチの中で、実際にどのような層の人が何を使用しており、どのような課題を抱えているかなどの実態調査を指すケースが多く見受けられます。
まず、市場調査の目的・期間・予算を明確にし、市場の事前調査をしたうえで適切な調査方法を見極めます。
さまざまな調査方法がありますが、数値を分析する定量調査と、インタビューや行動分析など数字を伴わない適性調査の2つに大きく分類が可能です。
そして、その調査結果を分析し、意思決定をするまでが市場調査の業務の内容です。
市場の潜在的ニーズや競合他社に勝つためにはどうするべきか、自社製品やサービスの再検討など、データ結果をもとに追求していきます。
企画立案
市場調査を踏まえたうえで、商品やサービスをどう販売していくか販売戦略の企画を行うのが企画立案です。
企画立案では、市場を細分化したうえでどの市場を狙い、自社はどの立ち位置に立つかを決めるSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を行います。
その後、大切な製品(product)・価格(price)・流通(place)・販促(promotion)の4つの「P」を適切に組み合わせて調査する「マーケティングミックス」という作業を行います。
そして、必要に応じて修正や見直しをしながら実行・分析に移っていくのが主な流れです。
市場に合わせた新たな製品を考えつつ、既存の製品の改善なども行う非常に重要な業務と言えます。
販売促進
販売促進とは、キャンペーン活動などでモノやサービスの認知度を上げることや、売れるための宣伝・広報などの販売活動を強化することを指します。
商品のメリットや良さを、ターゲットにどれほど効果的に訴求できるかが販売促進の重要なポイントです。
たとえば、店頭でのイベントや値引き、SNSプロモーションや、メディア運用やコンテンツ配信などの取り組みなどが挙げられます。
それだけではなく、展示会やセミナーの開催、自社のノウハウをまとめたホワイトペーパーの配布なども販売促進のひとつです。
マーケティングの販売促進活動は、顧客との関係性を重視した施策が多いのが特徴です。
今までの市場調査や企画立案にもとづき、より多くの消費者に製品やサービスを認知させるための効率的な営業方法や販売方法を考えます。
【理系でマーケティング職に就職できる?】理系でマーケティング職になる「強み」
このように、マーケティングは、調査・企画・販促という商品やサービスが効果的に流通するためのプロデューサーのような仕事を行います。
内部や外部の環境を徹底的に分析したうえで、ターゲットを特定し、商品の価値や提供する方法を決める作業は決して簡単なものではありませんが、やりがいのある業務と言えます。
では、理系学生がマーケティング職を目指すうえでアピールできる強みとは、いったいどのようなものがあるのでしょうか?
数字に強い
1つ目の強みとして、数字に強いことが挙げられます。
マーケティングは、数字や結果の分析が命の仕事です。
市場規模を算出するための方式や、適切な価格設定をする思考、またデータの推移を調査分析することなど数学的な作業が多いのです。
SEO施策やWebアクセス分析といったマーケティングの基本的な能力は、数字の扱いに慣れることから始まると言っても過言ではありません。
理系学生は日々、専門分野の研究や実験でデータを取り、検証や分析することに慣れています。
そのため、数字の扱いに慣れている理系学生は、優秀なマーケターとして成長する可能性が高いと言えるのです。
文系職よりも数式やデータに馴染んでいる点に関しては、面接やエントリーシートでアピールできると考えて良いでしょう。
仮説検証能力がある
仮説検証能力に秀でているところも、マーケティング職を目指すうえで武器になると考えて良いでしょう。
仮説検証とは、ビジネスにおいて、仮説の真偽について事実情報にもとづいたデータを活用し、たしかめることを指します。
理系学生はラボにこもることも多く、研究や実験をしていく中では仮説を立てて検証するというサイクルが基本です。
客観的視点から仮説を立てて、正確に検証し、仮説と異なった検証結果が出たのであれば原因を探っていくという地道な工程を繰り返します。
この流れは、マーケティング職にも通ずるものです。
新たなプロジェクトを立案する際や、その結果を分析する際など、あらゆる場面で仮説思考を活用する場面があり、成果を出せるかに大きく関わるのです。
そのため、理系学部で養われた思考はマーケティング職に活かせると言えます。
論理的思考力がある
論理的な思考ができることも、マーケターとしての適性があると言える重要なポイントです。
論理的な思考とは、物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる思考法であり、ビジネスにおいて非常に重要視されています。
理系学生は、データを主観ではなく正確かつ客観的に読み取り、次の研究に活かすということを日々行っています。
そのため、文系学生よりも論理的に思考することに慣れているのです。
マーケティングは、徹底的に市場調査をしてターゲティングを明確にし、確実に訴求できる企画を立案し結果を検証する作業が多いために、ロジカルな考えは重要視されます。
また、プレゼンテーションや面接の際にも論理的に考える能力は重宝されるので、その点において理系学生の方は適性があると考えて良いでしょう。
【理系でマーケティング職に就職できる?】文系就職をする際の注意点
理系学生は、仮説検証や論理的思考に秀でており、数字の扱いにも慣れているため、調査やデータの検証が必須であるマーケティング職には向いていると言えます。
文系職だと専門職よりも給与水準が低くなると考える方もいるかもしれませんが、成果が賞与として反映されるケースが多いために、頑張りしだいでは高収入を目指せる職であるのです。
ここからは、理系学生が就職活動を進めるうえで注意しなければならないポイントについて解説していきます。
就活スケジュールに違いがある
まず、就活を進めるうえでチェックするスケジュールに注意しましょう。
マーケティング職だけでなく、外資系企業やマスコミは、学士3年修士1年の秋ごろに採用活動を行うケースが見受けられるので、目指す企業のスケジュールは確認しておくと安心です。
また、文系学生のスケジュールに合わせて採用スケジュールを立てていることが多く、比較的タイトなスケジュールが組まれているケースが多く見受けられます。
現在では、オンライン面接を行う企業が増えたために移動時間は少なくなり、以前よりも時間の融通が利きやすくなりましたが、それでも面接の準備に割く時間を取らなければ満足する結果は得られません。
多忙な理系学生にとっては学業との両立が必要となってくるので、状況に合わせてスケジュールの調整が求められます。
選考ステップが異なる場合がある
面接の選考ステップが異なる可能性があることも頭に入れておきましょう。
理系学生の就活は、自由応募と推薦応募の2種類があります。
学校から推薦状を添えて応募する制度を推薦応募と呼び、自由応募に比べると合格率が高いほか、選考ステップの一部が免除されることも多いです。
自由応募の場合も、理系の専門職は研究の成果も重要視されているために、学業に配慮されるスケジュールであることが目立ちます。
しかし文系職の場合、ポテンシャルや企業とのマッチングを慎重に図る傾向にあるために、1〜4次または5次選考まであるケースも見受けられます。
文系学生のスケジュールに合わせると、研究や論文などで非常に多忙となってしまう可能性があるため注意しましょう。
【理系でマーケティング職に就職できる?】マーケティング職に就くには?
専攻のスケジュールやステップが学業との両立に支障がないようでしたら、ぜひマーケティング職にチャレンジしてみてください。
マーケティング職を目指したいと考えている方は、以下3つのことを実践してみましょう。
インターンに参加する
まずはマーケティング職のインターンに参加すると良いでしょう。
インターンで入社前に企業や業務に一歩踏み込んで関わることで、マーケティング職への理解を深めるとともに入社後の「こんなはずではなかった」というミスマッチの防止にもなります。
インターンは、1~3日程度などの短期インターンと、1週間に〇日とシフトを決めて出社し、社員と同様に実務に携わる長期インターンがあります。
研究室や講義のスケジュールを確認して無理がない範囲で、自分が興味を持ったインターンがあれば応募してみると良いでしょう。
短期インターンは大学3年次の夏ごろから本格的に始まるので、気になる企業があれば早めにチェックし、SNSアカウントなどフォローしてエントリーに出遅れないように注意してください。
なお、インターンの面接も本番の良い予行演習となります。
マーケティングに関する知識をつけておく
次に、マーケティングに関する知識をつけておきましょう。
理系学生は思考回路や計算能力では優れていますが、経営学部や経済学部といった文系学部の学生の方が、マーケティングに関する知識を得ていることは否めません。
そのため、初心者向けのマーケティング入門の書籍を読み、マーケティングに関する基本的な知識を入れておくことをおすすめします。
また、時間が許すならOB・OG訪問をして実際にマーケターとして活躍する先輩に話を聞くと、実務に関する生の情報が手に入るため、よりいっそう仕事への理解が深められるでしょう。
すぐに即戦力として働けるほどの知識は求められていませんが、業務のフレームワークやどのようなマーケターになり目標は何か語れるレベルの知識はつけておいてください。
資格を取得する
マーケティング職を目指すうえで、資格取得もおすすめの方法です。
ただし、マーケティング職に必須の資格は存在しません。
また営業職のように、普通自動車運転免許すら必須とならないケースがほとんどです。
しかし、マーケティング関連の資格を取得していれば、専門知識を有しているという採用担当者へのアピールにもなり、差別化にもなるため時間に余裕がある方はチャレンジしてみましょう。
マーケティング職で役立つ資格は、Webアナリスト検定やマーケティング・ビジネス実務検定などが代表的なものとして知られています。
Webアナリスト検定は、マーケターとして必要不可欠なツールであるGoogleアナリティクスの知識を問う試験です。
またマーケティング・ビジネス実務検定は、マーケティングの知識を総合的に判定する試験で、難易度別にA~C級までありますが、学生であればC級の取得で問題ないでしょう。
まとめ
今回は、理系学生がマーケティング職を目指すためのノウハウについて解説しました。
理系学生の文系就職は、現在決して珍しいものではなくなりました。
マーケティング職は、ロジカルにモノが売れる仕組みを考える職業なので、研究や検証に慣れている理系学生には適性があるのです。
今後、デジタルマーケティングの市場は拡大すると予想されています。
興味がある方は、まず職業研究から始め、マーケターとしての知識を身に付けてみてはいかがでしょうか。